ミニレビュー
PS VRで360度に広がる星空。お手頃プラネタリウムソフト「ホームスターVR」
2018年1月19日 08:15
「降り注ぐような満天の星空の輝きを自宅で再現できたら」。そんな夢を叶えてくれる家庭用小型プラネタリウム「ホームスター」が、PlayStation VR(PS VR)用ソフトになった。12月20日からPlayStation Storeで配信されており、PS VRの有料ソフトの中では980円(税込)と手頃な価格ながら、視界が無数の星々に包まれる「全天球モード」体験が素晴らしいVRコンテンツだ。
正式タイトルは「ホームスターVR for PlayStation VR」。3D CGによるプラネタリウムソフトで、1〜11等星まで約250万個の星をPS VRのVRヘッドセット内に映し出し、「NASAの天体データを基に星の位置や距離、 色まで忠実に再現する」という。
ホームスターシリーズを展開してきたセガトイズが、ゲームの企画・制作を手がけるポケットに協力。サムスン「Gear VR」には一足早く、'17年7月から配信されていたが、PS VRでも楽しめるようになった形だ。
3つの星空鑑賞モードを搭載しており、本物のプラネタリウムのように季節の星座解説が付く「VR天体プラネタリウム」、世界の星空スポット7選を訪れる「満天の星空セレクション」、自分で星空を見る場所や日時指定できる「世界の星空タイムトラベル」から選べる。
「VR天体プラネタリウム」モードは、春夏秋冬の4種類から見たい季節を選び、星空や神話の解説を女性のナレーションとともに楽しめる。天頂など高い場所を見ることになるので、背もたれを後ろに傾けられる椅子か、ヘッドバンドで床を痛めないよう気をつけて寝転がって見るのがオススメ。解説をすべて見終わると、後述の「満天の星空セレクション」モードに新しいロケーションが随時追加されていく。
ハードウェアのホームスターやメガスターが得意とする、微細な星の集まりでできた天の川銀河が、今回のソフトでも見事に描写される。画像では分かりにくいと思うが、例えばオリオン座のベテルギウスは橙色、リゲルは青白い色というように、1等星などの目立つ恒星も現実の星の色に合わせて発光していてリアリティがある。なお、今回は初代PS VRと通常のPS4で試しているが、「PS4 Proを使うと画質がさらに高まるのでは?」とも考えた。しかしセガトイズとポケットによれば「PS4 ProとPS VRの組み合わせでも画質に違いはない」という。
このモードでは自分の周囲に座席や場内の小さな階段などドーム内の景色が出現し、本当にプラネタリウムに来たような感覚で星空解説を楽しめる「クラシックプラネタリウムモード」と、頭上だけでなく足元にも星空が広がる「全天球プラネタリウム」の2つの表示を切り替えられる。
特に、全天球プラネタリウムではどこまでも広がる星の海に1人ぽつんと浮かんでいるような不思議な感覚が味わえてオススメだ。ちなみに後述の星空鑑賞モード「世界の星空タイムトラベル」でも同様の表示ができる。
ところで、実際のプラネタリウムはドーム中央部が投影機が設置されるスペースになっていて、それを避けてシートが配置されているのが一般的。しかしホームスターVRで再現されるプラネタリウム館は中央に投影機がない代わりにシートが用意され、自分がそこに座る。投影機マニア(筆者)としては「MEGASTAR-IIなどのCGモデルが置いてあったらいいのに」とつい考えてしまう。
だがよく考えれば、プラネタリウムの星空はドーム中央に近い席から見上げるのが理想的。実際、鑑賞に向いた席は中央後方と案内されることが多いが、良席はすぐ埋まってしまい、開演ギリギリに駆け込んだら壁に近い席に案内されて星座や映像が歪んで見え、あまり楽しめなかったという声も聞く。その点、ホームスターVRのプラネタリウムは360度“理想的な星空投影”をひとり占めできるわけだ。
ここでメインメニューにいったん戻り、今度は「満天の星空セレクション」モードを選んでみる。最初は3つのロケーション(スイス・マッターホルン、ニュージーランド・テカポ湖、チリ・イースター島)が用意されている。「VR天体プラネタリウム」の星空解説を見終わると、さらに4つの景色が選べるようになる。公式サイトによると、ボリビア・ウユニ塩湖、カナダ・ジャスパー国立公園、日本・富士山、ハワイのマウナケア山だ。
高山や小さな教会、モアイ像といった情景がCGで描かれ、星が頭上をゆっくり巡る。ナレーションなどはないが、BGMも星空にマッチしたゆるやかなメロディでリラックスできる。星が巡る速度やBGMは、設定メニューから変更可能だ。また、BGMをオフにして、代わりにPS4のUSBミュージックプレーヤー機能で手持ちの音楽ファイルを流すこともできる。
テカポ湖ではオーロラも出現したが、何度か同じ場所を開いても今のところ1回しか遭遇できていない。メニューにオーロラを出すための選択肢も見あたらないので、現実のオーロラのように見られたらラッキー、ということなのかもしれない。
最後の「星空鑑賞モード」は、PS4コントローラの左ジョイスティックを使い、地球儀をぐるぐる回すような操作感で、地球上の任意の場所を選べる。日時も変更でき、自分の誕生日や記念日といった特定の日の星空を再現可能だ。
日時設定はカレンダー風に表示され、1901年から2100年までの200年分用意されていた。時間設定は現実の夜の時間帯(20時〜翌4時)の中から選べる。時間の進む速度も4段階(1〜500倍)で設定できるが、500倍はかなりの速度で星が巡るので、VR酔いしやすい人は注意したい。
非ゲームVRソフトのマストバイ。アップデートにも期待
ホームスターは元々、家庭用の小型プラネタリウムとして画期的な光学式の投影機構を備えた商品だ。’05年の初登場以来、機能強化や筐体デザインの変更を重ねながら、お風呂で楽しめる防水モデル、超高輝度モデルなどバリエーションを増やし、歌手や映画などのコラボ品も多数登場。「君の名は。」バージョンや「スター・ウォーズ BB-8/R2-D2」仕様も記憶に新しい。
筆者もかつて学生時代にバイト代をはたいて「限定版アンタレスレッド」モデル(20,790円、星数1万個)を買った。
ゲーム機のソフトになったのはこれが2度目で、’06年にPSP向け「ホームスター ポータブル」が登場。500万以上の星々に加え、星雲・星団などの天体解説、日食や月食、ハレー彗星といった天体現象も収録。別売のGPSユニットによって現在地から見られる星空の解説機能もあり、本格的なプラネタリウムソフト志向だった。
ホームスターVRにできることは基本的には「星を見ること」だけで、PSP版とは違って天体の詳細解説などは備えていない。けれど全天球プラネタリウムモードを体験すると、どこを見ても星の海で宇宙の広大さを感じて思わずゾクッとしたり、特に何も起こらないけれど夜空をぼんやり眺めているだけで気分が落ち着いてきたりする。
これまでは部屋を暗くして壁面や天井に星空を投影する形で、目が慣れるといつもの部屋の様子が見えてしまい、日常空間を離れた体験とまではいかなかった。PSP版も小さな液晶にギッシリ星が見えるけれど、星空を見上げる感覚とは違った。だがPS VRならば、従来のホームスターシリーズでは味わえなかった没入感や非日常感を味わえる。加えて、980円という価格の手頃さも「買ってみよう」という気持ちにさせてくれる。
特に全天球モードで見る星空への没入感は凄いので、プラネタリウムにあまり興味が無い人にもオススメしたい。冬は空気が澄んで野外での天体観測にはピッタリな季節だけれど、コタツに潜ったまま楽しむ満天の星空も快適でいいものだ。
個人的には有料で良いので、天体現象の再現などの追加コンテンツ配信に期待したい。また、首を回したり見上げなくても良いようにジョイスティックで視点操作できたり、描画精度が向上するなど、さらなる進化があると嬉しい。
layStation VR PS Camera 同梱版 【Amazon.co.jp限定】 日本驚嘆百景 聖なる頂き |
---|