ミニレビュー

実はなかなかの高音質。PS5以外でも使える「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」

PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から、2月21日に発売を予定している「PULSE Elite ワイヤレスヘッドセット」(以下PULSE Elite、1万8,980円)の製品サンプルが届いた。

本誌らしく、ゲームよりも少しオーディオ目線でチェックしていこう。

SIEのPS5純正ヘッドセット

まず概要を確認しておこう。

PULSE Eliteは、SIEが開発したゲーム向けワイヤレスヘッドセットだ。ゲーミングヘッドセットは商品も多く出ている激戦区だが、SIEも純正品を出そうと取り組んできた。

以前に取材記事を掲載しているので、そちらをご確認いただきたい。

完全ワイヤレス型とオーバーヘッド型の2モデルがあるが、今回テストしているのは、オーバーヘッド型のものだ。

USBドングルを併用するゲーム専用の「PlayStation Link」とBluetoothの併用ができて、マイクも内蔵。PlayStation 5とつなぐときは、ドングルを使ってPlayStation Linkを使う。

付属品は本体の他、USBドングルと充電用のフック、それにUSBケーブル。ケーブルはType-AからType-Cへの、ごく標準的なものだ。

付属品。本体の他にはPlayStation Link用のUSBドングルとフック、それに別途USBケーブルが入っている

USBドングルもType-Aなので、Type-Cの機器につなげるには別途変換コネクターが必要になる。PS5の場合、初期モデルなら前面・後面両方にType-Aがあるので問題ないが、小型化した最新モデルの場合、後面にしかType-Aはないので後ろにつなぐことになる。

PlayStation LinkのUSBドングル。コネクターはType-Aで、PS5の他PCなどにも接続可能

PlayStation Link用のUSBドングルはPS5専用というわけではなく、汎用のUSBオーディオデバイス。だからPCやMacにもつなげられる。今回はPS5の他に、主にMacにつないで試している。

Bluetoothの対応コーデックはSBCとAAC。PlayStation LinkとBluetoothは同時接続可能なので、ゲーム側とスマートフォン・PCなどを同時につないで利用できる。これも、最近のゲーミングヘッドセットには増えてきた仕様だ。

充電はUSB Type-Cで行うが、ヘッドセット頭頂部に充電専用端子もある。こことの接点は付属のフックに内蔵されていて、フックにUSB Type-Cケーブルをつないだ上で、ヘッドセットをかけることで充電が可能になる仕組みだ。これは意外と便利である。

本体右側。手前から、電源・ペアリングボタン、3.5mmオーディオ端子、USB Type-C(電源+アップデート用)、ボリューム
頭頂部には充電専用の端子が
付属のフックにUSB Type-Cのケーブルをつないで壁やディスプレイの横などにつけておくと、その上にかけるだけで充電ができる

マイクも内蔵。口元から引き出すタイプになっていて、声だけを拾いやすい。会議に使ってみたが、音質は「悪くない」印象だ。

マイクは引き出し式。よく見ると「△○□×」のマークが
内側にはミュートボタンがあり、押すと点灯する

音質は元気で良好。ただし音量は大きめに

この製品の特徴は2つある。

1つは、前述の「PlayStation Link」を採用したこと。16bit/48kHzかつロスレスでの伝送に対応し、Bluetoothよりも遅延が小さい。

2つめは、独自設計の「プレーナーマグネティックドライバー」を採用していること。プレーナー(planar。オーディオ系記事ではプラナーと表記される場合も多い)とは、平たい板状のドライバーユニットのことであり、PULSEではマグネットで振動板をサンドイッチしているような構造のドライバーユニットを使っている。

このため音質には期待が持てた。

実際試してみると、確かにかなりいい。パンチが効いた元気な音で、広がりがしっかりしている。

今回は、筆者が普段使っているワイヤレスヘッドフォンである「WH-1000XM5」「AirPods Max」と比較してみた。もちろん、PULSE Eliteはノイズキャンセルがないので、性質が異なる点はご留意いただきたい。

Bluetooth接続の場合、WH-1000XM5やAirPods Maxにもそこまで劣らない。音の解像感は足りないが、はっきりとした「元気さ」「立ち上がりの鋭さ」などが感じられる。

48Kロスレスになる PlayStation Linkに切り替えると、音の解像感不足はずいぶん解消され、非常に好ましい音になってくる。

ただし、音量は少し大きめにした方が真価は出やすい性質があるようだ。プレーナーマグネティックドライバーは、十分な入力がないと真価を発揮しづらい傾向にあると感じた。小さいボリュームだと、美点である「元気さ」「立ち上がりの鋭さ」が消え、平坦な音に変わってしまう。

実は先行発売された完全ワイヤレス型では、この「足りない」印象を強く感じた。音質に対して良い評価をするレビューも読んだが、正直筆者はお勧めできないと考えた。

一方、PULSE Eliteは十分な音量も電力も確保しやすいためか、非常に好ましい音だ。

PS5につなげても使ってみたが、空間オーディオによる音の位置認識もしっかりできて、広がりもあり、迫力を感じた。

前述のようにノイズキャンセル機能はなく、音も大きめに出したほうが良いという特質もあるため、外に音は盛大に漏れる。だから、屋外で使うには向かない。しかし、自宅でゲームをしたり音楽を聴いたりするにはかなり良さそうだ。

なによりの美点は、つけている時の負担が非常に小さいことだ。遮音性を重視したWH-1000XM5やAirPods Maxに比べるともちろん小さいが、モニターヘッドフォンである「MDR-MV1」と同じくらい負担が小さい。押さえつけない構造であるのに加え、イヤーパッドが非常にやわらかく、付け心地がいいからだろう。

イヤーパッド。ふかふかで耳への負担が非常に小さい

その分音は外に漏れるわけだが、これなら長時間つけ続けても快適だろう。すなわち、ゲームにもいいが、長時間音楽を聴き続けるにもいい、ということだ。

つけたスタイルは普通のヘッドフォンに比べると少し違うが、コスパが良いヘッドフォンとして注目しておいて良いのではないだろうか。

筆者がつけてみた。ちょっと左右に広がった、他にはあまりないシルエット
西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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