小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1070回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

小さくても重低音、進化したSonosネットワークスピーカー「Era 100」

3月28日発売のSonos「Era 100」

手頃な価格のSonos登場

日本においてホームスピーカーは、Bluetoothスピーカーから始まり、スマートスピーカーへと進んだ。一方米国では、Sonosが早くからホームネットワークスピーカーという文脈でAirPlayに対応し、広く普及している。

日本でも徐々にユーザーが増えているところではあるが、3月28日にDolby Atmos対応のスマートスピーカー「Era 300」(69,800円)と、既存スマートスピーカー「Sonos One」のアップグレードモデルとなる「Era 100」(39,800円)を発売した。

「Era 300」(左)と「Era 100」(右)

今回は小型ながら高効率ということで人気のあった「Sonos One」の後継モデルとなる「Era 100」を取り上げる。

本連載では過去Devialet初のポータブルスピーカー「Mania」やBANG & OLUFSENの薄型スピーカー「Beosound Emerge」を取り上げたが、高級スピーカーにも関わらず、いずれも記事は非常によく読まれている。コンパクトかつ新しいフォルム、高品位サウンドの「スマートスピーカー以上」を求める方向性が強くなっているのかなと思う。

そうした流れからすれば、Dolby Atmos非対応ではあるが、比較的リーズナブルな「Era 100」のほうが、同じ土俵で評価しても良さそうである。Era 100を2台お借りしたので、ステレオペアでの音も確認してみよう。

シンプルな外観

Era 100はホワイトとブラックの2色展開である。今回はブラックをお借りしている。形状としてはやや楕円の円筒形で、高さ182.5mm、重量約2kgだ。軽量化が進む一般的なBluetoothスピーカーと比べれば、かなり重い。またバッテリーは内蔵しておらず、AC電源直結である。扱いとして、スマートスピーカーに近いかもしれない。

円筒形でシンプルな外観
Amazon Echo Studio(左)よりもだいぶスマート

底部の電源挿入口もユニークだ。底面から真上に向かって差し込むわけだが、専用ケーブルがL字型コネクタとなっており、背面からコネクタが出っ張ることなくケーブルだけが生えるという格好になっている。

底部のケーブル差し込み口もユニーク
コネクタ差し込むと綺麗にケーブルが後ろから出せる

内部構造はサイトでも画像が公開されているが、ミッドウーファーは同軸型になっており、正面向きに取り付けられている。前作Sonos Oneから25%大型化したとされているが、公開画像と実物のサイズから寸法を想像すると、恐らく60~70mm径ではないかと思われる。ツイーターは2つで、前向きハの字型に取り付けられており、単体でもステレオ再生ができる。

天面がタッチセンサーになっており、中央の凹み部分がボリュームスライダーだ。微調整はプラス/マイナス記号のところをチョンチョンと押すと細かく調整できる。手前は再生・ポーズとスキップ、リワインドになっている。奥にあるフキダシアイコンは、Sonos独自のボイスコントロールか、Amazon Alexaを割り当てることができる。なおSonosのボイスコントロールは、現在のアプリでは英語とフランス語のみの対応となっている。

天面はタッチセンサーによるコントロール部になっている

スライダーの上下に4箇所ある穴は、マイクだ。これは主にTrueplayという空間の音響測定による再生チューニング機能で使用する。

背面にはBluetoothペアリングボタン、マイクボタンのON/OFFスイッチがある。USB-TypeC端子は、USBオーディオ対応というわけではなく、ここに別売のアダプタケーブルを繋ぐ事で、アナログAUX入力やEtherケーブル接続ができるようだ。

背面にあるBluetoothペアリングボタン
背面底部にあるマイクスイッチとUSB-C端子

なお本機はネットワークスピーカーなので、高音質で聴くならWi-Fiへ接続する必要がある。加えてApple Airplay 2にも対応する。

iOSではAirPlay 2の利用が推奨される

かなり入念な音響測定

本機をセットアップするにはスマートフォンアプリ「Sonos」を使用する。執筆時点ではまだ製品発売前なので、アプリのほうもベータ版を使用している。製品版では若干挙動が違うこともあり得る点をあらかじめご了承願いたい。

アプリで製品を登録すると、まずTrueplayによりチューニングを推奨される。タイプとしては、iOSではクイックチューニングと高度なチューニングの2パターンがあるが、Androidではクイックチューニングのみとなる。

iOSでは2種類のチューニングタイプが選択できる

クイックチューニングは、その場でスピーカーが測定音を出し、それを自身のマイクで拾って測定するという、簡易的な方法である。時間的にもすぐ終わるので、同じ部屋の中でちょっと置き場所を変えたといった場合に便利である。

高度なニューニングでは、スピーカーが発する測定音をiPhoneのマイクを使って拾い、部屋のなかをくまなくスキャンするような格好で測定する。これにはだいたい1分ぐらいかかる。

動画で測定の仕方を見ながら、iPhoneを振る

チューニング終了後にすぐサウンドが変わるわけではなく、測定後に音楽を再生すると、それをマイクでフィードバックしながら少しずつチューニングを進めていくようである。

再生可能な音楽サービスは、Sonosアプリ内でアカウントを追加する必要がある。Amazon Music、Apple Music、Spotify、YouTube Musicなど日本でもお馴染みのサービスは当然登録できるほか、インターネットラジオサービスをはじめとする世界中の音楽サービスに接続できる。またSonosオリジナルのSonos Radioにも各種のインターネットラジオ局が登録されている。また地域別のコミュニティFMも、すべてではないが一部のものは聴く事ができる。

音楽サービスはかなりの数に対応する
インターネットラジオが楽しめるSonos Radio

音楽再生は、Sonosアプリ内から登録したサービスを開いて再生すれば、自動的にEra 100で再生される。音楽サービスアプリから再生する場合は、Airplayなどを使って再生先を指定してやる必要がある。

このサイズで十分な低音

ではまず単体での音をチェックしてみよう。今回はApple Musicにて「Dizrhythmia」が残した唯一のアルバム「Dizrhythmia」でサウンドチェックする。現King Crimsonのボーカル/ギターのJakko Jakszykが参加した西洋とインド音楽が融合したサウンドで、パーカッションや複雑な弦の解像度が高いアルバムである。

音のバランスとしては、中音域にクセがなく、解像感の高い素直なサウンドである。ボディサイズの割には低音がしっかり出ており、アンプ性能と設計の良さを感じさせる。目をつぶって聴いたら、倍ぐらいの容積のスピーカーが鳴っていると思うことだろう。

ただ反射音で聴かせるタイプのスピーカーではないため、ステレオ感はそれほど大きくない。部屋に単体で置いたら“ああ、あそこから音が出てますね”というのがしっかりわかる。このあたりは空間オーディオ対応のスピーカーのほうが、サウンドを「捲く」感じが強い。

これをステレオペアにして再生してみよう。ペアにしたあと、Trueplayでクイックチューニングを行なったのち、試聴している。

2台使えば左右の配置次第でステレオイメージが大きくなるのは当然だが、ステレオ感を非常に大きく強調したサウンドとなる。周波数特性的にはシングルで聴いているものとそれほど変わらず、バランスが崩れない。若干真ん中が抜けた感があるが、サウンド全体が非常にリッチかつゴージャスになり、満足度が高い。

筆者は普段Amazon Echo Studioを2台ペアリングしてステレオ仕様で聴いているが、Era 100のペアリングのほうがメリハリがはっきりしており、音が派手である。空間オーディオには対応していないが、普段よく聴く音楽は空間オーディオ非対応のほうが多いと言う方には、満足度が高いシステムである。

またペアリング設定の安定性も、Sonosの方が上だ。Echo Studioはペアリングを解除したり再設定したりすると、Wi-Fiのアクセスポイントが同じではないとか妙なことを言い出したり、ペアリングしているのに片方しか鳴らなかったりすることもあるが、Sonosはそうした謎の挙動がなく、非常に安定している。

ペアリング設定の安定度も高い

総論

ボディはコンパクトながら、電源必須でネットサービスの音楽がガッチリ鳴らせるタイプのスピーカーが、最近ポツポツと登場している。これまでスマートスピーカーで我慢してきた層が、「ボイスコマンドには対応しなくていいから、もうちょっとしっかりした音で聴いてみたい」という欲求を満たす製品に注目が集まっている。

スマートスピーカーも多くはモノラルで、最近ようやく小型のステレオ製品が出てきた。ただ、どうせ買い換えるならもうちょっとオーディオとしてちゃんとしたものを……と考える人もあるだろう。DevialetもBANG & OLUFSENもヨーロッパ起源の一流ブランドだが、西海岸育ちのSonosも1つの選択肢として覚えておいて損はない。

単体ではEcho Studioよりもちょっと高い程度だが、よりコンパクトで音もいい。ステレオペアで買うなら、値頃感もちょうどいい今風のスピーカーである。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。