鳥居一豊の「良作×良品」

第84回

超大画面でひと狩りいこうぜ! ソニーBRAVIAで体感する「モンスターハンターワールド:アイスボーン」

今回は特別編。第82回のソニー「KJ-85X9500G」の取材後の雑談で、「大画面で映画を見るのもいいけれど、ゲームをやるのもいいよね」という話題になった。そこで当然ながら、9月の発売が待たれていた「モンスターハンターワールド:アイスボーン」の話題となり、同じソニーのPlayStation 4用のタイトルなのだから、連携して紹介するのもいいよね、という話になった。ソニーとしても、人気ゲームで大画面の魅力をアピールしたいと考えていたとのことで、カプコンにも参加していただき、今回の取材が実現した。

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対応してくれたのは、第82回にも参加していただいたソニーマーケティング プロダクツビジネスホン部 ホームエンタテインメントプロダクツビジネス部の児島良樹氏、そしてカプコンの「モンスターハンターワールド:アイスボーン」担当者さんだ。

モンスターハンターワールド:アイスボーン
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主役である大画面テレビは、ソニーの4K有機EL 77型「KJ-77A9G」(実売約107万円)と液晶の85型「KJ-85X9500G」(同73万円)を用意してもらった。そして、使用したのはPlayStation 4 Pro、ゲームソフトは「モンスターハンターワールド:アイスボーン」(以下「MHW:アイスボーン」)の東京ゲームショウでの試遊デモ版。この取材のために、カプコン担当者さんが持ち込んでくれたのだ。感謝。

児島氏は、「BRAVIAはゲームにも強い」と言う。大前提として、ゲームの表示に適した「ゲームモード」を採用。これは、ゲームに合わせた画質というだけではなく、薄型テレビでゲームをするときに言われる表示の遅延を抑えた低遅延表示を行なうことが特徴。そして、4KテレビのBRAVIAに採用されているデータベース型超解像処理技術「4K X-Reality PRO」は、ゲーム用のデータベースも内蔵しており、より高精細に再現することが可能だ。

ソニー社内の展示スペースで説明をする児島良樹氏。使っているのは、有機ELテレビのKJ-77A9G。さすがに大きい
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児島氏。彼もゲーム好きで、モンハンも大好きだとのこと

そして、4K解像度とともに外せないのが、HDR。ハイ・ダイナミック・レンジと呼ばれる高輝度表示のための規格で、UHD BDソフトや4K放送でも採用されている。HDRとともに色域も広いBT.2020となるので、明暗の差が広がってより強い光の表現ができるとともに、より豊かな色再現も可能になる。PS4(スタンダード)でも2K HDRの表示はできるが、PS4 Proならば4K HDR出力が可能だ。

PS4 Pro側でのより高精度なグラフィック処理と4Kアップコンバート出力で、PS4(スタンダード)よりも高精細な映像となっているが、さらにBRAVIAでは、バックライトの制御でHDRの再現性を高める「X-tended Dynamic Range PRO」(有機ELテレビでは非搭載)、HDRの10bit信号を14bit相当の階調表現で再現する「Super Bit Mapping 4K HDR」などの技術によって、さらに自然でリアリティ豊かな映像で表示するというわけだ。

PS4 ProとBRABIAの4K HDR技術の合わせ技で、高輝度かつ広色域の映像がよりリアルに再現できる
液晶テレビでは、LEDバックライトの部分制御を行う「X-tended Dynamic Range PRO」で、輝度ダイナミックレンジの拡大を実現している
ゲームにも強いBRAVIAのまとめ。クリエイターの作った世界を忠実かつ美しく描くことで、さらに没入感を高める

このように、低遅延表示をしながら、より高精細かつ高輝度な表現を可能にすることで、クリエイターがイメージした映像をより美しく再現することが可能になる。グラフィックが精密に描かれるだけではなく、画面に表示されるHPやアイテムなどの表示も視認性を高め、プレイしやすくなるという。

さらに、「KJ-85X9500G」と「KJ-77A9G」に搭載する高画質エンジンの「X1 Ultimate」ならば、映像処理はさらに高精度になり、大画面でも細部まで緻密に描くことが可能。大画面だからこそ気付く、細部のテクスチャーの荒れた感じが目に付いたり、マップやアイテム表示がジャギーで見づらくなったりするようなことが生じないようにしているのだ。

有機ELテレビKJ-77A9Gの高コントラスト表現に驚く。食事も美味しそう

では実際にプレイしてみよう。東京ゲームショウ2019仕様の「MHW:アイスボーン」では、新たな舞台となる「渡りの凍て地」で、バフバロやティガレックスなどの狩りが楽しめる。さらには、新たな古龍であるイヴェルカーナ、そして10月のアップデートで登場するラージャンまで用意されている。

「MHW:アイスボーン」(東京ゲームショウ2019イベント試遊バージョン)のクエスト画面。イヴェルカーナやラージャンの名前が確認できる
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話は逸れるが、筆者のゲーム遍歴を少し語らせてもらおう。筆者は中高生の頃にPCゲームに熱中し、末期にはX68000の所有にまで至った(今所有するWindows PCは4Kでゲームができるスペックを持つ)。ファミコンやスーパーファミコンもプレイはしていたが、グラフィックに優れたタイトルの記憶しかなく、携帯ゲームは画面が小さいために「モンスターハンター・ポータブル2ndG」などはかなり苦戦したし、他のゲームもいまいち熱中できなかった。その頃からグラフィックとサウンドにこだわりがあったのは間違いない。

PlayStationの登場以降、グラフィックの向上にともなって映画的な映像と音響のゲームが続々と登場し、ゲームの未来は映画と同様に大画面で楽しむものと確信していた。映画的なゲームは予算の規模や制作期間も映画に迫るようになるなど、決していいことばかりではないが、単なる高画質・高音質を超えて、大画面でプレイしたくなるゲームをプレイしてきた。

「モンスターハンターワールド」もひととおりプレイ済みで、「MHW:アイスボーン」については、発売されるとすぐにプレイをしている。自宅ではPS4(スタンダード)を使用し、2K HDR出力でプレイ。テレビは東芝の有機EL「55X910」だ。PS4 Proについては、有機ELテレビ導入時に悩んでいたのだが買ってはいない。リアル4Kレンダリングではないこと(PS4 Pro対応タイトルでは、2,560×1,440など、フルHD以上のレンダリングは行なわれているようだ)、4Kアップコンバートは薄型テレビで行なうので、2K HDRならば十分ではないか? と、現在でもきちんと動作するPS4がもったいないので、自分に言い訳をしていたわけだ。

ここで、ソニーのKJ-77A9GとPS4 Proで「MHW:アイスボーン」をプレイしてみると、その印象がまるで違っていた。何より画面が大きい。プレイでは、77型の画面に対して2m足らずの一般的な距離でプレイしているが、画面ににじり寄るのではなく、リラックスしてテレビを見るのと変わらない距離だけに、その大きさもよくわかる。

なによりも、「渡りの凍て地」の景色が広大だ。雪で真っ白に染まった大地は、針葉樹の森に入ると薄暗くなるが、木々が立ち並ぶ様子が奥行きがあり、立体的に感じられる。自宅でのプレイでは、美しい景色ではあるがやや箱庭的なこぢんまりとした感じだったが、それとは大違いだ。

KJ-77A9Gの画質モードは「ゲーム」。クイック設定で主要な設定を素早く確認できるのが便利だ
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KJ-77A9Gの画質設定を確認。黒伸張や自動コントラスト補正などは「切」となっている
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KJ-77A9Gの画質の詳細設定の「くっきりすっきり」。リアリティークリエーションの「精細度」は思ったよりも低い「10」だ
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部屋の照明を少し落としたプレイ中のイメージ。大画面で美麗なグラフィックを見ていると、まさに映画を見ているような感覚になる
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「渡りの凍て地」自体は、自分もそれなりに探索していたつもりだが、実際のところいつも以上に厚く積もった雪をかきわけて行くときの様子や、雪原に生える植物や小さな動物たちを観察してしまう。雪の質感はリアルなだけでなく、実に多様で、厚く積もったところやうっすらと地面を覆っているところなどが映像で識別できるようになっていると気付く。というのも、厚く積もった場所では歩行の速度も落ちるので、モンスターから逃げる時などはそこに踏み込まないようにした方がいい。そのあたりが見分けが付くというのはプレイしやすさにも直結するのだ。

歩き回るとハンターの周りに立ち上る細かな雪が、キラキラと輝いているし、時には結晶のようなものが浮かんでいる。このあたりの雰囲気も抜群だ。白く霞んだ空も、時折強い陽光が差し込み、まぶしいくらいだ。このあたりの高コントラストな表現は見事なもの。ゲームでのHDRの設定は以前から気になっていたが、基本的には仕様で規定されている1万nitまでの高輝度がカバーできるように設計されているようだ。

ただし、ゲームのオプションにある映像設定でその値は上下する。画質設定を初期設定とした状態で、最高輝度はおよそ1,000nitくらいになるように調整されているそうだ。つまり、UHD BDの一般的なHDRタイトルと同等のダイナミックレンジだと考えていい。暗い谷間から日の差した森の外を見るような景色は、まさしく映画のような壮大さを感じる。

薄暗い場所から、森の外を眺めた様子。写真では白く飛んでいるいるところも、画面では見晴らしよく描かれている。コントラストは極めて高い
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気ままに探索をしていると、いよいよバフバロが出現。狩りの開始だ。ちなみに筆者は双剣使い。せっかちなのでモーションの早い武器が好みだ。近接武器なので必然的にモンスターに接近して戦うことになる。しかもプレイスタイルは猪(猪突猛進型)なので、正面からモンスターに飛び込んでいくことが多い。つまり下手くそだ。

しかし、プレイ中の映像の迫力はかなりのものだ。距離が近いのでモンスターの“巨大さ”を体感できるし、巨大な角を振り回してくる様子や、地面から掘り出した岩を転がしながら突進してくる時は恐怖さえ感じる圧迫感がある。こういうプレイをしていると、モンスターのテクスチャーが拡大されすぎて映像が粗く感じることもあったのだが、今回のプレイでは、そうした粗さを感じることがなかった。これがPS4 ProとBRAVIAの実力かと驚かされた。

しかも、バフバロの顎の周りの毛並みの質感も見事なもの。これまでは、モンスターの顔の向きでこちらを見ているかどうかを判断していたが、接近戦ではバフバロがギロリとこちらを睨んでいることまでよくわかる。これは正直ビビる。が、接近戦が今まで以上に楽しくなったことも確かだ。

ちなみに、前述の通りPS4 Proはリアル4Kレンダリングではなく、フルHD以上の解像度のレンダリングとアップコンバートを併用している。そのほかテクスチャーマッピングや光源処理などのグラフィックス処理が高精度化されて、総合的に高画質化を実現している。そのグラフィックス処理に使われるテクスチャー素材などについては、PS4 Proで必要となる解像度を超えるデータを使っているという。

はっきり言ってしまえば、「MHW:アイスボーン」は、SteamからWindows版が来年1月に発売予定だが、こちらはパソコンのグラフィックス性能が十分ならば4Kレンダリングも可能だ。グラフィック用のデータについてはそこまで想定して制作しており、また、PS4、PS4 Pro、Steam版とそれぞれ別に用意するような面倒なことをするのではなく、すべて共通だそうだ(Steam版のHigh Resolution Texture Packは除く)。どうりで家庭用ゲームではありがちなクローズアップでのテクスチャーの解像度不足が気にならなかったわけだ。カプコンによれば、シーンに応じて、表示されるテクスチャ解像度を動的に変化させる機構も実装されているという。

バフバロと対峙している場面。画面にクラッチクローのガイドが表示されていたので、クラッチクローに挑戦。顔のあたりに取り付いたところ、ギロリと睨まれた
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バフバロの突進。巨大な角の質感描写に見とれていたら、その直後に高々と放り投げられた
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狩りの方といえば、その後あっけなく力尽き、キャンプへと送り返されてしまった。もちろん、再度挑戦するのだが、ここで食事を取ることに。ステータスアップを期待できる食事だが、その美味しそうな映像も人気のひとつ。これまた凄い。焼いた肉の照りが実に豊かで食欲をそそられる。色と艶が豊かになって、さらに美味しそうな映像になっていた。


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キャンプでの食事の場面。料理の色と艶の豊かさは見事なもので、大画面で見るとさらにゴージャスな印象になる
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その後、アイルーのサポートもあって、なんとかバフバロを倒すことには成功。倒したときの達成感もひときわ大きかった。単純と言えば単純だが、画面が大きくなったことで、ゲームとしてモンスター狩りを楽しむというよりも、ハンターとなって広大な世界を冒険している感じが強まった印象。画面サイズの違いで、こんなにも変わるかと思われるかもしれないが、思った以上にその世界に足を踏み入れた実感がある。

「MHW:アイスボーン」は、これまでのシリーズと同様に、自然や生態系まで考えたさまざまなフィールドが作られていて、環境生物の観察などを楽しんでいる人も多いという。そうしたプレイヤーには、より大きな画面で壮大なスケール感とともに世界を楽しめる方が適していると感じた。

今度はさらに大きな85型! KJ-85X9500Gで、もうひと狩り行こう!

今度はディスプレイを変更し、液晶テレビのKJ-85X9500Gでプレイしてみた。77型から85型と数字としては10インチに満たないが、実際に同じ距離で見てみるとかなり大きく感じる。77型も十分に大きいのだが、数字以上の差を感じた。有機ELテレビと比べてしまうと価格的にも手の届くところに近づくので、大画面を求めるならば液晶テレビの方が現実的だ。

こちらでも、まずはゲームのオプション画面で画質設定を確認。ゲームでは輝度調整、再度調整、コントラスト調整が行える。こちらは必ず調整するものではなく、見づらい場合や好みに応じて調整すればいい。こちらでも調整値は初期値のままとしている。

オプションの「輝度・彩度・コントラスト調整」の画面。項目ごとに好みに調整を行なえる。左右の明るい場面と暗い場面を見比べながらバランスをとるのがコツ
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このほか、PS4 Proでは表示について、解像度優先/フレームレート優先/グラフィックス優先が選べる。優先度によってグラフィックスの処理が変わるのだろう。ここは好みに応じて選べばいいだろう。プレイしやすさを優先するならば、フレームレート優先(コマ落ちをなくし、動きがスムーズになる)がいいだろう。軽く比較してみたところ、カメラアングルを動かさず、静止した状態ではそれぞれの差はほとんどない。カメラを早めに動かしてみると、遠景の景色に見え方などに多少の違いはあったが、その差も微妙。おそらくはモンスターをはじめとする動くキャラクターが増えるとその差ははっきりすると思うが、プレイ中にそれを確認するのは難しい。プレイしながら試してフィーリングの良かったものを選ぶといいだろう。

オプションにある「グラフィックス設定」。優先するものによって、グラフィックス処理が変化する
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画面サイズの大きさは映像のスケール感がかなり大きくなったと感じるが、そのほかにも映像がより明るく、パワフルになったと感じる。これはバックライトを光源とする液晶の有利なところだ。明るい部屋で楽しむならば、この明るさの余裕は頼りになる。一方で食事の場面での焼き肉の照りの感じは、有機ELのKJ-77A9Gの方が緻密で美味しそうだった。これは画素のひとつひとつが発光する自発光の良さ。大画面でもギュッと凝縮したような緻密さがある。

焼き肉の照りの感じは、有機ELのKJ-77A9Gの方が緻密で美味しそうだった
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価格の違いからしても、部屋を暗くしてじっくりと映像を見るならば有機ELの方が有利だが、明るいリビングで大画面で楽しむならば、液晶の方が有利な面も出てくる。液晶では気になる視野角の点でも、独自の光学処理などにより広視野角を実現する「X-Wide Angle」を備えるので、大人数でワイワイ楽しむようなゲームもすることがあっても、何の心配もいらない。

今度はいよいよ、イヴェルカーナに挑戦だ。取材時点では自宅でのプレイではまだ対面したことがなく、ここでの取材が初対面となる。もとより勝ち目はないとわかっていたので、まさに見物という感じで臨んだ。「攻撃しなければ近寄っても大丈夫」とのことなので、まずはじっくりと側によって見てみた。

イヴェルカーナの勇姿。鉱物のような複雑な輝きを見せる皮膚や、翼など、造形が美しい
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美しい立ち姿だけでなく、大きな翼や胴や脚の皮膚の感じなど、もの凄く細かく描かれているのがわかる。薄曇りの光の加減もあって、まさしく古龍という感じの神々しさがある。

試しにちょっと手を出してみたが、動きも素早く手も足も出なかった。また、戦いが始まると全身を霜のようなものが覆って真っ白い身体となるが、それらが周囲に飛び散ってとても美しい。が、吹雪のような強風が襲ってくることもあり、ひとたび狩りをはじめてしまうと、近づくことも難しい。上空を飛び越えていくときなどは、翼が太陽の光を受けて透けて見えるなど、飛び回っている姿も神々しい。

宙を舞うイヴェルカーナ。翼のあたりに白い霜をまとっているのがわかる
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狩りも終盤。夕刻の空模様に変化し、イヴェルカーナの姿も見え方が変化している
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今度は筆者にとって激しく苦戦した記憶しかない、ティガレックスだ。「渡りの凍て地」が舞台だが、ティガレックスのいる場所は氷河地帯で、氷で覆われた大地も遠くの景色もまったく違っている。厚い氷の感触も青白い色で寒々とした印象だし、場所によっては氷河が水に浮かんでいてフワフワと揺れていることもある。氷河のクレパスに流れ込んだ水は足を踏み入れるのが躊躇われるような冷たい色だし、底の氷河や水に浮いた氷の破片などまでものすごくリアルに描かれている。

そして、ここで感心したのは「音」だ。ティガレックスが巨大な爪で氷河を突進してくるときは、ガチガチと氷を削るような音が目の前に迫ってくるし、巨大な顎が画面いっぱいに迫って噛みついてくるときには、咆吼や荒い息づかいが迫ってくる。

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KJ-85X9500Gは、画面下部にあるメインスピーカーに加えて、画面の上部の両サイドに「サウンドポジショニング トゥイーター」を搭載し、画面から音が出ているような音場の再現を可能にしている。さらに、Dolby Atmos対応なので、MHW:アイスボーンの5.1chサラウンド音声もバーチャル再生によって再現できる。そのため、ティガレックスの巨大な動きも自由自在に動き回るし、こちらに迫ってくる。

もちろん、本格的な5.1chサラウンドシステムで聴けば、その音は後方までも含めて動き回るし、氷河地帯の寒々しい風の音が周囲を包み込む。なんといっても、モンスターに追われているとき、真後ろから息づかいや足音が聴こえてくるのが怖い。

そこまでのリアルなサラウンド感をテレビの内蔵スピーカーに求めるのは厳しいが、少なくとも画面に見えるハンターやモンスターのたてる音がしっかりと画面に定位し、耳元で咆吼する感じで音が迫ってくるのは十分に立派なものだ。これは、有機ELテレビのKJ-77A9Gも同様で、画面が音を出す「アコースティックサーフェス オーディオプラス」のため、映像の一体感はさらに増す。モンスターの咆吼が目の前に迫ってくるような迫力も同様だ。

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薄型テレビの音質の良さにも驚くが、MHW:アイスボーンでは音作りの設計も変わっているという。モンスターハンター:ワールド(以下「MHW」)では、映画館で見ても満足のできる音響を目標としていたというが、今回はあらゆる視聴環境に適した良い音を目指したそうだ。例えば、「MHW」ではフィールドを実際に歩いているような空気感を出すため、さまざまな音の距離感を遠くしていた。つまり空間の広さを意識していたわけだ。それに対し、MHW:アイスボーンでは、遠距離の音の距離感はそのままで、近距離にいるモンスターなどがたてる音を強化したそうだ。目の前にいるモンスターの足音や身体がたてる音、息づかいなどが追加され、まさしく目の前にモンスターがいるようなリアリティーを高めている。

こうした近距離の音を強調した音のデザインは、薄型テレビのスピーカーと相性が良く、モンスターが近くに居るときと、遠くに居るときの違いがよりわかりやすくなっているという。こうした音がリアルに、しかも画面と一体となって聞こえてくることで、より迫力を増しているのだろう。後でじっくりと聞かせてもらったが、映像はもちろんのこと音響面でもかなり力の入った制作を行なっているのが、本作なのだ。

実際のところ、MHW:アイスボーンはリアルな映像だけでなく、音響も非常に優れている。密林の中にいれば、そこかしこから鳥や獣の気配が音で表現されているし、ハンターの足音や息づかいも生々しい。それなりの音量で聴くと、その迫力は倍増する。大音量は無理という人は、ヘッドフォンを使ってほしい。オプションの音質調整でヘッドフォン用のモードも用意されているし、ヘッドフォン用のサラウンド機能もある。

まさに映画と言える作り込み。リアルな映像と音のために世界中でロケを敢行

狩りの方はひとまずここで終了。ここからは、カプコンの担当者に本作の作り込みについていろいろと聞いてみた。モンスターハンターシリーズは、まさにそこで生活をしているかのような世界観の作り込みがなされているが、MHWになってマップの概念がなくなるなど、より広大な世界を体感できるものになっている。そこでさらにこだわったのが、世界を構築する“映像と音”だ。

まず、映像、音ともに、素材となるものは実際にロケを行なって収録しているそうだ。グラフィックでは、オーストラリアの東部、中央部、タスマニア島にロケハンを実施。地域ごとの気候帯の違いがフィールドのコンセプトに合っていることが理由だという。

新しいステージである「渡りの凍て地」では、当然ながら氷と雪の表現にはこだわったとのこと。色味は寒色系の色を中心としてなるべく寒さが伝わるようにし、細かな雪のディテール、氷の質感もリアリティーを意識し、HDRでは雪山の光の反射のまぶしい感じを出しつつも、雪や氷のディテールが失われないように光源やフィルターを調整しているそうだ。

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映像面での新しいアプローチとしては、大画面4Kテレビで細かなディテールまで明瞭に見えるようになったため、集会所や拠点でのリアルな生活感がより感じ取れるようにしたとのこと。なお、アイルーのアクションについては、さらに強化されたようで、食事のシーンをはじめ、フィールド上でも場所に応じてさまざまなアクションをするようだ。

「モンスターハンター」シリーズは、以前の作品のころから、モンスターを狩るだけでなく、さまざまなフィールドを探検し、自分だけの絶景を探してSNSにアップするような楽しみ方をする人もたくさんいる。本作でカメラ撮影機能が搭載されたのも、こうした楽しみに応えるためとか。そのため、時間帯によるフィールドの景色の変化なども、露出の調整などを行なって、白飛びしたり、キャラクターや景色の質感が見えづらくなることを防いでおり、いろいろな場所での撮影を楽しんでほしいそうだ。なお、制作時のテストでは、45~60型くらいのテレビをメインで使用してチェックしているそうだ。

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サウンド面の力の入れ方も素晴らしい。「渡りの凍て地」のためには、2月の新潟で収録した雪山の環境音を使用しているそうだ。風に舞う雪の音、遠くで唸る冷たい風の感触などはこうした生の音によって寒冷地の空気感を出しているという。また、氷の音は、その独特な響きを再現するため、音源の収録スタジオに大量の氷を積み重ね、小石を混ぜる、反射板を併用するといった工夫を加えながら、本物っぽい絶妙なニュアンスの音に仕上げたという。

そして、モンスターの咆吼やさまざまな音は、ファンタジー作品の魔獣ではなく、実際に自然界に存在していても違和感のない獣にすることを目指したそうだ。炎を吐くようなモンスターであっても、体内に炎を出す仕組みがあることを考えつつ音を作ったとか。例えば、氷原に生息する魚竜種のブラントドスは、氷原や固い地面を掘り進むので、地面を掘る動作する予兆を示す音に除雪機のエンジン音を足して掘るイメージと馬力感を足したとか。また、古龍のイヴェルカーナは、冷気を操る設定から、動作音も特徴を持たせ、ガラスや陶器(音が綺麗になりすぎる)、石(味気ない音になる)などの素材を試し、最終的には鎖の擦れる音を足して、石の硬質さと金属的な響きが組み合わされたものにしたそうだ。

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このほか、本作はモンスター同士のなわばり争いが発生するどころか、モンスターが同時に何体も現れてしっちゃかめっちゃかになることが増えている。このとき、複数のモンスターの声が同時に出て、迫力もたっぷりだ。筆者は基本的に爆音でプレイしているので、そのあたりは大歓迎だ。しかもそんな爆音の中でも不思議ときちんとそれぞれのモンスターの咆吼が聴き分けられるし、モンスターにもみくちゃにされているハンターの声や動作音もしっかり再現できている。

こういう場合、無制限に音を重ねて音量が大きくならないようにしているとは思うが、これで音の聞こえ方が変わってしまうようなこともなく、実に巧みに処理されている。なかなかマニアックな部分だが、ここにもやはり秘密はあった。

音量の制限については、マルチバンドコンプレッションを導入し、低音たっぷりのモンスターの咆吼が複数重なるような状況では、低音成分の音量だけを抑えることが可能だという。これによって、全体の迫力を下げずに聴き心地の良い音にすることができているそうだ。

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また、モンスター出現時やさまざまなシチュエーション別にたくさんの曲が用意されている音楽は、現れるモンスターごとに曲が切り替わり、モンスターが遠ざかるとその曲の音量も小さくなるなど、演出が巧みだ。音楽自体のダイナミックレンジも広いので、BGMとSEはまとめて制御するのではなく、それぞれ独立したマルチバンドコンプレッションの設定を行なっているそうだ。ゲームは映画と違って、その場面で発生する音はプレイヤーごとに変化する。これらを破綻させることなくどう制御しているのかは興味深いところだったが、やはり映画とはまた違う音作りの秘密がありそうだ。

なお、このマルチバンドコンプレッションの設定に関わるのが、オプションのサウンド項目にある「ダイナミックレンジ設定」と「サウンド機器出力」。この設定に応じて、ゲーム内でのマルチバンドコンプレッションの制御が変化する。使っている機器に合わせるのが基本だが、好みに合わせて色々な組み合わせを試して、自分のプレイ環境に合った設定を探してほしいとのこと。

ゲームでありながら、その作り込みは映画そのもの。大画面でプレイしたいコンテンツ

取材が終わった帰り道で、秋葉原に寄ってPS4 Proを購入してから帰宅したのは言うまでもない。もはやゲームは映画と変わらないレベルでのリアリティーを追求した作品が登場してきている。今までもそうしたゲームはあったが、この日に77型や85型という大画面とHDRの高画質で体験したゲームは、今まではとは別格であり、中高生のときからゲームに夢中になってきた筆者の理想とするものがあった。

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必ずしもゲームがすべて大画面向きの高画質・高音質である必要はない。しかし、4K HDRやサラウンドシステムといった現代のオーディオ・ビジュアル環境で存分に楽しめるゲームが高い人気を持っているのも確かだ。作り手の心意気はまさしく映画と同じかそれ以上のものだ。映画と同等のコンテンツとして扱って何の問題があるだろうか? まだ使えるPS4があるからとPS4 Proの導入を躊躇するわりに、画質や音が良いという理由だけでBDプレーヤーを買い換えることは迷わない自分にも言い聞かせたい。ゲームのために大画面テレビを買うことがあってもいいじゃないか。

イヴェルカーナの神々しい姿を85型の大画面で初めて見たときの体験は忘れがたい。自宅では(装備を調えるために)何度も狩っているティガレックスが目の前に突進してきたときの迫力は恐怖さえ覚えた。モンスター狩りだけでなく、広大な世界の美しい景色を楽しむだけでも、大画面での感動は素晴らしい。今、MHW:アイスボーンに夢中になっている人は、ぜひとも大画面テレビの導入を検討してみてほしい。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。