レビュー

4K放送がキタ! 観た! 録った! ダビングした! そして半分、再生できた!!

平成最後の電波祭り“新4K/8K衛星放送”がやってきた。既報の通り、12月1日に都内では華やかな開局セレモニーが開催され、午前10時、BS/CS衛星を合わせ計17チャンネルもの高精細放送がスタートした。

17チャンネル全てを視聴するには、受信設備等の変更が必要になるが、NHK BS4Kと在京民放5局の4Kチャンネルであれば従来のBSアンテナで受信ができるため、比較的、導入のハードルは低い。

しかも民放5局の4Kチャンネルは無料。今後放送が予定されている番組の中には、配信・パッケージ化されていないものや、パッケージ化されていてもBD/DVD止まりのものも多数ある。おまけに4K放送開始に合わせて、パナソニックとシャープからはBDに4Kがそのままダビングできるレコーダーも発売されるなど、状況的には、AVファンの録画魂に火が付く舞台が整ったといえる。

というわけで、(たぶん)二度と再放送されることはないであろう開局記念番組を後世に残すべく、前述のレコーダーを筆者宅に設置し、番組の視聴、録画、ダビング、そして気になる“4K録画BDの再生互換”をチェックしてみた。

12月1日午前10時、ついに放送開始!!

パナソニックとシャープのレコーダーで4K番組を録る!

今回用意したレコーダーは、パナソニックのDIGA「DMR-SUZ2060」と、シャープのAQUOSブルーレイ「4B-C40AT3」(4TBモデル)。どちらも4K衛星放送チューナーを搭載し4K番組の録画、ダビングが行なえる。シャープは他にも「4B-C20AT3」をラインナップするが、C40AT3とC20AT3は内蔵HDDの容量が異なるだけだ。レコーダーで4K放送をBDに保存したい方は実質、今回使用するパナソニックか、シャープの機種を選ぶことになる。

4Kレコーダー・パナソニック「DMR-SUZ2060」とシャープ「4BーC40AT3」

4K衛星放送チューナーを搭載したレコーダーと言っても、ケーブルの接続や受信設定は、これまでの方法と変わらない。ケーブルをレコーダー背面のBS/CS差込口に接続して、衛星放送の受信設定を行なう。4KテレビにつなぐHDMIケーブルは、18Gbps伝送に対応したケーブルを選ぶこともお忘れなく。

筆者宅のBSアンテナは20年近く使っている年代物でケーブルも設置時のままだったが、アンテナへの電源供給を「入」にしただけで、すんなり4K放送が受信できた。

従来の受信設定時に行なっていた赤い「B-CASカード」の挿入は、4K放送受信には必要がない。機器内部の暗号解除用の「ACASチップ」が埋め込まれているからだ。

ACASはB-CASカードの機能も内包できるため、SUZ2060はACASチップに一本化されており、B-CASカードスロットは無い。一方、C40AT3はACASを内蔵しながらも、2K受信用のB-CASカードスロットを残している。ACAS/B-CASカードには、有料放送の契約情報も書き込まれるので、4Kチューナー搭載機で有料放送を契約する際は注意が必要だろう。

ケーブルをBS/CS差込口に接続し受信設定を行なう
古いBSアンテナだが受信レベルも問題なし
C40AT3は前面左側にB-CASカードスロットを備える。SUZ2060はACASチップに統合

今回録画したのは、下記の2番組だ。

・いよいよスタート! NHK BS4K・BS8K 開局スペシャル「第1部」(NHK BS4K) 10時00分~11時00分
・民放4社共同企画BS4K開始 初! 生特番~日本で最高に美しい映像お見せします 10時00分~10時30分

前者はNHKアナウンサー(青井実/久保田祐佳)とゲストらが、NHK BS4K/BS8Kの魅力と今後の放送番組を紹介した1時間の生放送番組。後者はBS民放4局が4K放送スタートの瞬間を2K・4K両チャンネルで同時放送したもの。4K放送開始のセレモニーを生中継するとともに、今後民放各局で放送が予定されている番組の紹介を滝川クリステル(番組MC)、広瀬アリス(ナレータ)が行なった。

番組の録画予約もいたってシンプルだ。リモコンの4K放送ボタンを押した後、番組表からリモコンで該当番組を選択し予約するだけ。録画モードはDR記録のみで、録画先は内蔵HDD、もしくは外付けのUSB HDDから選ぶ。パナソニックSUZ2060も、シャープC40AT3も、操作手順は変わらない。

パナソニックSUZ2060の番組表
シャープC40AT3の番組表。4K対応
パナソニックSUZ2060の録画予約画面
シャープC40AT3の録画予約画面

残念ながら両機種ともに4Kチューナーは1つなので、4K放送視聴中の4K裏番組録画や、4K放送の2番組録画はできない。観たい番組や残したい番組が同じ時間に重なってしまった場合は、再放送を期待してどちらか一方を諦めるか、チューナー/レコーダーを2台用意する必要がある。

またシングルチューナーならではの注意事項もある。番組を連続して録画する場合、1つ目の番組録画が完了しないうちに、レコーダーは2つ目の番組録画準備に入る。そのため、1つ目の番組後半15秒程度が切れてしまうことを考慮しておきたい。

4Kでお・も・て・な・し。4Kクリステルと4K深キョンに萌える

10時ちょうど、心の中で放送開始のボタンを押す。すると、カラーバーの4Kテレビに映像が! 待望の4K放送がスタートしたのだ! レコーダー前面パネルには録画中を知らせる赤い表示が灯り、録画も始まった。

NHKは、スタジオ撮影を織り交ぜながら4K/8K番組のプロモ映像を続々と放送。スーパーハイビジョンの名で長年8Kに取り組んできたNHKならではの、気迫あるコンテンツと財力を感じさせる高品質な映像の数々。渋めのプログラムが多いが、プロモ映像を見るだけでもクオリティはダントツに高いことが分かる。

民放4局がタッグを組んだ開局番組も、日本の四季を捉えた映像を随所に盛り込まれ、とくに4K放送で広がった色域が存分に楽しめる。この開局番組は2Kチャンネルとのサイマル放送も行なっており(2秒半のタイムラグがある)、2Kテレビと比べると4Kの色の違いに戸惑ってしまうほどだった。番組後半には、4K8K推進キャラクター・深田恭子が飛び入り参加。著作権の問題でスチルの掲載は出来ないが、番組最後に見せた滝川クリステルと深田恭子の両名が画面に向かって笑顔で手を振る“バイバイ映像”は、グッとくるものがあった。

BS4K初のTVコマーシャルはREGZA!
パナソニックSUZ2060は、4K放送のオートチャプターにも対応。シャープは、後日アップデートにて対応する

ちなみに「4Kチャンネルは4Kテレビでしか見られない」というのは間違いだ。レコーダーのHDMI出力設定を「1080」(2K)にダウンコンバートしてフルHDテレビに接続すれば、4Kチャンネルを見ることができる。

解像度だけでなく、色域/ダイナミックレンジも狭まるという制約付きだが、単純に4Kチャンネルでしか放送されないオリジナル番組が楽しめるメリットはある。またサイマル放送番組を視聴する場合でも、通常の民放BS2K放送(1,440×1,080i)よりも、ダウンコンバートした映像(1,920×1,080p)の方が画質が良く、“2K放送の高画質化”というマニアックな楽しみ方もアリだと思う。

2Kの民放BS放送は1,440×1,080のインターレース信号
4Kの民放BS放送を2Kにダウンコンバートすれば、1,920×1,080のプログレッシブ信号が得られる
BS2Kの1,440×1,080インターレース映像
BS4Kをダウンコンバートした1,920×1,080プログレッシブ映像。文字に注目。ジャギーが無く輪郭が滑らか

4Kレコーダーの編集機能とマルチタスク性能

録画された番組は「録画一覧」、「録画リスト」から確認ができる。両機種共に、4Kの番組には「4K」のロゴがサムネイルに付与される。パナソニックSUZ2060はスチル、シャープC40AT3の場合は音声付きの動画サムネイルでの表示になる。また番組内容が確認できる「4Kみどころポップアップ」にも対応する。

タイトル編集と分割機能に絞られるC40AT3に比べ、SUZ2060は番組結合や部分消去にも対応するなど、編集機能はパナソニック機が豊富だ。

パナソニックSUZ2060の録画一覧
シャープC40AT3の録画リスト
パナソニックSUZ2060は部分消去にも対応
シャープC40AT3の4Kみどころポップアップ

4K番組録画中の追いかけ再生、録画済みの4K番組再生、4K番組のBDダビングは両機種ともに問題なく実行できた。

4K番組録画中の制約で大きく違うのが、4K Ultra HD Blu-rayの再生可否。SUZ2060は4K番組録画中でも再生できるが、C40AT3は再生ができない。ただ、BDビデオであれば両機種ともに再生は出来るので、ヘビーなUHD BDユーザー以外は問題はなさそうだ。

パナソニックSUZ2060は4K番組録画中もUHD BDの再生できる
シャープC40AT3は4K番組録画中のUHD BD再生ができない

“4K録画BD”はシャープ→パナは「OK」。 パナ→シャープは「NG」

それでは、録画した4K番組を早速BDにダビングしてみよう。

4K番組は4Kのまま、BD1層に約1時間30分、2層に約3時間10分、3層に約6時間20分、4層に約8時間10分記録することができる。今回は、C40AT3で録画した“NHK開局特番”、SUZ2060で録画した“民放4局特番”をそれぞれでBD-R(1層)にダビングする。

ダビングの手順も従来通りで、4K番組だからという特別な操作は必要ない。空のディスクを挿入し、ダビングしたい番組を選択し、実行するだけ。なお4K番組もダビング10が引き続き運用されているため、ダビングを実行するごとにコピー可能回数が減ることになる。なお、SUZ2060はダビング時に2Kにダウンコンバート(AVC再圧縮)してダビングすることもできる。

番組が短いこともあり、ダビングは数分で完了する。ダビングし終えた“4K録画BD”を、自身で再生すると解像度や色域はもちろん、HDRやチャプター情報も無事にディスクに書き込まれていた。

パナソニックSUZ2060のダビング実行画面
シャープC40AT3のダビング中画面

双方で録画した4K録画BDの互換性はどうだろうか。両メーカーからは「他プレーヤーでの再生は不可」との回答を得ていたが、実際に互いのレコーダーでの再生を試みた。

最初に、SUZ2060でダビングした4K録画BDを、C40AT3に挿入したところディスクは認識したが、録画したはずの民放4局特番は「再生できないタイトル」と表示されてしまった。放送日時は確認できるがタイトルは「***」で読むこともできない。

ディスクをSUZ2060に戻し、メニューの「BD管理」からディスクのファイナライズを実行して、再度C40AT3で再生を試みたが結果は同じだった。

SUZ2060でダビングしたタイトルは読めない

一方、C40AT3でダビングした4K録画BDをSUZ2060に挿入すると、録画したNHK特番を問題なく再生できた。シャープのWebやカタログに記載されていた「当社以外の機器では再生できない場合がある」(=再生できる場合もある)という表現は間違っていなかったのだ!

C40AT3でダビングしたタイトルは読めた!
再生できた!!

次に、SUZ2060で再生できた4K録画BDに対して、SUZ2060で録画した2K放送番組と4K放送番組を追記。C40AT3で再生できるかを確認すると、SUZ2060で追記した4K放送番組だけが「再生できないタイトル」になってしまった……涙

レコーダーは「自己録再」が基本だとは思うのだが、絶滅危惧種のダビングユーザー、そして番組を後世に残すためにも、今後は互換性を持たせた記録方法に統一を願いたい。

やっぱりSUZ2060でダビングしたタイトルは読めない
C40AT3でダビングしたタイトルを、DMR-UBZ1に挿入したらNG……ガックシ

AVファンなら、新しい4K放送を早く楽しまなければもったいない

以上、4K放送開始の2日間を使い、パナソニックとシャープの4Kレコーダーを駆け足でチェックしてみた。両機種ともに従来レコーダーの機能を継承しながら、使い勝手はそのままに、4K衛星放送チューナーの搭載・4K録画、そしてBDダビングという魅力的な機能を搭載していた。取材前、4K録画中の機能制限がもっとあると予想していたが、ハードな使用をしなければ、従来レコーダーとそん色がないことも確認できた。

4Kチューナー数の少なさ、録画BDの互換性、8Kレコーダーも早く! という課題は残されているにせよ、新しい放送の開始と同時に、こうして貴重な番組がダビング・保存できるのは、AVファンにとって喜び以外の何物でもない。筆者も取材中、番組表を開くたびにコレも観たい、アレも観たい、ああ残したい! という欲求が込み上げてきた。近くアンテナを交換し、CS4Kの受信環境も整え、各局の年末・年始特番に向けてレコーダーを導入すると決めた。

放送は一期一会。今この瞬間にも、4K/60p映像が空からやってきている。ただ観るもよし。録るもよし。そしてダビングするもよし。AVファンならば、新しい4K放送を早く楽しまなければ、もったいない!

阿部邦弘