レビュー

新4K放送開始! REGZAで超高画質番組に釘付け。アンテナチェックも忘れずに

放送開始の3日前に問題発生!?

12月1日、ついに新4K8K衛星放送がスタートした。放送を楽しみにしていた人は朝からドキドキワクワクだったに違いない。筆者もどうにか無事に新4K放送の視聴できたが、ドキドキは3日前から始まっていた。

このレポートのために、3日前に東芝の液晶テレビREGZA「55Z720X」(実売24万円前後)が我が家に届いた。特徴は以前レビューした通りだが、いち早くBS 4Kチューナ内蔵したテレビで、すでにある従来放送(2K)のBS/110度CSアンテナを使って、アンテナ等の設備には手を付けずにBS右旋のチャンネルだけを視聴する目論見だ。

新4K8K衛星放送を見るには、SHマークのついた4K8K対応アンテナが必要で、ブースターや分配器、場合によっては配線もSHマーク付きのものに交換する必要がある。ただしこれは、新4K8K衛星放送のすべてのチャンネルを視聴するためのもので、NHKとBS民放の6チャンネルは右旋円偏波で送信されており、従来の衛星放送が見られる環境ならば、対応したテレビや単体チューナーがあれば視聴ができる。新4K8K放送を手軽に視聴するには、これが一番手っ取り早い方法だ。

東芝の液晶テレビREGZA「55Z720X」

我が家では、従来のBS/110度CS放送はきちんと受信できており、基本的には55Z720Xにアンテナを接続すれば新4K衛星放送の一部のチャンネルが視聴できるはずだ。

しかし、さっそくアンテナを接続してみたところ、何故か新4K衛星放送の試験電波が受信できない。もちろん、地デジも従来のBS/110度CS放送も受信はできている。ソフトウェアのアップデートや、設定の確認など、いろいろ試してみたがやはり新4K衛星放送の試験電波だけが受信できない。

結局のところ、受信用アンテナから受信した電波が弱く、アンテナの角度の再調整が必要だとわかった。ちなみに、55Z720Xのアンテナ設定で電波を確認してみると、信号強度は50ほどで推奨の範囲内だったのだが、信号品質が推奨50以上のところ38くらいしかなく、これが原因で受信がうまく行かないようだ。

55Z720XのBS/CS 4Kアンテナ設定の画面。これはアンテナを再調整して無事に受信ができている状態。信号強度、信号品質ともに推奨値を超えていることが必要になる
55Z720Xの4Kアンテナ接続方法のガイド。アンテナとの接続図をわかりやすく紹介している

繰り返すが、信号品質が推奨値を下回っていた状態でも、従来のBS/110度CS放送は問題なく受信できていた。新4K衛星放送はより受信状態がシビアであることがわかった。ちなみに信号品質とは、「C/N値」のことで搬送波とノイズの比率のこと。電波強度はブースターなどで増幅して高めることができるが、C/N値はきちんとアンテナの角度を調整しないと十分な値を得られなかった。

こうしたトラブルは、電器店にアンテナ交換を含めて依頼していれば発生しないはず。こうしたアンテナ工事ではきちんと受信した電波を測定して、適正な値が得られるように調整しているからだ。

我が家も5年前の新築時に専門の業者にアンテナ設置をしてもらったので、そのあたりはまったく想定してなかった。心当たりがあるとすれば、夏の台風だ。西日本での大きな被害に比べれば関東圏は強風や大雨があった程度だが、しかし、アンテナの向きが微妙にずれてしまっていたようだ。我が家のように、すでにあるBSアンテナでまずはNHKとBS民放のチャンネルだけ視聴しようと考えている人は同じようなトラブルが生じる可能性もある。

問題は、アンテナの再調整だ。55Z720Xが届いたのが3日前、その日は新規に購入したSHマーク付きのブースターや分波器に交換してみたが、それでも受信はできない。仕方なく、翌日の2日前にアンテナの再調整をすることにした。

木造2階建てとはいえ、屋根の上に登るのはかなり危険だ。実は3日前にも脚立を使って屋根に登ろうと試みたが、恐怖感に負けて断念した。筆者は高所恐怖症ではないが、柵や支柱のない斜めに傾いた屋根の上に登るのは普通に怖かった。年齢的な身体の衰えもあるだろうが、基本的に危険なので、屋根の上のアンテナの再調整をするときは厳重に安全を重視して行なってほしい。

筆者の場合は、業者に依頼する時間もないので、自力で屋根に登ってアンテナの再調整 を試みた。アンテナの再調整は、アンテナの角度を動かす人と、テレビ側でアンテナの受信状態を確認する人の最低2人が必要で、そうでない場合は、いちいちアンテナを動かして屋根から降りてテレビ画面を確認するという作業を繰り返すことになる。

筆者はひとりで行ったが、屋根への登り降りが最大の難関だったので、それを避けるためにAmazon.co.jpで「衛星アンテナレベルチェッカー」を購入(1,480円ほど)。翌日に発送してくれるAmazonのありがたさを改めて実感した。これはアンテナと信号線の間に接続することで電波の強さを表示してくれるもの。このレベルチェッカーを頼りにアンテナの角度を再調整した。

アンテナの角度のずれはほんのわずかで、調整自体は問題なく行えたが、とにかく怖かった。斜めの屋根では立ち上がるのも困難で移動は四つん這い、ブースターの交換や配線作業も緊張感たっぷり。足元に置いたドライバーが転がり落ちるというトラブルもあったし、電波強度が強すぎたので再調整をしたので、結果的には5回ほど屋根の登り降りをさせられた。何度もやると多少は慣れてきたが、恐さは変わらず。屋根の傾きが思った以上に急で、屋根の上から下の様子を見ることさえ難しい。作業のためのスペースもないし、アンテナの側で立って角度を調整するだけでも不安だった。

近い将来には、アンテナをSHマークの付いた4K8K対応のものに交換する予定だが、自分のほかにアンテナと工具を屋根の上まで運んで作業するのはちょっと無理そう。アンテナ交換は専門の業者に頼もうと考えている。

ともあれ、アンテナの再調整も無事に完了し、NHK BS4Kの試験電波を受信できたことを確認して一安心。このほかにBS朝日、BSフジなども試験電波を送信していたので、こちらの受信ができていることも確認して、作業の方はなんとか完了した。

55Z720Xでの4K受信環境確認の結果。BS 4K(右旋円)の放送だけ受信できている。すべての放送の受信のためには、SHマーク付きのアンテナへの交換が必要

NHK BS4KとBS民放のチャンネルだけなら、視聴は比較的容易のはずだが、想定外のトラブルで放送開始直前までハラハラドキドキの連続だった。新4K衛星放送のハードルの高さをアピールしてしまったかもしれないが、BSアンテナの再調整の必要は十分にありえるので、これから新4K衛星放送の受信の準備を整えようという人は、業者への依頼なども検討しておいた方がいいだろう。

NHK BS4Kの試験電波。実際には斜めにスクロールしており、動きによる映像の乱れなども確認できた
BSフジの試験電波。こちらは真ん中のカラーチャートだけが横にスクロールしていた
BS朝日の試験電波。こちらもカラーバーはスクロール表示。このほか、当日朝には、BS-TBS、BSテレ東も試験電波を送信していた

テレビ放送の録画予約を開始。シングルチューナーではまったく足りない!!

さて、いよいよ番組の録画予約だ。12月1日は他誌での取材もあったため、当日の番組はすべて録画予約した。当然すべての番組を録画予約などできない。55Z720Xの新4K衛星放送チューナーは1基のみで、同じ時間帯の番組を複数録画できないからだ。55Z720Xに限らず、現時点でダブル録画のできるチューナー内蔵テレビ、対応単体チューナー、対応BDレコーダーは存在しない。どうしてもダブル録画をしたいならば複数のチューナーを購入するしかないが、実用上あまりにも不便だ。

筆者の家で受信できる放送は、NHK BS4Kと民放4社の計5チャンネルだけ。実際には、BS右旋とCS左旋でさらに多くのチャンネルで放送が行なわれる。チャンネル数の増大はかなりのもので、これをシングルチューナーでさばききるのは不可能。せめてダブル録画のできる製品が1日も早く登場することを期待したい。

新4K8K衛星放送の12月1日の番組表。NHK BS8Kの番組表や視聴できないチャンネルまで番組情報が表示されていた

実に久しぶりに番組表とにらめっこして、録っておきたい番組の吟味をすることになったが、NHK BS4Kでは特に「4K」という表示はなく、「HDR」やサラウンド音声の「22.2」と「5.1」の表示がある。BS民放各社の場合は、「4K」マークがある。これは4K制作番組を示しているものと思われる。「4K」マークのない番組は4Kアップコンバートの放送番組だろう。

12月1日と2日はBS民放もほとんどが「4K」マークのある番組ばかりだったが、12月3日以降の平日はプライムタイム以外は「4K」マークが入っている番組はほとんどない。基本的に従来のBS放送と同じ編成のサイマルキャストになっているようだ。このため、3チューナー以上の多チューナーや6番組全録ができるレコーダーは今すぐ必要にはならないだろうが、それも時間の問題という気がする。

年末年始には再び各局で4K制作の特番が集中すると思われるので、筆者としてはそれまでに単体チューナー+レコーダーのダブル録画体制を整えることを検討中だ。

55Z720Xでの録画予約は、外付けUSB HDDを追加して行なうもので、これ自体は地デジなどの録画とまったく同じ。55Z720Xは地デジ6チャンネルを全録する「タイムシフトマシン」録画も使えるが、ここでは「通常録画」を行なうので、UHB HDDも通常録画用の端子に接続する。HDDの登録などは従来とまったく同じだし、登録したHDDは4K放送だけでなく、地デジや従来のBS/110度CS放送の録画でも使える。

USB HDDを接続すると表示される登録画面。最初にHDDを初期化するので、記録済みの番組が残っている場合は、バックアップしておこう
USB HDDの登録画面。初期化も行う場合は少々時間がかかる
通常録画用USB HDD設定のメニュー。こちらからUSB HDDの登録や解除、追加などが行える
録画予約の画面。4K放送の番組ではあるが、基本的には地デジなどの録画予約とほぼ同様。フォルダ設定やオートチャプター設定なども行なえる

いよいよ放送開始!! 4Kのテレビ放送をぞんぶんに見てみた

そしてついに12月1日。午前10時から放送が開始される。放送開始前からテレビの電源を入れ、放送開始の瞬間に立ち会った。NHK BS4Kはそれまでカラーバーだけの試験電波だったが、開始直前にはテロップ表示が加わっており、期待感を高めてくれる。そのほかのBS民放チャンネルも試験電波を送信していた。

放送開始直前のNHK BS4Kの試験電波。放送開始を知らせるテロップが加わっている

そして放送開始。「Hello, New Wold」の文字とともに、さまざまな高精細映像が流れていく。4KコンテンツはUHD BDや動画配信サービスで見ているし、放送としてもスカパー! の4K放送を見ているので、これが初めてというわけではないが、それでもやはりワクワクとさせられるものがある。しかも、世界の名所や絶景、色鮮やかなカーニバルなど、今まで見たことのない鮮明な映像にはやはり驚かされる。

NHK BS4Kの開局スペシャル番組の冒頭。画面表示を出してみると、3,840×2,160の60pで、色空間はBT.2020、HDRはHLG方式であることがわかる

NHK BS4Kの「いよいよスタート! BS4K・BS8K 開局スペシャル 第1部」は、スタジオからの生中継を交えながら、4Kや8Kの高画質の解説とともに、BS4KとBS8Kの注目番組を次々と紹介した。地上波、BS4K、BS8Kでの同時放送だったので、地上波で見ていた人も少なくないだろう。画質的には地デジ画質になってしまうが、来年放送の大河ドラマ「いだてん」のメイキングなどを見ると、4K画質で見てみたいと感じた人は多いはず。筆者はBS8Kの「2001年宇宙の旅」や「宝塚スペシャルシート」などの映像を見て、そして夏に熱狂したワールドカップ・ロシア大会のハイライトをBS8Kで放送することがわかると、ゆくゆくは8K放送も視聴できるようにしなければと強く感じた。

印象的だったのは、南極のハーフムーン島からの4K生中継の映像で、夜にも関わらず昼間のように明るい南極の景色に驚いた。精細感の高さと白夜の日差しの感じがよく表現されていて、実に印象的。凍り付いた大地の寒々とした感じまで伝わってくるようだ。このほか、NASA提供の宇宙から見た地球の様子も海の青さや陸地の鮮明な描写が感動的。SF映画では見慣れた映像だが、CGとリアル画像の説得力の違いは明らか。

12月1日と2日に録り貯めた番組のリスト。土日はずっとテレビの前で4K放送をたっぷりと見ていた
BS4Kでは、世界初となる南極からの4K生中継を実施

12月1日は当然ながら注目番組が目白押しで、ずっとテレビの前に釘付けだった。印象的だった番組をいくつか紹介していこう。BS 4Kでは「4Kでよみがえるあの番組 新日本紀行」をオンエア。フィルム制作時代のドキュメント番組を4K化して放送したもの。16mmフィルムの補修と洗浄、4Kスキャンと色調整といった工程を経て、鮮やかに蘇った番組は、決して高解像度ではないが、新鮮な色とフィルムらしい柔らかな質感と思った以上の情報量の豊かさに感心した。古い大作の4K化は映画も期待したいが、こうしたドキュメンタリー番組も実に楽しみだ。

BS-TBS 4Kでは「郷愁の街角ラーメン」というグルメ番組を4Kで放送。荻窪の名店を紹介していく内容で、時代を重ねた老舗の雰囲気がたっぷりの厨房の様子、ラーメンを美味しそうにすするお客さんの表情が鮮やかだ。なによりもラーメンが美味しそう。このあと、昼食でラーメンを食べたのは言うまでもない。

今度はNHK BS4Kの「初音ミク×鼓童スペシャルライブ2018」。ステレオ音声収録が残念だが、特大のディスプレイを多数配置したステージで初音ミクが歌い踊る様子はなかなかの臨場感。世界的にも注目される太鼓芸能集団「鼓童」の演奏も、大きさの異なるいくつもの太鼓を打ち鳴らず様子や、緊張感あふれる表情まで鮮明に見ることができた。ステレオ音声とはいえ、大太鼓の太く重い鳴り方や小太鼓のキレ味のよい連打もクリアーに再現され、見応えも聴き応えも満点だった。

ライブステージそのままの臨場感というと大げさだが、ステージ全体を見渡すようなアングルでも太鼓を打ち鳴らす鼓童のメンバーや、ギターやドラムス、キーボードなどのメンバーの姿もはっきりと見えるので、ステージから見ている観客の気分はよく伝わる。観客たちが歌に合わせてレスポンスをする様子までよく見えていた。

そして、BS民放での注目は、4社がリレー形式で東京からパリまでの鉄道の旅を放送していく「BS民放4社共同企画 大いなる鉄路 16000km走破 東京発ーパリ行き」。BSフジで放送された東京駅から出発では、人気のなくなった夜の東京駅の様子がリアル。プラットフォームの薄暗い感じも生々しく再現されていた。寝台列車で山口県を目指し、フェリーでロシアへ向かった。

続くBS朝日4Kではウラジオストックからポーランドを目指すシベリア鉄道の様子を紹介。一気に景観がヨーロッパ的になり、街の様子や路面の石畳の質感なども実に鮮明。その場にいる感じがよく伝わる紀行ドキュメントで、2番組で4時間ほどになる長さなのに一気に見てしまった。

CMも4K制作して欲しい!

BS民放でユニークだったのは、CMが入ること。REGZAのCMもばっちりオンエアされていた。なお、REGZAのCMは4K制作だと思われる(※編集部注:REGZAのCMは4K撮影だが、CGを含めた編集は2K。しかし、BS4Kでのオンエアに合わせ、テロップ、商品カットはリアル4Kに差し替え。有村架純さんのシーンは、東芝映像ソリューションの研究所で1週間かけて熟成超解像で4Kに復元したものだという)。

ちょっと気になったのは、そのほかのCMのほとんどは2K制作をアップコンバート表示したもので、本編の精細感と比べると明らかに落差があり、CMの画質が良くないことがわかってしまったこと。CM制作もなかなかコストがかかるので難しいだろうが、4K制作を進めないとせっかくのCMの印象が良くないと感じてしまう。

このほか、4K制作のショッピング番組や深夜ドラマなども見てみたが、まだまだ番組を作り慣れていないと感じることもあった。2K制作のライティングでカメラだけ4Kで録ったと感じるもので、せっかくの高精細や色の豊かさが活かしきれなかったり、シーンによって画面の明るさの変化が大きく違和感を感じることもあった。特にドラマでは、2K放送との互換性も考える必要があるので難しい面もあると思うが、撮影や演出手法なども進化していく必要があるだろう。

その点では、4K化や8K化を積極的に推し進めているNHKのドラマは完成度が高い。時代劇などを見ても、HDRをうまく活かして室内の薄暗さをしっかりと出しつつ、窓の外の明るい景色も白飛びさせずに映し出す。そのための室内から外へのシーンのつながりがよく、ストーリーに入りやすいと感じた。また、最初に触れた4K制作の大河ドラマ「いだてん」(BS4Kでは1月6日朝9時放送開始)では、宮崎美子はかつらを使わずに地毛で日本髪を結ったそう。4Kではかつらだとわかってしまうためだそうだ。こうした細かなリアリティー追求もさすがのものだ。

「大河ドラマ いだてん」

映像的に凄みを感じたのは、NHK BS4Kのドキュメント。ドローンを使って北アルプスを縦走する「北アルプスドローン大縦走」では、人の立ち入れない深い峡谷の様子をドローンで撮影。肉眼で見ることが難しい絶景を、ドローンや4Kカメラを駆使してまるでその場にいるかのような感覚で楽しめるのは、まさにテレビジョンだと感激。

同じNHK BS4Kでの「デナリ大滑降 完全版」は、北米最高峰のデナリの雪山を滑降するドキュメント。アイスバーンと化してキラキラと輝く雪面や表面に積もった雪が崩れる表層雪崩などもリアルだし、そんな大自然の中をスキーで滑り降りていく様子は迫力満点。白く輝く雪山、青い色の氷の感じもHDRで鮮やかそのもの。雪山のような真っ白の世界はHDRの良さがよく実感できた。

最後はBS4Kの「久石譲 in パリ」。「風の谷のナウシカ」以来の宮崎駿監督のアニメ作品の音楽を担当した久石譲が宮崎作品の音楽をパリで演奏したもの。久石譲は指揮とピアノ、演奏はラムルー管弦楽団、合唱はラムルー合唱団に少年・少女たちのラ・メトリーズ・デ・オー・ドゥ・セーヌと編成も実に豪華。ソプラノ歌手が日本語で各主題歌を歌うほか、「天空の城 ラピュタ」ではマーチングバンドが登場して客席通路を埋めてステージの楽団とともに演奏するなど、フランスでの宮崎作品の愛され方の凄さにも驚かされた。

5.1chのサラウンド音声はステージの広々とした響きを豊かに描きながら、各楽器の音も豊かにとらえており、臨場感のある演奏を楽しめた。指揮をする久石譲や演奏者たち、合唱する少年少女たちの表情も鮮明で、白い肌の微妙な色や質感の違いまではっきりと描写。特に金髪から黒髪まで色も多彩な髪の柔らかい感じまで丁寧に描いていたことにも関心した。

4Kの高解像度、豊かな色、HDRの高輝度といういくつもの特徴を持つ4Kコンテンツの優れた表現力にも関心するが、紀行物からグルメ、美術品や工芸品、そして音楽のライブやスポーツとさまざまなジャンルの映像がより美しい映像で楽しめるようになったことが、新4K衛星放送の最大の魅力だと思う。

こうした4K放送をずっと見ていると、地デジ放送がかなり粗っぽい映像に感じてしまう。この印象の違いは「本物らしさ」だと思う。8Kになるとまさに「本物」に近づくし、テレビを見ているという客観的な視聴ではなく、自分がそこにいるような主観的な体験が得られるように思う。

筆者の家のように多少のトラブルはあるかもしれないが、基本的には従来のBS/110度CS放送を見られる環境で、4Kテレビがあるならば、新4K衛星放送は単体チューナーなどを追加するだけで比較的手軽に視聴することができる。新4K衛星放送を見たくなった人は、ぜひとも電器量販店のテレビ売り場などへ足を運んでほしいし、年末年始の特番シーズンを目標に、新4K放送視聴のための準備を進めてみてほしい。それだけの価値が、新4K8K放送にはあるのだから。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。