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マランツ、一体型AVアンプのハイエンド機が大幅進化「SR8015」

一体型AVアンプのハイエンドモデル「SR8015」

マランツは、一体型AVアンプのハイエンドモデル「SR8015」を10月中旬に発売する。価格は37万円。カラーはブラック。

「SR8012」の後継機。最新のサラウンドフォーマットに対応するほか、8K映像までのパススルーも可能になるなど、スペックが大幅に進化。さらに音質にも磨きをかけた。最大出力は250W(6Ω)、11ch分のフルディスクリート・パワーアンプを搭載。一体型AVアンプながら、Hi-Fiコンポに匹敵するレベルのチャンネルセパレーション、空間表現力を実現するために、11chのパワーアンプすべてを1chごとに独立した基板にマウント。電源トランスの左右に対称に配置するシンメトリカル・レイアウトも採用した。

11chのパワーアンプすべてを1chごとに独立した基板にマウントし、電源トランスの左右に対称に配置するシンメトリカル・レイアウト

個々のアンプはハイスピードなフルディスクリート回路で、全チャンネル同一クオリティとすることで、チャンネル間の音のつながり、立体的な音響空間への没入感を高めている。接続するスピーカーのインピーダンスは最低4Ωまで対応する。

ディスクリート構成にする事で、回路設計やパーツ選定の自由度が高くなり、細かな音質チューニングが可能。新開発のカスタムフィルムコンデンサーや、高品位な金属皮膜抵抗、電解コンデンサーなども投入し、音質を磨いている。

サラウンドバック、およびオーバーヘッドスピーカーを使用しない場合には、5chのスピーカーをすべてバイアンプ接続する「フルバイアンプドライブ」にも対応。

電源回路のキーパーツには、入念なリスニングテストで厳選したという高音質パーツを投入。電源の要であるトランスには、ノイズの影響を排除するシールドケース付きの大型トロイダルコアトランスを搭載。またパワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサーには、SR8015専用に開発した22,000μFのカスタムコンデンサーを2基搭載した。大音量再生時にも圧倒的な余裕をもった電源供給が可能という。

13.2ch分の処理が可能な、電流帰還型プリアンプを搭載。Hi-Fiコンポで培ってきたワイドレンジ、ハイスピードを実現する回路設計のノウハウを投入。心臓部には、超ハイスルーレートを誇るという独自のディスクリート高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を搭載した。

新たに定電流回路を追加し、プリアンプ回路における大幅な低歪化を実現。広帯域にわたるフラットな周波数特性と、オペアンプの約10倍というハイスルーレートにより、「ワイドバンド化するサウンドトラックやハイレゾ音源も忠実に再生できる」とする。

さらに、入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれに、機能に特化した高性能カスタムデバイスを採用。信号経路を最短化し、透明感が高く情報量の豊かなサウンドを実現。

13.2chのプリアウトを装備しているため、ハイトスピーカーの追加やパワーアンプの強化といった、システムの拡張も可能。さらに、パワーアンプの動作を停止させ、ノイズを抑えてAVプリアンプとしてのみ使う「プリアンプモード」も搭載した。

尾形好宣サウンドマネージャーは、「今回のモデルではプリアンプ回路を改良し、大幅に低歪になっているため、パワーアンプとの接続を切っても歪は劇的には変化はしないが、それでも(さらなる歪の低減を目指して)搭載している」という。

尾形好宣サウンドマネージャー

オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xに対応。11chのパワーアンプを搭載しているため、パワーアンプを追加せずに5.1.6、7.1.4や、フロントワイドを含む9.1.2システムを構築できる。

前述の通り13.2chプロセッシングに対応しているため、2chパワーアンプを追加すれば7.1.6、および9.1.4までシステムを拡張可能。Dolby Surround、およびNeural:Xを使い、ステレオや5.1ch、7.1chの信号を3Dサウンドにアップミックスすることもできる。

また、10月に提供するファームウェアアップデートにより、7.1.6、および9.1.4に対応するDTS:X Proに対応予定。

新4K/8K衛星放送で使用されているMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)にも対応。4Kや8Kの高解像度映像と共に、臨場感豊かなサラウンドサウンドで番組が楽しめる。

バーチャル3Dサラウンド技術の「Dolby Atmos Height Virtualizer」と「DTS Virtual:X 」にも対応。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していないステレオ、5.1ch、7.1ch環境でも、高さ方向を含むあらゆる方向からのサウンドに包み込まれるような仮想的な再生が可能。

一体型AVアンプのハイエンドモデル「SR8015」

IMAX Enhanced認定も受けており、デジタルリマスターされたIMAX Enhancedコンテンツの再生に最適化されたサウンドモード「IMAX DTS」、「IMAX DTS:X」が使用可能。

Auro-3Dにも対応し、通常の5.1chにフロントハイト(FHL+FHR)、センターハイト(CH)、サラウンドハイト(SHL+SHR)、トップサラウンド(TS)スピーカーを加えた11.1chシステムで、自然で臨場感豊かな3Dサウンドを再生できる。パワーアンプを追加すると、サラウンドバックスピーカーを含む13.1chまで拡張できる。Auro-Maticアルゴリズムにより、モノラル、ステレオやサラウンドコンテンツを3Dサウンドにアップミックスすることも可能。

Dolby Atmosなど、サラウンド音声信号のレンダリングやデコーディング、音場補正などの処理向けに、2基の32bitフローティングポイントDSPを搭載する。

DACは、旭化成エレクトロニクス製32bit 8ch DACの「AK4458VN」。SN比が高く、歪みが少ないため、繊細な音の描写、透明感の高い空間表現に優れるという。ディテールの表現力向上のために、出力抵抗に高精度な薄膜型金属皮膜抵抗を使用。また、DA変換回路は映像回路やネットワーク回路から独立させており、相互干渉を排除した。

HDMI入力とネットワークオーディオの音質向上をテーマに、コンデンサーや抵抗など多くのパーツの品種や定数の見直し、基板上のパターンの強化、クロックモジュールの振動対策など、「これまで以上に時間をかけて入念なサウンドチューニングを行なった」という。

HDMI入力の内1系統(HDMI 7)、出力2系統(モニター1/2)は、8K/60p、および4K/120p映像信号のパススルーに対応。HDMIは8入力/3出力を備えており、そのすべてが著作権保護技術のHDCP 2.3に対応している。

HDR信号のパススルーにも対応。HDR10、Dolby Vision、HLGに加えて、新たにHDR10+とDynamic HDRもサポートした。

従来のARC(Audio Return Channel)に加え、「eARC(Enhanced ARC)」にも対応。eARCでは、テレビからAVアンプへの5.1chや7.1chのリニアPCM信号や、Dolby TrueHD/DTS-HD Master Audioなどのロスレスオーディオ、Dolby Atmos/DTS:Xなどのオブジェクトオーディオの伝送が可能。テレビとの電源ON/OFFや入力切替などの連携をするHDMI CECにも対応している。

ゲーム機との親和性も向上。HDMI 2.1の新機能「ALLM(Auto Low Latency Mode)」、「VRR(Variable Refresh Rate)」、「QFT(Quick Frame Transport)」、「QMS(Quick Media Switching)」に対応。ALLMはコンテンツの種類に応じて画質とレイテンシーのどちらを優先するかを自動で切り替えるもの。ゲームやVRコンテンツの再生時にはレイテンシーが最小になるよう自動で設定され、AVアンプの画質調整やi/pスケーラー、オートリップシンクなど、レイテンシーに影響する機能が停止される。

VRRは、PCやゲーム機などの映像ソース機器とディスプレイを同期させ、任意のタイミングでリフレッシュレートを切り替える機能。画面割れ(ティアリング)やカクつきを抑える。QFTは、ディスプレイ側のフレームレートは変更せず、映像ソース機器からの伝送速度を上げることでレイテンシーを低減。QMSは、ディスプレイとソース機器のリンクを維持したままフレームレートや解像度を切り替えるもの。

入力されたアナログ、およびHDMI信号を8K/60pや4K/60pなどにアップスケーリングも可能。ただし、フレームレート変換は行なわない。コンポジット、コンポーネントビデオ信号は480i/576iのみHDMI出力可能。その他の解像度のアナログ映像入力信号はHDMIには変換されない。

下位モデルとの構造比較

シャーシの低インピーダンス化のために、銅メッキシャーシを採用。DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給には、専用のローノイズSMPSを使用。アナログ回路との相互干渉を排除している。デジタル電源回路の動作周波数は通常の約3倍に高速化されており、スイッチングノイズを再生音に影響の及ばない可聴帯域外へシフトさせた。

電源ラインに流入するノイズはデカップリングコンデンサーで除去。コンデンサーの種類や定数は、サウンドマネージャーが試聴を繰り返して選定。導電性ポリマーコンデンサーや薄膜高分子積層コンデンサーなど、高性能なパーツも豊富に投入した。

基板やシャーシを固定するビスやワッシャーの種類を、使用する箇所に応じて変更するなど、細かなチューニングも施されている。

専用マイクによるオートセットアップ機能「Audyssey MultEQ XT32」を搭載。下位グレードである Audyssey MultEQ XTに対して32倍のフィルター解像度で補正を行なう。2台のサブウーファーを個別に測定、および補正する「Sub EQ HT」も搭載。セットアップマイクを取り付けるためのマイクスタンドも付属する。

また、スピーカーの構成やAudysseyによる測定・補正データなどを含む2通りのスピーカー設定を保存することが可能。BGM的に音楽を楽しむ設定と、映画をこだわりの音で再生する設定を用意したり、部屋のカーテンを引いた時と、あけた時の設定を記憶させるといった使い方ができる。また、別売の「Audyssey MultEQ Editor」アプリを使うと、AVアンプ単体では設定できない詳細な調整も可能。

HEOSテクノロジーによるネットワークオーディオ機能も搭載。音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオ、LAN内のミュージックサーバーに保存した楽曲、USBメモリー内の楽曲も再生可能。

音楽ストリーミングサービスは、Amazon Music HDをはじめ、AWA、Spotify、SoundCloudなどをサポート。インターネットラジオもサポート、TuneInのデータベースからジャンルや地域、言語などをもとに聴きたいラジオが探せる。

ハイレゾファイルの再生も可能で、DSDは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまで再生する。DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessのギャップレス再生も可能。

Alexa搭載デバイスからの音声コントロールに対応。Alexaに話しかけるだけで再生、停止、スキップや音量の調整などの基本的な操作に加えて、Amazon Musicの楽曲から楽曲名やアーティスト名、年代、ジャンルなどを指定しての再生が可能。

AirPlay 2やBluetoothもサポート。Bluetooth送信機能も搭載しており、AVアンプで再生している音を、Bluetoothヘッドフォンなどにワイヤレスで伝送できる。

MMカートリッジ対応のPhono入力も装備。HDMI以外の映像入力端子はコンポーネント×3、コンポジット×5(フロント×1)。映像出力端子はコンポーネント×1、コンポジット×2(モニター×1、ゾーン 2×1)。音声入力はアナログ×8(フロント×1)、Phono(MM)×1、7.1ch入力×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。音声出力端子は13.2chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン×1。

消費電力は780W。アンテナを寝かせた状態の外形寸法は440×460185mm(幅×奥行き×高さ)。重量は17.6kg。

音を聴いてみる

従来モデルの「SR8012」と、新モデル「SR8015」を比較してみた。

まず、プリアンプ部が進化したためか、SN比が大幅に改善。その静かなサウンドステージに現れるボーカルや楽器などの音像も、SR8015ではさらにクリアかつ明瞭になっている。そのため、音楽の動きが見えやすく、音楽に“乗れる”サウンドになったと感じる。

新モデルでは、見通しが良い音場に、立体的に音像が立ち上がる様子が見えるようだ。

2chソースだけでなく、マルチチャンネルサラウンドでも聴き比べたが、SNが向上しているため、音像の位置や、自分との距離もよりわかりやすい。「ブレードランナー」での雨音の粒や、それが全身を包み込むような方位感も、SR8015の方が感じやすくなっている。