レビュー

実は売れてる薄型AVアンプを、2chスピーカーで使い倒す。マランツ「NR1609」

 “映画を迫力のサウンドで楽しみたい”、“音楽配信やネットラジオ、ゲームの音もリッチに”と考える人は多い。でも、巨大なAVアンプは置く場所無いし、スピーカーを何個も並べると部屋が狭くなる……。でも2chアンプでは、映像との親和性が低い。小さく、薄く、HDMI入力もあり、2chでもマルチチャンネルでも使えて、なおかつ音も良い。そんな“イマドキ”なニーズにマッチする製品として紹介するのが、マランツの「NR1609」だ。

マランツのマルチコントロールセンター「NR1609」

 6月中旬から発売がスタートした「NR1609」。既存のジャンルに当てはめると“AVアンプ”になるのだろうが、専用シアタールームでマニアが使う今までの“AVアンプイメージ”とは大きく違う。“新時代アンプ”とも言うべき製品で、実際にマランツでは「リビングの生活を豊かにするマルチコントロールセンター」と説明している。

薄型だが“エントリーではない”

 「NR1609」の特徴を超ざっくり説明すると、“Dolby AtmosやDTS:Xにも対応した7.1ch AVアンプながら、105mmという薄型の製品”だ。ついでに奥行きも378mmと、430mmとか、460mmが珍しくないAVアンプの中では短めだ。

 では「単に安くて小さい、AVアンプのエントリーモデルか」と言うと、そうではない。「NR1609」の価格は9万円で、AVアンプとしてはミドルクラス。DACに、上位機にも使っている旭化成エレクトロニクス製32bit/8ch DAC「AK4458VN」を採用したり、フルディスクリート構成の7chアンプを搭載するなど、音質面で“ガチ”な製品なのだ。

 つまり「安いAVアンプでホームシアターをはじめよう」という製品ではなく、スリム&コンパクトにする事で導入しやすくしながら、いろんな製品と繋ぎやすいAVアンプの特徴は維持。映画だけでなく毎日使うアンプで、なおかつ音も良い……という立ち位置だ。

 現代のニーズにマッチしているので、「お、いいじゃん」と思う人は多いだろう。というのも、実はこの“NR1600”シリーズ、メチャメチャ売れている。登場当初は異質な存在だったが、モデルチェンジを重ねる毎に、コンセプトが消費者に広まり、2016年モデル「NR1607」と比べ、2017年の「NR1608」は出荷台数が1.8倍に伸張。大型モデルを含めたAVアンプ全体において、なんとこの「NR1608」が2018年3月度にシェアナンバーワンを獲得したそうだ(GfK調査)。

前モデル「NR1608」は、2018年3月度にシェアナンバーワンまで獲得したそうだ(GfK調査)

 巨大な製品がひしめくAVアンプ市場で、一見“亜流”に見える薄型AVアンプ。だが、この人気が続けば、もしかしたらこのスタイルが“次世代のアンプ”として主流になるかもしれない。

 そんなシリーズの最新機種が、今回紹介する「NR1609」だ。進化点だけでなく、そもそもの“薄型AVアンプの使い心地”も改めて体験する。また、「スピーカーを2個しか置きたくない」人も多いと思うので、“ぶっちゃけ2chスピーカーだけで満足できるのか”もチェックしよう。

やたら親切なセットアップアシスタント

 AVアンプが家に登場。さっそくセッティングを開始するが、普通の大型AVアンプの場合、箱から出すだけで苦労する。20kg近くあるため、気合を入れないと持ち上がらないし、変な姿勢で持とうとすると腰から嫌な音がしてセッティングどころではなくなる。NR1609は8.3kgと比較的軽量なので、さほど気合を入れなくても箱から出せる。

8.3kgと比較的軽量なので、さほど気合を入れなくても箱から出せる

 外形寸法は440×376×105mm(幅×奥行き×高さ)と、前述の通り薄いのでラックにも入れやすい。上部に放熱スリットがあるので、10cmほど上に空間をあける必要はあるが、それを含めても、ラックや棚に置きやすい。

 セッティングは説明書を読みながら……というは過去の話し。分厚い説明書は読む必要は無く、NR1609には手厚いセットアップアシスタント機能が搭載されている。

 まず、HDMI出力とテレビを接続。すると、イラストも交えた丁寧なナビゲーションが表示される。それに沿って進めていけば、設定が完了する仕組みだ。

セットアップアシスタントの指示に従うだけで設定できる
スピーカーケーブルの接続部分のナビ

 それにしても“丁寧っぷり”がすごい。例えば「スピーカーケーブルはここに接続しましょう」という部分では、アンプ背面のイラストも表示され、実際に背面を見ると、間違わないように端子部分が色分けされている。さらに、スピーカーケーブル先端の“剥き方”まで、アニメーションで説明している。まさに至れり尽くせり。生まれてはじめてアンプを買ったという人でも、これなら大丈夫だろう。

なんとケーブルの剥き方まで、アニメーションで説明してくれる
今回はフロント2chのみで使ってみた
背面のスピーカーターミナルも、わかりやすいように色分けされている

 接続さえ済めば、あと一息。音質面の設定は、専用マイクを使ったオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ」がやってくれる。前面にある端子にマイクを繋ぎ、スピーカーからの音を最大6ポイントで測定。スピーカーとリスナーの距離、レベル、サブウーファのクロスオーバー周波数を最適な状態に自動設定してくれる。

 測定時には、ユーザーがいつも視聴している耳のあたりにマイクを置く必要がある。三脚があれば設置しやすいが、家に三脚があるとは限らない。それを見越して、マイクスタンドまで付属する。紙製のものだが、3分程度で組み立てられ、マイクの固定には十分だ。腰の部分が沈み込んだリクライニングチェアなどでは自立しにくい時もあるので、クッションなどを敷くといいだろう。

「Audyssey MultEQ」でオートセットアップ。マイクを固定するための紙製スタンドも付属する

 ナビに沿って測定を開始すると、スピーカーから「ビュイ、ビュイ」という音が出て、ほどなく完了。ネットワークの設定もすれば、セッティングは終了だ。

測定中

 HDMIのARC機能もONにしておきたい。信号の流れとしては「Blu-rayプレーヤー(レコーダ)→NR1609→テレビ」だが、ARCを使うと、テレビの音声をNR1609がHDMI経由受け取り、スピーカーから再生できて便利なのだ。機器連動のHDMI CECもONにしておけば、テレビのリモコンで、テレビをONにすればAVアンプも起動し、音が出る。ボリューム操作もテレビのリモコンでOKだ。

 要するに“AVアンプが存在する事”を意識せずに使える。「AVアンプを操作できるお父さんが今日はいないので、誰も使い方がわからず、テレビ内蔵スピーカーで音を出している」なんて事にはならない。利用頻度が高ければ、コストパフォーマンスに対するイメージも変わってくるだろう。

2chスピーカーと組み合わせる魅力

 試聴用スピーカーとして、英Bowers & Wilkins(B&W)のトールボーイ「704 S2」(1台17万円)を用意。金銭的にも、スペース的にもハードルの高いマルチチャンネルではなくても、2chでコンテンツを十分楽しめるかどうかどうか試してみようというわけだ。

 なお、「704 S」は上位シリーズ「800 D3」で開発された「コンティニュアムコーン」を採用した、本当に色付けの少ないニュートラルなサウンドのスピーカーで、アンプの実力がよくわかるモデルだ。低価格&コンパクトなブックシェルフもいいのだが、別売のスタンドを買わないといけない場合も多いので、それならば最初からトールボーイを選ぶというのも1つの手だ。

B&Wのトールボーイ「704 S2」と組み合わせた

 「AVアンプ買って2chしか使わない人っているの?」と思われるかもしれないが、実は薄型のNR1600シリーズの場合、2chで使っている人はかなり多いそうだ。マランツによれば、同価格帯のAVアンプで、2chスピーカー使用率は8%程度なのに対して、NR1607では17%、NR1608では実に24%もの人が2chで使っているそうだ。ホームシアター用ではなく、「いろんな事に使える2chアンプ」、「いずれマルチチャンネル化もできる2chアンプ」として買っている人が多いのだろう。

前モデル、NR1608の2chスピーカーでの使用率は24%

 このアンプは、ワイヤレス・オーディオシステム「HEOS」に対応。ストリーミング音楽配信サービスやインターネットラジオ、LAN内のミュージックサーバー(NASなど)や、USBメモリに保存した音源を再生できる。スマホとBluetooth受信も可能だ。

 音楽ストリーミングサービスは、AWAやSpotify、SoundCloudなどに対応。インターネットラジオの検索にはTuneInが利用できる。iOS/Android向けのリモコンアプリ「Marantz 2016 AVR Remote」から操作。スマホやタブレットから、電源入力やサウンドモード切り替え、ボリューム操作も可能だ。

HEOS対応の機器が他にもある場合、それらと連携させてマルチルーム再生が可能だ
AWAやSpotifyなどの音楽配信サービスのサウンドも楽しめる

 まずはディスクプレーヤーと繋いでCD「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best of My Love」を再生。アコースティックベースの量感がズシンと沈むと同時に、低域の内部の音が細かく描写される。

 「山下達郎/アトムの子」冒頭のドラム乱打も、音像がゴチャッとくっつかず、キチンとバラける。輪郭はシャープで、スネアドラムのキレも抜群だ。ドライブ力が今ひとつなアンプで再生すると、うねるようなドラムラインのフォーカスが甘くなり、ボワボワモワモワした音になるのだが、NR1609はズバッと切り込むような鋭さと、重い低音が両立できている。

 これはユニットの駆動力、制動力が高い事を示している。ズバッと動いて音を出した後、音が無い時はスッと素早く止まり、余計にフラフラ動いたりしない。キッチリユニットを動かせるから、音楽のキレも良くなるというわけだ。

 「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」のBlu-rayも2chで再生してみる。お馴染みのオープニング後、宇宙空間でファースト・オーダー軍のドレッドノートと、レジスタンス軍の激しいバトルが展開する。

「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」も迫力満点

 ドレッドノートを撃墜すべく突撃する爆撃機。それを迎え撃つ戦闘機。無数の機体が入り乱れるシーンだが、NR1609は駆動力が高いので、音像がシャープで、右から左へと横切る移動感も明瞭で軌跡もなめらか。Dolby Atmosの良さがわかる。音像の背後には重厚なBGMが流れ、広大な音像が体を包み込む。左右だけでなく、奥行きの深さもキッチリ描写されているので、空間に立体感がある。

 スピーカーとそれほど距離も離れていないので、2chでも十分音に包み込まれる感触が味わえる。サブウーファ無しでも、腹に響くような低音はズシリと出るし、高域から中域まで非常にハイスピードでシャープなサウンドで統一されているので、聴いていて自然で気持ちが良い。分解能の高さは特筆すべきレベルで、本物の映画館でも、ここまで細かい音を聴き取るのは難しいだろう。

 もちろん、サブウーファやリアスピーカーを加えたサラウンドと比べると、地鳴りのような低音や、背中から聴こえるダイレクトなサウンドなどは無い。だからといって“ショボい音か?”と言われると、まったくそんな事はない。テレビ内蔵スピーカーやサウンドバーとは次元の違うサウンドは2chでも出ており、「この映画はどんな音だろう」と、どんどん次のディスクを再生してみたくなる。誰かを家に招いて自慢したくなる音だ。

テレビ番組ってこんな音だったのか

 テレビ番組の音も聴いてみた。テレビ内蔵スピーカーと切り替えながら比較したのだが、比較するのが馬鹿らしくなるほどまるで次元が違う。男性アナウンサーがニュースを読む声が、テレビのスピーカーでは平面的で高域寄りのスカスカした音で、テレビ筐体の反響音か“カンカン”したプラスチックっぽい付帯音も感じる。まるでカキワリの絵が喋っているようだ。

 NR1609に切り替えると、一気に“本物の人間”になる。お腹から低い声が出ているのがわかり、人間の体の“厚み”が音から感じとれる。ちょっとしたニュースも、重厚な音で聴くと大ニュースのように感じられて不思議だ。

 通販番組のダイエット器具紹介で「なんと2周間で2kgも体重が!!」というテロップが「シャラーン!!」という効果音と共に表示されたのだが、その「シャラーン!!」が目の覚めるような鋭いサウンドで思わず笑ってしまう。料理番組を見ていても、食器を置いた時の「カタン」という音が周囲にかすかに反響する音で、スタジオセットの広さなどがなんとなく想像できて面白い。

 ゲーム機とも接続。PlayStation 4と繋ぎ「モンスターハンターワールド」をプレイしてみたが、これもガラッと印象が変わる。「モンスターの足音や叫び声が迫力満点になって面白いかな?」と予想していたのだが、それ以前に、深い森の中をガサゴソ進む音や、溶岩が広がる地下空間の反響音など、環境音がグッとリアルになり、「その場にいる」ような感覚がアップ。モンスターと出会う前から怖くなる。

フロントのHDMI入力を使い、Nintendo Switchを接続

 インクを塗りあって戦う、Nintendo Switchのポップなバトルゲーム「スプラトゥーン2」もプレイしてみたが、これも分解能が高いサウンドだと発見の連続。イカに変身してインクの海を泳いで相手の裏をとるようなゲームなのだが、「ボチョン」とインクに潜る小さな音や、手にしたブキで異なる「パシュ!パシュ!」、「トトト!!」という発射音の違いが極めて明瞭。姿が見えなくても「あ、右の方で、あの武器を持った敵が隠れているな」とわかるようになる。余談だがゲーム機との接続は、フロントのHDMI入力が便利だ。

「スプラトゥーン2」をプレイ

 YouTubeで最近人気の“バーチャルユーチューバー”も見てみたが面白い。代表格のキズナアイは、とにかく可愛い声が魅力で、ゲームや様々な企画にチャレンジ。失敗すると「あああー!!」と絶叫するが、ヘッドフォンやパソコンのスピーカーで聴くと、高域がキツく感じていた。

 だが、NR1609では質感描写が細かく、低域も豊かなので、そこまでキツく感じない。自然に聴いていられる。さらに、高音の中のちょっとした感情表現や、YouTube側の圧縮ノイズによる高域の“荒れ”なども聞き取れるようになる。

 「首絞めハム太郎」とも揶揄される輝夜月(かぐやるな)の「ギャハハハ!!」ボイスも聞いてみたが、「ギャハハハ」の中にも、しっとり感が出て面白い。気軽に楽しめるコンテンツだが、音が良くなると、コンテンツの魅力自体もグッと増すのがよくわかる。

大画面&高音質で楽しむバーチャルユーチューバーは新鮮で面白い

 AmazonのFire TVや、GoogleのChromecastを繋いで配信映画・ドラマを楽しむ時にも、音が良くなるとグッと作品の魅力が高まる。「DAZN」でスポーツも見てみたが、観客の歓声の広がりなど、細かな音まで聞こえるようになると現場の熱気が伝わってくる。アンプ側でDTS Virtual:Xなど、バーチャルサラウンドモードを使ってより広がりのある音で楽しんでも面白い。

AmazonのFire TVなど、スティック型端末で映画やドラマの配信を楽しむのもアリだ

 ステップアップとして、リアスピーカーを追加した4ch環境でも聴いてみたが、包囲感や音像の移動感はよりダイナミックになる。例えば、Dolby Atmosで鳥の羽音がグルグルと自分のまわりを飛ぶシーンでは、音の軌跡が明瞭かつシャープだ。

 センタースピーカーの無い4chでも、音像の移動が途中でガクッとズレたり、スピーカー間で薄くなるような事もない。とりあえず2chで導入して、サラウンドをより楽しみたいという気持ちが高まったら、小型のブックシェルフあたりを背後に追加し、4ch化するのも楽しいだろう。

4ch環境でも視聴
リアにブックシェルフを追加

昨年モデルから音質が大幅進化

 満足度の高いNR1609だが、昨年モデル「NR1608」と何が変わったのかと、スペック表を見比べてみると、ぶっちゃけ違いは少ない。カラーにシルバーモデルが追加されたのと、フォノ入力(MM)が追加され、レコードプレーヤーと接続しやすくなった……くらいだ。

 では、型落ちで安くなりそうな「NR1608」でいいのか? というと、そうではない。実はAVアンプは、“派手な機能追加が無い新型”こそ要注目なのだ。

NR1609のシルバーモデル
NR1609のブラックモデル
フォノ入力(MM)が追加され、レコードプレーヤーと接続しやすくなった

 AVアンプにおける機能追加の花形と言えば、Dolby Atmosなどの“新フォーマットへの対応”だ。対応が遅れれば、最新ソフトのサラウンドがデコードできず、他社製品と比べて魅力が落ちる。だからAVアンプでは“最優先で対応しなければならない事項”と言える。

 だが、2018年は大きなフォーマットの追加が無かった。そこで、本来は機能強化に使っていたコストを、音質面にドカッと投入。音質が大幅に良くなっている。機能追加ではなく、地味と言えば地味な話だが、そもそも“高音質な事”はアンプにおいて最も重要な事だ。そこを進化させるチャンスを掴んだのがNR1609と言える。

 具体的には、電源部、プリアンプ回路、ボリューム回路、DAC回路、デジタル回路、全てがチューンナップ。特に、DAC、プリ、パワー、パワー用電源部では、主要パーツもグレードアップ。中身はほぼ別物と言っていい。

 例えば、電源の源となるブロックコンデンサは、従来は中国製だったが、新モデルでは日本メーカーのエルナー製、マランツカスタムのブロックコンデンサとなった。整流ダイオードも、従来モデルは10A品だったが、新モデルでは25Aになっている。

 DACチップは旭化成エレクトロニクスの32bit/8ch DAC「AK4458VN」で変更は無いが、NR1609ではDAC出力部の抵抗を高品位タイプに変更。従来はカーボン皮膜抵抗だったが、薄膜型の高精度金属皮膜抵抗が使われている。

内部パーツが大幅にグレードアップしている

 新旧モデルで音質を比較するため、B&Wの最上位スピーカー「800 D3」と接続。CDの音を「NR1608」と「NR1609」で聴き比べると、これがかなり違う。NR1608も、見事に800 D3をドライブできているが、NR1609は駆動力がさらに高まり、特に低域のトランジェントや分解能がアップしている。それゆえ、ドッシリとしたサウンドになり、音楽全体の安定感も増している。

 音場が広がる空間のリアリティ、空気感の再現もNR1609の方がリアルだ。この違いは、音が出た瞬間にわかるほど大きく、おそらく誰が聴いてもすぐにわかるだろう。

 DAC出力の抵抗を高品位タイプに変更した効果も大きいようで、全体的に音がクリアに、鮮度がアップしている。アンプの駆動力もアップしているので、目が覚めるようにクリアになった音の細かさや、繊細さが、鮮明に聴き取れる。もし、クリアになっただけで、駆動力が弱かったらこの音にはならないだろうし、その逆でもダメだろう。両者がレベルアップした相乗効果で、全体としての音のクオリティ向上を実感できた。

“新しいAVアンプの形”の完成形に近づいた

 新たに搭載されたパーツは、ピュアオーディオの2chアンプに使われているものも多い。「コストがかけられる!!」と意気込んで、開発陣が“ガチな”パーツを大量投入しているのがわかる。

 9万円という価格設定からもわかるが、「薄いアンプだから安いパーツを使って低価格で勝負しよう」ではなく、「薄型AVアンプでも手を抜かず、コストのギリギリまで使って音質を高めてやろう」という考え方で作られている。確かにNR1609は薄く、軽く、気軽に設置できるアンプではあるが、そもそもアンプ自体頻繁に買い換えるものでもないので、ここは最新モデルのNR1609を選んでおく方がオススメだ。

 “休日にだけ自室で楽しむホームシアター用”と考えると、AVアンプやスピーカーへの投資は高価に感じられるが、リビングに設置し、朝のニュース番組から、夜のゲームまで毎日活用でき、2chスピーカーでも十分楽しめるNR1609は、使用頻度が高くなる。コストパフォーマンスも、従来のAVアンプと頭を切り替えて考えた方がいいだろう。

 今までのAVアンプに無かった“気軽さ”を取り入れ、それに魅力を感じるユーザーが増加、シェアを拡大しているNR1600シリーズ。その最新モデルとして“アンプとしての音質の良さ”を高めた「NR1609」は、“新しいAVアンプの形”の完成形に近づいたモデルと言えるだろう。

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NR-1609/FBNR-1609/FN

(協力:ディーアンドエムホールディングス/マランツ)

山崎健太郎