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第441回

ソニー“厚木”の血が入ったスマホ「Xperia 1」はいかに生まれたか【前編】

6月14日より発売された、ソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia 1」。21:9の有機ELディスプレイを備え、3つの画角の違うカメラを搭載。さらには映画的な映像が撮影できる「Cinema Pro」アプリも搭載した、同社の意欲作だ。

Xperia 1(写真はNTTドコモ版)

発売からしばらく時間が経過したが、販売状況も良好であると聞いている。

筆者も製品を借りて試したが、最近のソニーモバイルの中では、飛び抜けて「キャラ立ち」した、面白い製品だと思う。

では、そんな「いままでと違うXperia」はどのように生まれたのだろうか? エクゼクティブから現場担当者まで、Xperia 1開発のキーパーソンに集まっていただき、話を聞いた。

対応いただいたのは、ソニー執行役員でソニーモバイルコミュニケーションズ副社長の槙公雄氏、同・商品設計部門 機構設計部 ディスプレイ技術課の松原直樹氏、同ソフトウェア技術部門 SW開発4部 Camera Image Quality 統括課長の亀崎健一氏、同ソフトウェア技術部門 Application & Services App Strategyの神宮司有加氏、そして、ソニーイメージプロダクツ&ソリューションズ プロフェッショナル・ソリューション&サービス本部 メディアセグメント事業部門 技術専任部長の岡野正氏、同プロフェッショナル・プロダクツ本部 商品設計2部門 システム設計部 1課の薗田祐介氏だ。

ソニーモバイルコミュニケーションズ 槙公雄副社長(左から3番目)、亀崎健一氏(左から2番目)、神宮司有加氏(右から3番目)、松原直樹氏(1番右)、ソニーイメージプロダクツ&ソリューションズ 薗田祐介氏(1番左)、岡野正氏(右から2番目)

なお、あまりに話が盛りだくさんなので、記事が1回に収まる量ではなくなってしまった。前編となる今回は、Xperia 1が生まれる経緯とディスプレイ開発について中心的にまとめている。

ビデオ/カメラ機能などについては後編で後日掲載する。亀崎氏・神宮司氏・薗田氏については、主に後編でご登場いただく。

なぜソニーは「スマホ生産量を減らす」のか

Xperia 1誕生の経緯を説明する前に、理解しておくべきことがある。それは、ソニーモバイルがどのような経営状態であるか、ということだ。

ソニーの業績は好調だが、モバイル事業については決して芳しくない。2016年度に一旦黒字化したものの、2017年度には276億円の赤字、2018年度には971億円の赤字と、マイナスが続いている。ただし、ソニーは「2020年度には単年黒字化できる」としている。この赤字は、販売地域と数量を絞り、それに見合った生産体制・オペレーションへと大幅な態勢変更を行なうためのものであり、2020年にはスリム化した態勢で黒字化することができる……ということだ。

スリムになるとはどういうことなのか? 要は、日本を含めた限定的な市場で、数を絞って売る、ということだ。

ソニーモバイルは過去(ソニーエリクソン時代も含めると)、年間1億台以上を生産する時期もあったような、規模の大きな会社だった。それがだんだん小さくなっていったが、スマートフォンでの勝ち負けが決まり始めた2015年から2016年頃になると、大きな量を作って流通させるリスクが問題になった。

旗色が明確になった今、ソニーモバイルは、すでに支持を得られている市場に戻り、その中で継続的に支持される製品を作る企業に戻る決断をしたのだ。

問題は、そうした市場で、いかに支持を得続けられる製品を出すのかということだ。スマホは「数が命」の部分がある。最先端のパーツは大量生産するメーカーから先に供給され、コストメリットも生まれやすい。余力のあるメーカーは冒険的な製品も出しやすい。

デバイスありきで、他社と単純に勝負しても不利である。では、そこでソニーはどのようなスマホを提案するのか?

そういった観点から生まれたのが「Xperia 1」、ということになる。そうした背景をご理解の上、以下のインタビューを読むと、気付くことが増えてくるのではないか、と思う。

Xperia 1(グローバル版)

「スマホに削られない」カメラ作りから「ソニーならでは」のスマホへ

Xperia 1誕生のキーパーソンの一人は、槙副社長だ。槙氏は2018年7月に、ソニーモバイルの副社長に着任した。

ソニーモバイルコミュニケーションズ 槙公雄副社長

前職は、デジカメやプロ製品を担当するソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズの、デジタルイメージング本部長とプロフェッショナル・プロダクツ本部 副本部長だ。すなわち、αやRXシリーズ、プロ向けのマスターモニターや映画撮影に使われるプロ向けカメラ「CineAlta」の責任者である。ミラーレス一眼であるαシリーズヒットの立役者としても知られている。

そんな槙氏がソニーモバイルに、製品開発の責任者として着任した。そこで最初に考えたのは、自身がずっと「スマホにニーズを削られる立場だった」ということだった。

そこでまず槙副社長がやったことは何なのか?

彼は「私がやったのは仲人のようなもの」と話す。

槙副社長(以下敬称略):私はこれまで、スマホに市場を削られていく立場である「カメラ」を担当していました。ですから「どういう製品に進化させないと市場をスマホに削られるのか」を考えて戦ってきました。

実際にスマホは、ウォークマンであるとかデジカメであるとか、カムコーダーであるとか、それぞれの機器が持つ市場を削ってしまうほどの技術を、1つのパッケージに詰め込んで、オールインワン化しています。だからこそ、「これで十分」というお客様が増え、市場の裾野が広がりました。

ですがふと、自分の会社の中を見渡してみると、「専業メーカー」はちゃんと技術を開発し、それぞれで生き残っているんです。スマホに駆逐されていない。もっと高いレベルのもの、例えばαやRX、交換レンズ式ハンディカムの「PXW-FS7」として生きている。ディスプレイとしても、BRAVIAがあり、その先にクリエイターの使うマスターモニターがある。

それを考えると、進化している部分はソニーの中にいくらもあるので、その技術をもういちどスマートフォンの中に詰め込み直せば、もう一度「ソニーをここに集約させる」ことができるだろう……そんな風に、外にいた時は考えていたんです。

カメラについて考えると……僕は、「フォトグラフ」と「ビデオグラフ」を主にやってきたのですが、最後には「シネマトグラフ」をやりました。これが、CineAltaの最新・最上位モデルである「VENICE」です。

ソニーデジタルシネマ用カメラCineAlta「VENICE」

スマートフォンの中には「フォトグラフ」と「ビデオグラフ」はありましたが、「シネマトグラフ」の概念はなかった。シネマ、映画を撮るといいう概念を、21:9のディスプレイ採用に合わせて文化として取り込んでみたらどうだろう……。これが、Xperia 1に至る発想です。

私は、VENICEの開発メンバーや、マスターモニターの開発メンバーと直前まで一緒に仕事をしていました。しかし、スマートフォンの開発エンジニアは、そうした世界を一切知らずに作っている。ですから「扉を開けて、外の世界に出ていって、技術を吸収していらっしゃい」そんなつもりで声をかけたんです。

ソニーは神奈川県・厚木に、「ソニー厚木テクノロジーセンター」という技術開発拠点を持っている。ソニー内のみならず関連業界で通称「厚木」といえば、この場所のことを指す。長年にわたって同社のプロ向け機器の開発拠点であり、映像関連技術が集約された、同社を支える土台のひとつでもある。

Xperia 1は、かなりキャラクターの立ったスマホになった。21:9の有機ELディスプレイは、設定を「クリエイターモード」にすることで、マスターモニターに近い正確な表現ができる。前出の「Cinema Pro」アプリを使うと、毎秒24コマで、映画的な色調の、グレーディング前の映像のような感触のものを撮影できる。単にハイスペックなのではなく、一本芯の通った、品質に関して独自の立ち位置を持つスマホに仕上がっている。これはまさに、スマホ開発チームが「厚木」から新しい知見を学んだ結果でき上がったものだ。

「Cinema Pro」アプリにより映画的な撮影が可能

「テレビの絵ですね」のコメントに落胆

Xperia 1開発の中で、最初に厚木とコラボレーションが始まったのはディスプレイ開発部隊だった。

槙:内部でスマートフォン向け技術の紹介をしてもらっている時に、松原がいろいろ教えてくれたんです。

ちょうどその頃、「厚木」にいる岡野は、渋谷でNHKさんのイベントのために、Crystal LEDディスプレイ・システムの展示の作業をしていたんです。

・ド肝を抜かれる超高画質、ソニーの440型、8K Crystal LEDでW杯を見てみた

厚木でディスプレイを手掛ける、ソニーイメージプロダクツ&ソリューションズの岡野正氏

岡野:8Kのパブリックビューイング向けの仕事ですね。

松原:そこにいきなり呼ばれまして。

槙:いっしょに行こう、と。いっしょにいって岡野に会って話をしようよ、ということで。

ソニーモバイルの松原直樹氏

重要な点がひとつある。この時、Xperia 1の開発は始まったばかりで、「厚木の技術を入れたマスターモニターライクな映像を出すスマホ」という企画がスタートしていたわけではなかった、ということだ。

槙:なにも決まってないんですけど、まあ、とにかく会ってみようよ、ということで。

岡野:私もなにひとつ聞いてなくて。いきなり槙さんがやってきて「うちの若いのを紹介するよ」と(苦笑)

松原:なぜ連れてきたかとか、そういう説明すらないですよ(笑)

槙:とにかく、プロのちゃんと目の肥えた方々があそこにいるから、自分の一番自信のあるものづくりをしたものを手に持って一緒に行こう、と話したんです。

その時、松原氏が一番自信を持っていたのは、2018年8月末に発表された(このミーティング時は発表前)「Xperia ZX3」だった。6インチの有機ELディスプレイを採用しており、縦横比や解像度は異なるものの、後のXperia 1との共通項も多い製品だ。

Xperia ZX3はBRAVIAとの協業で画質チューニングもしており、当時最先端のデバイスを使った製品でもある。松原氏は当然「それなりの自信をもって臨んだ」と話す。

だが。

岡野:見せられて、ああ、確かにきれいなディスプレイだなあ、と思いました。なので率直に「すごくきれいに“テレビの絵が出てますね”」とお答えしました。BRAVIAチューニングなので、テレビと同じ絵なんです。

でもそうしたら、松原さんはすごくがっかりされていて……。

槙:私はそれを横で聞いていて、ニヤっとしてました。「いいこと言ってくれたな」って(笑)

「テレビの絵ですね」という岡野氏のコメントは、決してマイナスの意味ではない。マスターモニターとテレビは、見る人も用途も違うものだ。家電製品である以上、スマホはテレビを使う一般の人々が、テレビと同じように使うことが多い。だからスマホがテレビに近い絵作りになるのは間違いではない。

だが、松原氏は落胆した。

松原:それなりに自信があったので。映画を入れていってお見せしたんですが、かえってきた答えが違った。映画なら「映画と同じように見えている」という自信もあったし、それなりにどんな絵でもちゃんと見せているつもりだったんです。

岡野:まあ、映画とはちょっと違う、「テレビの映画番組」を見ている印象でしたね。

松原:鮮やかにしたいという意図はあるので、どうしても元の情報を削ってしまっているんですね。なので、「本来あるべき映像ではない」というのは事実だったのですが。

そこからはずっと一緒にやらせていただきました。「マスターモニターとはなんぞや」というのを知るところからですから、週に1回・2回という頻度で厚木に通いました。

再生環境を整えた上で正しい絵を見て憶え、評価の軸を作っていくというマスターモニターの開発の手法を、松原氏は岡野氏について憶えていく。完全な「師弟関係」である。

松原:その後開発が進むと、槙は社内向けに、開発中の機材をデモする機会を多数用意してくれたんです。それこそ毎週のようにいろんな方々……社長を含めて経営幹部にも見せて、その都度フィードバックをいただきながら改善点を並べて調整を重ねていきました。

「マスモニ」の絵作りとはなにか

ここで気になる点がある。松原氏が岡野氏から「直伝」されたマスターモニターの絵作りとは、どのようなものなのだろうか?

ほとんどの方はマスターモニターを見たことがない。テレビの映像も十分に美しいと思うはずだ。実際、美しい。「美しい」という観点で言うならば、マスターモニターの映像とテレビの映像は上下関係があるものではなく、どちらも「美しい」のである。

では、どう違うのだろうか?

岡野:テレビの絵作りというのは「きれいに見せよう」という意図があります。元々あまりきれいではない、そこそこの品質の信号をいかにきれいに見せるために加工するか、という技術です。

しかし、マスターモニターの価値は、信号をいかに「忠実に」、「正確に」表現するかということに尽きます。

だから「元の画がどういうものか」を知らないと、正確な評価はできないんです。

なので、今回のチューニングではマスターモニター、弊社の「BVM-X300」の絵が神様です、元の画に忠実なんです、というポイントからスタートして、そこに合わせるところからはじめてもらいました。

では、本当にマスターモニターが忠実なのか? そこは、これまでの経緯と、世の中でデファクトスタンダードになっているということから、「正しい」と考えていただくしかないかな、と思っています。

その結果、Xperia 1に用意された「クリエイターモード」では、マスターモニターに近い「制作者が撮影時に意図した映像により近い」表示が可能になった。もちろんそれは、解像度・圧縮率などの点で「良い品質の映像であれば」、美しく撮影意図に合った映像になる、という話である。表示する映像の質や視聴条件によっては、他のモードの方が好ましく見えることもある。だがなにより、今回は「制作者が撮影時に意図した映像に忠実」という点にこだわったモードが入ったということが、過去のXperiaを含めた、他のスマホとの大きな差別化点になる。

一方で、マスターモニターとスマートフォンには大きな違いが1つある。それは使っているディスプレイデバイスの問題だ。同じ有機ELであっても、ディスプレイデバイスの製造コスト・製造技術は異なる。高価な業務用デバイスと、最低数十万枚からという量産機器用デバイスでは条件が違う。特にモバイルデバイス向けは、表示できる色の特性などが理想的ではなく、どうしても偏りがある。「マスターモニター」的絵作りには、そうした部分が大きなハードルだ。Xperia 1で、ソニーモバイルはそこをどう解決したのだろうか?

槙:その辺のノウハウは「秘伝のタレ」みたいなものですから。

松原:詳細は申し上げられないのですが……。

マスターモニターにしても、スマホ用のパネルにしても、映像の規格にあわせて測定器で測って、それに合わせてチューニングすればできるのかというと、そうではないんです。市販されている測定器では、数字は合っていても色の見た目として感覚が違う、ということがあります。そこはパネルの差が出る部分です。

結局そこでなにが重要かというと、「見た目としてなにが違うのか」を、色々なソース映像を見て確認していく作業が必要になります。

そこでとても助けになったのは、厚木には、VENICEで撮影し、X300でグレーディングした専用のコンテンツがたくさんあるんです。そこから厳選して、合わせていきました。

これは、別の言い方をするなら、長さや重さを量る基準となる「原器」がある、ということと同じだ。厚木では長年、マスターモニターや業務用カメラを開発している。そこでは忠実再現のために基準となる映像が必要だ。だからこそ、そうした映像は多数用意され、日常的に利用されているのだ。

岡野:一番変わってくるのは「肌色」です。人の感覚に訴えてくるものがあるので、測定器の限界を超えてきます。ですから、肌色を中心に。

そこでも、日本人・白人・アフリカ系、昼間の色、ライティングによってどうなる……いろんな方の肌色をチェックしています。あと、監督さんによってけっこう変わるんですよね。日本人の監督さんとアメリカ人の監督さんでは、肌色の感じが違う。それぞれもってきて、チェックしています。

私の上司に桐山(宏志氏)という画質の鬼みたいな人間がいます。その人は、最初は欧米の監督が撮影した映像を渡して「これで合わせてみろ」といって、合わせてきたわけですよ。で、今度は「こっちかけてみて」と日本人監督の映像を持ってきて……(笑)。その映像というのは、みなさんご存じの監督さんが、特にVENICEで撮影してくれたコンテンツなんですが。

松原:出荷直前なんですよ、それが。しかも、見比べるとたしかに全然違う(苦笑)。

その日本人監督さんの映像は、逆光とか夜のシーンが多くて、それも難しい理由なんです。人の肌は単色じゃなく微細なグラデーションででき上がっているので、とても難しい。

槙:「皮膚が分厚くみえる」、「均等に見えない」とか、そういう風なことを言い出すんですよ。色じゃなくてね。

徹底した官能評価。これは、いままでのスマホのディスプレイの作り方とは大きく違うものだ。これまでも官能評価はやっていたが、それはあくまで「チェック」に過ぎない。テレビのノウハウを入れる、ということも、「テレビで使っているロジックをスマホのアプリに適応する」といったやり方に近かった。

松原:しかも過去の場合、その際にはBRAVIAに完全に合わせるというよりは……なんというか「映える」見せ方でモノを作っていたので、若干BRAVIAよりも鮮やかになっているところもありました。今思えば若干大雑把というか、「小さな画面だしこれでいいか」と考えていたところがありました。

槙:重要なことは、BRAVIAにはBRAVIAの技術があり、プロフェッショナル製品にはプロフェッショナル製品の技術がある、ということです。今回はXperia 1の中に「二刀流」で入れた、ということ。見るコンテンツによって向きがあります。ニュースなどはテレビ的に見た方がいいし、映画はやはり意図に合わせて映画的に見るべきです。21:9の「シネマ」のコンテンツについては、作り手の意図をそのまま伝える形にすべきです。

今回はその両方を入れた、ということですね。

では、そんなXperia 1を、マスターモニターを見ながらプロ用機器を作り続けてきた岡野氏はどう見ていたのだろうか?

岡野:出発点として、Xperia 1は有機ELだ、ということはあります。有機ELは液晶よりもプロ機器に近いですから「素性がいいだろう」という期待はありました。

言い方として正しいかはわかりませんが……それぞれのプロダクトのエンジニアには、それぞれのプロダクトのポリシーや文化がありますから、いくらこちらが教えてあげても、なかなか素直じゃないところがあります。

今回は、槙さんの薫陶もあるのかもしれませんが(笑)、みんな言ったとおりのことをやってくれるんです。文句一つ言わず。なので、そういう意味で、「打てば響く」というか、どんどん良くなっていく。それは、子供の成長を見るようで、すごくうれしかったですね。

松原:僕にとっては、いただいたエッセンスはすべて新鮮なものです。基本、分析器に頼ってやってきたので、なかなかそういう発想に至れなかったし、エモーショナルな部分を得られたので、とても良い学びでした。

槙:彼は、厚木から帰ってくると常に「楽しい」って言っていましたね。

松原:ようやくプロ機器もいじれるようになってきましたし(笑)

ただし、ここでいう「画質」は、ディスプレイだけを指すものではない。

松原氏は次のように話す。

松原:Xperia 1の画質のポイントは「ディスプレイ」とか「カメラ」とか、別々にやってるわけではない、ということです。トータルで画質が設定されていて、分断されていないんです。

いままでモバイルでは、ディスプレイはディスプレイ、カメラはカメラと、分断されているところがありました。カメラについても、撮影したデータだけではなく、表示した後まで「シネマライク」であることが重要です。

すなわち、撮影機能とディスプレイ、両方を「厚木のテクノロジーとノウハウ」で磨いたこと、両方をセットで考えていったことが、Xperia 1の特徴なのだ。

では、その「カメラ」はどうなったのか? 槙副社長の言う「シネマトグラフ」の価値はなにか? それは、後半の記事でお伝えしたい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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