プレイバック2022

Golf Variantが納車。オーディオ環境の見直しが悩ましい by 山之内正

9月上旬に先行予約していた「Golf Variant(ヴァリアント)」が年内ギリギリのタイミングで手元に届いた。先代から最新世代への切り替えで、今回もディーゼル仕様を選択。エンジンはマイナーチェンジを受けて振動とノイズが減り、車内の音響的な環境が激変した。以前は2000回転前後でディーゼル特有の濁音系の騒音が車内に侵入し、街なかだとロードノイズを上回る音量でエンジンが存在を主張していたのに、最新仕様では窓を開けなければディーゼルと気付かないレベルまで静かになっている。

ここまで静かだと再生音の違いもよくわかるので、オーディオシステムを入れ替えるのもありだなと考え始めているのだが、その前に純正システムの音をまずは確認してみる必要がある。先代のGolf Variantにはサブウーファーを含むオプションのシステムを選んだこともあり、ある程度はフラットな特性を実現していたのだが、ハイファイと呼ぶにはほど遠く、どの音域も解像力は不足していた。

今回はオプションのシステムを載せるのはやめて純正のままで購入した。オプションだとサンルーフとの同時購入が条件というのも不採用の理由だ。新しい車は先代の8スピーカーから7スピーカーに変更され、フロント×4+リア×2にセンタースピーカーを追加した計7つのドライバーユニットを積んでいる。通常のステレオ音源ではセンタースピーカーはほとんど鳴っていないようだ。

CarPlay画面

標準のオーディオだとイコライザー機能は3バンドしかなく、満足な補正はできない。ただし、補正なしの状態でも再生音の音調に大きな偏りはなく、意外なほど素直な帯域バランスで鳴る。

意外と書いたのは、従来は飽和気味の中域や低音不足が目立ち、車種ごとにきめ細かく調整しないと自然な音調に追い込むのが難しかったからだ。今回のGolf 8はサブウーファーなしの状態でも40〜50Hz近辺のベースやバスドラムが痩せず、ドアの共振も皆無ではないが良く抑えているので、楽器ごとの音色の描き分けもできている。

中高域は特定の音域に偏りがなく、アップルミュージック、FM放送、TV放送などメディアを問わず声の音色に誇張や突っ張りがない。高域の伸びはあまり期待できないが、イコライザーで1〜2dB上げる程度で発音はかなり鮮明になった。

メーター部にカバーアートが表示される

今回の純正システムもハイファイと呼ぶには情報量が足りないことに変わりはないが、先代に比べると明らかに音質が向上していて、特にこだわらなければ普通に音楽を聴けるレベルまで改善が進んでいると感じた。

納車待ちの期間に「T-Roc」や「Golf Touran(トゥーラン)」など、ボディ形状が異なる車にもしばらく乗っていたのだが、T-Rocは低域と高域どちらも周波数レンジの伸びが足りず、ドアや内装が盛大に共振していたし、Touranは低音の共振は目立たない一方で中高域の情報量が不足気味で粒立ちが甘いなど、Golfに比べると課題が多い(いずれも純正オーディオ)。

USB-C端子とスマホ充電スペースを設ける

使い勝手の面では課題もある。他社と最近のモデルと同様、対応メディアは大幅に整理されてしまい、先代には付いていたCD&DVDドライブとSDカードスロットはどちらも消滅。当然ながらナビのSSDに音源を取り込む機能も使えない。

純正オーディオ(DiscoverPro)はBluetooth接続とUSB-C、またはワイヤレスで接続したCarPlayのアップルミュージックに対応しているので、スマホの音源はダウンロードとストリーミングどちらも普通に使える。しかし、いまもCDを聴く頻度が高い家人からは不満の声が上がった。

その一方でUSB-C端子はフロント2系統、リア2系統と増えていて、そのうちフロント側の2つのUSB-CはUSBメモリーやポータブルSSD内の音楽ファイルを認識して「ラジオ/メディア」のメニューから選曲・再生ができる。

アルバムの一覧
ハイレゾ再生の画面

ハイレゾ音源については、FLACの192kHz/24bitや176.4kHz/24bitの音源を問題なく再生できたので、DSDを除き、手持ちのデータの大半はカバーできそう。

音の鮮度はUSBメモリー再生が一番高いので、USB-C/USB-Aが併用できるミニマムサイズのUSBメモリーを購入し、先代のGolf Variantで聴いていたSDカード(64GB)の中味をまるごとコピーして挿しっぱなしにしておくことにした。なお、モデルイヤー2023以降はUSB-CはPD対応にアップグレードされたので、使用機器の選択肢は広がっている。

内蔵のeSIMで常時オンライン接続に対応し、ドアロックの有無や駐車位置情報がスマホのアプリで簡単に確認できるようになったほか、地図データも自動で更新されるなど、Golf8ではインフォテインメント系の使い勝手はそれなりに進化を遂げている。

オンライン接続とはいってもアップルミュージックなど音楽ストリーミングだけはモバイルルーターやスマホのテザリングを使う必要があるので、音楽が聴き放題で楽しめるというわけではない。

デジタルコンサートホールの画面

車内のオーディオ環境の見直しをどんな手順で進めるのがベストなのか、これから検討してみるつもりだ。ナビも含めてCarPlayに慣れてしまったので、その使い勝手を活かすことも視野に入れると、いきなり全面入れ替えというのは難しいかもしれない。スピーカーのグレードアップなど手軽なところから始めるのが現実的だろう。

山之内正

神奈川県横浜市出身。オーディオ専門誌編集を経て1990年以降オーディオ、AV、ホームシアター分野の専門誌を中心に執筆。大学在学中よりコントラバス演奏を始め、現在も演奏活動を継続。年に数回オペラやコンサート鑑賞のために欧州を訪れ、海外の見本市やオーディオショウの取材も積極的に行っている。近著:「ネットオーディオ入門」(講談社、ブルーバックス)、「目指せ!耳の達人」(音楽之友社、共著)など。