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アンプ内蔵ストリーマー、HDMIも搭載で驚異の5万円台。「WiiM AMP」を使ってみた

アンプ内蔵のオールインワンモデル「WiiM AMP」のシルバー

スピーカーを接続するだけで、ネットワークオーディオ環境が完成するアンプ

Amazon MusicやSpotify、Apple Musicなど定額制ストリーミングサービスの存在感が増してきた2022年頃から、SNSで「WiiM Mini」という小型のストリーマー(ネットワークプレーヤー)を見かけるケースが増えた。

WiiMはアメリカに本拠地を構えるLinkplay Technology社のブランドで、同社は本国でシステムオンモジュール(SoM)チップの開発や供給、それらを利用したホームオーディオ事業、照明器具などのスマート家電事業を展開。さらにクラウドサービス事業なども行なう先進的な企業だ。

WiiM Mini

WiiM Miniは、コンパクトだが多くのストリーミングサービスに対応し、特に日本では数が少ないAmazon Musicに対応する機種となっている。登場時、その音質については評価が分かれていたものの、1万円台という衝撃的な価格設定により一般的なゼネラル層からオーディオファンまで知名度を高めていた。

僕が注目したのは、本製品がアジア圏ではなくアメリカのスタートアップ企業が手がけていたと言う点だったが、その後も「WiiM Pro」「WiiM Pro Plus」など多くのバリエーションが登場した。

WiiM AMP

そしてこの4月に満を持して発売されたのが、アンプ内蔵のオールインワンモデル「WiiM AMP」(オープンプライス/実売約51,975円)である。「アンプを内蔵しない一般的なパッシブスピーカーを現代のストリーミング対応デバイスへアップグレード」がコンセプト。

省スペース設計のストリーマーとして、Amazon Music、Deezer、TuneIn、Spotify、TIDAL、Qobuzといった各種音楽ストリーミングサービスに対応しつつ、小型の筐体内には出力の大きいDクラスアンプを内蔵する1台だ。スマホやタブレットにインストールする「操作アプリ」の使いやすさも考慮した作りになっている。

確かに最近、サブスクをメインソースとして良い音で音楽を聴きたいというニーズが増えている。だけど機材は可能な限りシンプルにしたいものだ。

そして可能ならデザインも良く、音質的にはお気に入りのスピーカーと組み合わせたり、すでに家にあるスピーカーを活かしたいという方も増えているので、タイミングとしても良いしWiiM AMPのコンセプトには強く同意できる。では、気になる音質や使い勝手はどうなのか? 実機を借りて使ってみよう。

高級感あるボディ、付属品にも抜かりなし

WiiM AMPのパッケージ

まず思ったのは、WiiM AMPが入っている箱が Apple社のMacBookやiPadの箱と共通の意図を感じるセンスのよいものだったということ。僕がオーディオ製品のレビューで外箱について述べることは少ないが、この箱からして開封前のワクワクとした気持ちを高めてくれたのは確かだ。

蓋を開けたところ

付属品は、電源ケーブル、HDMIケーブル、光デジタルケーブル、RCAラインケーブル、リモコン。ケーブルが充実しているので、すぐに機器と接続できる。また、HDMIケーブルやRCAケーブルは端子部が金属製のしっかりとしたものが同梱されていた。ここまでは手抜きを一切感じさせない。

付属ケーブルの端子部は金属パーツが使われ本格的なもの

WiiM AMPのサイズは190×190×63mmで、上から見たMac Miniとほぼ同サイズ。アルミニウム素材のボディは、角のラウンド形状やホワイトで統一されたLEDステータスライト類、ボリュームノブまで品位が高い。カラーはスペースグレーとシルバーの2色だが、どちらのカラーもMac BookなどのApple製品との同一傾向の色味だ。

WiiMの初期モデルは樹脂製のボディだったことを考えると質感が大きく上がっている。2000年代の前半、リビングやオーディオルームのインテリアにこだわった結果、当時仕事で使っていたWindowsパソコンをデザインだけが理由で思い切ってMacに変えた筆者としてはかなり嬉しい。

筐体はアルミニウム素材が使われ、ボリュームノブまで高品位
スペースグレー(左)もラインナップしている

入出力端子は背面に集中して搭載されている。入力は光デジタル、LINE(RCA)に加え、ARC対応のHDMI端子を各1系統、そして1組のスピーカー出力を搭載する。小型ボディを活かしデスクトップで使用するケースもあるので、欲を言えば3.5mmのシングルエンドでも良いのでヘッドフォン端子を搭載してほしかった。

背面
スピーカーターミナル

一つのメリットと言えるのはサブウーファー出力端子(RCA)を搭載すること。この端子からの出力は20~250Hzのクロスオーバー調整が可能なので、サブウーファー個別の周波数特性とマッチングをとることもできる。リビングなどのテレビ環境で使う場合、サブウーファーを増設すると映画などのサウンドの迫力を大きく向上できるのだ。

なお、HDMIの対応フォーマットはステレオPCMで、ドルビーデジタルやDTSには対応していないが、AVアンプではないのでこの仕様で問題はない。

ネットワーク周りの仕様については、有線LAN端子とWi-Fi(802.11 b/g/n/ac 2.4GHz/5GHz)の両方に対応。さらにBluetoothレシーバー機能も持つ。Chromecastにも対応するので、スマホ等の音声を本機で再生することもできる。

ストリーミングサービスは、Amazon Music、Deezer、Spotifyに加え、日本未サービスだがQobuzやTIDALにも対応。TuneInやvTunerなどのポッドキャスト再生も可能とほぼ万全な内容だ。

ハイレゾファイルの再生については、本体に接続したUSBメモリ等や、NASなどからのDLNAのネットワーク再生に対応し、さらに統合再生ソリューションroonへもエンドポイントのRoon Readyとして対応している。(roonを再生するには同一ネットワーク上にroonサーバーの設置が必要だ)

roon使用時のシグナルパス確認画面

加えてユーザビリティを上げる機能として、複数のWiiMデバイスを利用したマルチルーム再生やAmazon Alexa、Google Assistantなどのスマートデバイスからの音声コントロール機能も搭載する。

オーディオ回路部については、音質を左右する1つの要素であるDACチップにESSのSabre「ESS 9018 K2M」を使用。

アンプのデバイスはTexas Instruments社の「TPA 3255」Class-Dパワーアンプを搭載する。価格帯以上の良質なパーツが投入される堅実な回路設計だ。

セットアップは簡単。小さいがパワーのあるアンプ

実際に使ってみると、初期設定はスムーズだ。大まかな流れとしては、

  • 1:事前にスマホやタブレットに操作アプリ「Wiim Home」をインストール
  • 2:WiiM AMPの電源を入れてアプリを立ち上げる
  • 3:WiiM AMPを認識するので、Wi-Fiネットワークに追加、デバイスの名前(もしくは使用場所 → マルチルーム機能を使いたい場合はぜひ)を選択
  • 4:付属のリモコンとペアリング

といったシンプルな流れだ。

アプリ使用時のアカウント登録や起動時のログインもいらず、スムーズにいけば10分もかからずに設定が完了する。

初期設定画面

今回の試聴では、コンパクトな筐体を活かすため自室のデスクトップ上にオーディオ環境を設置した。WiiM AMPと、ELACの2ウェイブックシェルフスピーカー「Debut B5.2」(ペア66,000円)を設置して、両者をスピーカーケーブルでつなぐだけでデスクトップオーディオ環境が完成!

ELACの2ウェイブックシェルフスピーカー「Debut B5.2」
WiiM AMPとDebut B5.2だけでデスクトップオーディオが完成

洗練されたWiiM AMPのデザインはデスクトップに上質な音楽再生空間を作り出す。常設しているMacBookやStudio Displayなどのデザインとも相性が良くて嬉しかった。

まずは、WiiMの人気が高まった理由の一つである対応サービスとしてAmazon Music Unlimited(旧HD)を利用してみよう。

邦楽ヴァイラルチャート上位のNewJeans「‘How Sweet’」を聞く。音楽が流れた瞬間、「アンプにパワーがあるな」と感じる。音のスピード感が早く、音色は開放的で明るく、楽器のディテールもシャープ。WiiM AMPの音はカッコ良いのである。

質感としては高音域から低音域にかけての全帯域でエッジが立つハイファイな音で、 Debut B5.2の135mm径のウーファーを、正確なピストンモーションで駆動する。さらにコストをかければ、次の領域に到達できるとは思うが、約5万円のネットワークアンプとしては、予想よりも随分と良い音に聞こえ感心した。

続いて本体にUSBメモリを接続して、今年のグラミー賞でポップス部門・最優秀楽曲賞を受賞したアメリカ合衆国の女性歌手、オリヴィア・ロドリゴの「ヴァンパイア」を再生したのだが、イントロのピアノの質感が美しく、ボーカルの音像もシャープで、バックミュージックを構成するシンセサイザーの音が速い。

ローレンジはしっかりダンピングされており、複数の低音楽器のダイナミクスへの描きわけにも良質で、メロディアスな音楽性を上手く表現してくれる。ちなみに、D級アンプの音が良くなるまでに10分ほどの時間がかかるようで、時間が経つと低音域がより躍動的になる。

アプリ「WiiM Home」の使い勝手をチェック

ストリーマー製品で音質と並ぶ重要な評価ポイントである、操作アプリ「WiiM Home」の使い勝手もレビューしよう。

本アプリは画面サイズの違うスマホとタブレット用にそれぞれ別々のUIを備えており、画面下部から以下のメニューが選択できる。

  • ブラウズ:ソース選択画面で、サブスクサービスの選択やログイン、Bluetooth、HDMI、ライン/光などの入力切り替えを行なう
  • デバイス:WiiM AMPの動作ステイタスを表示。さらにスピーカー名称の変更やアラーム時計、Wi-Fiネットワークの情報(受信感度、Wi-Fi強度、IPアドレスの表示etc)のボリューム調整もこの画面で
  • 検索:楽曲、アーティスト、アルバム名を入力することで、契約しているストリーミングサービスやNAS/USBに保存されたファイルなどから縦断検索が行える。表示レスポンスも早い
  • 設定:アプリのバージョン、ユーザーマニュアル等を表示

アプリの操作性は合格だ。GUIが見やすく、タッチレスポンスも速いことが幸いして使いやすい。音楽再生時に、ソース選択 → 音源を探す → 操作指示を出す → 再生中の楽曲情報を確認する、という一連の流れをスムースに実行できた。アプリの使い勝手が良いと快適に音楽を聴ける。

再生中の画面。音質などの情報も確認できる
縦断検索も可能
iPad版の画面
音楽ソースの選択画面
音楽配信サービスの選択画面

HDMI ARCを使い、リビングのテレビでも活躍

テレビとも組み合わせてみる

デスクトップオーディオだけではもったいない。WiiM AMPをリビングのテレビ環境に投入した。

最近はリビングのテレビで、Netflixなどの動画サブスクサービスを見たり、YouTubeで映画や音楽を楽しむ人が増えている。そんな時、より良い音が出せたら、作品への没入感は大きく上がる。

まず、コンパクトなWiiM AMPは設置性が高いことが魅力。写真のように全く場所をとらない。ARC(eARC)対応HDMI端子を搭載するLGの4K液晶テレビをコアに、WiiM AMPをHDMIケーブル1本で結び、付属リモコン/アプリでソースをHDMI入力に切り替えて設置完了。さらにELACのサブウーファー「Debut S10.2」(68,200円)を追加で投入した。

テレビとはHDMIケーブル1本で接続できる
WiiM AMP付属のリモコン
ELACのサブウーファー「Debut S10.2」

Apple TV 4K端末をソース機器として、Apple TVから2023年公開のレース映画『グランツーリスモ』を再生した。

Apple TV 4K(左)ほどではないが、WiiM AMPも十分小さいのがわかる

音質については、サブウーファーの「Debut S10.2」を追加したこともあり、テレビ純正のスピーカーとの音質差はあまりにも大きい。

ポイントは4点ある。まず1点目は、高音域から低音域にかけて全ての領域で音のディテールが明瞭になる。セリフからエンジンの音まで全ての音がより聞こえやすくなり、同時に別々の音が重なった時も音がダンゴにならない。

2点目は迫力がまるで違うことだ。サブウーファー投入効果が大きく、レーシングカーの迫力ある低音域のエグゾーストノートやスキール音など、没入感を高める盛り上がりのシーンでは、全く表現力が違ってくる。

3点目は小さな音が埋もれないこと。多くの映画では必ずあるシリアスなシーンでの微小な環境音がしっかりと聞こえる。ヤン・マーデンボローがレース前にいる控え室でのシーンは、初レースで緊張する主人公の気持ちがよく伝わってくる。

4点目は音の左右への広がりが増えること。テレビの音環境をよくするというとサウンドバーが人気だが、作品への理解度を上げ、もう一歩映画館のような音に近づけたいなら、テレビの左右にスピーカーを置き、サブウーファーを追加できるこのシステムの導入は大いにありだと感じた。

改めて書くが、コンパクトなボディだから設置しやすいし、インテリアに合わせたスピーカーもチョイスできる。サブウーファーについては、なくても大きく音質を上げられるが、追加すればより映画全体の迫力を出すことも可能だろう。

またWiiM AMPのHDMI端子はテレビの電源やボリュームに連動するCEC機能を持つので、テレビのリモコン1つで電源ON/OFFやボリューム調整も可能だ。(CEC機能はメーカーやテレビなどで相性がある)

また、HDMI端子を搭載しないテレビでも、テレビ側に光デジタル端子がついていれば接続可能だ。

Alexaから音声コントロールでも再生した

この状態でAmazon Alexaから音声コントロールによる音楽再生も試した。スマホ/タブレットのAlexaアプリから「WiiM AMP」を認識させ、グループを指定(今回はオーディオルーム)、あとは「オーディオルームから音楽を流して」などと呼び掛ければ、ハンズフリーでWiiM AMPから音楽を再生できる。

家族に気軽に使ってもらいたい場合や、リビングなどの生活空間に設置した時は本当に便利だ。

コンパクトでハイコスパな新時代のアンプ

日本では、デザインに大きさ、そして音のフィロソフィーも異なるさまざまなスピーカーが発売されているが、それらスピーカーと組み合わせるだけでオーディオ環境が構築できるアンプ内蔵型ストリーマーは、1つの市場を形成しそうな勢いだ。

そんな中、単体のストリーマーで評価の高かったWiiMシリーズ初のアンプ内蔵モデルとなるWiiM AMPの登場で、好みのシステムを極々シンプルに、しかもリーズナブルな価格で構築できるようになった。

WiiMシリーズが高く評価されていた理由の一つである、サブスクサービスへの対応力の高さや優れたユーザビリティは継承しつつ、スピーカーを追加するだけでシステムが完成できる手軽さこそ、WiiM AMP最大のメリットだろう。

ネットワーク再生だけでなく、LINE入力など豊富なインターフェイスを備えることで、既存のCDプレーヤーやアナログプレーヤー(フォノイコライザー搭載モデル)を活かすこともできる。使い勝手の良さと発展性、そしてコストパフォーマンスの良さが光るアンプだ。

土方久明