ニュース

“プロ仕様”の4K有機ELレグザ「X930」。全録と業界最多7系統HDMI

東芝映像ソリューションは、BS4Kチューナーとタイムシフトマシンを搭載した4K有機ELテレビ「REGZA X930」シリーズを7月中旬より発売する。サイズは65型「65X930」と、55型「55X930」の2種類。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は65型が55万円前後、55型が35万円前後。

65X930

【REGZA X930】

・65型 4K有機EL 「65X930」 店頭予想価格55万円前後 7月中旬発売
・55型 4K有機EL 「55X930」 同35万円前後      7月中旬発売

'18年7月に発売したX920シリーズの後継で、有機ELレグザとしては第3世代目の製品。全録機能「タイムシフトマシン」やダブル4Kチューナーといったテレビ性能を備えながらも、独自チューニングの有機ELパネルと映像処理エンジンを組み合わせ「映像制作にも活用できるプロスペック高画質」を目指した“レグザPro”モデルとなっている。

なお、X930の画質性能を継承しながら、一部機能を省略したもう1つのレグザPro「X830」シリーズと、レグザ純正テレビローボード「RWB-S150A」は別記事で紹介している。

REGZA X930シリーズ

リビングAIで賢くオートに高画質化。プロユース用のマニアックな映像分析・機能も

65/55型ともに4K/3,840×2,160ドットの有機ELパネル(OLED)を搭載。レグザPro用にガンマと輝度特性をチューニングした'19年仕様の最新パネルとなっており、従来モデルと比べてコントラスト性能と階調性が向上。「パネルの透過率の改善により、輝度効率が向上したことで視覚上のコントラスト感がアップした。グラデーション部のつながりも一段と滑らかになっている。レグザエンジンとの合わせ技で、鮮やかな色彩と引き締まった黒を実現する」という。

55X930

スタジオやポストプロダクションといった映像制作の現場やクリエイターらの使用も想定し、映像分析・設定機能を強化。業務用ディスプレイ「Z810P」シリーズ(生産終了)に搭載していた「EOTFモード」、「色空間モード」、「MaxCLLモード」をレグザに初搭載。フラグのない映像データが入力された場合でも、各項目をマニュアル設定して、映像確認ができるようになった。入力信号の詳細情報表示やヒストグラムの分析情報表示なども引き続き搭載する。

「プロモニター設定」をオンにすることで、「EOTFモード」(オート/SDR/ST.2084/HLG)、「色空間モード」(オート/BT.709/BT.2020)、「MaxCLLモード」(オート/1000nit/4000nit/10000nit)が選択できるようになる
映像分析情報表示

一方、ユーザーが難しい設定を行なわなくても、自動で常に最適な映像が得られるよう、AI技術を取り入れた「リビングAIピクチャー」を新搭載した。視聴環境(設置場所や時間帯、周囲の明るさ)とコンテンツ情報を加味して自動調整する「おまかせオートピクチャー」の強化版で、センサーが周囲の色温度を検出することで環境に即した自動調整の精度を向上。本機能の搭載に合わせ、映像メニュー名も従来の「おまかせ」から「リビングAI」に変更している。

新センサーはフロント下部に搭載。RGBW 16bitでデータを取得することで、周囲の色温度や明るさを算出する仕組み。リビングAIでは色温度と明るさ、リビングAI以外のモードでは明るさを読み取るという。

リビングAIピクチャーのイメージ
周囲の明るさや色温度に応じて、最適な映像調整を自動で行なう。矢印部分がセンサー位置
色温度と明るさを読み取るセンサー(赤い円の部分)
映像メニュー名も従来の「おまかせ」から「リビングAI」へと変更。アニメ、放送(従来はライブ)、映画の項目も整理・統合された

HDR方式は「HDR10」と「HLG」(ハイブリッドログガンマ)の2方式のほか、「Dolby Vision」と「HDR10+」(認証)を、レグザで初めてサポートした。

Dolby Visionの再生には「あざやか」「Dolby Vision Bright」「Dolby Vision Dark」の3種類のモードを搭載。「あざやか」はDolby Visionの画をベースに精細感や色などをやや味付けしたモード。後者の2モードは味付けの無いドルビーの画となり、高コントラストな派手目の画が楽しめる。なおHDR10+は「ディレクター」が認証取得モードとなっている。

Dolby Visionコンテンツ再生時の映像メニュー

同社で画作りを統括するTV映像マイスタの住吉氏は「マルチ対応によって、UHD BDから4K放送・ネット動画まで様々なHDRコンテンツをカバーした。各規格の傾向を楽しむ、といったマニアックな使い方も行なえる」としながらも、「特定の規格ではシステム構成上10bit伝送になる箇所があったり、後段の回路に搭載されているレグザの高画質化機能が使えないなど、各HDR方式の信号処理経路の違いによって画質差が発生する。高性能なUHD BDプレーヤー(12bit出力)を組み合わせる場合は、HDMI 1~4に接続し、HDR10入力、映画プロモード、フル12bit/オール4:4:4処理のピュアダイレクトON設定がオススメ」という。

HDR10+コンテンツ再生時の詳細信号情報。ダイナミックメタデータ値もシーンで変動する

業界最多となる7系統のHDMI入力と、同軸・光デジタル音声出力を装備しているのもX930シリーズの特徴。「多くの外部機器と同時接続が可能な上、組み合わせるシステムの幅が広がり、使いこなしがいのあるマニアックな使い方が楽しめる仕様」という。

HDMI入力は7系統全て、4K/60p 4:4:4 8bitや4K/60p 4:2:2 12bitの18Gbps対応拡張フォーマットをサポート。ただしHDMIの5~7番端子は、SoCを介して高画質処理LSIに入力されるため、構成上フル12bit処理とはならないという。住吉氏は「最高画質を求める場合は画質処理LSI直結の1~4番端子の利用を勧める。5~7番端子には、2Kレコーダーを1080i出力で接続して、SoCの動きベクトルIP変換を活用する使い方がオススメ」としている。

背面部のインターフェイス
X930のメインボード。7系統のHDMI入力と、同軸・光デジタル音声出力を備える

高画質化処理を行なう「レグザエンジン Professional」搭載

'19年春発売のハイエンド液晶レグザ「Z730X」シリーズにも搭載された、最新の映像回路「レグザエンジン Professional」を採用。X920と比べAI超解像技術が新たに追加されており、4K・地デジ放送の高画質化を図った。

映像処理エンジン「レグザエンジン Professional」

AI超解像技術の1つ「深層学習超解像」は、シーンごとの画質の違いを自動判別し、シーンに応じて適切な超解像処理を施すというもの。リビングAIモード試聴中に、通常よりもギラつきが顕著な映像(ドローンの空撮映像など)が入ると、ヒストグラム情報をもとに超解像処理を弱めるなど、リアルタイムかつフレキシブルな超解像処理を行なう。

AI超解像技術「深層学習超解像」

4K放送や地上デジタル放送など、原画が60i/60pのコンテンツに対して、映像の種類と動き量に応じてノイズ処理と複数フレーム超解像処理を適応させる「バリアブルフレーム超解像」や、映画などの24pコンテンツを高精細化する「アダプティブフレーム超解像」を搭載。

AI超解像技術「バリアブルフレーム超解像」

従来機種にも搭載されていた「AI機械学習HDR復元」と「美肌リアライザーHDR」などは新しいアルゴリズムを採用することで、前者はアニメ素材におけるHDR復元の高精度化、後者はHDR映像における人肌部分の質感・階調再現の向上が行なわれている。

美肌リアライザーHDR

対向型パッシブラジエーター搭載のスピーカーボックス。総合出力は50W

豊かな低音再生と、透明感のあるクリアな音質を目指したという「有機ELレグザ オーディオシステムPRO」を採用。

対向型パッシブラジエーター方式の新型ボックスを搭載。対向配置のラジエーターが同相に動作することでボックスの振動を抑えられ、SN感の高い低域を再生。パッシブラジエーター方式に最適化した新型フルレンジスピーカー(3.5×9cm)と、耐久性を向上させた新型シルクドームツイーター(3cm径)を、総合出力50W(前モデルは総合46W)のマルチアンプで駆動している。ドルビーアトモスには対応しない。

新開発の対向型パッシブラジエーター方式2ウェイスピーカー

また、高精度全帯域補正を使い、フラットで明瞭な音質と自然な音像定位の実現するVIRイコライザーや、放送などの音声圧縮時に失われた微小信号を復元し、圧縮前の豊かな倍音成分を含む音質を再現するレグザサウンドリマスターを搭載。自然な音像定位と豊かな音質、多彩な音響効果を実現したという。

音声メニュー

BS 4Kチューナー2基とタイムシフトマシン搭載。スマートスピーカー連携も

搭載チューナーは、地上デジタル×9(タイムシフトマシン含む)とBS/110度CSデジタル×3、BS/CS 4K放送×2、スカパー! プレミアムチューナー×1系統。別売のUSB HDDへの録画に対応する。地デジ/BS/CSは2番組の同時録画に対応。4K放送の録画は1番組のみ。

放送済みの番組をさかのぼって見られるレグザ独自のまる録り機能「タイムシフトマシン」を搭載。「過去番組表」のほか、テレビ起動時やチャンネル選局時に気になる番組を見つけてもボタン1つでオープニングから視聴できる「はじめにジャンプ」、ジャンル別リストから見たい番組をすぐに再生できる「ざんまいスマートアクセス」にも対応する。

レグザのネットサービス「みるコレ」を使えば、AIレコメンドシステムが抽出したオススメ番組がピックアップされ、「これからの注目番組(未来番組)」や、「おすすめの番組(録画済み番組)」に一覧表示してくれる。またみるコレパックを使った、おまかせ録画にも対応する。

みるコレ

映像配信サービスは、Netflix、YouTube('19年秋対応)、AbemaTV、Hulu、dTV、U-NEXT、DAZN、TSUTAYA TV、DMM.com、スカパー! オンデマンド、ひかりTV 4K、クランクイン! ビデオ、アクトビラ ビデオ・フルに対応する。リモコンのダイレクトボタンはNetflix、YouTube、AbemaTV、Hulu、dTV、U-NEXTの6つ。

X930シリーズのリモコン

スマートスピーカーから音声で操作できる機能を搭載。Googleアシスタント、Amazon Alexa、LINE Clova搭載デバイス・スピーカーに対応する。レグザリモコンの音声機能を使った番組検索やシーン検索などの「ボイス機能」もサポートし、タイムシフトマシンの録画済み番組のなかから、見たい番組名やシーン名を声で探すことも可能。

インターフェイスは、HDMI入力が7系統。コンポジット映像・LRアナログ音声入力が各1系統。光デジタル音声出力、同軸デジタル音声出力、ヘッドフォン出力を各1系統用意する。USB端子は4系統。電源は着脱式。B-CASカードは付属せず、ACASチップを内蔵する。

スタンドは前モデルと同じで、後ろに数度傾斜したデザインを継承している。

消費電力は65型が498W、55型が392W。年間消費電力量は65型が225kWh/年、55型が203kWh/年。

スタンド含む外形寸法/重量は65型が144.7×26.7×84.6cm(幅×奥行き×高さ)/47.5kg、55型が122.6×25.1×72.2cm(同)/37.5kg。

X930の背面
電源は着脱式(写真右側)。径の大きいインレットプラグも使用可能

有機ELテレビはもう特別なテレビではない。これからのスタンダード

製品発表会には、東芝映像ソリューションのマーケティング部・ブランド統括マネージャーを務める本村裕史氏が登壇。

「液晶テレビがいいのか、有機ELテレビがいいのか。テレビの購入を迷われている方に、これまで我々は“有機ELが最高です”とは言ってこなかった。なぜなら、有機ELには明るさや価格の問題があり、リビングなどの環境下では液晶の方が満足度が勝る場合もあった。しかし、今日を持って、我々は自信を持って“いまテレビを買うなら、有機ELが最高です”とアピールさせていただく」とコメント。

「新モデルでは、昼間のリビングで鑑賞しても十分な明るさを有しながら、焼き付きの心配もほぼなく、価格も検討してもらえる範囲に落ち着いたと考えている。その上で、プロの方、映像にこだわる方々のハートに突き刺さる品質と機能を目一杯詰め込んだ。タイムシフトマシンはもちろん、プロユースの映像分析や設定機能、業界最多のHDMI 7入力や同軸デジタル端子の装備など、こんなことはレグザしかできないと思っている。有り難いことに既に、多数の映像のプロの現場で新モデルの導入も決まっている。有機ELテレビはもう特別なテレビではなく、これからのスタンダード。ぜひ新モデルでテレビ番組を楽しんで、リビングで過ごす時間を上質な感動のひとときに変えてほしい」と話した。

東芝映像ソリューション マーケティング部・ブランド統括マネージャーの本村裕史氏
IMAGICAなど、多数の製作現場で導入が決定したという