小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1062回
神アプデした「Echo Show 15」は、もはや「FireTV 15」だった
2023年1月11日 08:00
あのEcho Show 15に神アプデ
これまでディスプレイ付きEchoは、初代7インチ(日本未発売)、5インチ、8インチ、10インチを展開してきた。ディスプレイの用途としては、スケジュールや天気、メモなど、これまで音声コマンドでいちいち聞いてきたことを常時表示するもの、という位置づけである。また前面カメラを使ってのビデオ通話もできた。
昨年4月7日、アマゾンはディスプレイ付きEchoとしては最大サイズとなる「Echo Show 15」の発売を開始した。フルHDの15インチディスプレイを備えている事から、Prime VideoやNetflixなどの動画サービスにも使えると期待された。しかし設置方法としては壁掛けがメインに想定されており、期待と実態がすれ違っているような印象を受けたものだった。
Echo Show 15をテーブル等に設置するには、別売のスタンドが必要になる。ただスタンドを使ってデスクサイドに置いても、映像の外部入力があるわけでもないので、何かのセカンドディスプレイとして使えるわけでもなかった。
それが昨年12月、Echo Show 15にFire TV機能を搭載する無償アップデートが開始された。他のEcho Showは対象外で、15のみのアップデートである。加えてFire TV用のリモコンも使えるという。
筆者宅のEcho Show 15もさっそくアップデートし、年末からお正月にかけて、便利に使っているところだ。このアップデートで何が変わるのか、ご紹介したい。
多彩な操作方法
AmazonのEcho Show 15の販売ページを見ると、すでに「Fire TV機能搭載」と書かれているので、これから新規に買われる方はすでにアップデートされた状態のものが届くものと思われる。単体(リモコンなし)が29,980円、Fire TV用リモコンが付属したものが31,480円となっている。差額は1,500円。別途単体でリモコンだけ買うと2,980円なので、Fire TV機能を使うならリモコン付属モデルを買った方がお得だ。
すでにお持ちの方は、アップデートで対応させる必要がある。筆者が試したところ、「設定」メニューから通常のアップデート手順では、Fire TV機能のアップデートまで到達できなかった。Echo Show 15を工場出荷時に初期化してからアップデートすると、無事Fire TV機能のアップデータが適用された。
アップデートが適用されると、これまでユーザーのアイコンが表示されていたところがFire TVへの切り替えボタンになる。またプルダウンメニューも、従来「ビデオ」だったところが「Fire TV」になり、ここからも切り替えできる。
リモコンのペアリングは、「設定」メニューの中に「Fire TVの設定」という項目ができているので、その中の「Fire TVリモコン」から設定できる。詳しい手順はアマゾンのサイトにヘルプがあるので、そちらを参照して欲しい。
試しに手元にあった「Fire TV Stick 4K Max」付属のリモコンで試してみたところ、無事ペアリングできた。ただ、リモコンは複数のFire TVに同時に対応できないので、このままではFire TV Stick 4K Maxが操作できなくなる。そこで別売のリモコンも購入した。
別売されているものは「2021年発売 第3世代」と書いてあるが、2021年9月に購入したFire TV Stick 4K Max付属リモコンと比較してみると、ショートカットボタンがAmazon MusicからABEMAに変更されていた。両方ペアリングして試してみたが、Echo Show 15で対応したFire TV内には、Amazon Music機能が削られているため、リモコン側のAmazon Musicボタンは機能しなかった。元々Echo Show 15は標準機能でAmazon Musicには対応していることから、機能の重複を避けたのだろう。
リモコンを購入しなくても、操作方法は他にもある。もっとも簡易的な操作方法は、画面上に表示されるソフトウェアリモコンを使うことだ。十字キーを始め、リモコン中央部の主要キーが画面上に表示されるので、これをタッチしてUIの操作を行なう。ただ、本体が手に取れるサイズでもないので、わざわざ画面に手を伸ばしてちょこちょこ操作するのは、ちょっと面倒な感じがある。
こうしたリモコン画面を使うぐらいなら、タブレットのように各サービスの画面上のUIを直接タッチ操作できないのかと思われるだろう。現時点ではAmazon Primeビデオだけは直接操作できるが、他のサービスは残念ながらできない。これは動作するアプリが、Fire TV Stick等のテレビ画面上で動作するタイプだからだろう。今後タッチ操作が可能になるかどうかは、現時点では不明である。
そのほかにも、スマートフォン向けに「Fire TV」というリモコンアプリが提供されている。簡単なペアリング操作でスマホで操作できるので、これ以上リモコンを増やしたくないと言う人にはいいソリューションである。
日常使いの動画端末として
筆者の場合は別売リモコンも購入したわけだが、これがあるとないとでは、アップデートの意味合いがずいぶん違ってくる。リモコンがない場合、基本的にはEcho Showの機能の一部としてFire TVが使えるというイメージだが、リモコンがあれば、ホームボタンを押すたびにEcho ShowとFire TVの画面が交互に入れ替わる。ある意味Echo Show 15が、Fire TV専用機に切り替わるわけである。
正直これまでEcho Show 15は、機能的に静的な情報しか表示できないティッカー的な存在で、やや持て余し気味だった。だがリモコン一発でFire TV端末に化けることに気づいて以降は壁から外し、スタンドに取り付けて仕事机の端に常設している。
仕事中は「NHK+」で朝のニュースを再生し、音声をミュートして字幕をONにする。ニュースをチラ見しながら、気になるものだけ音声ONで視聴している。改めて15インチぐらいの小型のテレビを買っても同じ事かもしれないが、アンテナ線接続も不要なので、どこにでも設置や移動ができる。
また基本的にライブで見るわけではなく、止めたり戻したりが自由にできるので、時間的な制約を受けない。つまりそんなに興味が無いものはやり過ごしてもいいが、見たいところだけはガッツリ見られるので、タイパ(タイムパフォーマンス)がいいわけである。
またABEMAにはライブのニュース専門チャンネルがあり、NHKニュースを見終わるとそちらへ切り替える。字幕機能がないのが難点だが、ワールドカップ全試合生中継で株を上げたABEMAが、ニュースチャンネルとしても優秀であることがわかった。
もう1つのメリットは、意外に低消費電力というところだ。筆者は移動が楽なように、電源をAC出力のついたモバイルバッテリーからとっている。消費電力はだいたい13~14Wぐらいなので、手持ちのバッテリーで5時間ぐらい見られる事になる。Echo Show的な機能はほとんど使っていないので、Fire TVの利用が終わったらバチコーンとポータブルバッテリーの電源を切っている。必要な時に電源を入れて使う、ある意味完全ワイヤレスの「Fire TV 15」なのである。
仕事終わりには、そのままお笑い番組を見る事もある。仕事用のモニターとして使っている40インチ 4KテレビにはFire TV Stick 4Kがささっているので、そちらで見る事もできるのだが、椅子や机がかなり「ちゃんとみる」高さなので、リラックスして机の上に足を投げ出して見られるEcho Show 15ぐらいがちょうどいいのである。
お正月の最もダラダラした利用法としては、ベッドサイドに設置してベッドに潜り込み、横になりながらM1グランプリの過去の敗者復活戦を見るという技がある。スマホやタブレットがあるじゃないかと思われるかもしれないが、手で持つのが面倒だし、スピーカー再生では音質面で不満がある。一方Echo Show 15はそもそも「スマートスピーカー」なので、コンテンツ再生に十分な性能を持っている。
実はEcho Show 15用スタンドは、縦置きにもできるよう、ピボット機能がついている。横になって見る場合、ピボット機能で一緒に横倒しにしたいのだが、Echo Show 15にはローテーションOFF機能がないので、画面が自動で回転してしまう。これさえなければベッドサイドディスプレイとしては完璧だったのだが、惜しいところだ。
総論
そもそもEcho Showシリーズは、タブレットでもFire TV端末でもなく、情報をダラダラ流しておくスマートディスプレイ端末である。Echo Show 15も、最初のうちは写真などが表示されて楽しかったが、すぐ飽きて、その後は役に立っているんだか立っていないんだかよくわかんない端末になっていた。5インチぐらいなら目覚まし時計代わりで納得できるが、15インチともなれば、もっと積極的な存在意義を求めたくなる。
それがFire TV化されることによって、単なる掲示板ではなく、積極的にアクセスするディスプレイデバイスに化けた。汎用ディスプレイというわけではないので、できることはAmazonの掌中に握られているわけだが、単なるスマートディスプレイ時代からすれば、確実に活用頻度は上がった。これはひたすら大画面高解像度やDolby Atmosなどのリッチ方向に走っていたFire TV事業にとっても、新しい市場なのではないだろうか。
米Amazonは昨年後半、海外メディアからEcho/Alexaのスマートスピーカー事業が赤字垂れ流し状態であることをすっぱ抜かれたりしているところではある。長年AV機器を追いかけている筆者としても、次にどうなりたいのかが予測できない事業という評価なのだが、Echo Show 15に関しては一皮剥けて、ありそうでなかった端末となった。案外こうした方向性が、次のビジネスの芽になるのかもしれない。