プレイバック2018

新4K8K衛星放送開始までの道のり、今後のテレビへの期待 by 編集部:中林

2018年の映像コンテンツ関連で、大きな動きの一つは、12月1日からスタートした「新4K8K衛星放送」。昨年の12月1日から放送開始まで1年間の取材を通して見てきた動向を振り返りながら、今後の注目点や期待などをまとめたい。

「新4K8K衛星放送」推進キャラクターの深田恭子と、テレビ局各社などが集まった12月1日のセレモニーで、華々しく開局

BS/110度CSの放送波を使って、4Kの場合は従来のHD放送の約4倍、8Kは約16倍という高精細や、広色域、HDR(ハイダイナミックレンジ)、最大22.2chの音声(8K放送の場合)と映像/音声ともに高品位な番組が楽しめる新4K8K衛星放送。対応テレビやチューナーなどの機器と、コンテンツ制作の4K対応も進み、視聴者としては今までの番組がより臨場感の高い映像/音声で楽しめるのが大きなメリットだ。視聴方法などについては、11月の特集記事で説明している

新4K8K衛星放送のチャンネルと視聴方法

昨年までの動きを簡単に振り返ると、本放送を開始する前段階として、2016年12月1日からBSによる4K8K試験放送がスタートした後、2017年4月からは、新たな「左旋円偏波」による4K試験放送が開始。放送設備や受信機器などの検証が進められてきた。同12月1日には正式名称が「新4K8K衛星放送」に決定。女優の深田恭子が推進キャラクターに任命され、周知活動も本格化された。

1年前に「新4K8K衛星放送」推進キャラクターに深田恭子が任命。右は野田聖子氏(当時総務大臣)

ただ、2003年~2012年に地上波がアナログ放送からデジタル放送(地デジ)へ完全移行した時とは状況が違う。従来のHD放送も継続されることから、多くの人にとっては買い替えが差し迫ったものではなかった。周知広報活動は継続的に行なわれているものの、放送自体の認知はA-PAB(放送サービス高度化推進協会)の調査で11月時点でも約22%。まだ大半の人には知られていない状況だ。

11月調査時点の新4K8K衛星放送の認知度

認知や普及がなかなか進んでいない理由の一つに、今販売されている4K解像度のテレビ以外に、対応チューナーが必要なのがまだ十分伝わっていないという点がある。テレビのアプリでNetflixやYouTubeなど映像配信サービスでも4Kが楽しめるようになってきた今、別途チューナーを買い足したり、チューナー内蔵テレビへ買い替える動機を、どれだけの人が持てるのかは、厳しい面もあるだろう。

BS/CS4K対応チューナーや内蔵テレビは、最初に東芝REGZAが今年6月に発売した後、すぐには他社が続かず、多くのモデルが秋~冬の発売となった。ソニーやパナソニックは対応チューナー内蔵テレビを今年発売せず、製品を比較できるような“勢ぞろい感”が無かったのも、多くの人が手を出しにくかった理由の一つといえる。

現在の受信設備(アンテナや分配器など)をそのまま使っても、NHK BS4Kと、民放キー局4社(BS朝日4K、BS-TBS4K、BSテレ東4K、BSフジ4K)の放送は観られることも、まだしっかり伝わっていないようだ。視聴のために準備が大変そうだとイメージする人が少なからずいることに対しては、記事を書く側としても、もっとやれることはあっただろうと痛感している。

ケーブルテレビや、光回線(フレッツ・テレビなど)再送信のように、アンテナ不要で観られる環境が用意されることには、記事への反響も大きかった。本当は観たくても住む建物ではアンテナを立てられないなど、事情を抱えている人も少なくないのではと推察する。

開始半年前のセレモニーでも、「吉田類の酒場放浪記」4K化について熱く語った深田恭子

画質を重視する人にとって気になるポイントである「従来の放送と同様に録画ができるかどうか」や、「有料放送の視聴料金」などの詳細な情報が正式に発表されたのも、結局のところ放送開始が近くなってからだった。情報を吟味してから導入を検討したい人にとっては、12月1日の時点ではすぐ製品購入に踏み切れなかったかもしれない。もう一つ個人的な意見だが「新4K8K衛星放送」という名称も、便宜的にはともかく、一般の人が覚えやすい愛称を別に付けても良かったのではとも思う。

ただ、悲観ばかりしても何も始まらない。ネットを使った配信サービスは、好きなコンテンツを選んで楽しめる良さがあるが、予想外の番組との出会いや、公共的な側面がある放送という存在は、今も必要なはず。今やテレビは話題や流行の全てではなく、様々なメディアの一つではあるものの、ドラマやアニメ、音楽など、テレビ発のコンテンツで社会現象になることは、今も少なくない。

スマホなどで気軽に観られる映像配信にも、UHD Blu-rayのような物理メディアにも、それぞれの良さがある。好みに合った番組や、初めて興味を持つジャンルに偶然出会えるなど、良いコンテンツを知る機会がもっと増えていくために、放送が果たせる役割はまだあるはずだ。

開始1カ月前のイベントに登場。当時自宅に4K対応テレビを導入したものの、アンテナやチューナーはまだ持っていなかったという

「4K8Kコンテンツ不足」は事実であり、放送開始前の記者会見でも「放送される番組のうち、ピュア4Kコンテンツの割合は何%か?」という報道陣からの質問に「年末には2ケタ%を目指す」という返答だったのは、寂しい思いをした。当初はピュア4K8K映像や5.1ch音声制作で先行しているNHKが、画質/音質面ではリードする形となるようだ。

ただ、“世界の絶景”のような高画質推しの番組だけがテレビではない。食べ物や動物などを含めた、もっと身近なコンテンツが4Kや8Kで制作されるようになって、自分の好きなドラマやシリーズものなどを4K8Kで観る経験が、普及のきっかけにもなるだろう。

Netflixなど映像配信サービスの画質向上は目覚ましく、オリジナルコンテンツ制作で注目されることも増えてきた。「配信か放送、どっちを観るか」ではなく、両方をフル活用して良質なコンテンツを楽しめる時代が早く来てほしい。

まずは、無事に12月1日から放送がスタートしたことを歓迎したい。そして、「4K8Kになると、出演者は肌のシワまで見られて大変」みたいな話はほどほどにして、次の段階へ進む時期だと思う。民放は機材などコスト面が深刻とは聞く一方で、11月の記事で紹介したBSテレ東のチーフプロデューサーのように、今回の4K化をチャンスと捉えて、ドラマなどで新たな表現手法にチャレンジしているクリエイターは既に動き始めている。そうした変化が2019年はもっと広がって、テレビからも新たな面白さ、発見、感動が生まれることを楽しみにしている。

開局セレモニー直前の11月30日に4Kチューナーを自宅に導入、関係者を安堵させた深田恭子

中林暁