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オンキヨー、“ホームAV事業を主体に”方針転換

オンキヨーは同社の今後の戦略について、OEM事業、ヘッドフォンをはじめとするデジタルライフ事業、ライセンス事業をメインとする従来の方針を変更。ホームAV事業を主体とした再編を行なうと発表した。

2020年3月期のオンキヨーの連結業績は、売上高が前年同期比50.3%減の218億円、営業損益は同42億9,300万円悪化の53億4,600万円の損失。経常損益は同39億9,200万円悪化の56億6,800万円の損失。純損益は貸倒引当金繰入額29億3,400万円、事業再編損4億7,400万円、減損損失5億9,700万円、投資有価証券評価損2億8,400万円などを特別損益に計上し、前年同期比99億1,500万円悪化の98億8,000万円の純損失。純資産は、33億5,500万円の債務超過となっている。海外投資ファンドなどへの新株発行により、早期の債務超過解消を目指している。

既報の通り同社は、デノンやマランツを傘下に持つ米Sound Unitedの持株会社であるViper Holdingsに、ホームAV事業を譲渡する協議の基本合意書を昨年締結。しかし、譲渡に向けた条件達成が互いに難航し、中止に。オンキヨーは再度売却可能性を高めるため、 拠点の集約、人員削減、製品のモデル削減、新規開発凍結などの構造改革をホームAV事業を中心に進めていた。

しかし、今年の6月時点で未だ未払い巨額の債務が残った状態で、ホームAV事業売却交渉を数社行なうも合意には至らず。また、新型コロナウイルスや株価下落、市場需要の変化などもあり、大きな方針転換が必要という考えに至ったという。

そして7月、米国でプレミアムオーディオ事業を展開し、KlipschやJAMO、HECO、MAGNATといったブランドを保有、自動車用OEM、およびアクセサリー事業なども行なっているVOXXと提携。VOXXは米国でホームスピーカー販売シェアナンバーワンを獲得しており、オンキヨーが強みを持つAVレシーバー/アンプとの組み合わせや今後の共同開発などを通じ、流通・販売面でも体制を強化。「最強タッグを組み、米国シェア1位を目指す」という。

ホームAV事業を主体とした再編に舵を切る理由として、「売上は減少したが、昨年度の構造改革実施で体制は縮小済み」、「コロナによる在宅需要の期待」、「資金調達により売上回復は可能」、「VOXXグループとの提携により、ワーキングキャピタルの良化」、「Klipschブランドとの販売シナジーにより、売上増加を見込む」といったポイントを挙げる。

そこで、OEM事業を行なっているオンキョーと、デジタルライフ事業・ホームAV事業を行なうオンキヨー&パイオニアを合併。社名をオンキヨーホームエンターテイメントへと変更し、同社がホームAV事業、デジタルライフ事業、ゲーミング事業を展開。2021年3末に未払い債務の正常化と債務超過を解消。レガシーホームAV事業に特化し、上場会社として利益ある成長を目指すという。

さらに、OEMハードウェア事業はオンキヨーサウンド株式会社に、デジタルライフ事業とその他の事業はオンキヨー株式会社へと子会社化。オンキヨーサウンドは、スピーカー・B2B事業に特化し、資本業務提携を模索。オンキヨーは、ネットビジネスやコラボ・ソフト開発など、過去にない新規事業に特化し、こちらも別途資本提携を模索する。

今後のスケジュールとして、この方針を9月25日に臨時株主総会にて決議。10月1日にオンキヨー&パイオニアをオンキヨーが吸収合併し、社名をオンキヨーホームエンターテイメントに変更。会社分割によりオンキヨーサウンド、およびオンキヨー株式会社を分割。最終的に、上場会社はオンキヨーホームエンターテイメント、オンキヨーサウンド、オンキヨーの3社となる。

ホームAV事業の成長戦略

今後のホームAV事業の成長戦略については、従業員の削減や経費・人件費の削減などにより、体質を改善。技術/開発部隊も、独自のAV技術開発力と、ブランド製品開発力という2つの優位性を活用し、市場と需要の変化に対応した製品を自社で開発・導入できるように体質改善を行なうという。

さらに、コロナ禍でエンターテインメントの視聴機会増加や、テレワーク環境構築ニーズが高まっている事から、「Withコロナ時代に向けた新しい価値提案を行なう」という。

具体的には音楽・映画・ゲームといった在宅エンターテイメントの需要拡大に向けて、“在宅シアター”を提案。AVレシーバー販売強化、ハイファイの売上挽回、8K(HDMI2.1)対応推進、ゲーミング機器展開、カスタムインストレーション提案を実施。

テレワークの増加に対しては、デスクトップオーディオ、テレワークヘッドセット、USBスピーカーなどを提案。

オンラインで製品を購入する人が増加している事を踏まえ、ショールーム型店舗販売から店頭引き取りへ、今後拡大するRaaS(RaaS=Retail as a Servic)に対応するカタチへと、販売スタイルをシフトしていくという。

また、開発モデルの集中と選択による収益改善、他社とのコラボによる今までにない商品開発、マーケティング手法の導入、成長が見込まれるゲーミング市場に、同社の技術を活かした新ブランド“SHIDO” の展開する事などを説明している。