プレイバック2022

8K対応「DLA-V90R」導入、そして。ディスプレイの進化は止まらない! by 鳥居一豊

DLA-V90R

リアル8K映像に感激!! DLA-V90Rを導入

毎年、この1年の散財を報告するのがこの企画(勘違い)。しかし、今年はいまいち新鮮味がない。ビクターの「DLA-V90R」の導入が年明け早々だったこともあり、もはや新規導入という気分がしない。そして、前機種が外観はほぼ変わらない「DLA-V9R」だったことも新鮮味を感じない理由だ。

DLA-V90Rのトピックは8K信号の入力に対応したこと。これについて、必須かどうかを迷う人は少なくないだろう。というのも、8K放送をHDMIケーブル1本で出力できる8K放送用チューナーや8K放送対応レコーダーは未だどこのメーカーからも発売されておらず、有力と言える8Kコンテンツを視聴する手段がないのだ。

これは残念なことだ。8Kプロジェクターユーザーとしても残念だし、単体の8Kチューナーや8K放送対応レコーダーなら、4Kにダウンコンバート出力して4Kテレビで8K放送を視聴するという道も開ける。8K放送の普及のためにも少なからずニーズはあると思うのだが。

だが、実はPC方面にアンテナを伸ばすと、YouTubeで8Kコンテンツが思ったよりも多く配信されていることに気が付く。PCゲームもグラフィックの表現力がますます向上し、(PCやグラフィックボードの性能次第、8Kディスプレイがあることが前提だが)8K表示にも耐えるクオリティのゲームも登場している。PS5も登場初期は8K対応をうたってはいた。

そのあたりの8Kコンテンツの最新事情をレポートするのは自分だ! と、謎の使命感にかられたのも購入の動機のひとつ。だから、そのために8K映像の出力が可能なPCもほぼ同時に新調した。

まだまだ新しいWindows 11マシンのはずなのだが、ネットワークプレーヤーやUSB DACの置き場所になっている

YouTubeの8Kコンテンツは、プロ用の8Kカメラメーカーやプロフェッショナルの映像スタジオなどが高品質なコンテンツを数多く配信しており、リアル8Kで再生すると映像の凄みに驚かされる。

いわゆるデモ用コンテンツは彩度を強めた、いかにもな映像のものも少なくなく、きれいではあるが自然な映像とはやや異なると感じることもあった。しかし、高輝度表現を可能にするHDR撮影を行なうことや、8K解像度での精密な描写もあり、極めて鮮やかでありながらもくすんだ色や汚れた色までも緻密に再現されていることがわかり、モルフォ蝶のようなこの世の物とは思えない極彩色な映像でさえリアリティを感じる。

そのポテンシャルは素晴らしいのだが、制作コストが高すぎるのか決して8Kコンテンツが一気に普及することはなく、約1年が経った今でも、8Kコンテンツ事情に大きな進展はない。とはいえ、職業柄HDMIケーブルのテストを行なう機会もあるため、実際に8K信号の伝送をテストできる環境があるというのは、仕事上でも役に立つ。メーカーにとっては、規格上の最大値である48Gbps伝送、8K信号で言えば、4:4:4 12bit信号の伝送ができるかをチェックするライターが存在するというのは脅威かもしれない。

また、実際に8K視聴ができる環境ができてわかったことは、プロフェッショナルの映像制作などは別にすれば、PC環境でも8K環境は必須ではないようにも思ったこと。リアル8K表示を行なうと、120インチの投影でもアイコンが小さすぎて判読が難しい。8Kの超広大なデスクトップは魅力ではあるが、広すぎてというか文字が小さすぎて実用的ではない。これが4K解像度だと、40インチ前後の画面サイズならばアイコンなどの文字も読めるし、一般的なフルHD解像度の画面4枚分と考えれば、大きさを含めてなかなか実用的だと思う。それに比べると8K解像度はオーバークオリティなのかもしれない。

120インチスクリーンに投写した8K解像度のデスクトップ表示。画面全体を見渡せる位置からだとアイコンの文字の判読が厳しい。映っている画面は「Audirvana origin」

負け惜しみととっていただいて結構だが、そういうことが実感としてわかっただけでも自分にとっては意味のある買い物だったと思う。そもそも、4Kコンテンツを見ていても映像が格段に素晴らしい。レーザー光源による最大輝度3,000ルーメンはプロジェクターとしては破格で、まぶしい光も鮮やかに再現できる。

「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」で再び注目されればいいなと思っている3D映像も、かつての暗くて見づらいものではなく、十分に明るくクロストークの少ない立体視が楽しめる。興味のある人は最新プロジェクターでぜひ3D映像を見てみてほしい。思った以上に見やすく立体感のある3D映像に驚くはずだ。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。