西田宗千佳のRandomTracking
第440回
iOS 13、iPadOS 13、macOS Catalinaの進化を早速体験! 何が変わったのか
2019年6月25日 11:20
アップルが今年秋に公開を予定している、「iOS 13」、「iPadOS 13」、「macOS Catalina」のパブリックベータテストが開始された。特に今回は、iPad向けにOSが独立し、Macと連携する「Sidecar」という機能が搭載されるなど、iPadに関わる機能アップが目立つ。それだけでなく、macOSからはiTunesがなくなるなど、AV的に気になる変化もある。
これらの新OSで機器の使い方がどう変わるか、取材に基づく特別な許可を得た上で、ファーストインプレッションをお届けする。
なお、パブリックベータテストはあくまで「テスト」であり、ソフトウエアの安定性は保証されていない。また、日常的に使うことは推奨されない。「今秋にはここまで機能が進化する」というイメージとしてお読みいただきたい。
実は大きく変わったのは「iOS 13」だった
iOS 13とiPadOS 13は、コアが同じ技術である。そこはこれまでと変わらない。ただし、ユーザーインターフェース周りが、スマホのサイズに特化したiOSと、タブレットのサイズに特化したiPadOSでは大きく違ってきている。今回は両者が分かれ始めた最初のOS、ということになるが、既にけっこうな部分が変わってきている。
とはいえ、実はiOS 13自身が、かなり細かいところを含めて変化の多いOSになっている。「iPadを持っている人だけが秋に変化を味わえる」と思ったら大違い。iPhoneのユーザーも、多くの変化を体感することになるだろう。
iPadOSが目玉と思わせて、実はiOS 13という基盤自身がかなりの変化を遂げており、それに伴いiPadOSやmacOSも変わっている……というべきなのだろう。邪推だが、ひょっとすると、iOS 13とiPadOS 13を「分ける」と決めたのはけっこう最近のことで、だからこそ共通項が極めて多いのかもしれない。元々同じものなのだから、別に不思議はない。
ダークモードで「iPhone X系」は消費電力が下がる可能性大
ではどこが変わったのか?
まず「ダークモード」。白基調の画面を黒基調にするもので、多数のOSに搭載が広がっている。
Apple製品の場合、先行してmacOS Mojaveで搭載されていたが、今回、iOS/iPadOS/macOSのいずれにも搭載されたことになる。共通の要素としては、時間に応じてライトモードとダークモードを自動切り替えする機能が搭載されていることが挙げられる。
この機能はmacOS Mojaveにはなかったが、次期バージョンであるCatalinaには搭載される。夜間に画面をまぶしくしたくない、という人は、この設定がプラスに働くだろう。
また、これは「有機ELのディスプレイを使ったiPhone」(iPhone X、XS/XS Max)だけに効くものではあるが、ダークモードにするとディスプレイの発光面積が減るので、消費電力が少なくなることが期待できる。どのくらい減るのかは、検証に必要な時間がなかったのでわからない。過去にGoogleが「有機ELを使ったPixelでGoogleマップを利用した場合、最高輝度の場合、消費電力は63%減る」との調査結果を出したことがある。これはおそらくベストケースに近い値だが、ダークモードに対応したアプリを長く使う場合には、それなりの効果があるのではないかと思われる。
ちなみに、液晶では原理上、消費電力の違いはほとんど生まれない。なので、MacやiPad、iPhone X系以外のiPhoneでは、ダークモードにしても消費電力は変わらない。
実は最大の変化!? 「写真」アプリが大幅進化
「写真」も、iOS・iPadOSともに大きく変わった部分のひとつだ。
まず、「写真」アプリの操作がかなり変わった。写真そのものがかなり大きく表示されるようになり、日時での分類が前面に押し出された格好だ。非常に変化が大きいので、最初は違いに戸惑うかもしれない。基本的には、「すべての写真」>「日別」>「月別」>「年別」と分類を移動しつつ写真を見ていく、と考えればいい。基本的なデザインはmacOS版も同じだが、操作方法は若干異なる。操作での戸惑いはあるが、写真がずいぶん見やすくなったので、「アルバムを見ていく」という行為が楽しくなった。写真のピックアップやレイアウトはアプリ側が自動的にやっているのだが、かなりうまくやっていると感心する。
写真と動画の編集には、さらに大きな変更が加えられている。
これまで、iOSの「写真」アプリは、非常にシンプルな編集機能しかなかった。傾きを調整して切り取り、自動補正一発、という使い方がほとんどだったのではないか。明るさや色合いなどを調整する項目はあったが、メニューの奥深くにあるので、あまり使われていなかった。
だが、iOS 13/iPadOS 13の「写真」アプリでは、写真の調整・編集機能が大幅に強化された。調整項目は露出からコントラストに彩度と、15項目も並ぶ。傾き補正・トリミングに加え、水平方向・垂直方向の台形補正までできる。写真編集専用アプリにかなり近くなった。
もちろんそれぞれを細かく調整できるのだが、それだと「難しそう」と思う人も出るだろう。実は、これほど調整項目が増えているのに、やることは以前と変わっていない。まず、デフォルトで選ばれている「自動」ボタンを押せばいいのだ。すると、各項目について自動的に「良きように」調整が行なわれる。iOS12までの機能と違うのは、どの項目についてどれだけ変更したのか、明示的にわかることだ。気に入らなければ、それぞれの項目をいじればいい。
そして、この「自動」調整も、効き具合を自由に変えられる。「自動」ボタンに連動したスライドバーを動かすと、自動調整で決められた方向性を活かし、残りの項目を連動させて調整してくれるのだ。「写真のことは詳しくわからないけれど、自動調整の結果が気に入らなかった」という人は、この機能をつかってみればいい。
傾きや台形補正も同様だ。こちらにも新たに「自動」ボタンがついたので、1タップで補正できるようになった。これもかなり便利だ。ただし、傾きなどの補正ができるのは、どうやらiPhone・iPadで撮影した写真だけのようだ。撮影時に記録されたメタデータなどを使っているせいかもしれない。
動画についても機能強化されている。これまでは不要部分をカットする程度の編集しかできなかったが、写真とおなじく「自動」を含めた色調補正や傾き補正まで可能だ。これはかなり強力だ。しかも、色調補正などはあとで「元に戻す」こともできる。
「ワンタップで補正」という考え方は変えずに、全体の機能を大きく変更しているという意味で、iOS 13/iPadOS 13の「写真」アプリは、かなり面白い進化をした、と言えるのではないだろうか。
大きく変わる「ファイル」の扱い、日本後入力はついに「全角スペース」標準に
iPadOSの進化点と思われていたが、実はiOSの進化点だった、ということもある。
それは、「ファイル」の扱いの変化だ。ファイル操作用に「ファイル」というアプリがあるが、iOS12まででは、そこまで使いやすいものではなかった。Zipの解凍・圧縮やNASへのアクセスもできず、USBメモリーなどの普通のファイルを見ることすらできなかったからだ。
また、ウェブブラウザーであるSafariは、基本的に「ファイルのダウンロード」が苦手だった。ダウンロードしたデータを直接表示することはできたが、ダウンロードしたデータを「ファイルとしてどこかに保存する」ことを想定していなかったからだ。
だが、iOS 13ではそれが変わる。
USBメモリーの扱いはiPadOSの特徴のようにも思われたが、実はiPhoneでも使える。Lightning端子からUSBやSDカードなどへの変換を行なえば、ちゃんとアクセスできる。Zipも扱える。
Safariには「ダウンロード」機能が搭載される。使い勝手もUIもMacに非常に近い。
実はこの機能、Macとは異なり「Safariに対し、指定したフォルダへ『ファイル』アプリを経由してデータを保存する権利を付与する」という扱いになっている。だから、iPad内のストレージにダウンロードすることもできれば、「ファイル」アプリに対応したクラウドストレージのフォルダにダウンロードする……ということもできる。例えば、自分のiCloudやDropboxのフォルダへ「ダウンロード」=転送する、ということもできるのである。当然その場合、アップロードする分時間がかかるのだが。
OS上で、この辺の扱いを「ちゃんと定めた」のが、iOS 13世代の大きな特徴、といえるかもしれない。
またiOS 13/iPadOS 13には、日本人にとって非常に大きな変更点がある。
それは、日本語入力時の「スペース」が、デフォルトで「全角」になったことだ。これまでは半角だったため、行頭のアキなどを入力する時に不自然だった。全角スペースを辞書に学習させるなどの対応策があったが、面倒だったことに変わりはない。他のプラットフォームでは全角スペースが基本だったので、これは「ようやくの方針転換」と言えそうだ。
この他、モバイル通信時のデータ消費を自動的に抑える「省データモード」設定が追加されたり、「ミュージック」アプリのUIが細かに変わり、歌詞表示が充実するなど、細かな変更点・改善点を挙げていけばキリがない。「え、この操作変わったの? 」と驚く部分もけっこうあるのではないか、と思う。しかし、どの機能も「あるとうれしい」ものであることに違いはない。
なお、Appleはアプリのパフォーマンスやアップデート速度も向上している、としているが、テストする時間が限られていたこともあり、その辺は検証ができていない。ただ、確かにFace IDのロック解除までの時間は素早くなった。機能アップはしているが、OSが重くなった印象は受けない。
マルチタスクを軸にUIが変化
では、iPadOSとしての特徴はどこにあるのだろうか?
iOS 12のiPad版とは、けっこう色々なところが変わっている。
まず、ホーム画面に並ぶアイコン数が一列増え、一画面に収まるアプリのアイコン数が最大30個 + Dock収納分になった。手元で試してみたところ、この数は11インチ版iPad ProでもiPad miniでも同じだった。しかもアイコンの間隔は可変する。画面上にウィジェットを表示すると、その分アイコンの間隔が変わるようになっているからだ。
一番の違いは、「マルチタスク」、「アプリ併用」に関する考え方の違いだ。この部分は現状、Apple Pencilと同様、iPadオンリーの要素といっていい。
これまでも、iPadでは複数アプリを画面分割で使う「Sprit Screen」や、アプリを重ねて使う「Slide Over」という機能があった。これらの扱いが大きく拡充される。
従来は「1アプリ1枠」という扱いだったため、Sprit Screenで画面を分割できても、同アプリを2つの画面で並べることができなかった。だから、「ファイルをフォルダからフォルダへドラッグ&ドロップでコピーする」「文書を2つ開き、片方を参照しながらもう一方を仕上げる」といった、PCではあたりまえのことがやりづらかった。
だが、そうした制限は「基本的に」なくなる。「ファイル」アプリを2つ並べてファイル整理をしたり、「メモ」を並べて文章を比較したりできるわけだ。前出のようにUSBメモリーなどが簡単に使えるようになったので、この要素はとてもありがたい。
ただ「基本的に」と書いたように、制限もある。「1アプリ1枠」の制限が撤廃されるのは、アプリ側が対応している場合に限られる。iPadOS 13に含まれる標準アプリの多くは対応済みだが、サードパーティー製アプリはまだ未対応である。この点は、デベロッパー側のがんばりに期待するしかない。
アプリを2つ並べる時は、Dockから画面へとアプリアイコンをスライドさせる。Dock経由なのでアプリ呼び出しが面倒なシーンもあるが、操作は難しくはない。ただ、どのアプリが「1アプリ複数枠」で使えるのかは、使って見ないと分からず、その点でちょっとまごついてしまう。
一方、Slide Overには制限がない。いままでは「1アプリが特別扱い」されて重ねられるようなイメージだったのだが、iPadOS 13からは、Slide Over自体が「履歴」を憶えている。なので、Slide Overで使ったアプリを簡単に切り替えながら使える。写真を文書にドラッグ&ドロップしたり、メールやSNSをちょっとチェックしたりするだけなら、Slide Overでアプリをサクサク切り換えつつ作業をするのがいいだろう。
PencilKitでペンの扱いがさらに洗練
次に、Apple Pencil関連機能の拡充だ。
新たにPencilKitというフレームワークが用意された結果、対応アプリではリッチなOS標準のペン入力機能が使える。ペンの切り替えから消しゴム、範囲選択まで、必要なものがおおむね揃っている印象だ。
特に大きいのは、文書や画面に「注釈」を入れたい場合だろう。Apple Pencilを使っている場合、画面の外枠から内側へペンを滑らせることで、今表示されている画面をスクリーンショットにし、注釈をつけられる。
注目すべきは、この時、見えている範囲だけでなく「ページ全体」をキャプチャできる、ということだ。別にウェブサイトに限らない。メールでもメモでもかまわない。ただしこちらも、Split Screenと同じように、ページ全体のキャプチャには、アプリ側での対応が必須のようである。
「新機能を使うにはアプリ対応が必須」という点は、どうにも逃れられない弱点ではある。
なお、このページ全体をキャプチャする機能は、iPhoneのスクリーンショットでも利用可能になっている。
より「デスクトップ」ライクになったSafari
非常に大きいのが「Safari」の改良だ。従来、iPad用のSafariは「iPhone用Safariの派生」だった。そのため、ウェブサイトによってはモバイル版が横に伸びて表示されてしまうこともあった。また、アプリ内から呼び出すブラウザーについては、単体アプリ版との動作の差が大きく、表示などで困る事も少なくなかった。なにより「ダウンロード」機能がなかったのも痛い。
だが、iPadOS 13では変わる。
iPadOS 13用のSafariには設定項目が追加されている。標準でデスクトップ版ウェブを読み込むかどうかも設定で切り換えられるようになっていて、標準では「デスクトップ版」になっている。
ダウンロードについても、前出の通り、macOS版と同じように「指定したフォルダーにダウンロードする」機能がある。Zipファイルをダウンロードして扱うのも問題ない。
SNSアプリ内などでのウェブ表示もPCと同じになり、見やすくなる。
キーボードショートカットもかなり増えていて、この辺も「PC寄り」である。
挙動として「完全にPCと同じ」とはいかないようだが、今までに比べ「iPadだから」という不便は感じづらくなっているのは間違いない。
これらに加え、前述のようにUSBメモリーなどが使えるようになっているし、フローティングキーボードも実装された。フリック入力派には特にうれしい機能ではないだろうか。
文字選択などのジェスチャーも変わっている。三本指で画面を触り、「コピー」「ペースト」「アンドウ」などを行なうものだ。どういう動作かは、正直文章を読むより、AppleのiPadOS 13プレビューページを見た方がわかりやすい。
三本指を開いたり閉じたりスワイプしたりという動作は、Appleがいうほどシンプルではない。どの操作がどれにあたるのか、正直まだピンと来ていない。
だが、心配しなくてもいい。実は「三本指タップ」という機能が用意されている。タップすると補助メニューが表れ、これらのタップでもコピーやアンドゥができる。貼り付けのために長押しするより、こっちの方がずっと簡単だ。ジャスチャーよりも「三本指タップ」を憶えた方が楽な気がする。
カーソル移動や選択はかなり賢く、スムーズになった。指一本でなぞって選択し、三本指タップでメニューを出してカット……といった操作は苦もなくできる。マウスより楽かというとそうではないが、従来よりはずっといい。
実はこの「三本指ジェスチャー」、iOS 13にも搭載されているのだが、画面サイズが小さいため、三本指で操作するのが大変だ。だから、実質的にiPadOS向きの機能と言えそうだ。
Sidecarの利点と限界とは
iPadOS 13を語る上では、macOS Catalinaとの連携も外せない。iPadをサブディスプレイとして使う「Sidecar」という機能が搭載されたからだ。
この種の機能は、従来はサードパーティーアプリで実現されていた。筆者もいくつか使ってみたが、もっとも完成度の高かったのはAstropadの「Luna Display」などのソリューションだと考えている。
・iPad「セカンドディスプレイ化」の決定版?!「Luna Display」
では、それらに比べSidecarの使い勝手はどうだろうか?
Sidecarを使うために、特別なハードウエアや設定は必要ない。Mac側が「macOS Catalina」であり、iPad側がiPadOS 13である、というのが条件だ。逆にいえば、これらが動かないハードウエアでは使えないし、OSをアップデートせずに使うこともできない。ある意味ではこれが最大のネックかも知れない。
条件が揃っていればあとは簡単だ。macOS側の画面上方に四角いアイコンが出ていれば、Sidecarが使えるiPadがある印だ。ちなみに、画面では単純な四角だが、これは相手がホームボタンのないiPad Proだからだ。ホームボタンのあるiPad miniなどでは、ホームボタン付きのアイコンが出てくる。
Macに接続できるiPadは同時に1台だけだ。複数を認識するが、どちらかしかサブディスプレイにはならない。
画面を表示する方法もシンプル。画面上部の四角いメニューか、ウインドウの左にあるグリーンのボタンを押すかして、つなぎたいiPadを選ぶだけである。
接続には、USBケーブルかWi-Fi + Bluetoothを使う。WWDCでは説明員に「Bluetoothで」と説明されたのだが、実際には「BluetoothでiPadとの関係をやりとりし、画面の情報はWi-Fiでやりとりする」形のようだ。正確には、同一のLAN内にあり、Bluetoothで通信可能な範囲内にあるか、USBケーブルで接続されたMacとiPadで利用できるのがSidecar、といっていい。
つながってしまえばおどろくほど普通に使える。キーボードショートカット用のボタンやTouch Barと同じ表示もできる。Apple Pencilも使える。Luna Displayを初めとしたワイヤレスによるサブディスプレイ・ソリューションは、セキュリティ的制約の低い家庭内LANなどでは問題なく動くものの、オフィスやコワーキングスペースなどではつながらないことも多い。しかしSidecarは、環境を選ばずに接続できた。これは大きなメリットだろう。
映像をiPad側に送っているといっても、表示の劣化は感じられない。ここはLuna Display など、他のソリューションと違うところだ。遅延は、特にApple Pencilを使うと若干感じられるが、表示だけならほとんど気にならない。非常に快適な使い心地だ。
動画再生もできる。ただ、CPU負荷ははっきり大きくなる。MacBook Air(2018年後期モデル)では、タイプに遅延を感じるほどになった。Sidecarはソフトウエア処理なので、接続するだけでCPU負荷が上がり、動画再生を行なうとそれだけで5割の負荷になることもあった。
意外なことに、Apple Pencilは使えても、iPadと同じ感覚で「タッチ」は使えない。例えば、メイン画面にワープロを、サブディスプレイとしてiPad側にウェブを表示していたとする。そこで、ウェブの側を指で触ってスクロールしようとしても動かない。Sidecarにおけるタッチパネルは「タッチパッドの代わり」になっているので、一本指ではスクロールしないのだ。スクロールはタッチパッドと同じく「二本指」で行なう。また、リンクをタッチしても飛ばない。リンクをクリックするには、メイン画面からサブ画面へマウスカーソルを移動し、普通に「クリック」する必要がある。
こうした部分は、Luna Displayなどでは工夫されており、iPadでアプリを操作する時と同じように、タッチが機能する。Sidecarはあくまで「ペンが搭載されたサブディスプレイの再現」なので、タッチは再現されていないようだ。
Sidecarの利点は、「特別な機器を必要としない」、「環境を選ばない」、「簡単である」の3点に尽きる。ここは他のソリューションよりずっと優れている。一方、ソフトウエア処理であるがために、Mac側には相応の性能が必要になる。また、あくまで「サブディスプレイ」であることも制限といえる。
なので、サードパーティーのソリューションが不要になるわけではない。だが、単に時々サブ画面が欲しい人、ペンを時々Macでも使いたいという人には、間違いなくプラスの機能だ。
「ミュージック」になってもCDリッピングは健在、iTunes引退の影響は軽微
macOSについては、もうひとつ気になることがある。それは「iTunesがなくなった」ことだ。
以前より解説している通り、これは音楽配信機能がなくなったことを意味していない。複雑化したiTunesというアプリをシンプル化したに過ぎない。アプリの構造としては、かなりiOS/iPadOSの「ミュージック」アプリに近づいており、映像系は「Apple TV」に、ポッドキャストは専用アプリに切り分けられた。iPhoneやiPadを接続すると「ファインダー」に項目として表示されるようになっている。
ここで気になることがひとつ。CDのリッピング機能は残っているのだろうか?
安心してほしい。CDドライブがない場合、ディスクが挿入されていない場合はメニューに出てこないが、ドライブをつなげば、いままで通りリッピング関係のメニューが現れる。
基本的には、音楽機能を切り分ける、まさに「シンプル化」の一言だったようである。特に心配はいらない。