西川善司の大画面☆マニア

第245回

ついに我が家も大画面4K/HDR。VPL-VW745を買った&17:9スクリーンも導入

 ソニーのリアル4K解像度のレーザー光源プロジェクタ「VPL-VW745」を購入した。すでに、VPL-VW745の画質面に関しての所感は本連載でレポート済みだが、DIY的に設置しただけでなく、VPL-VW745導入に伴ってスクリーンも新調した。我が家に4K/HDRを迎えるにあたって何を考えたか、をまとめてお伝えしたい。

VPL-VW745

VPL-VW745がやってきた~さあ、どう設置する?

 注文したVPL-VW745が到着したのは12月下旬。開梱してその黒光りする姿を拝んでテンションを上げる筆者は、さっそく設置の準備へと取りかかるのであった。

 これまで、ほぼ全てのプロジェクタを自前で天吊り設置してきた筆者ではあるが、重量約20kgのプロジェクタの自前天吊り設置は初めて。さすがに今度ばかりは「無理かも」と思いつつも、設置の準備にかかる。

箱の中からとりだしたVPL-VW745。大きさは既に把握していたので驚きはなかったが、取り出した際に重さに驚いた

 最初に行なったのは、もともと設置されていたソニーのフルHDプロジェクタの「VPL-HW50ES」の取り外しだった。こちらは重さ約10kgで余裕で一人で取り外しを行なえた。こちらはその後、ホームシアター専門店のAVACで約5.5万円で下取りに出している。

S660の助手席に積まれたVPL-HW50。荷室がないことで有名なS660も、助手席を使えばなんとかなる

 さて、VPL-HW50ESのサイズは407.4×463.9×179.2mm(幅×奥行き×高さ)で、VPL-VW745は560×495×223mm(同)であり、横幅はともかく、全長が3cm強伸びているのが気になっていた。普通の天吊り設置ケースであれば誤差のような問題なのだが、筆者宅ではこの全長の違いが、設置の可否に響きそうだったからだ。

 筆者宅のプロジェクタ取り付け用の補強板が入れてある天井部分は、凹型の箱状になっている。これは新築直後に初めて取り付けたプロジェクタが、特殊な構造の天吊り金具だったため。また、当時のプロジェクタは投射距離が比較的長かったこともあり、この凹型の補強エリアが部屋のかなり後ろになっているのだ。

 そこで、天吊り金具のベースユニットを3cm分前にずらす必要が出てきた。そうしないと、VPL-VW745の後端が部屋の後ろ壁に接触しそう。実際にはギリギリ接触するかしないかぐらいだが、VW745は後面排気なので、後面側の空間に余裕が欲しいのだ。

 ということで、HW50ESの設置に使っていた天吊り金具のベースユニットの先端部をカットすることにした。ベースユニットの鉄板はかなり厚みがあって自分で切断するのは無理だと判断。知り合いの鉄工所に頼んで切断して頂いた。

筆者が試用している天吊り金具は米SANUS製のユニバーサル天吊り金具「VMPR1」。耐荷重は約23kgなので、VPL-VW745はなんとか仕様範囲内で吊れることになる。写真のプロジェクタはこの金具で最初に吊った「DLA-HD350」
ネジで留めるポイントは多めに開けられているので、先端部分をごっそりカットすることに。切断ラインを黒マジックで引いて鉄工所に依頼した

 この切断工作で、5cmほど天吊り金具のベースユニットを前にせり出させることが可能となり、VPL-VW745を設置しても、計算上は後ろ壁にかなり余裕を持たせることができるようになった。

 こうして、なんと物理空間的な問題が解決したのであった。

前端を鉄工所で切断してもらった天吊り金具のベースユニットを仮止めしたところ。実際には、写真の2箇所に加えてもう1箇所、後端をネジ留めして設置している。既に空いている穴は、過去所有していた機種を設置していたときに開けた穴。天吊り金具のベースユニットの移設は頻繁には行わないので、当面はこのままでいけると踏んでいる。

 実際に取り付けフェーズに移ろうと、VPL-VW745に天吊り金具のマウント部分をとりつけて「いざ!」と息巻いて、VPL-VW745を担いで脚立に上ったのだが、さすがに20kgは重くて天吊り金具のポール部分との合体がうまく行かなかった。というか、この作業を一人でやろうとすると脚立に上がった状態でVPL-VW745を顔の位置くらいまで持ち上げる必要があり、これは体力的にも姿勢的にもかなり危ないことが予見できた。

 そんなこんなで、結局、西川善司の長いホームシアターライフ史上初めて、友人にヘルプを頼むのであった(笑)。

ベースユニットにポール部を接合。余談だが、写真の天井から垂れ下がっているケーブルは新築時に天井配線したもので今や使いどころのないアナログケーブルばかり。当時はHDMIが無かったのだ
なんとか二人がかりでポール部とマウント部(とVPL-VW745)を合体させることに成功
一度吊れてしまえば、あとの調整はそれほど難しくない。少なくとも力仕事はもうない

 友人と二人で担ぎ上げると合体はなんとか完了。あとの細かい設置の角度調整は、天吊り金具側のネジの締め上げの調整で行なえてしまうので問題なし。

 苦労はあったが、とりあえず、VPL-VW745のDIY設置を行なうことができた。

設置完了したVPL-VW745。上級機なのに電動開閉式のレンズカバーがないのは少し不満。HDMI接続には先日紹介した光ファイバーHDMIケーブルを使用している

スクリーンを新調。こんどはあえての「17:9アスペクト」を選択。

 今回のVPL-VW745の導入にともない、スクリーンを新調することにした。

 筆者宅でもともと設置していたスクリーンはキクチ科学研究所のホワイトマット系スクリーンのGRANDVIEWの100インチモデル「GEA-100HDW」であった。購入は2012年頃なので5年ほど経年していることになるが、使用上は問題なく、このまま使い続けることも考えた。しかし、VPL-VW745は4Kは4KでもDCI規格の4,096×2,160ピクセルの解像度。アスペクト比的には17:9だ。そんな経緯もあって「どうせ新調するならばスクリーンはアスペクト比17:9にしようかな」などと考えるようになっていたのである。

これまで使っていたGRANDVIEWシリーズ

 もともと設置してあるGRANDVIEWのアスペクト比は一般的な16:9。このスクリーンにVPL-VW745の映像を最大投射しようとすると、左右128ピクセル分をスクリーン外にはみ出させて投射することになる。せっかく、その領域にも映像パネルとしての表示能力があるのにそれをスポイルして活用するのは気が引ける。

 実は、VPL-VW745だけではなく、リアル4K解像度プロジェクタでは、3,840×2,160ピクセルではなく、4,096×2,160ピクセルの製品が増えていて、ソニーでいえば、VPL-VW245、VPL-VW535、VPL-VZ10000、VPL-VW5000がそうだし、JVCならばDLA-Z1もそうだ。これをうけてか、最近はホームシアター向けスクリーンには17:9アスペクト比の製品が増加傾向にある。

 「ただ、大体の映像コンテンツは16:9か、2.35:1(シネスコ)なわけで、17:9アスペクトのスクリーンを設置する意味ってあるの?」と思う人も多いことだろう。

 ごもっともである。

 17:9のスクリーンはたしかに4,096×2,160ピクセル映像は合うだろうが、たとえば16:9の映像を最大サイズで映そうとすると左右に128ピクセル分の余白(黒帯)を残すことになってしまう。これは、せっかくの17:9のスクリーンスペースの有効活用ができていないことになり、意味がない。というかもったいない。

 しかし、VPL-VW745を含む、最近の4,096×2,160ピクセルのリアル4K解像度プロジェクタでは、この17:9スクリーンを有効活用するための機能が搭載されていて、そうした「もったいない」ことが起こらないようになっているのだ。

 詳細は後述することにするが、結論から言ってしまうと、VPL-VW745であれば、17:9アスペクトのスクリーンを有効活用できそう、ということで、今回は17:9アスペクトのスクリーンを思い切って選択することにしたのだ。

 選択したのは、キクチ科学研究所のStylistシリーズの17:9アスペクトモデル「SE-110HSWAC/K」(黒ボディモデル)だ。Stylistシリーズには電動巻き上げ機能のモーターの静音性能を追求したESシリーズと標準モーターのEシリーズとがあるが、筆者が選択したのは標準モーターのEシリーズ。スクリーン素材はホワイトマットの高品位モデルの「ホワイトマットアドバンスキュア」(WAC)に決定。WACは拡散反射系でありながら、ゲイン性能も優秀で、人気も高いようである。

キクチ科学研究所のStylistシリーズ

 これまでのスクリーンは100インチだったが、今回は110インチへとサイズアップを決断。筆者宅のリビングルームだと壁面サイズ的には120インチもいけるのだが、スピーカーの配置の関係で110インチとした。なのでサイズアップといってもごく僅かである。

 今回のスクリーン購入にあたっては以前と同様にAVACに依頼した。

 「SE-110HSWAC/K」は、本体重量が14.2kg。VPL-VW745よりは軽いのだが、スクリーンは横に長い製品なので、一人では持てなさそう。なにしろスクリーン製品は天吊り金具で固定させる場所が複数箇所となるため、そもそも持ち上げること自体が困難である。なのでプロに依頼することにした次第だ。

工事周辺を汚さないための養生もやってくれる。このあたりはDIYでは気が回らない部分だ

 ちなみに、取付工賃は約78,000円(出張費が約2万円、取付工事費用が約5.8万円)。この費用には、旧スクリーンの取り外し工事と、なんと備え付けのプロジェクタ製品(筆者宅の場合はVPL-VW745)の投射映像の「直交出し」(スクリーンに対して、四辺が直交する綺麗な長方形の映像として収まるように映像調整を行なうこと)までが含まれている。

旧スクリーンの取り外しは自前でやっても良かったのだが、工賃は変わらないということで、お願いした

 筆者が発注したスクリーン「SE-110HSWAC/K」は、納期に2週間ほど掛かっている。その後、工事日の予約が一杯だったこともあり、工事担当者が筆者宅に来たのは、発注から約1カ月+αといったところである。

 ちなみに、筆者宅には既存のスクリーンがあったので、早々に届いていたVPL-VW745は、DIY設置後にそのスクリーンで映像をみていた。全くの新規にスクリーン製品を購入しようとしている人は、スクリーンの発注、工事日の予約などをプロジェクタ本体購入に先駆けて行なっていたおいた方が、待ち時間が少なくて済むはずだ。

 工事当日は、二人の担当者が来訪し、手際よく、旧スクリーンの取り外し、新スクリーンの取付を行なってくれた。

新旧のスクリーン収納部の全長比べ。奥側で端を揃えて並べるとこのくらいの差がある。画面サイズとしては対角が+10インチ(約25cm)されるだけでも、スクリーン収納部の全長は+30cmくらい大きくなる

 スクリーン設置の際には、吊り下ろしたスクリーンが部屋の壁面に対して、ちゃんと平行となるように基準線を書き出す段取りがあるのだが、昔は黒炭をまぶした糸を天井側にぶつけで行なっていたこの「墨出し」工程を、今ではレーザー機器で実践していることに感心した。

 レーザー墨出し器はレーザー光の基準線を出す装置で、天井や壁に線の描き跡を残さずに、正確に真っ直ぐな線を出せる利点があるとのことだ。

スクリーンの取付位置をレーザー墨出し器でマーキングしているところ。今回は画面サイズが+10インチ大きくなったことで、若干、投射距離を稼ぐ必要が出てきた。そのため、設置位置を数センチだけ、壁に寄せることに
墨出しには直交するレーザー線を部屋の壁や天井に投射することができるタジマ製レーザー墨出し器「GT4R-XI」が使われていた

 旧スクリーンの取り外し、新スクリーンの設置、そしてプロジェクタ映像の直交出しまでを全て行なって所要時間は約2時間といったところ。

スクリーンの天吊り設置金具を取り付けて、実際にスクリーン本体を組み付けているところ。筆者宅はもともとホームシアター機器を設置するために、部屋の天井に対し補強を入れてある。具体的には、天吊りスピーカーを設置する可能性の高い天井四隅や、スクリーンを設置する可能性のある領域に対して、補強板が天井裏に組み付けてあるのだ。リビングをホームシアター化する予定のある人は設計段階で考慮しておくといい

 筆者も大画面☆マニア等におけるプロジェクタの評価で、投射映像の直交出しはかなりの場数を踏んできている自負があるのだが、今回のスタッフは筆者よりもさらに手際がよかった。この作業は、出ている映像を見ながら天吊り金具の調整をするという地味な工程だけなのだが、スタッフは調整に迷いがなく、ほぼ最短手順で直交出しが行なえていたことに感心させられた。

 さすが、プロである。

投射映像が正しく出るようにプロジェクタ側の角度調整まで行なってくれた。ここも基本料金に含まれているらしい
スクリーン電源の取り回し配線も
Stylist Eは電動開閉制御のためのリモコンの受光部が別体型になっている。これは天井にスクリーンケースを埋め込み設置するユーザーのための配慮。筆者宅の設置案件ではこの受光部は普通にスクリーン収納ケースに両面テープで組み付けた
スクリーンのリモコン。上げ下げ時のモーター音はGRANDVIEW「GEA-100HDW」と比較するとだいぶ静か

 取り外した旧スクリーンのGRANDVIEW「GEA-100HDW」は、AVACでは下取りしていないとのことなので、処分することに。当初は欲しいという友人に譲る予定だったのだが、話が流れてしまったため、ハードオフで売却した。買い取り価格は約5万円で、予想外に高額で買い取りされたのでラッキーであった。

VPL-VW745と17:9アスペクトのスクリーン

 設置が終わったので、「17:9アスペクトのスクリーンをVPL-VW745でどう活用していくか」について見ていくことにしよう。

テレビの前にスクリーンを降ろせるような位置関係に設置した
下ろしきれば完全にテレビは見えなくなる
スクリーン収納ケース部はブラックを選択。ホワイト、レッド、ブルーなども選択可能だ。色による価格差はなし

 筆者のVPL-VW745は、基本的にはネイティブ解像度である4,096×2,160ピクセル画面を、新設の17:9スクリーンの全域に表示できるように調整してある。

 しかし、一般的に供給されている映像コンテンツで17:9はほとんどない。

 なので、VPL-VW745の4,096×2,160ピクセルをフル活用する局面は、PCやゲーム機での活用に限られることになる。まあ、筆者は、PCやゲーム機での表示も重要視していたので、17:9スクリーンにVPL-VW745の映像がフル表示されている様を見て少々萌えてしまったりしたのだが(笑)。

 一般的な映像コンテンツは2.35:1のシネマスコープ(シネスコ)アスペクトか、16:9アスペクトであり、そうしたコンテンツを17:9スクリーンでどう表示していくのか……については、本来は最重要視すべきポイントである。

 ということで、このあたりのTIPSをまとめてみることにしたい。

 まずは「シネスコ(2.35:1)アスペクトのコンテンツを17:9スクリーンでどう見るか」についてだ。

 シネスコアスペクトのコンテンツは、3,840×2,160ピクセル解像度の4Kプロジェクタだと3,840×1,634ピクセルでの表示になるので、16:9アスペクトのスクリーンでは上下に余白(黒帯)が出てしまう。

 厄介なのは、筆者が導入した17:9スクリーンだと、上下だけでなく、左右にも128ピクセル分の余白(黒帯)が出てしまうところ。

 これは見映えも悪いし、せっかくの大画面スクリーンを小さく使っているという点で芳しくない。

 しかし、VPL-VW745には、この問題を解消するための方策が2つ用意されている。

 1つはリモコンの[ASPECT]ボタンを押してアスペクトモードを「2.35:1ズーム」モードを活用するアプローチだ。

 「2.35:1ズーム」モードは、2.35:1のコンテンツをVPL-VW745の横解像度の4096ピクセル基準でシネスココンテンツを拡大するものになる。具体的には4,096×1,742ピクセルでの映像表示を行なってくれる。3,840×2,160ピクセル解像度の4Kプロジェクタの3,840×1,634ピクセルでの表示に対して、縦横、微妙に解像度アップされての表示となるわけだ。なお、このアップスケール処理に際しては、VPL-VW745に内蔵される超解像エンジン「リアリティークリエーション」が適用されるので「VPL-VW745の機能を使い切る」という意味合いにおいても美味しいVPL-VW745の使い方になる。

2.35:1アスペクトの映像を横解像度4,096ピクセル基準で拡大して、17:9アスペクトスクリーンに最大サイズで表示させるモードがVPL-VW745に搭載される「2.35:1ズーム」機能。いうなればアナモーフィックレンズ的な機能をデジタル処理で実践したようなものだ

 2つ目は、1つめと同サイズの表示を17:9スクリーン上で目指すが、超解像エンジン「リアリティークリエーション」を活用せず、3,840×1,634ピクセルのドットバイドットでシネスコ表示を行なう方法になる。

 これについては、VPL-VW745に搭載されるレンズメモリー機能の「ピクチャーポジション」を活用することで実践する。

 VPL-VW745では、投射レンズの「フォーカス」「ズーム」「シフト」といった各種調整状体を最大5つまでメモリー保存させることができ、リモコンの[POSITION]ボタンを押すことで簡単に呼び出せるようになっている。この機能を使い、横解像度3,840ピクセル幅を17:9スクリーン一杯に表示されるように投射レンズ設定を調整し、メモリ保存するのだ。

こちらのアプローチではアスペクトモードは「ノーマル」を選択する

 ちなみに、筆者は、前述した「2.35:1ズーム」状態での投射レンズ設定はピクチャーポジション機能の「2.35:1」プロファイルに保存していて、3,840ピクセル幅を17:9スクリーン全域に合わせた投射レンズ設定を「カスタム1」へ保存していて、好みや気分に応じてどちらかを呼び出す使い方をしている。

2.35:1のシネスコアスペクト比のコンテンツを17:9スクリーンの全域にドットバイドット表示させる設定はピクチャーポジション機能の「カスタム1」に保存した

 ピクチャーポジション機能は、電動モーター制御で、メモリ保存されたレンズ調整パラメータを復元するのだが、メカ的な誤差は若干ある。具体的には投射レンズ調整の「フォーカス」「ズーム」「シフト」の各ボタンの1-2クリック分くらい。まぁ、気になった場合は、筆者もその都度、調整しているが、それほど不満はない。

 実際に投射映像を4,096×1,742ピクセルでのリアリティークリエーション(超解像)適用表示と、3,840×1,634ピクセルのドットバイドット表示とで表示させて比較してみたが、画質上の差異はほぼなし。まあ、だとすれば、VPL-VW745の映像パネル全域を有効活用している前者の方が、オーナー的には満足度は高いと言えるかも知れない。

 では、16:9アスペクトのコンテンツはどうか。

 17:9スクリーンで、16:9アスペクトのコンテンツを表示させると左右に128ピクセル分の縦黒帯が出ることになる。

16:9アスペクトのコンテンツ(左)を17:9アスペクトのスクリーンでドットバイドット表示させると右のように左右に余白(黒帯)の表示が出てしまう

 これについても、前出のピクチャーポジション機能を活用して視聴することとしている。といっても、難しいことは何もなく、上で紹介した2つのピクチャーポジション機能のメモリを流用するだけだ。

 16:9アスペクトのコンテンツを余白(黒帯)ありで、ドットバイドット表示させたい場合は、4,096×2,160ピクセルを17:9スクリーンの全域に表示させた「2.35:1」プロファイルを呼び出せばいいのだ。

 逆に16:9アスペクトのコンテンツを余白(黒帯)なしで、17:9スクリーンの全域に表示させたい場合は、横解像度3,840ピクセルを17:9スクリーンの全域に表示させた「カスタム1」プロファイルの方を呼び出せばいい。もちろんこの場合、17:9スクリーンに表示されるのは3,840×2,160ピクセルの映像を17:9アスペクトで切り取った3,840×2,032ピクセル分となるので、17:9スクリーンの上下には64ピクセル分がはみ出ることにはなる。110インチの17:9スクリーンの場合だと、この64ピクセル分のはみ出しは約4cmになる。

映像表示用外の領域については、スクリーンでは黒色塗装がなされていることが多い。16:9映像を17:9スクリーンにフル表示させると上下にはそれぞれ64ピクセル程度、110インチ画面にして約4cm程度のはみ出しが起こりうる

 PC画面やゲーム画面などは、画面全域をフルフルに活用して情報や画像を表示しているケースも多いので、こうした「はみ出し」表示が目立ち、これらの領域を隠したい事も出てくる。そんな場合に便利に活用したいのが「ブランキング」設定だ。

「ブランキング」は意図的に黒帯を発生させて映像をマスクさせる機能。

 この機能は、いわば意図的に黒帯を発生させるようなものと言えば分かりやすいだろう。この機能を活用すれば上下それぞれ64ピクセル程度はみ出した領域をマスクさせることができるようになる。

 ところで、ピクチャーポジション機能は、このブランキング設定も保存してくれるので、何度もこの設定をする必要はない。筆者はこの設定までを行なって「カスタム1」として保存している。

スマートスピーカーのAmazon Echoで今回構築したホームシアター環境をコントロールできるようにしてみた。「Alexa、ホームシアターを付けて」で天井照明が消え、電動スクリーンが降りてきて、VPL-VW745も起動する

テレビとは違う! プロジェクタならではの4K/HDR体験を

 以上が、VPL-VW745の導入に伴ったホームシアター環境の刷新のまとめとなる。

 VPL-VW745の設置に関しては「大きさはVPL-HWxxシリーズとあまり変わらないが全長がちょっと長い」「重いので一人で天吊り設置は無理」「汎用の天吊り金具でVPL-VW745は吊ることができる」といったあたりが、DIY設置した筆者から送るTIPSになる。

 スクリーンに関しては、今回、あえて17:9アスペクトの製品を選んだが、「VPL-VW745との組み合わせ」に限っては、悪くない選択だったと思っている。後悔はしていないし、むしろオススメしたいくらいだ。とはいえ、VW745に限らず、4,096×2,160ピクセル解像度の4Kプロジェクタを導入する際には、スクリーンのアスペクト比の選定は悩ましいポイントではある。

 もちろん16:9アスペクトのスクリーンを選ぶのが無難だが、VPL-VW745の場合は「デジタル処理なアナモーフィックレンズ」ともいえる「2.35:1ズーム」機能があるおかげで、17:9アスペクトのスクリーンがうまく活用できる点は強調しておきたい。もちろん、視聴コンテンツが映画主体と割りきっていいならば、この2.35:1ズーム機能に乗っかって、あえて、2.35:1スクリーンを選んでしまうのも悪くない……かもしれない。

 これまで、4K/HDRのコンテンツは55インチのテレビでしか楽しめなかった筆者宅が、VPL-VW745で110インチで体験できるようになった。

 プロジェクタによる100インチオーバーの4K/HDR環境は、50~60インチのテレビによる4K/HDR環境とは似て非なる体験が楽しめるため、満足度が高い。

 1つ。大画面であっても高精細であること。

 もともとプロジェクタによるホームシアター環境というものは「大画面性」が最大のメリットであり、逆に画面が大きく投射されることで幾分か「解像感」についてはテレビで見るときよりも「妥協感」はあった。「100インチオーバーでの4K」はそうした妥協感がなくなる。視界の大部分を占有するほどの大画面でありながら「固定画素の存在」感を感じられない視体験は、局面によっては今のVR-HMDを超越するほどの没入感がある。

 2つ。大画面がゆえにHDR表現面積が大きいこと。

 「自発光画素ベースの有機ELパネル」や「エリア駆動対応液晶パネル」を採用したテレビ製品と比べれば、プロジェクタによるHDR表現は、スペック上のコントラスト値では及ばない。しかし、映像の上部を覆う夕焼け空の逆光表現は、テレビではたかだか50~60インチ画面の上部を覆う程度の赤らみでしかないが、100インチオーバーになると広げた両手にも収まらないほどの広大な面積の夕日となって見える。テレビでは「局所的な鋭いHDR」が楽しめるのに対し、プロジェクタ大画面では「巨大な面積によるHDR」が楽しめる点でリアリティに優れているのだ。

 たとえば「逆光表現に佇む人物」のシーンがあったとして、この時、逆光の人物は背景の高輝度のせいで黒っぽく見えてしまっていると思う。ここで、自身の視界に片手をかざして逆光領域を遮蔽してみよう。黒っぽく見えていた人物も、なんと段々と見えてくるのだ。そう、黒っぽく見えていた人物も実はそこそこの輝度で階調が描かれていて、なのにそれが黒っぽく見えていたのは「映像として黒っぽい人物が描画されていた」のではなく、人物の周囲が高輝度のせいで「自分の目が黒っぽく見ていた」だけだったのである。こういう感動は、HDR表現の面積が大きくないとなかなか楽しめない視体験である。

 こうした感動を体験してから、最近は、一度テレビで見た4K/HDR映画のお気に入り作品をもう一度見直したりをするようになっている。しばらく、大画面4K/HDRならではの感動を味わい尽くすつもりだ。

トライゼット西川善司

大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。3Dグラフィックスのアーキテクチャや3Dゲームのテクノロジーを常に追い続け、映像機器については技術視点から高画質の秘密を読み解く。3D立体視支持者。ブログはこちら