レビュー

脅威の小型USB DAC+ヘッドフォンアンプがさらに進化、「Hugo 2」を聴く

 ハイエンドオーディオ界で注目を集めるメーカー、Chord Electronics。その知名度は、ポータブルオーディオファンの間でも飛躍的に高まっている。キッカケは、2014年に登場した小型のDAC兼ヘッドフォンアンプ「Hugo」(ヒューゴ)、そしてHugoをギュギュッと小さくしたようなポータブルDAC兼ヘッドフォンアンプ「Mojo」(モジョ)だ。

今回聴いてみる「Hugo 2」

 コンパクトながら約24万円という価格、そして“鮮烈”と言って過言ではないハイクオリティなサウンドで注目を集めた「Hugo」。ポケットに入る小ささで、そんなHugoに近いサウンドが楽しめる「Mojo」は、約7万円というChordの製品としては買いやすい値段でヒットとなった。単に“音の良いポータブルアンプ”というだけでなく、“Chordのサウンドと技術”を幅広い人に知らしめるアイコン的な存在になったといえるだろう。

左が初代の「Hugo」、右が「Hugo 2」
左が「Mojo」、右が「Hugo 2」

 そして、一連の盛り上がりの火付け役とも言える「Hugo」の新モデル「Hugo 2」が5月頃に発売予定。価格はまだ未定だが、海外では1,800ポンド。日本円に換算すると約24、5万円なので、既存のHugoと大きくは変わらないだろう。そのサウンドがどう進化したのか、聴いてみたい。

どのように使うのか

 外形寸法は100×130×22mm(幅×奥行き×厚さ)と、従来からさほど変化はない。重量は約450gと少し重くなっている(従来は332g)。片手で楽々と持てるサイズと重さであり、ポケットはちょっと厳しいが、バッグに入れて運搬するのは何ら問題はない。

 入力端子はUSB、同軸、光デジタルを各1系統。出力はステレオミニ、標準ジャックを各1系統搭載。RCAのライン出力も1系統備えている。PCなどと接続して、デスクトップでヘッドフォンアンプとして使えるほか、オーディオ機器と連携して単体DACとしても使える。さらにバッテリも内蔵しているので、喫茶店などに出かけて、ノートPCやポータブルプレーヤーなどを繋いで、出先でもヘッドフォンでリッチなサウンドを楽しむ……といった使い方もアリだろう。

側面にPC接続用のUSB端子、給電用のUSB端子を装備
反対側にはヘッドフォン出力、アナログRCAのライン出力、同軸デジタル入力、光デジタル入力を備える

 USB DACとしては、PCMが768kHz/32bit、DSDが22.4MHzまでサポートしており、文句なしだ。同軸は384kHz/24bit、光デジタルは192kHz/24bitに対応する。

 ユニークな機能として、Bluetooth受信にも対応している。例えば、スマホからワイヤレスで音楽を受信し、ヘッドフォンで楽しむ事も可能だ。カジュアルな利用にも使えるのはありがたい。高音質なaptXコーデックもサポートしている。

 ヘッドフォンの出力レベルは94mW(300Ω)、740mW(33Ω)、1,050mW(8Ω)と非常に強力だ。低能率なハイエンドヘッドフォンとの組み合わせも可能。サイズは小さいが、(想定)20万円を超える製品として頼りがいのある部分だろう。ダイナミックレンジは125dB、全高調波歪率は0.0001%(1kHz 3v RMS300Ω)以下。SN比は126dB(‘A’Weighted)と、それ以外のスペックも凄い。

Hugo 2は何が凄いのか

 HugoやMojoなど、これまで何度も説明されているのでご存知の方も多いと思うが、そもそもChordのDACは、他社と何が違うのかを、簡単に紹介しよう。

Chordらしい独特のデザイン

 最近のUSB DACやハイレゾプレーヤーでは、旭化成エレクトロニクスやTIのバーブラウンなど、どのメーカーのDACチップを採用しているかが注目される事が多い。もちろん、DACチップだけで音が決まるわけではなく、活かすも殺すも設計次第なのだが、それでも、最新かつ高性能なDACを搭載しているかどうかはやはり気になってしまう。

 だがChordの場合は、汎用的なDACチップは使わない。代わりに、FPGAと呼ばれる、プログラムで回路を書き換えられる集積回路を使う。厳密には、FPGAだけでデジタルの音声信号をアナログにするわけではなく、FPGAの処理を経て、パルスアレイDACという回路に送り、そこでアナログ化する。要するに、DACチップの役割を、FPGA+パルスアレイDACで実現するわけだ。高速なFPGAと独自のプログラムによって処理する事で、他社とは一味違う“Chordサウンド”になるわけだ。

 FPGAはXilinxの「Artix-7」が使われている。ではこのFPGAでは何をしているのだろうか。

Hugo 2の天面にある窓から、「Artix-7」が見える

 手がけるロバート・ワッツ氏によると、注目すべきは音のトランジェント(音の立ち上がり/立ち下がり)の時間精度だという。ご存知の通り、アナログの音はなめらかな正弦波だが、それをADコンバータでデジタル化すると、カクカクした、階段状になる。そうなったデジタルデータにフィルタをかけてアナログに戻して聴くわけだが、ワッツ氏によれば単純なフィルタではタイミングの誤差が100μSec以上あり、正確な波形に戻らないという。

 そこで、フィルタのアルゴリズムを改良。タイミング誤差を限りなく減らすために、もの凄く高速かつ細かく、無限に処理をするようなフィルタで補完していく。これが「WTAフィルタ」と呼ばれるもので、その処理の細かさを“タップ数”として表現している。

ChordのFPGAで処理した波形は、一般的なDACの階段状よりも、大幅に細かく、滑らかに波形を表現している

 フィルタの細かさが増えるほど、時間軸方向の精度がアップし、トランジェントの良さや、リズムの再現性などで効果が出る。ワッツ氏によれば、この正確さこそが、人間が音の良し悪しを判断する際にとても重要な要素なのだという。

 ちなみに初代Hugoは26,368タップ、8FSのWTAフィルタを使っていたが、Hugo 2では49,195タップ、16FSのWTAフィルタと、約2倍に細かくなっている。また、このWTAフィルタは、208MHzで並列動作する45個のDSPコアで処理されているという。

 さらに、初段のWTAファイルタに続き、二段目のWTAフィルタによってサンプリングレートを16FSから256FSに引き上げる(Hugoは8FSから16FS)。こうした処理により、タイミング精度にさらに磨きをかけるそうだ。

 なお、Hugo 2に搭載されているFPGAは、Mojoに使っているものと同じだという。しかし、Mojoでは電力の関係で最高性能を発揮できなかった。Hugo 2ではより電力を使えるので、FPGAの性能を100%発揮でき、Hugo 2のスペックを実現したという。この点も、FPGAらしいエピソードと言えるだろう。

 FPGAで処理したデータは、フリップフロップ回路を使った「パルスアレイDAC」に送られる。フリップフロップは、シーソーを動かした時のような“ギッコン、バッタン”のような意味だが、簡単に言えばシーソーの上げ下げで「0」か「1」の値を表現・保持する回路だ。

ARTIX-7と書かれたFPGAの左側にある小さなパーツがフリップフロップ回路を使った「パレスアレイDAC」。このイラストはMojoの内部を表したものだ
時間軸方向のON/OFF処理を表したイメージ。これは一般的なDAC

 パルスアレイDACは、“アレイ”という名の通り、フリップフロップ回路を使ったエレメントが多数、それぞれ少しずつズレた状態でアレイ状に並んだものだ。Hugo 2では片チャンネル用に10個のパルスアレイ・エレメントを使っているという。

こちらがパレスアレイDAC。ズレて動作するエレメントがいくつも並ぶ事で、時間軸方向の分解能がUPする

 アレイ状に搭載しているのにも理由がある。シーソーの上げ下げ、0と1、要するにスイッチング動作するのだが、それで音量を表現する場合、エレメントが1個だった場合、上がっている状態から、下がっている状態に切り替わる間には、そのための時間が必要となる。

 しかし、エレメントを増やし、少しずつズラして搭載し、その組み合わせで音量を表現した場合、エレメントが上がっている状態と、下がっている状態の間に、他のエレメントの上げ下げで、変遷する時間の間にも0と1を表現できる。

 1つのエレメントを、手の指と考えるとわかりやすい。人差し指1本を下げた時が「0」、上に上げた時が「1」とイメージする。例えば片手の指4本を横から見て、全部の指が上になっている時がフルボリューム、全部が下がった時が音量最小で、その間の音量は、どの指が上の時か、下の時かという組み合わせになる。指の数が1本より2本、3本、4本と多くなれば、タイミング精度が良く、より細かく音量を表現できるというわけだ。

 他にも、一般的なDACで発生する、信号が入るとノイズフロアが上下して歪が生じる問題が起こらなかったり、DSD特有のノイズを除去するためのフィルタリングの改良、88.2kHzを超えるPCM音源の残留ノイズを取るためにHFフィルタを導入するなど、細かな技術も投入されている。フィルタに関しては、HFフィルタの使用、16FS WTAのみの使用、16FSと256FS WTAフィルタを使うといった具合に、フィルタの設定をユーザーが選べるようにもなっており、暖かくソフトな音から、鋭く鮮明な音と、好みに合わせて切り替えられる。

 こうした技術の結果、「ノイズはほぼ測定不可能なレベルを実現。歪も0.0001%(3V 300Ω)。ノイズフロアの変動もほぼなく、左右チャンネルの信号の混入もほぼ無し。測定できるジッタも皆無」(ロバート氏)という。また、USB接続した際のPCからのノイズ混入も、RFアイソレーションやRFフィルタで防いでいる。

音を聴いてみる

 PCと接続し、foobar2000でハイレゾのPCMやDSDファイルを再生。HugoとHugo 2を聴き比べた。

 まず先代のHugoから聴いてみよう。初めて聴いた時は、そのハイスピードかつ高分解能、そしてパワフルな駆動力が組み合わさった音質にぶったまげたが、改めて聴いてもその鮮烈さはまったく薄れていない。普段Mojoも聴いているが、その兄貴分といった感じで、音の基本的な傾向はMojoと似ているが、空間の広さ、低域の駆動力などはHugoの方が格上で、風格を感じる。

初代のHugo。音の素晴らしさは今聴いても鮮烈だ

 また、“音の傾向”と書いたが、HugoもMojoも、何か意図的に音作りをしている印象が無い。記録されている音をひたすらそのまま、情報量多く出しているという印象で、“うまくまとめよう”とか“高域をちょっと艷やかにして色気を出そう”とか、そういう狙いがほとんど感じられない。なんというか、鮮度バツグンの魚を、築地の寿司屋さんで握ってもらうのが“普通の音の良いオーディオ”だとすると、漁船で釣り上げた魚を船の上で刺し身にして、醤油もかけずに食うようなダイレクト感が凄い。

 それゆえ、情報量という意味では凄まじいのだが、戸惑う人もいると思われる。今までのオーディオの音とかなり雰囲気が違うからだ。凄い音だし、多くの人に聴いてショックを受けて欲しいのは間違いない。だが、何もかもむき出しで、何もかもにピントがあったような凄まじくシャープでハイスピードなサウンドは、全ての人の好みにマッチするかというと個人的にはそう思えない部分もあった。例えば仕事で疲れて帰宅した夜にゆったり聴きたいか? と問われると「疲れちゃうかも」と思ってしまう。完全に好みの話にはなるが、このサウンドに唯一無二の価値を見出す人もいる一方で、「凄まじいけれど、自分で気に入って買うかと聞かれたら“うーん”」という印象を受ける私のような人もいただろう。

 改めてそう感じる理由を考えてみると、高域のキツさにある。分解能が高いこともあり、女性ボーカルのサ行などが、耳に痛いほどシャープなのだ。駆動力があり、音場が広いので、とても気持ちが良く、ついついボリュームを上げ目にしがちだが、そうするとボーカルやシンバルが痛くて、ちょっと顔をしかめてしまう。また、低域は肉厚なのだが、中高域の音像の厚みがやや薄いので、悪くいうと高域が薄っぺらく聴こえてしまう。

 Hugoのレビューをした後、DAVEのサウンドも聴いたのだが、これはそうした不満を一切感じさせない凄い音だった。150万円のハイエンドDACなので当然とも言えるが、高域も含めて非常に自然で、キツさは無いけれど、ものすごく音が細かいという摩訶不思議な体験ができるDACだ。

 そんな事を思い出しながらHugo 2に変更。ヘッドフォンを装着して音を出すと、思わず「おおお!」と声が漏れる。Hugoで聴いた時に「高域がキツイなぁ」と感じていた「坂本真綾/Million Clouds」をあえて再生したのだが、Hugo 2では分解能が向上しているのに、高域がキツく感じないのだ。音の雰囲気は明らかに「DAVE」の世界に近づいている。

PCと接続して試聴開始

 恐ろしくシャープな描写なのは相変わらず、というよりさらに進化しいているのだが、細かな音、1つ1つの強調感がほぐれ、艶やかさを感じるようになった。ゆったりと聴く事もできる音だ。低域の深みが格段にレベルアップしており、その影響で中高域の音像に厚みが出て、Hugoで感じた高音の薄さが感じられなくなった事も大きいだろう。

 そして最も驚くのは音場の広さだ。Hugoでも広大さに圧倒されたが、Hugo 2ではそれに輪をかけてさらに広がる。ピアノやボーカルが空間に広がり、消えていく様子が圧倒的に奥までよく見える。密閉型ヘッドフォンが、まるで開放型のように聴こえる。この立体的な空間描写により、高域だけに意識が向かなくなった事も大きな違いかもしれない。

 「マイケル・ジャクソン/ビリー・ジーン」の冒頭で聴き比べるとよくわかる。ドラムやマイケルのボーカル、コーラスが、鋭いビートを刻み、緊張感のあるお馴染みのイントロ。Hugoではコーラスやボーカルのエッジが鋭く、そこに注意が向いてしまうが、Hugo 2では鋭く地面に切り込むようなドラムの低音、コーラスが周囲に広がって消えていく様子、そしてシャープながら質感もしっかり描写するボーカルの高域が一緒に耳に入り、非常に音楽的だ。トランジェントも良いので、思わず体が動いてしまう。

 ヘッドフォンアンプとしての駆動力も凄い。ハンパなアンプでは良い音が出ないフォステクスの「T40RP mk3n」(50Ω/感度91dB/mW)を繋いだが、余裕でドライブし、低域もシッカリ出る。ゼンハイザーのHD 700(150Ω/105dB)も楽勝だ。「HD 800」(300Ω/102dB)が相手となると、ボリューム値は最大近くにはなるが、それでもキチンとドライブできる。ポータブル運用もできるアンプとしては心強い限りだ。

 Hugo 2をしばらく聴いた後、Mojoに変更すると、音の傾向はとても良く似ている。むしろ高域の描写に関しては、HugoとMojoより、Hugo 2とMojoの方が似ている。改めてMojoはこの価格とサイズからは信じられないサウンドが出ており、よくできている製品だと感心する。

 「ではMojoで満足できる」というと、残念ながらそうではない。聴き比べると、音場のスケールの広さ、低域の沈み込みの深さ、そして全体の音の細かさにどうしても“格の違い”を見せつけられる。バッテリ駆動できるHugo 2だが、クオリティは明らかに“据置き機”の音だ。もっとも、Hugo 2をポータブルで持ち歩いて使うには、サイズ・重量的にそれなりの覚悟はいるだろう。だが、「どうしてもこの音を外で聴きたい」と思わせるサウンドでもある。

ポータブルプレーヤーとの光デジタル接続、スマートフォンやプレーヤーとのUSBデジタル接続も可能だ

 前述の通り、デジタルフィルタの切り替えによる音の違いも楽しめる。「Hugo(Ultimate Reference)はボールの色がホワイト、「Hugo HF+(High Frequency roll off)」はグリーン、「Mojo(‘Smooth’)」はオレンジ、「Mojo HF+(High Frequency roll off)」はレッドと変化するそうだが、ホワイトからレッドへと切り替えていくにつれ、高域のキツさが和らぎ、おだやかになる。かといって“眠い音”にならないので活用できる機能だ。

 例えばBA(バランスドアーマチュア)イヤフォンで高域のエッジがカリカリシャープな製品などでは、このフィルタ切り替えを活用すると、エッジの強調を抑えた音に追い込めるはずだ。

 このフィルタとは別に、「X-PHD」という機能の切り替えもできるのだが、聴いてみると音場の広がりや、音像の位置に変化が出る。ボタンを押していくと、ボーカルの音像が近くなっていくように感じられる。「ノーマルでは音が広がり過ぎ、もっと密度の濃い、狭いライブいハウス感を出したいんだ」という時には使えるかもしれないが、個人的にはあまり出番はなさそうだ。

フィルタ切り替え。赤くなっていくと音がウォームに変化

 マニアックな製品だが、カジュアルに使う事もできる。Bluetooth受信機能も備えているので、スマホなどからワイヤレスで伝送して聴くという事もできる。ただ、ヘッドフォンで聴く場合は、スマホとHugo 2が近くにあるわけなので、USBケーブルでデジタル接続した方がいいだろう。逆に、Hugo 2のRCA出力と、アクティブスピーカーなどを接続。スマホは手に持ってベッドに寝っ転がり、Bluetoothで飛ばして、BGM的にスピーカーから音を出す……なんて使い方がマッチしているかもしれない。Bluetoothでもここまでの音が出せるのかと感心するクオリティだ。

Bluetooth連携でカジュアルに使うこともできる

操作性は相変わらずの独自仕様

 一見、オーディオ機器に見えない、現代美術のオブジェのようなデザインは新モデルでも変わっていない。前モデルは、イルミネーションの色と意味を覚えていないと操作できない事に驚いたが、Hugo 2でも基本的には同じだ。ただ、側面に光るボールが何の機能なのかを説明する文字がプリントされたので、いくらかは使いやすくなっている。

 ただ、例えば入力(INPUT)切り替えをする際に、「白っぽい色がUSBで、青がBluetoothで」といった、色の意味は覚えなくてはならない。フィルタの切り替えなども同様だ。

ボールの意味が側面にプリントされたので、いくらかはわかりやすくなったが……

 ボリュームは天面のボールを回す事で増減する。色の意味は初代と同じで、音が小さい時は赤く、回していくと黄色などに変化していき、やがて白へと変わっていく。これも初代やMojoのユーザーであれば覚えていると思うが、初めて使う時はどんな音量になっているのかわからないだろう。

このように指で押すと色が変わり、入力が切り替わる

 特にHugo 2のアンプは強力なので、ボリュームが大きくなっている事に気づかず、意図しない爆音が出てしまう事もある。色の意味を覚えるまでは、ヘッドフォンやイヤフォンを耳に装着する前に音を出して、爆音でない事を確認してから装着した方が安心だろう。

ボリュームは上げていくと赤っぽい色から白っぽい色へと変化する

 SFチックでもあるデザインと、光るボールは、未来の装置を操作しているようで楽しいのだが、使い勝手が良いかと問われるとイマイチだ。特に持ち運びながら使う人もいる製品で、ブラインドで何のボタンを触っているのか、そのボタンがどんな色か目で確認しないと上手く操作ができないインターフェイスには疑問が残る。デザインと使い勝手の良さの両立を期待したいところだ。このあたりは、後述するアプリやリモコンなどでいくらか改善できるかもしれない。

今後はプレーヤーにも進化する!?

 ご存知のように、日本では高級ポータブル機器や、イヤフォン/ヘッドフォンまわりではバランス接続が1つのトレンドだ。高価かつ最新機種のHugo 2でも、そのあたりをサポートしないのかと疑問に思う人もいるだろう。

 だが、以前インタビューの際にDACなどのデジタル回路設計のコンサルタントを行なっているロバート・ワッツ氏に聴いてみたところ、前述のように、バランス駆動による利点となるクロストークの少なさや、空間表現の向上、駆動力のアップ、SNの向上といった利点は、Hugo 2の場合、バランスでなくても非常に高いクオリティを実現してしまっているので「特に必要と感じていない」というスタンスのようだ。そのため、「Hugo 2バランス接続エディション」のようなものがすぐ登場するような事は恐らくないだろう。実際に音を聴いてみても、その考え方に納得させられるサウンドである。

ロバート・ワッツ氏

 一方で、Hugo 2にはもっとユニークな展開が待ち受けていそうだ。弟分にあたる「Mojo」には、取り付ける事でMojoをネットワークプレーヤーや、SDカード内音楽のプレーヤー、Bluetoothレシーバのように使える「Poly」という製品が今後発売される予定なのだが、ChordのCEO、ジョン・フランクス氏によれば、それと同じような“Hugo 2プレーヤー化ユニット”が計画されているようだ。

「Mojo」(左)と「Poly」(右)をドッキングしたところ。両者は筐体素材も同じ

 その話を踏まえてHugo 2を眺めると、天面にボタンが集中し、USB端子がある側の側面に、謎の小さな穴が空いている。いかにも「この側面にドッキングする何か」が発売されそうな雰囲気だ。

USB端子の端に意味ありげな黒い穴が……

 そのユニットがいつ登場するか、どのようなサイズなのかはまだ不明だが、Hugo 2のサイズを考えると、ものすごく巨大なものにはならないだろう。USB DACとして、ヘッドフォンアンプアンプとして注目を集めるHugo 2だが、今後のユニット展開としては、ネットワークプレーヤーとしても注目される製品になるかもしれない。その場合は、アプリやリモコンから操作できるようになると思われるので、操作性の不満解消も期待できるはずだ。

付属するHugo 2のリモコン。写真はサンプルだ

 microSDやSDカードなどからの再生も可能になれば、Hugo 2とスマホ/ハイレゾプレーヤーを接続させる必要は無くなり、Hugo 2+プレーヤー化キットだけで、「超構成のポータブルハイレゾプレーヤー」として使えるようになるだろう。

 Hugo 2単体を見ると、20万円を超える価格は確かに高価だ。だが、据置きのDAC、ヘッドフォンアンプとして家の中で活躍し、頑張って外に持ち出せばハイレゾプレーヤー兼ヘッドフォンアンプとしてもハイエンドな性能を発揮できるようになれば、活躍の場はグッと広がる。ハイレゾプレーヤーも、高価な機種であれば数十万円する事を考えると、意外にコストパフォーマンスの高い製品に化ける可能性があるだろう。

山崎健太郎