レビュー

ネットワーク再生もできる“いちばんちょうどいいアンプ”マランツ「PM7000N」

マランツの「PM7000N」

家で過ごす時間も多くなり、本格的にオーディオを始めてみよう、機材を新しくしようと考えている人も多いだろう。幸い、技術の進歩により、現在のピュアオーディオは非常に“とっつきやすく”なっている。最大の理由は“ネットワーク再生機能を内蔵したアンプ”の登場。今まではスピーカー、アンプ、そしてディスクプレーヤーも買わなければならなかったが、ネットワーク再生できるアンプとスピーカーがあれば、膨大かつ高音質なストリーミング楽曲が良い音で楽しめるシステムを完成できるわけだ。

ただ、ネットワーク再生できるアンプであれば、なんでもいいわけではない。もちろん、何十万円もする高級モデルは高音質だろうが、そもそも手が出にくい。かといってあまりにもショボいアンプだと、例えばスピーカーをより大型のものに買い替えた時に、アンプ側がまともにドライブできず、結局アンプまで買い換えるはめに……なんて可能性もある。

安すぎず、高すぎず……それでいて、ピュアオーディオとして本格的なサウンドで、スピーカーのドライブ能力もバツグン。そんなネットワーク対応アンプこそが、今“いちばんちょうどいいHi-Fiアンプ”と言える。そんなモデルはないものかと見回してみると、ビビっと来るのがあった。マランツの「PM7000N」(132,000円)だ。発売から1年半以上が経過しているが、それゆえお値段もこなれて、9月上旬時点では約10万円ちょっとになっている。

「PM7000N」

PM7000Nに“ビビっと来た”理由は、大きく3つある。1つは、「ネットワーク再生やBluetooth/USBメモリー再生などの多機能さ」、2つ目は「Hi-Fiアンプとして高いドライブ能力を備えている事」。3つ目が「音質、機能、使い勝手、価格のバランス」だ。

1つ目の“多機能さ”だが、このアンプには、マランツ/デノン製品でお馴染みのネットワークオーディオ機能「HEOS」が組み込まれている。LAN内のNASなどに保存した音楽ファイルを再生したり、インターネットラジオの再生、さらにUSBメモリーに保存した音楽ファイルも再生可能。スマホ/タブレットのアプリから、簡単な操作で制御できるのも特徴だ。

DSDは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまでサポート。Bluetooth受信も可能なので、スマホで鳴らしている音楽を、手軽にPM7000N+スピーカーから再生させる事もできる。

注目は、Amazon MusicやAWA、Spotify、SoundCloudなどの音楽ストリーミングサービスにも対応している事。Amazon Music HDにも対応しているため、最高192kHz/24bitのハイレゾ楽曲も高音質で楽しめる。サービスに加入さえすれば、膨大なオンライン上のライブラリーを、アンプ+スピーカーだけでいくらでも再生できるというのは、ピュアオーディオにおける革命的な出来事であり、利用しない手はない。

スマホアプリから制御して、Amazon Music HDをPM7000Nで再生しているところ

そしてPM7000Nは、単に“アンプにネットワーク再生機能をくっつけた”モデルではない。“ネットワーク再生が可能なアンプ”であれば、最近はAVアンプの多くにネットワーク再生機能がついている。しかし、PM7000NはあくまでHi-Fi用の2chアンプであり、同じ“ネットワーク再生対応アンプ”であっても、その作り方はAVアンプとはまったく異なるのだ。

アンプにネットワーク再生能力を“乗せただけ”ではない

理由はシンプルだ。Hi-FiアンプではSN感が高いため、デジタル系の基板を搭載した事によるノイズの影響が、音により出やすくなる。簡単に言えば“誤魔化しがきかない”わけだ。それゆえ、より徹底的な対策を施さなければならない。そうなると、それをするためのスペースや、当然ながらコストもかけなければならない。

PM7000Nでは、ネットワーク、USB、Bluetoothなどのデジタル信号を扱うオーディオ回路を、まるごとシールドケースに封入。ノイズが外に出ないように対策している。電源ラインに流入するノイズも、オーディオ用に開発された高音質のデカップリングコンデンサを使って除去する徹底ぶりだ。

「PM7000N」の内部
デジタルオーディオ回路がまるごとシールドケースに封入されている。奥のヒートシンクがついている部分が、ネットワーク再生回路だ

対策はノイズだけではない。マランツの音の“門番”、サウンドマスターの尾形好宣氏は、「実は、デジタル回路は想像以上に電気を食うんです」と語る。「デジタル回路が電気を食うので、従来の純粋なアナログアンプと比べると、消費電力が上がります。ですので、電源を強化しなければなりません。つまり、同じ出力のアンプであっても、ネットワーク再生機能をプラスすると、電源全体を強化する必要があるわけです」。

サウンドマスターの尾形好宣氏

単に“電源を強力にして終わり”でもない。「(ノイズなどの干渉を防ぐために)デジタル回路とアナログ回路とでは、電源の巻線を分けており、その後のレギュレーター部も分けています。また、PM7000Nにはスタンバイ状態でも、ネットワーク接続を維持し、アプリから電源をONにできるように、アナログ電源とは別に、スイッチングのSMPS(補助電源)も搭載しています。このスイッチング電源はあくまでスタンバイ時だけに使い、アンプの電源がONになったら、アナログ電源を使うという使い分けをしています」。

「AVアンプの場合は、電源がONになっても、アナログ電源とSMPSが両方動いている機種もあります。Hi-FiアンプであるPM7000Nは、アナログ電源だけを使うように、あえて切り替えているのです」。低ノイズのアナログ電源で駆動し、ネットワーク回路も前述のようにシールドケースに封入しノイズ対策をしているが、「その影響を完全に無くすことは難しい」という。そのためWi-FiやBluetoothを個別にオン/オフ設定できるほか、CD入力や、レコードを再生するフォノ入力など、ネットワーク機能を使わないときに、一番高音質で再生できるようあえてウリであるネットワーク/USB機能をオフにするモードも用意する。さらにはディスプレイまで消灯する機能をPM7000Nは搭載している。この”徹底ぶり”が、Hi-Fiアンプならではの作りと感じる。

アンプとしての素の実力を向上させる“瞬時電流供給能力”とは

デジタル回路との共存も重要だが、それ以前に重要なのがアナログアンプのクオリティだ。アンプの実力を示す数値としてよく見るのが「80W」「100W」などの最大出力。瞬間的であれば、定格出力以上に出せる出力を数値で表したものだ。

だが、PM7000Nはそれだけでなく、“瞬時電流供給能力”も重視している。この瞬時電流供給能力は、PM7000Nからこだわったものではなく、20年近く前からマランツが改良に取り組んできたものだという。尾形氏は「キッカケは、B&Wのスピーカーです」と明かす。

御存知の通り、マランツも傘下に入っているディーアンドエムホールディングスは、長年、英国の人気スピーカーメーカーBowers & Wilkins(B&W)の日本での販売を担当している。尾形氏が製品開発時に、音質検討で使うリファレンススピーカーも、B&Wの「800 D3」だ。

B&Wの最上位「800 Series Diamond」から、ハイエンドモデル「800 D3」

そんな付き合いが深いB&Wは、大型で低インピーダンスなスピーカーを手掛けてきた。そのいずれもが、「バッ! っと、瞬間的に電流を要求するスピーカーが多い」と尾形氏は語る。そういったタイプのスピーカーをうまく駆動するにはどうしたらいいのか? それを研究した結果、瞬時電流供給能力が大切だという知見が得られたという。

しかし、当時のオーディオ界に“アンプの瞬時電流供給能力が高いか低いか”といった考え方や、それを計測する物差しもなかった。「そこでマランツは、社内で“瞬時電流供給能力をこうやって評価しよう”という評価基準を決めました。それを用いて、モデルチェンジする際に、可能であれば、前のアンプに対して、新しいアンプの瞬時電流供給能力が高まるように改良。このくらい向上したと、社内で評価しながら、改善を続けてきました」と語る。

瞬時電流供給能力とは、要するに“瞬間的に、どのくらい電流を流せるか”という能力だ。尾形氏は電流を“水”に例えてこう説明する。「コンデンサーは、言わば“ダム”のようなものです。そこから水を引き出す時に、蛇口が小さいと、いくらダムが大きくても水は少ししか出ませんよね。そこで、蛇口を大きくしたり、水が流れる通り道を太く、短くしたり……そういった工夫が“瞬時電流供給能力を高める”という事です」。

「音楽はテスト信号ではありませんので、例えば静かな曲の中で、ドンッと突然大きな音が鳴るシーンもあります。その時に、電圧は出るのだけれど、電流が来ないという事がアナログアンプでは起きます。そういった場合、音は出ますが、その音に実体感や厚み、迫力が無い……なんてことになってしまうのです。ドンッという音を、本当に身体に感じるような音にすることが大切です。自動車で例えると、アクセルを踏んだ時に、単に動くのではなく“ちゃんとすぐにトルクが出せる”。それが瞬時電流供給能力の高いアンプのイメージですね」(尾形氏)。

瞬時電流供給能力が向上すると、音の立ち上がりがハイスピードになり、出てくる音にも迫力・実体感が伝わるものになるという。さらに尾形氏は、「立ち上がりだけでなく、スピーカーユニットが動いた後も大切」だという。つまり、音楽信号が無い部分では、ユニットをバシッと止める。駆動力の低いアンプでは、音が無くなってもユニットがフラフラと動いて余分な音を出してしまうが、駆動力が高ければバシッと止まるというわけだ。

アンプの音質において重要なボリュームにも工夫がある。上位機のPM8006と同グレードであり、新世代のボリュームを採用しているのだが、PM8006と異なり、“可変ゲイン型”にしているという。これは「一般的に使用される音量の範囲内では、プリでの増幅をせず、パワーアンプのみで増幅することで、ノイズレベルの大幅に改善する」というものだ。

尾形氏は採用の理由について、「多くのお客様が、小~中音量でしか増幅していないという背景があります。その範囲内であれば、可変ゲイン型の方がSN感が高くなります。実は、マランツは80年代、90年代に可変ゲインを導入した事があります。ただ、可変ゲインではボリュームの範囲によって、フィードバック量が変わりますので、端的に言えば、ボリュームが低い時と、高い時で音のニュアンスが変わるのです。“それはよろしくないのでは”と考えるようになり、導入をやめていました」。

「ただ、よほどの大音量で鳴らさない限り、音質に変化はありません。それよりも、ユーザーの皆さんがよく使う音量域でSN感を改善させたほうが良いと、“実をとった”カタチですね」。PM7000Nではこの工夫に、デジタル回路や電源トランスに対するノイズ対策も組み合わせ、製品トータルのSN比は、前モデルPM7005と比べ、11dBもの向上を達成している。

音質、機能、使い勝手のバランス

ネットワークやUSB再生、Bluetooth受信など、新しいソースに対応しつつ、PM7000NはMMカートリッジに対応するフォノイコライザーも内蔵する。アナログレコード再生に興味があるという人にも、使いやすいアンプだ。

搭載しているフォノイコもクオリティの高いもので、グレードとしてはPM8006と同様の、J-FET入力型を採用、SN比の向上や、低歪化しているほか、入力カップリングコンデンサーを無くすことで、信号の純度を高めている。

尾形氏は、近年のマランツ製品は「音質の追求」、「豊富な機能」、「使い勝手の良さ」という3つの要素のパッケージングにこだわっていると語る。そして、「これらの要素を満たしつつ、価格をできるだけ抑えることで、なるべく多くの方に聴いていただきたい、楽しんでいただける製品にしたいと考えています」と語る。

確かに、PM7000Nの定価は132,000円で、現在の実売は約10万円ちょっと。10万円のアナログアンプに、高品質なネットワークプレーヤー機能をドッキングしたら、単品コンポであれば、15万円とか、16万円になってもおかしくはない。というかそれが普通だ。だが、PM7000Nはその価格上昇をかなり抑えている。

尾形氏は、「オーディオに詳しい方は、例え15万円になったとしても“ネットワークが付いたからそのくらいの値段になるよね”と思ってくださるかもしれません。ただ、これからオーディオの世界に入ってみようという方などに、その理屈は通用しません。また、詳しい方からは、音質面で“ネットワークが付いているから、純粋なHi-Fiアンプにはかなわないよね”と思われるかもしれません。しかし、我々としては絶対にそう思われたくない、“そうは言わせない”くらいの強い思いで、気合を入れて作りました」。

「もちろん、価格を抑えるためにはコストを削らなければならない部分はあります。しかし、我々は、コストを削りながら、純粋なアナログアンプに負けない音質を維持するノウハウを、これまでのネットワーク付きのディスクプレーヤーやAVアンプの開発経験などから蓄積しています。例えば、部品単体で非常に高価で、おごったものを採用していたら、そのパーツをそこそこのものに変更すれば、コストは下げられます。ただし、パーツを変更しながらも、回路構成は変更せず、純粋なアナログアンプとほぼ変わらないようにする事で、それに匹敵する音質を実現できます」(尾形氏)。

音を聴いてみる

B&Wのブックシェルフ「705S2」

まず、価格やスペースを抑えた組み合わせとして、B&Wのブックシェルフ「705S2」(ペア369,600円)と組み合わせてみよう。このスピーカーは現在、約30万円ほどになっているので、PM7000Nと組み合わせれば40万台で収まるシステムだ。

ネットワークプレーヤー機能を使い、Amazon Music HDからハイレゾなどの試聴曲を再生。ディスクプレーヤーを買わなくても、様々な曲が聴けるのは実に便利だ。

音が出た瞬間にわかるのが、ブックシェルフらしい空間の広さ。横方向だけでなく、奥行きも深く、立体的なサウンドステージが目の前に出現する。「マイケル・ジャクソン/スリラー」の冒頭は、カミナリや狼の遠吠えが鳴り響くが、その音が広がっていく範囲が非常に広いので、まるで屋外に移動したような錯覚を覚える。

「スリラー」は、独特のビートが特徴の曲だが、PM7000Nでドライブするとそのビートのキレがバツグンだ。深く沈み込む迫力がありながら、超ハイスピードで切り込んでくるような鋭さがある。聴いていてあまりに気持ちが良いので、つい膝や上半身が動いてしまう。

低音に余分な付帯音が無く、まるで透明度の高い湖の底を、上から覗いているように、低音がどんな音で構成されているのかが手に取るようにわかる。先程の瞬時電流供給能力の高さが実感できるサウンドだ。

ハイスピードで鋭く、分解能があるだけではない。「手嶌葵/月のぬくもり」のような、女性ヴォーカルを聴くと、人の声の暖かさ、分厚い響きがグッと胸に迫る。音の輪郭が1つ1つしっかりとしていて、なおかつその音に重みというか、前へとせり出す生命力というか、実在感がある。そのパワーに感動させられる。これぞまさにアナログアンプの音であり、“旨味のある音”だ。

しっかりと音楽と対峙し、その情報量、熱気を身体で吸収するように聴く。まさにオーディオ的な快感だ。それが、PM7000N + 705S2の組み合わせでしっかり楽しめる事がわかった。

では、ブックシェルフではなく、そこからステップアップしてフロア型のスピーカーを買った場合、PM7000Nでキッチリドライブできるだろうか?

「800 D3」

そこで、B&Wの最上位「800 Series Diamond」から、ハイエンドモデル「800 D3」を用意。ピアノ・ブラック仕上げなら1台225万円、ペアで450万円(税別)という超弩級スピーカー。果たして、約10万円のPM7000Nが太刀打ちできるだろうか。

「イーグルス/ホテル・カリフォルニア」を再生すると、冒頭のベースが「ズズーン」と沈み、地鳴りのような低音が押し寄せてくる。音圧もタップリで、音のパンチを浴びるのがとにかく気持ちが良い。流石はフロアスピーカーという圧巻のサウンドだ。

駆動力の低いアンプで、大型スピーカーをドライブすると低域にキレがなく、モワモワしたサウンドになったりするが、PM7000Nではまったくそんな事はない。705S2の時と同様に、ハイスピードで切れ込むような鮮烈さも兼ね備えており、ホテル・カリフォルニアでも、分厚いベースの音圧の中で、弦が震える細かな描写、シンバルの微細な輪郭までハッキリと見える。大口径のウーファーやミッドレンジをキッチリアンプが制御できている証拠で、瞬時電流供給能力の高さは、駆動しにくいフロア型でより実感できる印象だ。

次に、ディスクプレーヤーと接続。CDからの出力を、アナログ入力に入れて聴いてみたが、ここで、ネットワークやUSBメモリー再生機能をOFFにするモードを試してみた。設定画面から同機能を選択すると、一度PM7000Nの電源が落ちて、ネットワーク再生機能などをOFFにした状態で再起動する。

ネットワークやUSBメモリー再生機能をOFFにすると
一度PM7000Nの電源が落ちて、ネットワーク再生機能などをOFFにした状態で再起動する

先程のサウンドと聴き比べてみると、音が広がるステージの空気感がよりリアルに、奥行きの深さもさらに深くなる。また、低域の分解能もさらにアップしており、馬力感も向上したように感じる。ネットワーク再生の音も極上だったが、アンプだけで動作させた音にもさらに魅力がある。ネットワーク再生だけで十分な気もしていたが、ディスクプレーヤーの音を聴くと、「過去のライブラリもあるし、いずれはCD/SACDプレーヤーも買おうかな」と感じる人も多いだろう。そうした新しい興味が生まれた時に、それもしっかり接続できるのがPM7000Nのような拡張性のあるアンプの利点だ。

もう1つ、興味がある人も多いだろうアナログレコードの再生も試してみた。先程とネットワーク再生と同様にマイケル・ジャクソンを聴いてみたが、これは非常に面白い。アナログらしい、滑らかさ、質感のリアルさを実感できるサウンドなのだが、それだけではなく、情報量の多さやハイスピードさ、音のキレの良さは、ハイレゾファイルのサウンドに負けじと、鮮烈さがある。

もちろん、厳密に分解能やノイズの少なさを聴き比べると、ハイレゾファイル再生の方が優れてはいるのだが、ホッとさせるナチュラルな音と、ハイスピードが同居したサウンドは、CDやハイレゾファイルには無い魅力だ。「アナログレコードは古い音」というイメージをもっている人が聴いたら、びっくりしてレコードへのイメージがガラッと変わるはずだ。

“いちばんちょうどいいアンプ”

ネットワーク再生やBluetooth受信が可能で、価格も手頃というリーズナブルさで注目したPM7000Nだが、音を聴いてみると、それらよりもまず「アンプとしての実力の高さが大事」だと実感する。尾形氏も、「まず、アンプとして良いモノをキッチリ作る事が大切です」と語る。

「ハイレゾが人気ですが、アンプの場合、それよりも“土台が大事”です。例えば96kHz/24bitの音楽を聴いても、音が薄っぺらくて、実体が無ければ、レンジがいくら広くても“良い音”とは言えません。アンプの作り方もそれと同じで、音質検討をする時はほとんどはCDクオリティの音楽で聴いています。アンプの基本として、CDプレーヤーからの音をアナログ入力に入れて、その音をまず確かめます。そこが良い音でなければ、他の入力やネットワークを聴いてもダメなんです。アンプとしての“素の音”、土台がキッチリできていないと、そこに様々な機能を積み重ねていくことはできません」。

「馬力を上げたり、瞬時電源能力を高めるといった進化は、アンプとしてのベーシックな能力を磨いてきた歴史とも言えます。PM7000Nは多機能なアンプですが、アンプ部分はこれまで連綿と磨いてきたマランツクオリティで、そこは信頼していただきたい。アンプにネットワークが入るのは、世界的に見てもオーディオの大きな流れだと思います。アンプとしても、クラスDのコンパクトなものだったり、様々なバリエーションの製品が増えていくと思います。その中で、“Hi-Fiのアナログアンプが良い”“ちゃんとしたアンプでスピーカーを鳴らしたい”という方に、PM7000Nが魅力的な選択肢になればと思っています」(尾形氏)。

時代が進んでも、アンプはオーディオの“核”だ。大型のフロアスピーカーもキッチリ鳴らすPM7000Nを見ていると、「足腰のしっかりした頼れるアンプを選び、それを中心にする事」の大切さを実感する。それが揺るぎないものだからこそ、Amazon Music HDなどの高音質配信のサウンドの良さを、しっかりと実感できる。PM7000Nは、アンプとネットワークプレーヤーの両方で高い実力を備えつつ、価格も抑えている。まさに、新しい時代の“いちばんちょうどいいアンプ”と言えそうだ。

(協力:マランツ)

山崎健太郎