ミニレビュー

ESS DACになった、FiiO中核DAP「M11 Plus ESS」をさっそく聴く

M11 Plus ESS

ハイレゾファイルだけでなく、音楽ストリーミング再生も高音質に楽しめるデジタルオーディオプレーヤーの人気モデルであり、FiiOの中核DAPである「M11 Plus LTD」に、ついに後継機種が登場。「M11 Plus ESS」が2月25日に発売される。

詳細は、本日掲載したニュース記事を参照して欲しいが、簡単に言えばM11 Plus LTDに採用していたDACチップを、旭化成エレクトロニクスの「AK4497EQ」から、ESSの「ES9068AS」へ置き換えたモデルだ。しかし、“それだけ”ではない。

DACチップ変更に伴ってD/A変換セクション自体をブラッシュアップしており、チップの特性に合わせ、ローパスフィルターに使っているオペアンプを「OPA1662」から「OPA927」へと変更。さらに、ボリューム調整用のICで行なっていた音量調整機能をDACチップに担当させる事で、ボリュームIC回路を廃止するなど、特性にも磨きをかけている。

左からM11 Plus ESS、M11 Plus LTD

それでいて、実売価格は「M11 Plus LTD」(Aluminum Alloy筐体モデル 99,000円前後/Stainless Steelモデル 125,950円前後)と比べ、「M11 Plus ESS」は97,900円前後に抑えられた。型番に「LTD」と書いていない事からもわかるように、限定モデルではなくなったのも注目ポイントと言えるだろう。

短時間だが、M11 Plus ESSを聴く事ができたので、M11 Plus LTD(Aluminum Alloy)との音の違いを、ファーストインプレッションとしてお届けする。

M11 Plus ESSのヘッドフォン出力部分
ESSの「ES9068AS」

広大な音場に、情報量と熱気あふれるサウンド

「宇多田ヒカル/花束を君に」を再生すると、冒頭、宇多田のボーカルがフワッと広がっていく空間のサイズで、すでに違いがある。M11 Plus LTDも、ポータブルプレーヤーとしてはかなり広大に広がるのだが、M11 Plus ESSはさらにその上を行き、音の響きが消える場所まで見通せるような奥行き・広さがある。

SN感も良く、静かな空間にボーカルや楽器の余韻が広がったり、音のない空間からスッとボーカルが立ち上がる様子が、M11 Plus ESSの方がより鮮明だ。

個人的に、旭化成エレクトロニクスのDACには“中高域のなめらかさ”や“ウォームな響きのあたたかさ”などの印象を持ち、ESSのDACには“音の輪郭がシャープ”“音色としてはクールで凛としたサウンド”という印象がある。

M11 Plus LTDとM11 Plus ESSの音色には、このイメージと近い違いが感じられる。ただ、前述のようにM11 Plus ESSの方が空間が広く、そこに描写される音像もよりクリアなため、M11 Plus ESSの方が、サウンド全体のクオリティがよりハイエンドだと感じる。音色の違いよりも、音のグレードとしてM11 Plus ESSの方が一枚上手という印象だ。

また、M11 Plus ESSの中低域には、描写の細かさだけでなく、低域の沈み込みの深さ、力強さが感じられる。「ダイアナ・クラール/月とてもなく」冒頭の、押し寄せるようなアナログベースの迫力も、M11 Plus ESSの方が鮮烈で、熱気がある。

山崎健太郎