西田宗千佳のRandomTracking
第528回
iPhone 14シリーズに新AirPods Pro、Apple Watch Ultra。実機をチェック
2022年9月8日 14:47
発表されたばかりのアップル新製品のハンズオンをお送りする。
円安の中で、国内価格の高さが気になるタイミングではあるが、どのような製品に仕上がっているのだろうか? ごく短時間ではあるが、実機を触れることができたので、感想をお伝えしたい。
また、現地での取材などで得られた話もあるので、その辺を合わせて語っていくこととしたい。
iPhone 14 Proの「Dynamic Island」に注目
まずやっぱり、iPhoneから行こう。
今回は「mini」がなくなり、スタンダードな「iPhone 14」がサイズで2パターン、「iPhone 14 Pro」も同じようにサイズで2パターン。カラーがそれぞれ5バリエーションと4バリエーションとなっている。Proのカラバリを見ていると、脳内に「ハイウェイ・スター」が流れるのは気のせい、ということにしておく。
変化点として気になるのは、iPhone 14 Proシリーズの方ではないかと思う。ノッチから細長い「Dynamic Island」に変わったわけだが、ちょっとアプリを触ってみた印象としては「アリ」だと感じた。
結局黒い部分があることに変わりはないのだが、今使っているアプリに合わせ、周囲の表示が変わる。単なる黒い領域であるよりはわかりやすい。特に「音楽が再生中である」「タイマーが動いている」などの状況を把握しやすくなったとは感じる。
ただ、この部分を使うにはアプリ側での対応も必要になる。アップルの説明員は「そこまで大きな変更は加えなくても大丈夫だろう」と話しているが、開発者は新機種に向け作業が1つ増えることになりそうだ。
カメラの機能や常時点灯のディスプレイなどは、ちゃんと使ってみないと感じが分かりにくいのでここで詳細な言及は控えておく。
iPhone 14 Proにはメインカメラ(これまでは「広角」と表現されていたもの)での撮影時、デジタルズームを伴わない「2倍」撮影も可能になっている。この点は、メインカメラのセンサーが1,200万画素から4,800万画素になったことを生かしたもの、ということになる。
また、RAW撮影も、設定を変えると1,200万画素と4,800万画素を切り替えて行なえるようになっていた。ただ、4,800万画素での「ProRAW」撮影の場合、シャッターを切ってから画像を保存し終わるまでに1、2秒程度必要になる。その点は留意しておく必要がありそうだ。
「14 Pro」と「14」の差はより大きく
iPhone 14の方は、外見だとカラーバリエーションくらいしか違いを感じにくい。
iPhone 14はプロセッサーに、現行のiPhone 13と同じ「A15 Bionic」を使っている。ただし、GPUは5コアだ。これはiPhone 13 Proに使われているプロセッサーと同じ仕様で、ゲームなどでの処理性能は上がっている、ということになる。
それに対してiPhone 14 Proシリーズの場合、プロセッサーが「A16 Bionic」になり、カメラのメインセンサーが4,800万画素に上がっている。
それだけでなく、iPhone 14 Proは「高精度2周波GPS」にも対応してる。基調講演では「L1とL5に対応」とされていたのだが、日本の準天頂衛星「みちびき(QZSS)」のL5にも対応していることが確認できた。従来よりみちびきには対応していたが、高精度即位用のL5にも対応するのは今回が初めて。同時に発表された「Apple Watch Ultra」も同じく、L5での「高精度2周波GPS」に対応することになる。この要素は、iPhone 14シリーズでは使えない。
なお、Wi-Fiについてはどちらも、先日日本でも対応が始まった「Wi-Fi 6E」には非対応。日本版の場合、ミリ波にも未対応だ。
ミリ波対応も含め、今年はアメリカ版がかなり特別な扱いになった。今回ハンズオンで使われていたのはアメリカ版であるらしく、SIMカードスロットがなかった。ミリ波対応もアメリカ版からだ。
実はウェブでも、アメリカのものにはSIMカードスロットのない写真が使われているが、日本ではSIMカードスロット「あり」のものになっている。
AirPods Proの進化は「中身」がポイント
次はやはり「AV」Watchなので、「第二世代AirPods Pro」の話をしよう。
といっても、周囲はうるさく、しっかり試聴できる環境でもないので、音質やノイズキャンセルの質についてはレビューの機会がある時まで取っておくことにしたい。
外観は、第一世代と見分けがつかない。充電ケースにはストラップホールとスピーカー(どこに置いたか音で知らせるためのもの)の穴があるので、そこで見分けがつきそうだ。
個人的にもうれしいし、多くの人が「そうだよね」と思ったのはストラップホールの追加だと思う。これで鞄の中などから取り出しやすくなる。
機能としては、棒状の部分にスイッチだけでなく「スワイプ」要素もついたことだ。小さいところにスワイプがつくのは、いままでの経験上、本当に使いやすいかちょっと心配だったのだが、音量操作は特に戸惑うことなく、快適に行なえた。
実はこの正確さ、第二世代AirPods Proに搭載された「H2」の性能によるものらしい。
タッチセンサーの誤操作を防止するために機械学習が使われており、その処理には、H1に対し倍の性能を持つH2が必須……ということでもあったようだ。それでいて、初代と同じサイズ・デザインを保ち、さらにバッテリーサイズも同じであるようなので、なかなかすごい。
体験できた機能として「これはいい」と思ったのが「適応型環境音除去」だ。
第一世代から、外音を取り込んで音楽と一緒に聞ける機能はあった。だが、周囲がうるさいとそのまま「うるさくなる」という問題もあった。今回第二世代では、周囲の騒音を自動的に問題ない音量まで下げる「適応型環境音除去」が搭載された。
以下の写真は、AirPods ProとApple Watch Series 8を連携して使った場合のものだ。適応型環境音除去がオフの時には88dBで警告表示が出ていたのだが、機能をオンにすると64dBまで下がり、かなり聴きやすくなった。耳栓とはまた違う、別の選択肢だと考えても興味深い。この機能はApple Watchに、第二世代AirPods Proのために新たに追加されたものだという。
エクストリーム市場を狙う「Apple Watch Ultra」
ある意味、今回一番の驚きは「Apple Watch Ultra」だったのではないかと思う。49mmの盤面は、一般的な時計にはなかなか見られないサイズと言える。
このサイズと耐久性は、ダイビングや山登り、エクストリームスポーツなどをする人のニーズにも応えるものだ。一方で、「いや、そういうスポーツはしないし……」と感じている人もいそうだ。
ただ、つけてみると「たしかに大きいがこれはこれでアリ」というのが筆者の感想だ。
画面表示が大きい、というのは、スマートウォッチにとってプラスだ。そして、つけてみたら意外と重さを感じづらい。スペック表によると61.3gあるらしいのだが、現行のApple Watchと同じような付け心地だ。チタンの色味も悪くない。
その上で、前述のように、Apple Watch UltraはL5での「高精度2周波GPS」にも対応する。あえてテック好きが買う、という選択肢もあるのではないか。まあ、高価なのは事実なのだが……。