レビュー

モバイルディスプレイ買ったら、ゲームに収録にと超便利だった

USB-Cケーブル一本で使えるモバイルディスプレイ――

ケーブル一本で、映像・音声はもちろん電源も送ることが可能な、携帯型の液晶ディスプレイだ。昨今、様々な製品が登場しているので、気になっている方もいるかと思う。実際に購入してみたのだが、これが思いのほか便利で実用性も高かった。

以前のモバイルディスプレイは、電源をACアダプターなどで給電し、映像はVGAやHDMI、 DisplayPortから受けていた。しかし、最近のモバイルディスプレイなら、電源も映像も、音声まで、USBケーブル1本で済むのが魅力だ。

製品によって異なるが、画面サイズは13.3インチから15.7インチ程度。映像はUSB-Cケーブルによる伝送の他に、HDMI入力も備えたものがほとんど。供給電力が足りないデバイスとの接続用に、ACアダプターを用意していたり、モバイルバッテリーが使用できる製品もある。スタンドやケースが付属し、外出先にも手軽に持ち運べる1kg未満の重量。

スタンダードな“パソコンとの接続”だけでなく、ゲーム機を繋ぐなど、エンタメ利用を押し出したモデルも珍しくない。テレビではお馴染みのHDCPやHDRに対応しているモデルも存在する。

筆者が購入したのは、アイ・オー・データ機器が2月中旬に発売した「LCD-CF162XAB-M」という製品。自宅にスタジオを作っているのだが、その中でナレーションを吹き込む演者向けのモニターとして購入した。当初はそれだけのつもりだったのだが、いろいろと繋げてみると、これがかなり遊べるのだ。

LCD-CF162XAB-Mはどんなモバイルディスプレイなのか

USB-C一本で使えるモバイルディスプレイは、海外メーカーが中心だったが、今では日本メーカーも次々に参入。今回取り上げるアイ・オー・データをはじめ、プリンストンやJAPANNEXTなどからも販売されている。秋葉原の路地裏にあるお店も巡ってみたが、聞いたことのないメーカーの製品も結構あって、既に「おいしい製品カテゴリー」として業界的にも認知されている模様。

そんな中で筆者が選んだLCD-CF162XAB-Mは、15.6型フルHD解像度の液晶ディスプレイ。パネル方式こそTFTだが、視野角は他社で主流のIPS液晶に匹敵する上下左右178度を実現。パネル表面は、非光沢。最大表示色は1,619万色(疑似フルカラー)で、最大輝度は300cd/m2、コントラスト比は1,000:1だ。コントラスト比は、700:1や800:1の他社製品が多いところ、このモデルは1000:1と若干優れている。

応答速度は25ms。画面の応答速度を向上させるオーバードライブ機能を使った場合の値は5ms(GTG/オーバードライブレベル2設定時)で、これも他社と比べてもトップレベルだった。3.5mmヘッドフォン出力と0.5W+0.5Wのステレオスピーカーも備える。最薄部は7mmで、質量は約700gと軽量。専用収納ケースが付属する。

PlayStation 5やPlayStation 4(Pro含む)、Nintendo Switchなど各種ゲーム機は、メーカー動作確認済み。ゲーム機以外の対応機器は、Windows、Mac、Chromebookだそうだ。

ゲーム機と繋いでみる

まずは、ゲーム機との接続を試してみた。普通はパソコンからだろうと突っ込まれそうで恐縮だが、こんなに薄型・軽量で使い勝手もいいモニター。まずはエンタメ用途で遊ばない訳にはいかない。筆者はPS5を愛用している。防音スタジオにシアターを構築し、そちらに常設しているので、部屋を移動することはないし、そこでしか遊ばないものと割り切っていた。

一方、家族と同居されている方の場合、リビングのテレビが使えない時に、書斎や寝室でゲームしたいというシチュエーションはあるだろう。そこで寝室に持ち込んでみた。PS5は洋服チェストの上に置き、モニターは移動式のチェストの上に設置。ベッドに座ってプレイした。

PS5は洋服チェストの上に置き、モニターは移動式のチェストの上に設置

視聴距離は70cm程度。モニターに繋がるケーブルは2本。残念ながら、PS5との接続はUSB-Cでは行なえない。USB-Cによる接続は、機器側がDisplayPort Alt Modeに対応したUSB-C端子を備えていなければダメなのだ。よって、付属のHDMIケーブル(HDMI to Mini HDMI/1.5m)を使った。HDMIで接続した場合は、ACアダプターが必須となる。付属のACアダプターは、プラグがUSB-C形式でDC5V/2A仕様。コンセントが無くても、これなら安定した出力ができるモバイルバッテリーで代用することが出来そうだ。

付属のACアダプターやHDMIケーブルなど

映像設定は、「ゲーム」ではなく、「標準」をベースに使い始めてみる。まず、輝度を部屋の明るさに応じて眩しくない程度に調整した。コントラストは、最大まで上げてもプロジェクターのような自然な白黒表現は出来ないが、こればかりは仕方ない。初期設定の50から、環境によっては少し上げた方がいいかもしれない。

内蔵ステレオスピーカー音量は、実用上過不足なし。ヘッドフォンも接続できるのは嬉しい。ゲーマーの諸兄にとって気になるリフレッシュレートは60Hzに対応するから、多くのゲームは問題なく遊べるだろう。120HzとHDRには非対応だ。今回は、寝室でこっそりプレイすることを想定してベッドサイドに置いた。目線に合わせるために、一体型スタンドを限界まで急角度にしてちょうどいいくらいだった。

PS5の次は、iPad Airの第5世代とも接続してみた。iOS機器との接続は、メーカー動作保証外で自己責任となる。iPadは、USB-Cコネクタを搭載したモデルにDisplayPortに対応した機種がある。この機能で外部モニターを使えないかという試みだ。iPadは供給電力に余裕があり、バスパワータイプのUSB-DACなどが駆動するケースも実際にあるので希望はあった。

iPad AirとUSB-Cケーブルのみで接続すると、なんとミラーリングディスプレイとして認識したではないか。

iPad AirとUSB接続したら動作した。なお、写真は撮影向けに輝度制限解除しているためACアダプター接続している

ACアダプターも要らないので、これは便利だ。外出先でiPad Airと直結するだけでサブディスプレイとして活用できる。ディスプレイ拡張(2枚目としての使用)こそできないが、大きな画面に映して相手に見せるといったシーンで活躍しそう。

なお、ACアダプターを使用しないときは、多くの場合、輝度やスピーカー音量が制限される。これはDisplayPort Alt Modeに対応したパソコンと接続したときも発生したので、留意されたい。おそらくUSB-PDに対応したUSB-C端子に接続すれば、制限が解除されるのだろう。ただし、家庭内での使用に限れば、個人的にはほとんど困るほどの制限ではないように感じた。

iPad Airでゲームをプレイしてみる。「リネージュ2 レボリューション」と「二ノ国:Cross Worlds」をダウンロードしてプレイ。わかっていたことではあったが、モニター画面を見ながら、iPad Airをタッチして操作するのは困難を極めた。目線はモバイルディスプレイに向いているのに、手元のiPad Airのタッチパネルを見られるわけがない。案の定、ゲームにならなかった。

そこで、PS5のDualSenseをBluetooth接続してプレイしたが、どうやってもメニュー項目にはタッチでしかアクセス出来ない。外部コントローラーに完全対応していないゲームは、現実的には諦めるしかなさそうだ。「アスファルト9:Legends」などのレーシングゲームなら、DualSenseに対応しているタイトルもあるようだ。大きな画面でプレイすると迫力も増すし、レースゲームならではの没入感が高まってより楽しめた。

PS5のDualSenseをBluetooth接続しつつ、「アスファルト9:Legends」をプレイ

スクウェア・エニックスのクロノトリガーなど、レトロゲームもDualSenseで快適にプレイできた。ドット絵の背景やキャラクター、そして、高解像度になったメニュー画面など、リマスターならではの遊びやすさと懐かしさを堪能。スーパーファミコンのレトロなサウンドも内蔵ステレオスピーカーで聴くのにちょうどいいチープ加減。少年時代に戻ったように夢中になってしまった。

懐かしのクロノトリガーを大画面でプレイ!

画質は値段相応。発色調整は「エンハンストカラー」がオススメ

画質面にも少し触れておきたい。『テレワークや外出先で簡単にマルチモニターを実現』といった触れ込みの製品なので、画質については値段相応な感触だ。発色がやや不自然で、建物や衣服の質感表現はいまひとつ。コントラストもプロジェクターで見ていた時と比べると、さすがに大きな差を感じる。

そこで、独自の画質向上機能を使ってみる。ゲームはPS4タイトルのRPG「黎の軌跡」で確認した。まずアクションゲームのプレイに欠かせない応答速度の向上機能オーバードライブを試す。最も強いレベル2は、アクションバトル中にスローモーションになったように感じられてしまい逆に疲れる。自分には合わなかった。レベル1は、オフに比べてキャラの動作がボタンと同じになった気がした。オフだとほんの僅かにボタン操作より遅れてキャラのアクションが反応するので、間違いなく効果はある。シビアな反応が要求されるFPSなどのジャンルなら重宝するだろう。

映像にメリハリをつけ、鮮やかに表現する「エンハンストカラー」。0から1に上げるだけで、発色の不自然さが改善した。照明の色温度には依存しそうだが、3~4くらいまで上げると不自然に色が濃くなって赤みが気になってしまう。筆者の環境では、2くらいがちょうどいいナチュラルさと、色鮮やかさを両立していた。これはずっと有効にしておきたい機能だ。

映像内容に応じて、バックライトの輝度レベルを自動調整する「CREX」。明暗の表現が改善しそうだ。強めのレベル2は、街中のマップで日陰と日向を行き来するたびに、大きく輝度が変化してすぐ目が疲れてしまった。明暗差の再現力は向上するものの、極端に効き過ぎる印象。ただ、これはゲームによっても変わるかもしれない。2Dグラフィックのアドベンチャーなどは結果が違う可能性がある。

対して、レベル1は自然な輝度変化となった。眩しい陽の光や、地下の空間の薄暗い雰囲気がより引き立つ。特に暗い場所がしっかり暗くリアルになった。さらにコントラスト設定を50から60位に変更すると、より黒が引き締まって良い具合に。

オーバードライブ、エンハンストカラー、CREXと機能をフル活用することで、モバイルディスプレイの画質上の不満点を大きく改善することが出来た。パソコン用のサブディスプレイと侮るなかれ、ゲーム用途でも実用度は高い。

テレワークや職場のPC環境をデュアルディスプレイで快適に

テレワーク環境の充実や、外出先でのマルチモニター環境のために買う人も多いだろう。そちらも実際に試してみた。

最初に画面拡張から。USB-Cケーブル一本でモバイルPCと接続し、デュアルディスプレイにしてみた。

ノートPCと組み合わせて画面を拡張

ご覧のように、モバイルPCと組み合わせる場合は、資料関係や、SNS、メモ帳などを外部モニター側に表示しておくと、作業が捗る。PC側のメインモニターには、直接キーボードで打ち込むWordやメーラーなどメインで使うアプリを配置しておけばいい。

USBケーブル1本で接続できる
後ろから見たところ

ただ、PCのモニターより大きいモバイルディスプレイは最初ちょっと戸惑った。筆者のモバイルPCは富士通のLIFEBOOKのUHシリーズ。13.3インチは、15.6インチよりやや小さめだ。サブモニターは、メインよりも小さいか、同程度だと違和感が少ないと思う。

それにしても、USB-Cケーブル一本で電源も映像も送信できるのは便利というか快適だ。ACアダプターを使わないことによる輝度制限も室内使用ならまったく問題を感じなかった。想像以上にスカッとした使い心地は、実際に使ってみないと分からないメリットだと思う。

この接続方法のままミラーリング(画面の複製)にすれば、同じ画面が両方に表示される。向かい合って、打ち合わせ相手に画面を見せる際、モバイルディスプレイの方を相手側に向けてあげれば、自分も画面を見ながら説明できるので効率が上がりそう。

次に画面が小さいモバイルパソコンを想定して、簡易デスクトップPCとして使用するイメージで組み合わせてみた。

簡易デスクトップPCのディスプレイにもなる

ご覧のように、キーボードとマウスを接続して、デスクトップパソコンのように使用するスタイルだ。自宅内に限らず、外出先での使用もあり得るだろう。写真は、テンキー付き有線のキーボードだが、無線のコンパクトなキーボードと組み合わせれば、簡易的なデスクトップPCをどこでも構築できる。15.6インチの非光沢液晶は、文字の大きさやアイコンの表示など視認性に支障は感じない。拡大率をOSの推奨する150%にしたが、100%にしたらもっと広く高密度に使える。

チルト角最大62度のスタンドは、結構な角度まで立ち上げても安定して設置できるのでありがたい。目線が上にあるシーンが多いと思うのだが、角度を付ければ問題ない案配に出来るだろう。小型のモバイルPCを所有するユーザーが、外出先で作業効率を上げたいといった場合にお勧めかもしれない。ケーブル類を最小限にして、スマートにまとめられるのが魅力だ。

持ち運びに便利な収納ケースも紹介しておこう。

内部は起毛加工が施されていて、液晶画面が接する側には保護板が埋め込まれている。ケーブルやACアダプターを収納するポケットがないのは残念だが、外圧によって液晶画面に破損を招くおそれがあるから省いたのだろう。リュックなどに入れるときは、液晶保護のため収納ケースに外から強い力が掛からないように注意したい。説明書によると、あくまで製品に細かな傷が付くことを防止するための収納ケースとのことだ。

静音化に貢献するモバイルディスプレイ

ここまではスタンダードな使用スタイルだったが、後半はちょっと毛色の違う活用法をご紹介したい。それはズバり“静音化に貢献するモバイルディスプレイ”だ。

ゲーム実況配信や、YouTubeやSHOWROOMなどの生配信は、ほとんどの場合マイクを使用する。配信時は、一部の専用ハードウェアを除き、パソコンを使っている人が大半だろう。

昨今のパソコンはモバイルであっても、CPUパワーが高く、ストレージも高速なため、放熱のためにファンが勢いよく回転。その騒音が悩みの種になっている人も多いだろう。

コロナ禍をきっかけに爆発的に増えたとされる宅録するナレーターや声優の方も、スタジオ並の音質で録りたいのにファンノイズがマイクに乗ってしまい、悔しい思いをされている方もいる。そんな時、パソコンをマイクから離せばいいのだが、マウスとキーボードはどうにかなっても、画面は目の前に無いと困る。

そこで、タブレットをWi-Fiで繋いでミラーリングしたり、小型のPC用ディスプレイなどを繋いでマイクから離すといった手法が試されてきた。組み立て式の防音ブースなどを使われている方にとっては、パソコンをブースの外に出すだけで、大幅に静音化が図れる。納戸などで録っている方も、部屋の外に出すだけでも効果的だ。

筆者もiPadを使ったモニターのミラーリングなども試しているが、たまに接続が切れてしまうことがあり、信頼性に欠ける面があった。そこでモバイルディスプレイである。しかも、USB-Cケーブル一本で接続だから、ただでさえ混雑するデスクの上をスッキリできた。

下の写真は、録音用のMacの隣に置いた様子だ。

ここまでは至ってスタンダードなセカンドディスプレイとしての利用方法だろう。常に監視しておきたいメーター類を表示させておく。

そして、ここで一工夫、コントロールルームから収録ブースにモバイルディスプレイを移動させるのだ。そのための長いUSB-Cケーブルも買った。USB-Cケーブルは種類がいっぱいあって、ちょっと混乱する。間違えると、接続は出来ても何も映らないので注意しよう。仕様は、DisplayPort Alt Modeに対応していること、USB Power Deliveryに対応していること。モバイルディスプレイの解像度によっては10Gbpsまでの伝送に対応していると安心だと思う。

筆者は、YOUZIPPERの「GEN2-3L」にした。結構調べたのだが、仕様を満たすケーブルで3mを超える長さは見つからなかった。ナレーション録音を想定してブースにモバイルディスプレイを設置した写真がこれだ。

マイクはあえてダイナミックを設置している。録音周りのシステムは、筆者の場合もう少し複雑なのだが、手軽に行なう例として、オーディオインターフェースもブース内に設置した。大事なのは、“パソコンだけはマイクから離す”ということだ。ファンノイズをマイクが拾わないようにする事が重要だ。

YouTube配信をイメージした設置例も紹介しよう。写真のように配信をするためのWindowsパソコンをブースの外に設置。

先ほどの機材に加えてWEBカメラを新たにブース内に追加した。

配信のみならず、Web会議でもノイズ除去機能に頼ることなくクリアな音声を届けることが可能だ。

とはいえ、空調ノイズや、隣戸の騒音、屋外からの騒音など、マイクに入れたくない音はこれ以外にもいっぱいあるので、一筋縄ではいかない世界ではある。ただ、「対策したくても出来ない」と妥協されている雑音の筆頭として、パソコンのファンノイズがあると筆者は捉えている。事実、宅録で音声を収録した方のデータを添削するサービスをやっていると、一番目立つのはファンノイズ対策の難しさだ。おそらく配信や実況といった分野も、空調を止めるなどの基本的な対策をする中で、ファンノイズは意外と見逃されている部分ではないかと思う。

ゲーム機やパソコンとの組み合わせからはじまり、ちょっと変わった活用法までご紹介してきたが、いかがだったろうか。筆者としては、使い方を変えてみるたびに、ケーブル一本の手軽さと、実用性の高さに感心しきりだった。今回紹介したLCD-CF162XAB-Mは、ゲームプレイや動画鑑賞にも耐えうる高画質機能が予想以上に有用で、場所を選ばない使い勝手の良さも注目に値する。価格を超えた満足感とマルチユースに活躍できるPC周辺機器として個人的にもお勧めしたい。

“おうち時間”が増える中、誰もが自分だけのプライベートな空間で仕事やエンタメを楽しむ機会も増える事で、モバイルディスプレイの市場は今後も盛り上がりそうだ。

橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト