小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第897回
LUMIX Gシリーズの集大成!?“こなれた感”が魅力の「G99」で4K撮影
2019年5月8日 08:00
Gシリーズ初の2ケタ
フルサイズミラーレスで世の中を沸かしたばかりのパナソニックだが、5月23日にはマイクロフォーサーズのスタンダード型番であるGシリーズの新モデルを発売する。それが今回取り上げる「LUMIX G99(DC-G99)」だ。
型番を見てわかるとおり、Gシリーズ初となる2ケタ型番となる。しかも99なので、もうそれより上はない(国外ではG90/95として販売される)。何かしら意味ありげではないか。
位置づけとしては、2018年1月発売のG9 PRO(DC-G9)の兄弟機、2016年10月発売のG8(DMC-G8)の後継機という事になるが、そう考えると直系としてはずいぶん間が空いた事になる。間にフルサイズのS1シリーズが挟まった関係で、そうなったのだろう。なおG8は引き続き併売されるとのこと。
店頭予想価格はボディ単体が125,000円前後、標準ズーム付きレンズキット「DC-G99H」が165,000円前後となっている。
G9 PROは、パナソニックとしては初めて「静止画撮影フラッグシップ」を名乗るモデルだったわけだが、正常進化とはいえ、従来のGシリーズからすれば飛び抜けたポジションにあった。むしろ今回のG99のほうが、連綿と続くGシリーズの直系と考える事もできるだろう。
Gシリーズのレビューとしては、2015年にG7をテストしているが、実はそのあと気に入って個人的にも購入しており、展示会取材の時によく使っている。当時としては、レンズ付き実売10万円以下で4Kが撮影できるカメラは画期的だったのだ。
今回のG99も、G9 PROのあとだけに期待が高まるところだ。さっそく試してみよう。
Gシリーズらしいボディ
まずはデザインだが、G9 PROは孤高のカメラだっただけに、ボディーサイズやシャッター周りのデザインなどはかなり違っていた。一方G99は、従来からのGシリーズを継承したボディで、サイズ感もG7/8と近い。
ボタン配置は、シャッターの後ろにWB、ISO、露出補正の3ボタンが並ぶ。加えて背面の十字コントロールもリング式となっており、このあたりにG9 PROの影響が見られる。ただし電源ボタンや再生ボタンの位置、前後のダイヤルなど、大半はGシリーズの操作性を受け継いでいる。普段G7を使っている筆者には、手に馴染む操作性だ。
スペックを確認しておこう。センサーは4/3インチ、総画素数2,177万画素、有効画素数2,030万画素、ローパスフィルタなしのLive CMOSセンサー。数字的にはG9 PROと同じだが、センサー自体は別物だという。特に動画に関しては、G9 PROでは4K/60pまで撮影できたが、G99では4K/30pまでに留まる。
ただしG9 PROは、4K記録時には連続で10分、FHDでも29分59秒までという制限がある。一方G99は無制限だ。動画を長回しするならG99に軍配が上がる。
静止画の最大撮影画素数は4:3の5,184×3,888ドット。4Kフォトでは3,328×2,496ドットとなる。動画はMP4とAVCHDに対応し、4K撮影はMP4のみとなる。なお4Kの内部記録は4:2:0/8bitで、HDMI経由の外部出力は4:2:2/8bitとなる。
またフォトスタイルには、新たにV-Log Lが加わった。V-logはパナソニックオリジナルのlogガンマで、同社の「VARICAM 35」や「EVA1」等、デジタルシネマ向けカメラに搭載されている。V-log Lは、4/3サイズのセンサーでV-logと同じ特性が出るように工夫されたlogカーブで、2015年発売のハンドヘルド「AG-DVX200」に搭載されて話題になった。
これはG9 PROにもG8にも搭載されておらず、これまでV-log Lが搭載されたLUMIXは、GHシリーズだけだった(GH5、GH5sは標準搭載、GH4は有償アップデート対応)。V-log Lは、V-logと同じLUTで処理可能だ。したがって本機は、V-logによるマルチカメラ撮影時の、低価格お助けカメラとしても使える事になる。
ただ、外部出力しても8bitまでなので、その辺が引っかかるところだ。これはあとでテストしてみよう。
ハイスピード撮影は、解像度がFHDのみで、60fps, 90fps, 120fpsの3タイプ。G9 PROが2倍速までではあるが4K解像度でハイスピード撮影ができた事を考えると、やはりG9 PROは性能的に突出したモデルであることがわかる。
ファインダーは約236万ドットの有機ELで、約368万ドットのG9 PROより劣る。だが液晶モニターは約124万ドットモニターの3.0型で、G9 PROの約104万ドットより若干上だ。ファインダー重視か、モニター重視かというバランスなのだろう。
キレのいい動画
ではさっそく撮影してみよう。撮影日は雨上がりの晴天に恵まれ、柔らかい光線の中でなかなかいい絵が撮れた。レンズは、キットレンズの「LUMIX G VARIO 14-140mm / F3.5-5.6Ⅱ ASPH.」、単焦点として「LEICA DG SUMMILUX 25mm / F1.4 ASPH.」と「LEICA DG MACRO-ELMARIT 45mm / F2.8 ASPH. / MEGA O.I.S.」をお借りしている。
まずは4K撮影時の画角から確認しておこう。ズームレンズ14-140mmは、35mm換算で28-280mm相当となる。HD撮影に比べると、4K撮影時は一回り狭くなる。
レンズは以前からキットレンズとして販売されているもので、特に秀逸というわけではないが、センサーや画像処理エンジンの進化により、確実にいい絵が撮れるようになっている。発色や解像感など、レンズは同じでも進化が感じられる描画だ。
ただ、標準では若干明るめに撮るクセがあり、しっとりした感じを出すには、-2/3ぐらい露出補正するといいだろう。
特に空抜けの構図などは、標準露出では空がとんでしまいがちだ。そこでV-log Lで撮影したのち、カラーグレーディングしてみた。明るいところをちょっと下げただけで、空の色はかなり出る。一方、暗い部分を広げると、やはり8bitしか階調がないことから、S/Nに難がある。
とはいえ、映像制作者にとっては、ボディ単体125,000円前後のカメラでLog撮影できる意義は大きい。
ハイスピード撮影も試してみた。フルHDで120fpsで撮影すると、30p再生で4倍のスローとなる。ただしハイスピード撮影モードになると、AFが効かなくなる。撮影中に利かないのは仕方のないところだが、せめて撮影前アングルを決めている時にはどうにかAFが効くようにならないだろうか。
使いどころが問われる手ブレ補正
手ブレ補正は、年を追うごとに強力になっていく機能だ。特に昨今は静止画よりも、動画専用の手ブレ補正アルゴリズムを入れてくる例が多くなっている。
本機もその例に漏れず、手ブレ補正はレンズ側の光学補正のほか、動画ではボディ内手ブレ補正も併用できる。さらに動画撮影においては、「手ブレロック」機能も使えるようになった。元々この機能は、ビデオカメラの高倍率ズーム時に手振れを押さえる機能として搭載されてきたが、G9 PROにも搭載された。これがそのまま、G99にも搭載されている。
これは手持ち撮影において、なるべくフィックスでホールドしたいという際に使用するタイプの手ブレ補正なので、歩きながらの撮影では補正が強すぎて、かえって動きが変になってしまう。普段はOFFにしておき、どうしても手持ちでフィックスを押さえたいという時に使うといいだろう。
最後に夜間撮影も行なってみた。本機は動画撮影時のISO感度の範囲が狭く、下はISO 200から上は6400までしかない。昨今は25600ぐらいまで行くのが当たり前になってきているが、その点では夜間撮影には強くないと言える。
実際6400で撮影しても、撮影現場ではあと3段ぐらい開けないと適正露出にはならないが、逆に6400ならS/Nとしては悪くない。実際に作品として使うなら、現実的なところだろう。
総論
究極とも言えるG9 Proが出たあとのGシリーズ、しかも初の2ケタ品番ということで、どういうポジションなのか疑問の多いカメラだったが、実際にはG7-G8ラインからの直系という位置づけでいいだろう。加えて先行したG9 PROのいいところも受け継いでおり、そういう意味ではNEW Gシリーズの幕開けも感じさせるモデルである。
時代はフルサイズに向かっているという点では間違いないと思うが、4/3やAPS-Cの役割が終わったわけではない。技術的にも価格的にも一番こなれたところがこのレンジであり、よほどフルサイズにこだわりがなければ、十分に戦えるクラスである。そんな中でG99は、静止画と動画のバランスを取ったGシリーズらしい作りのカメラと言えるだろう。
とはいえ型番が99まで行ってしまったので、2ケタ型番としてはあとはもう下がっていくしかない。グレードが上がるほど数字が減るというのは前例があるが、後継機種のほうが数字が減るというのはあまり聞いたことがない。この次がどういう型番になるのか、興味は尽きないところだ。
G99の発売前ではあるが、パナソニックの次の一手がますます気になっている。