プレイバック2019

思い切って買ったJVC「DLA-V9R」が「Frame Adapt HDR」で超進化! by 山本浩司

ぼくの今年いちばんの大きな買い物は、JVCのプロジェクター「DLA-V9R」(200万円)だった。このシリーズは3モデルあり、最初は弟モデルのDLA-V7(100万円)を買うつもりだった。なにせ値段が100万円も違うわけだから。しかし、実際に両モデルをメーカーから拝借して自室でシビアに見比べ、V9Rに決めた。「100万円の価格差、仕方ない……」と思わせる違いが実感できたからだ。

JVCのプロジェクター「DLA-V9R」

V7、V9RともにJVCオリジナルの反射型液晶素子D-ILA の4Kパネル搭載機で、シャーシ(基本映像処理回路や筐体、電源回路)は共通。違いは大きく2つある。レンズブロックと8K e-shiftの有り無しだ。

実際にその画質をV7と見比べてみると、映像の力感、フォーカス感、色再現のヴィヴィッドさ、立体感などで無視できない違いが実感できたのである。なによりお金のかかった前玉100mmの16群18枚オールガラス・オールアルミ鏡筒レンズの威力なのだろうと思う(V7は前玉65mmの15群17枚オールガラスレンズ)。

また構成画素を斜めに0.5画素分ずらして時分割表示する8K e-shiftの効果も顕著で、とくにフィルム収録作品のグレイン(銀粒子)を繊細に描写してノイジーにならない点が好ましい。4K e-shiftでは生理的にしっくりこないエンハンス感があったが、8K e-shiftにはそのイヤな感じがしないのである。やはり元画素が4K(4,096×2,160)と高精細であることがその理由なのだろう。

UHD Blu-rayなどのHDR10コンテンツに対しては、ソフトに記録されたマスタリング・メタデータ(MAX CLL=最大輝度、MAX FALL=フレームごとの最大平均輝度)を参照して輝度と階調を最適化する「オートトーンマッピング」機能を実装していたが、現実問題としてマスタリング・データが記録されていない作品はけっこう多いし、またそのデータの信憑性が疑われるソフトも散見された。そこで観るソフトごとに画質調整項目の「ピクチャートーン」を、自分の感覚に合わせていじりながらHDR10コンテンツを観ていたのだが、10月9日、この困った問題を一気に解決するファームウェアがアップデートされた。

Frame Adapt HDRのイメージ

「Frame Adapt HDR」と名づけられたこの機能はスタティック・マスタリング・データ依存を止め、HDR10コンテンツのフレームごとの最大輝度を同社独自のアルゴリズムで瞬時に解析して最適な輝度と階調を導き出すというもの。同時に映像データの彩度・色相・明度も解析、色合いの正確さや明部の色抜けを抑えているという。加えて従来12bitだったガンマ処理精度を18bitまで高めて、いっそう緻密な階調表現を目指したというのがJVCの言い分だ。

果たしてその効能は予想以上のすばらしさだった。UHD BD「マリアンヌ」の夜闇の空襲シーンなど、暗部がつぶれて判然としなかった住居のディティールや赤やカーキ色の服の色合いが見事に浮かび上がってきて、ガクゼンとした。サブシステムで使っている65型有機ELテレビを上回る映像の見通しのよさなのである。

ちなみにこの無料のファームウェアはJVCのウェブサイトからダウンロードし、USBメモリーにコピーしてプロジェクター本体に挿せばアップデートが完了する。もちろんV9Rの弟モデルであるDLA-V7/V5でもこの機能を活用できる。

JVCプロジェクター開発陣の映画を観る力、映像を解析するセンスの高さには以前から注目していたが、今回のFrame Adapt HDRの提案は、そのなかでも白眉と言うべきもの。高級プロジェクターで高品位なホームシアターを実践したい方にはこのFrame Adapt HDR付Vシリーズの購入を断然お勧めします。まだこのファームウェアのアップデートを完了していないVシリーズ・オーナーがもしもいらっしゃれば、今すぐダウンロードを。ぼく自身はアップデート以来、UHD BD購入にますます弾みがついた感じです。

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。