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4K HDR動画対応の「α7R III」。AF追従強化、デュアルスロット。24-105mm F4レンズも
2017年10月25日 15:35
ソニーは、35mmフルサイズCMOSセンサーを搭載した、Eマウントのミラーレスデジタル一眼カメラ「α7R III」(ILCE-7RM3)を11月25日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は37万円前後。
'13年発売の「α7R」、'15年の「α7R II」に続く第3世代モデルで、高画質化や高速連写性能、AF性能を強化。新たに4K HDR対応など動画撮影機能も向上している。また、リレー記録や同時記録できるデュアルスロットや、モバイルバッテリ給電対応のUSB Type-C端子も採用した。
また、Gレンズの新モデルとして、中望遠までカバーし、本格的な静止画/動画撮影に対応する「FE 24-105mm F4 G OSS」も11月25日に発売する。価格は16万5,000円。
中感度ノイズ低減、電子シャッターでも秒10コマ連写、超高精細撮影も
α7R IIと同じく、35mmフルサイズで有効4,240万画素の裏面照射型「Exmor R CMOS」センサーを搭載。画像処理エンジンのBIONZ Xはα7R IIに比べ1.8倍高速化。低感度時は約15段の広いダイナミックレンジを実現したほか、ディテールリプロダクション技術やエリア分割ノイズリダクションも進化し、中感度域において約1段分ノイズを低減。常用感度は100~32000(α7R IIは25600)に強化している。拡張ISO感度は50~102400で従来と共通。
光学式5軸手ブレ補正を搭載。手ブレ補正ユニットとジャイロセンサーを新開発し、アルゴリズムも最適化したことで世界最高とする5.5段の補正効果を実現したという。
シャッターチャージユニットも新開発。シャッター振動によるブレの影響を抑えつつ最高約10コマ/秒の高速連写に対応し、約50万回のレリーズ耐久性と静音性を備える。
14bitの圧縮/非圧縮RAWフォーマットに対応。フロントエンドLSIとBIONZ Xのシステム内で一度16bit処理してRAW画像を14bit出力することでハイライトからシャドーまで豊かな階調を表現するという。画像処理システムの進化により、サイレンと撮影時や連続撮影時も14bit RAW出力に対応した。
静止画撮影の新機能として、建築物や美術品などを、高精細かつ高い質感で描写する「ピクセルシフトマルチ撮影」に対応。通常の撮影は、各画素にR/G/Bのうち1色分の色情報を得て残り2色分は周辺画素から補間するが、新機能では有効約4,240万の全画素でR/G/Bの全色情報を得て補間処理せずに直接合成して画像を生成。色モアレ(偽色)の発生を抑え、高精細かつ忠実な質感描写を可能にするという。
ピクセルシフトマルチ撮影では、イメージセンサーを正確に1画素分ずつずらして計4枚の画像を撮影。約1億6,960万画素分(4,240万×4フレーム)の色情報から、専用の新PCソフト「Imaging Edge」を使って1枚の画像を生成。現像後の画像サイズは4,240万画素(7,952×5,304ドット)。撮影時は三脚などを使用し、PCリモート撮影や専用リモートコマンダーでレリーズ。非圧縮RAW記録かつサイレント撮影が[入]固定となる。フラッシュなど一部機能に制限がある。
連写はAF/AE追従で最高約10コマ/秒(α7R IIは5コマ/秒)に強化。メカシャッターだけでなく電子シャッター(サイレント撮影)でも10コマ/秒を実現し、野生動物などの撮影も決定的瞬間を逃さないという。
連写持続性能はJPEGや圧縮RAWが76枚、非圧縮RAWが28枚に向上。また、連続撮影後のカード書き込み中でもFnメニューから撮影設定の変更ができるほか、再生画面へのアクセスや、メニュー画面へのアクセス、設定変更が可能になった。
蛍光灯など人工光源の点滅によるちらつきを検知し、影響が少ないタイミングで静止画を撮影するフリッカーレス撮影にも対応した。
動画は4K HDRのHLG対応。プロキシ動画やクイック&スローなどプロ向け機能充実
動画は最高4K(3,840×2,160ドット)/30pに対応。スーパー35mmモード時は、画素加算なしで全画素読み出しを行ない、4K映像に必要な画素数の約1.8倍の情報量を凝縮。高画質な4K映像を生成。モアレやジャギーの少ない4K動画を実現する。なお、センサーの読み出し速度はα7R IIと同じ。
前述した画像処理システムの向上により、フルサイズ領域での4K動画記録の中高感度画質が従来よりも大幅に向上。より幅広いシーンでフルサイズの表現力そのままに4K解像度で記録可能になったという。
広色域のHDR記録にも対応。HDR対応のピクチャープロファイルとしてHybrid Log Gamma(HLG)に対応。HDR/HLG対応テレビで再生すると、カラーグレーディングをせずに黒つぶれと白飛びを抑えた肉眼に近いリアリティの映像が楽しめる。HLGのプロファイルは、規格に準拠したモードに加え、ダイナミックレンジを変えた3種類のモードも用意する。
また、従来のS-Log2の他にシャドーからミッドトーン(18%グレー)にかけての階調特性を重視したS-Log3も搭載。S-Log3設定時は14ストップの再現域を確保している。
色域はS-Gamutから色再現性に改善を加えたS-Gamut3、ネガフィルムをスキャンしたものに近づけて設計されたS-Gamut3.Cineにも新たに対応した。
フルHDで新たに120fpsハイスピード撮影に対応し、最大100Mbpsで記録可能。最大5倍のスロー&最大60倍のクイックモーション撮影機能にも対応。最大50MbpsのフルHDで本体内に記録できる。
動画のファストハイブリッドAFも進化。像面位相差方式とコントラスト検出方式を効率的に組み合わせ、動きの速い被写体にたいしても、スムーズで迷いのないピント合わせが可能になったという。
4K撮影時のプロキシ動画の同時記録にも対応。ファイルサイズの小さいプロキシ動画を編集やプレビューに利用できる。露出合わせをしやすくするゼブラ機能も進化。従来設定に加え、ゼブラ表示の輝度レベル基準値をIRE 0~109%まで、幅は±10%を1%刻みでユーザーが設定できる。輝度レベルの下限値設定も可能。
撮影した動画からの静止画切り出しも可能で、4K動画からは約800万画素、フルHD動画からは約200万画素の静止画ファイルを作成できる。
AF性能の進化
399点の像面位相差AFセンサーと、425点に強化したコントラストAF(α7R IIは25点)によるファストハイブリッドAFにより、広く高密度なカバーエリアを持つ。低照度時のAF速度が最大2倍に向上し、暗いシーンなどでも大ボケからの合焦速度を高め、被写体を瞬時にとらえるという。
動体追従性は従来比最大2倍。AF測距/演算頻度を高め、上位機のα9に搭載されている動体予測アルゴリズムをα7R IIIに最適化したことで実現した。複雑な動きや、スピードに緩急のある動体にも、これまで以上に高い精度でAF追従し続けるとしている。
瞳AF機能は検出精度と速度が向上し、追従性能は約2倍向上。動きのあるポートレートなどもAF-Cモードで安定してAF追従するという。また、Aマウントレンズ撮影時も瞳AFに対応した。AF-S時のAF検出輝度下限値はEV-3(ISO 100相当/F2.0レンズ使用)を実現。暗いシーンでも高精度なAFを可能にしている。
フォーカスポイントを直感的/瞬間的に移動できるマルチセレクターを本体に搭載。上下左右に押してAF測距点を選べる。ファインダーを覗きながらでもフォーカス移動できるタッチパッド機能や、モニターのタッチフォーカスにも対応する。
α9と同様の機能として、ピント拡大中のAFにも対応。静止画でピントを合わせたいエリアを選択し、ファインダー/モニター上で拡大させた状態でAFが利用できる。また、専用の位相差AFセンサーを搭載しないマウントアダプタのLA-EA3を介したAマウントレンズ装着時も、像面位相差AFに対応した。静止画/動画においてボタンを押すだけでAFによるピント合わせを行なうAF-ONボタンを備え、レリーズ操作に集中できる。
ピントが合った部分の輪郭を強調するピーキング機能の検出精度も向上。425点のコントラストAF枠により、合焦枠表示が細分化され、確認しながら撮影可能になる。静止画撮影のAF被写体追従速度は5段階で選択可能。
フォーカス枠をあらかじめ登録した位置に一時的に移動させることも可能。また、露出/フォーカス設定/ドライブモードなどを、カスタムキーから一時的に呼び出す「押す間カスタム設定呼出」にも対応。カメラの縦位置/横位置でそれぞれフォーカスエリアとフォーカス枠の位置を使い分けられ、縦/横位置を頻繁に変えて撮影するときもスムーズにAFが使えるようになる。
デュアルスロットとUSB Type-C採用。カスタム機能も強化
UHS-II対応のSDカードと、SD(UHS-I)/メモリースティックのデュアルスロットを搭載。2枚のメディア間でリレー記録(記録メディア自動切換え)できるほか、同時記録や、RAW/JPEG、静止画/動画の振り分け記録、メディア間コピーなどが可能になった。
ファインダーは369万画素有機ELのQuad-VGA OLED Tru-Finder。最大輝度が約2倍に進化したほか、約30%の高速化も実現した。倍率は0.78倍。メニュー上で静止画撮影時のファインダーフレームレートを標準の60fpsと高速の120fpsから選択可能。120fps時は被写体の動きを滑らかに表示される。
モニターは3型/144万画素のチルト可動式。屋外でも明るく見やすいWhiteMagicを採用する。
ファインダーやモニターの表示画質は、メニュー上で標準と高画質から選択可能。高画質時は有効4,240万画素のセンサーから得られる情報を活用し、モアレやジャギーを抑えて表示する。
バッテリは従来のNP-FW50の約2.2倍の容量を持つNP-FZ100に対応。静止画撮影可能枚数は、液晶モニター利用時が約650枚、ビューファインダ利用時が約530枚。同バッテリを最大2個装着できる縦位置グリップ「VG-C3EM」や、最大4個収納できるマルチバッテリーアダプタキット「NPA-MQZ1K」も別売で用意する。
給電対応のUSB Type-Cと、マルチ/マイクロUSBの2系統を備え、モバイルバッテリなどから電力供給しながら撮影可能。αで初めて、USB Type-Cで給電またはPCリモート撮影中に、リモコンなどのマルチ/マイクロUSB端子対応アクセサリを同時使用することも可能になった。
USB Type-C端子はUSB 3.1対応で、PCリモート撮影時の高速画像転送を可能にした。PCリモート撮影中に、カメラ本体側にも静止画を保存できるようになったほか、RAW+JPEG撮影時に、PC側にJPEGファイルのみを転送することも可能になった。シンクロ端子も搭載。フラッシュ撮影時のレリーズタイムラグを短縮したほか、最高約10コマ/秒のフラッシュ発光連写にも対応する。
撮影後は、静止画に本体で5段階(星1~5)のレーティングに対応。プロテクト機能はカスタムキー(初期設定はC3ボタン)で素早く実行できる。連写のグループ表示や、静止画ファイル名の設定(先頭3文字)にも対応する。
カスタム機能として、30個までのマイメニュー登録に対応。カスタムボタンへの機能割り当ては、83種類を11個のカスタムボタンに割り当てられる。静止画と動画の各モードで異なる機能をアサインできる機能もαで初めて搭載した。カメラ設定は本体に3つまで、メモリーカードに4つまで登録でき、メモリーカードに登録した設定を他のα7R IIIですぐ呼び出すことも可能になった。
カスタムキーによる設定値のダイレクト変更にも対応。ゼブラ、ピーキング、APS-C/Super 35mm、タッチ操作、ライブビュー表示の各設定を、カスタムキーを押すだけで直接設定値を変更できる。
前ダイヤルと後ダイヤルの回転方向は、好みに合わせて変更可能。MOVIEボタンの代わりに、より大きなシャッターボタンで動画の開始/停止するという設定もできる。RAW+JPEG記録時のJPEG画質設定や、DISPボタンでのモニター消灯、自動電源OFF温度の設定にも対応。Wi-Fi通信により、スマートフォンやタブレットに、撮ったその場での転送や、PCへのワイヤレス保存などが可能。QRコード読み取りによる接続もできる。
PCソフト「Imaging Edge」は、撮影の前工程から後工程までのワークフロー全体を支援。PCリモート撮影、RAW現像、画像のビューワー機能を持つ。無線LAN経由で遠隔のFTPサーバーに転送することや、モバイル端末からBluetooth経由での位置情報取得などにも対応する。
ボディは、トップカバーとフロントカバー、内部フレーム、リアカバーにフルマグネシウム合金を使用しており、防塵/防滴に配慮した設計。マウント固定用のネジ本数を6点に増やすことでマウント部の剛性を高めている。
プロの声を反映してグリップ形状も見直し、大口径レンズ装着時のホールド性も向上。グリップの部材にもマグネシウム合金を使用し、グリップとフロントカバーを一体化することで剛性を高めた。
外形寸法は約126.9×73.7×95.6mm(幅×奥行き×高さ)で、重量はバッテリーとメモリカードを含めると約657g、本体のみで約572g。
静音/高速AF対応の24-105mm F4レンズ
「FE 24-105mm F4 G OSS」は、本格的な動画/静止画に対応し、中望遠までカバーする標準ズームレンズ。本体はクラス最軽量とする663g。
レンズ構成は14群17枚。高度非球面AA(advanced aspherical)レンズ2枚を含む4枚の非球面レンズとEDガラスを備え、ズーム全域で画面周辺部まで高い描写性能を持つ。静音で高速/高精度なAFを実現するDDSSM(ダイレクトドライブSSM)を搭載する。
ズームリング、フォーカスリングのほか、フォーカスモードスイッチや、手ブレ補正スイッチ、フォーカスホールドボタンを備える。