小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1095回
シンプルに振り切った4980円のPC向けサウンドバー「Creative Stage SE mini」
2023年10月4日 08:00
注目度が高いCreativeのサウンドバー
PCの主力がノート型になってからもう何年にもなる。すべての機能がオールインワンになっているので、どこでもこれ1つで仕事ができるところがウリなわけだが、常に物足りないという評価になるのが「内蔵スピーカー」だ。
やはり薄いボディの中に良質のスピーカーシステムを突っ込むのはなかなか難しく、様々なプロセッシングでどうにかカバーしているのが実情である。そんなこともあって、昨年ぐらいから急速にPC向けサウンドバーが注目を集めている。
Creativeのサウンドバーを最初に扱ったのは2022年のことで、当時の「Creative Stage Air V2」はUSB直結で音が鳴るサウンドバー、さらにはバッテリーも内蔵してBluetoothでも聴けるという製品だった。
続く「Creative Stage SE」は、ボディを大型化してガッツリ低音まで聴かせる作りとなった。だだやはりパワーがいるのか、USBだけというわけにもいかず、ACアダプタが必要だった。元々Creative Stageシリーズはサブウーファ付きサウンドバーシリーズだったので、ある種原点回帰ではあるのだが、ケーブル1本で音が出るAir V2のコンセプトを引き継がなかったのが残念であった。
そしてこの9月から発売開始された「Creative Stage SE mini」は、名前の通り「Creative Stage SE」の小型版という位置づけだが、Air V2のようにUSB 1本で鳴るスタイルとなっている。直販価格は4,980円のところ、10月13日までは1,000円 OFFで販売される。ただ執筆時点では爆売れしているのか在庫切れ入荷待ちとなっており、1,000円 OFFで買えることは買えるのだが、すぐには届かないようである。
Air V2とSEのいいところ取りをしたような期待のスピーカーだが、さて音の方はどうだろうか。メーカーから借りてみた。
【追記】1,000円 OFFの特価期間は当初10月6日まででしたが、好評につき13日まで延期されました。(10月4日12時)
小型、スリムのシュッとしたボディ
Stage SEは右サイドに大型のダイヤルがあり、ボディデザイン全体もそこに引っぱられるような格好だった。この特徴はminiにも受け継がれており、同じく右側に大型のダイヤルを備える。ただしボディデザインに響くほどのサイズではなく、miniのボディはシンプルだ。
しかし単なる立方体ではなく、平置きした際にスピーカー面がやや上を向くよう、後部が絞られた格好になっており、このあたりのコンセプトはAir V2と同じである。
サイズは幅約41cm、高さ約6.3cmで、横幅はAir V2と同じだ。さらにその前の初代「Creative Stage Air」も41cmだったので、この長さがベストだと考えているらしい。
スピーカー構成としてはシンプルで、楕円形のネオジウムドライバが左右1つずつ。スピーカー出力は6W×2の12Wだが、USB-C(5V/3A)で接続すればピーク出力が24Wとなる。
バスレフポートは背面に1箇所。USB-C端子は前面から見て右側だ。バッテリーを内蔵しないので、重量も730gと軽量だ。
本体右側のダイヤルはボリュームで、中央が電源ボタンとなっている。電源ボタンを短く押すとミュートになる。上のボタンはソース切り替えだ。ソースはUSBとBluetoothの2つだけである。なおBluetoothコーデックは相変わらずSBCしか対応しない。またマルチポイント接続にも対応しない。またマイクも内蔵されていないので、音声通話にも対応しない。ものすごくシンプルな、ただのスピーカーだ。
ヘッドフォン出力が付いているのは新しい。PCからUSB-Cで繋いでいる場合は、ヘッドフォンの延長ケーブルの代わりにもなる。ミニPCでヘッドフォン端子が後ろにあるといったケースでは、便利だろう。ヘッドフォンを差し込むと自動的にスピーカー出力はカットされる。
正面から見て右肩にステータスを示す小さなLEDがある。OFFが赤、USB入力が紫、Bluetooth入力が青だ。
価格を感じさせない音質
まずUSB接続から試してみよう。今回はMacBook Proと接続しているが、オーディオプロファイルを確認すると、48kHz/16bit接続となっており、変更もできないことから、これが最高値のようだ。したがってハイレゾ音源の再生もこのフォーマットに変換されることになる。
とはいえ、ケーブル1本繋げば音が鳴るというのは、簡単だ。右のボリュームノブを回せば、コンピュータ側の出力がコントロールできる。
今回はApple Musicで配信されている、2018年発表のTOTO「Old is New」を試聴している。2018年に40周年を迎えたTOTOの31枚組Box Setに収蔵されていた1枚で、最近配信開始になったものだ。未発表音源をリマスターして今のサウンドを重ねた曲が中心だが、一応新曲という事になる。
肝心の音質だが、最初はなんだかポコポコした音でガッカリしたのだが、1日ほど鳴らしておいたら次第に落ち着いてきた。ただ、中低音の厚みが重たい音ではある。PCからの再生なら大抵は再生ソフト側でEQが使えると思うので、250Hzあたりを少し下げてすっきりさせると聴きやすいだろう。
音像に関しては、さすが同シリーズの名前を謳うだけあって、41cmのスピーカー幅を超える豊かな音像が拡がる。低域はバスレフポートが正面やや左にあるせいで、若干左寄りに聞こえる傾向があるが、低音の伸びも問題なしで、5,000円以下のスピーカーであることを考えれば、十分に合格点が出せる。
右側のダイヤルは軽いクリック感があり、音量は段階的に上下できる。ただ1ステップがちょっと大きいので、微妙な音量調整は無段階調整できるPC側で操作した方が良さそうだ。
加えてのコツは、設置方法である。高域の聞こえかたで音質がかなり変わるので、できればスピーカー面を耳の方向にまっすぐむけて設置すべきだ。すなわち普通にテーブルの上に置くと、スピーカー方向が耳より下になるので、中高域過多な特性が耳に付く。スピーカーの前側になんらかのスペーサーを入れて、全体を上向きに調整してやるといいだろう。
ノートPCとの組み合わせでは、ディスプレイの後ろに配置したいところだが、スピーカー面が塞がるような格好では高域特性がガクッと落ちるので、できればディスプレイの前に置くか、壁としてのディスプレイの影響を受けないよう、かなり離れた位置に設置した方がいいだろう。
SEと比べてSE miniが大きく後退する部分は、サウンドが調整できる部分がなにもないところである。SEにはリモコンが付属しており、トーンコントロールやサウンドモードが変更できたが、miniにはそうした機能が提供されない。
CreativeのPC向けアンプやトランスミッタ製品には、共通の設定ツール「Creativeアプリ」が提供されているが、これもSE miniには対応しない。ソフトウェアドライバで動かす事でCreativeのオリジナルサウンドモードが使えるなど面白い機能が沢山あるのだが、このツールが使えないのは残念だ。
Bluetoothからの再生はSBCのみだ。スマートフォンで確認したところ、44.1kHz/16bitで繋がっていたので、USB接続よりは若干落ちるが、音の傾向はそれほど大きくは変わらない。SBCでは減衰しがちな高域もそれほど落ちる感じはない。このあたりはオリジナルチューニングのネオジウムドライバの恩恵もあるのだろう。
総論
PCの音響を拡張するスピーカーとして、「Creative Stage」シリーズは以前から人気があるところだが、若干重厚に振った「SE」からかなり後退して、限りなくシンプルに振り切ったのが「SE mini」という格好である。デザインも奇をてらったところがなく、ミニマルな印象を受ける。
USB-C1本で繋がるのは楽だし、重量も軽いので、出張やノマドワークのお伴にちょうどいい。なんらかのキャリングケース的なものが欲しいところだ。
一方で「置き方」を選ぶスピーカーである。上下角や前方の障害物などで音がものすごく変わってしまうので、音質の評価は賛否が別れるところだろう。理想をいえば、ディスプレイスタンドのような少し高さがあるところに若干上向きにセットしたいところだが、ノートPCで使う場合にはなかなかそうもいかないだろう。できれば音質調整のユーティリティが欲しかったところである。
とはいえ、この価格では致し方ないところだろう。各自色々工夫して、「いい音」を見つけていただければと思う。