鳥居一豊の「良作×良品」

第114回

テレビは“音で選べ!” 注目はAtmos対応、'22年版TVの選び方

パナソニック「ビエラ LZ2000」シリーズの77型「TH-77LZ2000」

IMAXやドルビーシネマなど、プレミアムな映画館が大人気。その秘密は“音”

「トップガン:マーベリック」が現在でも大ヒット公開中だが、最近の映画で注目したいキーワードが、「IMAX」や「ドルビーシネマ」といったプレミアムなシアターだ。通常の上映料金に加えて特別料金まで加わるにも関わらず、高い人気を誇っている。また、映画館が独自の音響システムを構築し、特別な名称をつけているシアターも数多い。映画好きの人のなかには、同じ映画をこうしたさまざまな映画館で見て、映画館の画質や音質の違いを楽しんでいる人もいる。

個人的な感覚では、高いお金を払ってIMAXシアターやドルビーシネマに足を運ぶのは音響が一番の理由だと思う。映画館の音響は、迫力やスケール感などではどうあがいても家庭では真似のできないレベルにある。優れた映像にふさわしい音響があって、十分な満足度が得られると思う。

“薄型テレビは音が悪い”。そう思っている人は少なくないだろう。映画館並とはいかなくても、映像にふさわしい音響を考えるとサウンドバーやAVアンプを使ったサラウンドシステムなどを組み合わせるのが良いと考える人もいる。実際、手頃な価格でテレビの内蔵スピーカーよりも質の高い音を楽しめるサウンドバーは今も人気が高い。2022年の現在でも、その考え方は基本的には間違っていない。

筆者もそう思っている側の人間だったのだが、昨年あたりから薄型テレビの音を真剣にチェックするようになってきた。というのも、薄型テレビの音が思った以上に進化している事に気付いたからだ。テレビ放送のステレオ音声だけでなく、Dolby Atmosのサラウンド音響も決して悪くはない。そんな薄型テレビが少しずつ登場してきているのだ。

2022年の薄型テレビもようやく各社から発表されたが、音の良さを武器にしたモデルがかなり増えてきた。ここでは、そんな音質の良さに注目して、各社の薄型テレビをまとめてみたい。これに加えて、音質に注目した薄型テレビの選び方やサウンドバー選びについても紹介する。

多数のユニットが並ぶラインアレイスピーカー、パナソニック「ビエラ LZ2000」

77型「TH-77LZ2000」

パナソニックは、有機ELテレビを最上位としたラインアップで、最上位のLZ2000があり、有機ELテレビのスタンダードモデルとしてLZ1800シリーズがある。液晶テレビは、LX950、LX900、LX800シリーズが最新モデル。

パナソニックはいち早くDolby Atmos再生のためにディスプレイの上部にトップスピーカーを採用したメーカーで、今年のモデルでは、LZ2000はもちろん、LZ1800、LX950にまでトップスピーカー搭載モデルを拡大している。

内蔵するスピーカーはモデルによる違いはあるが、基本的にはLZ1800が背面のサブウーファを加えた2.1.2ch構成、LX950は2.0.2ch構成となる。

その他のモデルは一般的な画面下部のステレオスピーカー内蔵となるが、LX900、LX800ともにDolby Atmos対応となる。eARCにも対応するので、最近増えているHDMI(ARC)端子のみ採用するDolby Atmos対応サウンドバーとの接続時でも、Atmos信号をサウンドバーやAVアンプに伝送できる。トップスピーカー搭載モデルの拡大はサラウンド再生を期待する人にはありがたいところだ。

4K有機EL“完成形”を目指した旗艦ビエラ。前面にラインアレイスピーカー

そしてLZ2000である。薄型テレビは“より薄く、よりベゼルは細く”が現在も続くデザイントレンドで、きちんとした音を出すにはそれなりのサイズのドライバーを使用し、かつ容積も確保したいスピーカーの居場所はないに等しい。そんな中、パナソニックはサウンドバーをスタンドに一体化したデザインなど、さまざまなトライを続けてきた。今回は画面下部にラインアレイスピーカーを採用してきた。

前面のラインアレイスピーカー

ラインアレイスピーカーとは同じドライバーを複数並列して配置・駆動する方式で、65型のTH-65LZ2000では、なんと16個のスピーカーが画面下に前向きで配置されている(入力される信号に応じて、ステレオ、または3チャンネルの再生を行なう)。ラインアレイスピーカーは映画館や劇場の音響設備で採用される例もあり、ドライバーごとの音波の干渉が少なく、距離による音の減衰も少ないなどのメリットがある。

また、テレビに内蔵する小さなドライバーは大音量では歪みが増えがちになるが、複数のドライバーを並列して駆動するため大音量でも歪みが少なくなり、小口径でも複数駆動のため低音の再生でも有利になる長所もある。テレビ内蔵のスピーカーには適した方式と言える。

65型のTH-65LZ2000

これに加えて、背面にはウーファーとパッシブラジエーターを備え、画面の両サイドに左右の広がりを拡大するワイドスピーカー、上部にはトップスピーカーとかなりの数のスピーカーを備えている。アンプ出力は合計160W(65LZ2000の場合)となる。リモコンのマイクを使った音質補正機能も備えるほか、今や定番のテクニクスによる音質チューニングも行なわれている。

この音質はさすがのもので、ステレオ音声でもクリアでしかも迫力があるし、サラウンド音声も真後ろの音が足りない以外はほぼ満足できる立体的な空間を再現できる。この音質とサラウンド再現で満足でない人は潔くAVアンプと複数のスピーカーで5.1.2ch構成のアトモス再生システムを追加するしかないだろう。

画面スピーカーまで搭載した「重低音立体音響システムXHR」、「レグザ X9900L」

続いてはレグザ。こちらも「バズーカ」などの重低音再生で音に力を注いできたメーカーだ。2022年の新モデルでは新開発となる高画質エンジン「ZRα」の高画質が注目されているが、音質の点でもかなり力を注いでいる。

ラインアップとしては、有機ELテレビがZRα搭載のX9900Lシリーズと、ZRII搭載のX8900Lシリーズ。液晶テレビでは、ミニLEDパネル搭載のZ875L(ZRα搭載)、Z870L(ZRII搭載)、量子ドット技術を採用した液晶パネルを採用するZ770L/Z670Lシリーズ、スタンダードモデルのZ570L、M550Lというラインナップになっている。

X8900Lシリーズ

内蔵スピーカーは、X9900Lが「重低音立体音響システムXHR」。X8900Lは「重低音立体音響システムXP」。Z770L/Z670Lは「重低音立体音響システムZ」で、これは画面下部のステレオスピーカーと背面のサブウーファ、トップツィーターを備えた構成。Z570Lはステレオスピーカーとサブウーファの構成。M550Lはステレオスピーカー搭載となる。リモコンに内蔵するマイクで音響特性を測定し、最適な音響に補正する「オーディオキャリブレーション」を全モデルで搭載するほか、ベーシックモデルのM550L以外はDolby Atmos対応となっている。

レグザ、次世代エンジンZRαの最高峰4K有機EL「X9900L」

レグザ、新世代エンジンZR II搭載の4K有機EL「X8900L」。48型25.5万円

65型の4K有機ELレグザ「65X9900L」

「重低音立体音響システムXHR」を搭載するX9900Lは、フロントの2ウェイスピーカーにサイドスピーカー、トップスピーカー、背面のサブウーファに加え、画面からも音を出すスピーカーも備えた計10個のスピーカーを総合出力90Wのアンプで駆動する。X8900Lの「重低音立体音響システムXP」は画面スピーカーのみ省略した9個のスピーカーによるもの。X9900Lはまだ最終となる製品の音を確認できていないが、試作モデルの音を聴いた感触は十分に期待できるもので、こちらもサウンドバーを追加する必要のないレベルのサウンドになるのは間違いない。

X9900Lの重低音立体音響システムXHR

もともとレグザの内蔵スピーカーでは、テレビに内蔵されることで生じる周波数特性の乱れなどを高精度に補正する仕組みを採り入れるほか、テレビ用として入念に設計されたドライバーを採用するなど、かなりこだわった設計とチューニングが施されている。X9900Lでは、画面スピーカーで、セリフなどのセンターに定位する音をしっかりと再現する仕組みも組み合わせることでさらに完成度を高めている。ハイレゾ音声の再生にも対応しているというのも、テレビ内蔵スピーカーとしてはかなりマニアックだ。

トップスピーカーも2ウェイ、本格的な「ARSS+」搭載シャープ「AQUOS ES1」

4K有機EL、ES1ラインの65型「4T-C65ES1」

3番目はシャープ。あまり高音質とか、オーディオ的なイメージがないと思っている人も少なくないと思うが、実はNHK BS8Kの22.2chサラウンド対応のサウンドバーを発売しているし、昔は独自の1ビットデルタシグマ方式のオーディオ機器を発売していたこともあるなど、オーディオ的なこだわりを今も継承しているメーカーなのだ。

2022年モデルのラインアップは、有機ELテレビのES1ライン、EQ1/EQ2ライン、液晶テレビのEU1ライン、EN1/EN2ライン、EL1ラインがある。このほかに、昨年末に発売されたミニLED搭載の「AQUOS XLED」のDX1ラインとDP1ラインが継続発売となっている。

シャープ、AIプロセッサ搭載の最上位4K有機ELテレビ「ES1」

AQUOS、XLED技術応用の高コントラスト4K液晶「EU1」

内蔵スピーカーは「ARSS+(AROUND SPEAKER SYSTEM PLUS)」というシステムを多くのモデルで採用。これは、画面下部のフロント2ウェイスピーカーに加え、画面上部のハイトスピーカー、背面のサブウーファを加えた構成で、ハイトスピーカーも2ウェイ構成となっているのがユニークだ。しかも、ハイトスピーカーは20度前傾して配置しており、テレビの直上の天井に音を反射させるのではなく、視聴位置に近い天井に音を反射させる仕組み。

ARSS+(AROUND SPEAKER SYSTEM PLUS)

このため、高さ方向の音が自分の頭上に近い感覚になり、立体的な高さの再現がより豊かになる効果がある。この「ARSS+」のスピーカーシステムを備えるのは、ES1ライン、EU1ライン、DX1ライン、DP1ラインとなっている。ミニLED液晶、有機EL、液晶と3つの方式でそれぞれ最上位に当たるモデルが、「ARSS+」を採用している形だ。

それ以外のモデルは基本的に画面下部に配置したスピーカーの2chシステムだが、独自のユニット設計で開口部を前方に向けた構造とし、画面の下からではなく、前方から音が出るようにした「フロントオープンサウンドシステムプラス」を採用する。ミドルクラスモデルではツイーターを加えた2ウェイ構成となっているものなど、ユニット構成に違いはあるが、すべて上位ラインと同様にDolby Atmos対応となっている。

これに加えて、内蔵スピーカーの音質補正技術として「Eilex PRISM」を採用するほか、一般的なデジタルフィルターよりも高精度な「VIR Filter」を採用することで、音の明瞭度や広がり感、立体感を高めている。

画音一体の再生を目指す。内蔵スピーカーとサウンドバーの連携強化、ソニー「ブラビア A95K」

ブラビア A95Kシリーズの65型「XRJ-65A95K」

ソニーのブラビアと言えば、有機ELテレビでの「アコースティックサーフェスオーディオプラス」が有名。

有機ELパネルの全面ガラスに専用に設計したアクチュエーターを装着し、画面から直接音を出すスピーカーを採用している。登場初期はガラスを叩いた時の音の感じが出てしまい、やや不自然さもあったが、世代を重ねることでそうした音のクセも解消され、かなり自然な音を再現できるようになっている。なにより、画面から音が出ることで、画面の下から音が出るような音の定位が下がって感じるようなこともなく、画面と音が一致した再生ができるメリットは大きい。

有機ELの最上位A95Kシリーズは、真円形の大型アクチュエーターを2基備え、さらにサブウーファも2基とした構成となっている。A90Kシリーズでは、アクチュエーター2基+サブウーファの構成。A80Kシリーズでは、アクチュエーター3基+サブウーファ2基という構成となっており、ユニット構成には違いがある。

ソニー初、QD-OLEDパネル採用の最上位4K有機EL「A95K」

アクチュエーター比較。左がA95K、右がA90Jに搭載していたもの。A95Kではコイル径が11.5mmから16mmに大型化した

一方、液晶テレビでは、画面から音を出すことはできないので、画面下部のメインスピーカーに加えて、画面両脇の高い位置に「サウンドポジショニングツィーター」を備えた「アコースティックマルチオーディオ」というシステムを採用し、画面と音が一体化した再生を実現している。このシステムは、X95Kシリーズ、X90Kシリーズに搭載している。

ソニー、ミニLED初採用のフラッグシップ4K液晶「X95K」

X85K、X80K、X80WKシリーズといった2022年モデルのその他のモデルは、一般的な画面下部に2chスピーカーを搭載したものとなる。とはいえ、独自に設計した卵型に近い楕円形形状の「X-Balanced speaker」を採用。楕円形振動板を採用したスピーカーの弱点である音の歪みを低減し、クリアな音を再現できるものだ。そして、2022年モデルはすべてのモデルが「Dolby Atmos」対応となっている。

有機ELのA95Kシリーズをはじめとして、音質の点ではかなり優秀だが、他社と比べるとトップスピーカーを採用していないため、Dolby Atmosなどのサラウンド再生ではやや差を感じてしまう。この点については、ソニーでは自社でも発売しているサウンドバーなどとの連携を積極的に推進している。同社の対応サウンドバーとの組み合わせでは、内蔵スピーカーがセンタースピーカーとして動作するため、サウンドバーの広がりのある立体的な空間再現と、定位の優れたセンター音像の両立が可能というもの。

A95Kシリーズに搭載されている「センタースピーカー入力端子」

他社が薄型テレビだけでサラウンド再生までカバーしているのとは対照的だが、サウンドバーやAVアンプとスピーカーによるサラウンドシステムの方がポテンシャルが高いことは間違いないので、合理的な選択と言える。だから、音質的な不満とは別に、立体的なサラウンド再生を求めるならばサウンドバーなどの追加を検討するといいだろう。

スタイリッシュなデザインが印象的だが、スピーカーは標準的。LG「OLED G2」

LGエレクトロニクス「OLED G2」

最後はLGエレクトロニクス。WRGB方式の有機ELパネルを製造するグループ企業を持ち、有機ELテレビのラインアップも幅広い。最上位となるG2シリーズを筆頭に、C2シリーズ、B2シリーズなど幅広いラインアップを展開している。このほか、インテリア性を重視した「65ART90EJQA」も発売している。

液晶テレビでは、量子ドット技術+ミニLEDのQNED99、QNED90、QNED85シリーズ、量子ドット技術搭載のQNED80シリーズ、スタンダードな液晶モデルのNANO90、NANO85、NANO76、UQ9100シリーズとこちらもラインアップは豊富だ。

Dolby Atmosへの対応は、G2、ART90、C2、B2、QNED85シリーズとなり、全モデルではないがエントリークラスをのぞくほとんどのシリーズが対応している。

LG史上最高画質の第2世代OLED evo「G2」。高輝度&高発色に

今回の本題でもある内蔵スピーカーだが、最上位となるG2シリーズでも、一般的な画面下部のスピーカーで配置も下向きとなっていて、音質的な面では他社との差が目立つ。この点についてもさらなるグレードアップを期待したいところだが、あえて擁護するならば、デザイン性を重視したものかもしれない。

G2シリーズを例に挙げれば、他社の有機ELテレビの多くが背面の電気回路部やスピーカー部が張り出したデザインなのに対し、ほぼ完全なフラットな背面を実現している。これは壁掛けはもちろん、壁に寄せた配置でも壁にギリギリまで近づけて置けるなど、利便性も良い。サラウンド再生のためにサウンドバーを組み合わせる人も多いので、内蔵スピーカーは必要最小限とする合理的な発想とも思える。

壁にぴったり密着させて設置できるギャラリーデザイン(別売の専用金具が必要)

今までとはちょっと違ってきた!? 2022年版 音に注目した薄型テレビの選び方

主要なテレビメーカーの2022年モデルを音の面を中心に紹介してきたが、薄型テレビの選び方もちょっと変わってきたと感じている。もちろん、買い替えならば現在所有するものよりひとまわり大きいサイズが良いとか、画質や音質で選ぶという基本中の基本は変わらない。ポイントになるのはやはり「音」だ。

  • その1:今後ますます重要になる「Dolby Atmos」対応

まずは「Dolby Atmos対応」について。Dolby Atmosは、劇場公開作品ではじめて採用されたのが2012年で、民生用のAVアンプなどでの採用からも10年以上経っている。自宅のホームシアターに導入している人はすでにしているし、していない人の多くは今後もしないだろうと思われがちだが、ここ最近大きく状況が変わっている。薄型テレビやサウンドバーでのDolby Atmos対応機が増え、しかもそのサラウンド効果もかなり優秀になってきたためだ。個人的にはようやく本格的なAtmosの普及期が始まったと思っている。

これまではAVアンプやサウンドバーがDolby Atmosに対応していれば良かったが、現在は薄型テレビ内蔵の動画配信サービスが増えていて、薄型テレビがDolby Atmosに対応していないと、内蔵アプリでもDolby Atmos音声を選べない。そして、最近のサウンドバーは高級機でもHDMI(ARC)端子のみを装備する傾向が強まっている。ゲーム機はもちろん、UHD BDプレーヤーや動画配信サービス用の端末も薄型テレビに接続し、HDMI(ARC)経由でAVアンプやサウンドバーに伝送する形が主流になるわけで、薄型テレビがDolby Atmosに対応していないと、外部入力からのDolby Atmos音源の伝送もできない可能性がある。

高音質と、サブウーファーいらずの低音再生が特徴のサウンドバー、B&W「Panorama 3」。10万円を超える高級モデルだが、入力端子はシンプルで、eARC対応のHDMI×1系統のみ

というわけで、各社のテレビのラインアップ紹介で、しつこく薄型テレビのDolby Atmos対応状況も紹介したわけだ。薄型テレビ単体でDolby Atmosを楽しみたい人だけでなく、将来的にサウンドバーなどの追加を考える人もDolby Atmos対応とHDMIのeARC機能についてよく確認しておきたい。

  • その2:並のサウンドバーを超える実力がある、最上位クラスの薄型テレビ ベスト3

自宅にAVアンプと6.2.4ch構成のサラウンドシステムを備えている筆者だが、ここ最近の薄型テレビの最上位モデルとなると、音の実力も驚くほど優秀だ。絶対的な音質の良さや、特に低音域の再生能力などは薄型テレビの内蔵スピーカーでは限界があるのも間違いないが、家庭の一般的な部屋で周囲の迷惑にならない音量での再生ならば、基本的な音の実力や空間再現をふくめて、サウンドバーを組み合わせる必要がないと感じるモデルも出てきた。それらのモデルに、並のサウンドバーを組み合わせても音質面も含めてグレードダウンになりかねない。

レグザのX9900Lシリーズ。55型(左)と65型

そのモデルは、パナソニックのLZ2000シリーズ、レグザのX9900Lシリーズ、シャープのES1ラインがベスト3だ。いずれも最上位クラスのモデルなので価格も高くなるが、優秀な実力のDolby Atmos対応のサウンドバーが10万円前後の価格になると思えば、それが内蔵されていると考えればお買い得感が出てくる。

しかも一体型だから家族の誰でも気軽に使える。テレビの周囲に余計な物を置く必要もなく、すっきりとしたリビングになるなど、使い勝手の点でも優れるので、リビング用や家族みんなで使うテレビとしては、画質だけでなく音質も優れたテレビを選ぶというのは賢い選択だと思う。

  • その3:サウンドバーやAVアンプを組み合わせるのが前提の人は、それに適したモデルを選ぼう

すでにサウンドバーやAVアンプとスピーカーのシステムを所有している人にとっては、例え高音質であろうと薄型テレビの内蔵スピーカーは最小限でいいだろう。いっそのことスピーカーのないモデルが欲しいという人もいるかもしれない。しかし、音質にもこだわりのある人は画質にだってこだわりたいだろう。「その2」で紹介したモデルは画質的にも最優秀なモデルだが、スピーカーは過剰装備となってしまうわけだ。

そんな人におすすめしたいのが、ソニーとLGエレクトロニクス。上述の通り、ソニーはサラウンド再生はサウンドバーなどとの連携を想定しているし、LGエレクトロニクスも同様の考え方だろう。ソニーならばA90Kシリーズ、LGエレクトロニクスならばOLED G2シリーズならば画質の点でも最高クラスで、スピーカーをたくさん内蔵しないぶん、デザインもすっきりと美しい。

音質に優れた薄型テレビの泣き所がデザイン性だ。トップスピーカーをはじめとして、背面にたくさんのスピーカーを内蔵するほど背面は厚みを増していき、申し訳程度に有機ELパネルの薄さを強調している部分はむしろ不格好でもある。これは、優れたスピーカーを内蔵するメーカーの今後の課題だ。

LGのOLED G2シリーズ
  • その4:サウンドバーの選択も、価格で決めてしまうのは危うい

薄型テレビ自身がDolby Atmos対応であることが重要なのは「その1」で述べたが、音質のグレードアップとしてサウンドバーを組み合わせるときも注意が必要だ。薄型テレビの音質が悪いのは2000年頃の登場初期から言われ続けてきたが、現在だと、スタンダードな薄型テレビでも音質は決して悪くはない。サブウーファーがないことで低音の再生能力が不足しがちになる程度だ。

この理由は音質補正の技術が向上してきているためだ。薄型テレビの中の狭い空間にスピーカーを押し込むことで、歪みの発生や周波数特性の乱れなどが発生してしまうというのが、薄型テレビの音が悪いことの大きな原因だが、今は解析技術の進化とデジタル補正技術が進化して、その問題はかなり解決されつつある。

サウンドバーはスピーカーとして専用に設計されているから、薄型テレビの内蔵スピーカーよりは有利だが、安価なサウンドバーやコンパクトさを重視したサウンドバーも同様の問題を抱えるので、音質を聴き比べるとその差はわずかということもありうるのだ。ましてや、Dolby Atmosに対応しないサウンドバーでは、サラウンド再生については内蔵テレビよりも劣ってしまう可能性さえある。

また、Dolby Atmos対応のサウンドバーでも、ハイトスピーカーを備えない2chまたは3chのモデルもある。これでは、Dolby Atmosに対応するが内蔵スピーカーは2chという内蔵スピーカーとスペック的には同等。どちらも電気的な処理によって立体音響を再現するバーチャル再生だ。これではわざわざお金を払ってサウンドバーを追加する意味が薄れてしまう。

そこで注目したいのが、ハイトスピーカーを備えるのはもちろん、ワイヤレススピーカーなどを追加できる機能を持ったサウンドバーの高級機だ。例えば、ソニーのHT-A7000は単体で7.1.2chのスピーカーを内蔵し、本格的なDolby Atmos再生ができるが、今春のアップデートでワイヤレスリアスピーカーのSA-RS5との連携に対応。独自の立体音響技術「360 Spatial Sound Mapping」にも対応(リアスピーカー連携時)し、さらに臨場感豊かなサラウンド再生ができるようになった。

こうしたモデルは増えていて、音の良さで評価の高いデノンの「DENON HOME SOUND BAR 550」もワイヤレスリアスピーカーに対応している。

もちろん、価格は高価になるが、このクラスになると、AVアンプとスピーカーによるシステムと大きな差はないレベルになると思う。実際にリアスピーカーを追加するかは別として、将来的な発展性のある製品の方がより長く愛用できると思う。また、薄型テレビにハイトスピーカーなどを搭載しているメーカーは、テレビ用のオプションとしてワイヤレスリアスピーカーを発売して欲しいとも思う。きっと売れると思うのだが。

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これまで軽視されてきた、テレビの「音」を改めて注目

薄型テレビの音が良くなってきたことは、本当にうれしいことだ。不思議なもので音が良くなると映像も良くなったように感じるし、音が十分でないと映像の良さもあまり伝わりにくい。最新の映画館でプレミアムな体験をした人が、動画配信などで自宅で追体験しようとして、逆にがっかりしてしまうようなことがなくなってほしい。もしも薄型テレビの買い替えを検討している人はぜひとも「音」の面もじっくりと検討してみよう。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。