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東芝、日本初BS 4Kチューナ搭載有機ELテレビ「REGZA X920」。BS 4Kを身近に
2018年5月8日 13:00
東芝映像ソリューションは、12月1日にスタートする新4K衛星放送(新BS/CS 4K放送)に対応する4K有機ELテレビ「REGZA X920シリーズ」を7月下旬より発売する。55型の「55X920」と、65型「65X920」を用意し、価格はオープンプライス。店頭予想価格は55型が45万円前後、65型が65万円前後。
REGZAシリーズのフラッグシップモデルで、新世代の有機ELパネルや新映像エンジン「レグザエンジンEvolution PRO」を採用し、画質を強化。特徴は12月1日スタートする新4K衛星放送対応のBS/CS 4Kチューナを内蔵したことで、アンテナ線につなぐだけで新4K衛星放送を視聴可能になる。新BS 4Kチューナ対応テレビは、X920シリーズと同時発表のBM620X、M520Xシリーズが初となる。
OSはAndroid TVではないが、Googleアシスタントからの操作に対応する。
新4K衛星放送チューナを初搭載。すぐにBS 4Kが見られるを訴求
最大の特徴は、BS/CS 4Kチューナの搭載。いまあるBSアンテナにつなげるだけで、12月1日にスタートするBS/CS 4K放送を視聴可能になる。
新BS/CS 4K放送の全チャンネルを見るためには、現在普及しているアンテナや配線(右旋円偏波)に加え、「左旋円偏波」にも対応したアンテナや室内の配線が必要となる。しかし、まだ左旋非対応の家庭や集合住宅が多く、この点が新4K放送の普及の壁とされている。
しかし、東芝映像ソリューションでは、「もっと簡単にBS/CS 4Kを楽しめる。いまあるBSアンテナにつなげるだけでいい」と強調する。
確かに、BS/CS 4K放送で予定されている18チャンネルの視聴には左旋対応の環境が必要。しかし、BS朝日、BS-TBS、BSジャパン、BSフジ、BS日テレ(2019年12月放送開始)の民放キー局系のBSと、NHKについては、従来のアンテナでも受信可能。だから、「いまのBSアンテナにつなげるだけ」で、主要なBS 4Kチャンネルは網羅できるというわけだ。
まずは既存のアンテナにつなげれば、2018年12月開始のほとんどの新BS 4Kチャンネルが視聴可能に。その後必要になった時に、アンテナを左旋対応の「SHマーク」付きものに切り替えればよい。この点を東芝は「前のめり」にアピールしていくという。
また、新映像エンジンの「レグザエンジンEvolution PRO」の「BS/CS 4KビューティX PRO」により、BS 4K画質を向上。リモコンにはBS/CS[4K]ボタンを装備。専用ボタンですぐにBS 4K放送を呼び出せる。なお、CS124/128度の「スカパー! 4K」(スカパープレミアムチューナー)にも対応する。
新4K衛星放送の視聴には、10月後半に提供予定の「BS/CS 4K視聴チップ」が必要。このチップをREGZA側面の専用端子に接続することで、4K放送を視聴可能になる。チップの入手には、ネットから申し込みが必要となる。
BS/CS 4K視聴チップ対応の理由
新4K/8K衛星放送の、コンテンツ保護や限定受信(有料放送等で契約者のみが放送を受信可能にする仕組み)に用いられる技術として、「ACAS」と呼ばれる新方式が定められた。X920など新4K衛星放送対応のREGZAでは、このACAS方式に対応した。
ACAS方式は、従来のB-CASカード方式とは異なり、ICチップとして機器の中に実装することを想定して開発された。通常は機器内に内蔵するためユーザーが触れることはない。しかし、今回のREGZAではユーザーがスロットに挿し込む形をとっている。
基本的には機器内実装が求められるが、BS 4K放送開始まで時間が少ないため、ACASを管理する「新CAS協議会」は、「2019年度内までは、暫定的にICカード形式も認める」としている。今回のREGZAはこの仕組みを使い、「視聴チップの後送」という形で、新4K衛星放送対応を実現している。
なぜ東芝はこうした対応をとったのか? その理由は、夏商戦にあわせて新製品を発売するためと思われる。なぜなら、ACAS用のICチップ自体はまだ出荷されておらず、その完成や出荷を待っていると製品の発売は秋以降になってしまい、テレビ自体の開発が完了していても、製品が出荷できないことになる。
また次世代放送に対応済みとすることで、夏に新製品の購入を検討する人が安心して買えるようにするため、こうした対応を決めたようだ。なお、「BS/CS 4K視聴チップ」の発送10月後半を予定。端子は通常のUSBだが、他のスロットに挿さらないよう突起を備えている。
なお、ACASの詳しい経緯については、以前別記事で紹介している。
新エンジンで4K放送も地デジもノイズ感を抑制
65/55型とも4K/3,840×2,160ドットの有機ELパネル(OLED)を採用。最新世代の有機ELパネルを採用したほか、映像エンジンも「レグザエンジンEvolution PRO」を搭載し、高画質化を図った。HDR方式は「HDR10」と放送向けの「HLG」(ハイブリッドログガンマ)の2方式をサポート。Dolby Visionには対応しない。
新たに「BS/CS 4KビューティX PRO」を導入。4K放送の映像はもちろん高画質だが、4K撮影ではカメラのイメージセンサーの画素サイズは小さくなり、そこに起因するノイズの処理が課題となる。こうしたノイズを取り去るために、超解像技術を駆使して高画質化を図るのが、BS/CS 4KビューティX PROとなる。
映像の種類ごとに適切なフレームを参照して、ノイズリダクションや3フレームを使った超解像を実行。ノイズやちらつきを抑えたクリアな画質を再現できるという。4K放送のノイズの課題は、スカパー! 4K対応時に把握しており、今回基幹放送となる新4K衛星放送(BS 4K)対応にあわせて4K放送の画質強化に取り組んだという。
また、「地デジビューティX PRO」も導入し、地デジのノイズも抑制。従来はスケーラーで拡大していたフルHD化処理にも超解像処理を加え、精細感を高めている。また、2月からはNHK BSプレミアム等を除く、多くのBS放送の解像度が横1,440ドットに下がっており(従来は1,920ドット)、こうしたBS放送のノイズ感も改善するという。
HDR映像の臨場感を高める「HDRリアライザーPRO」も導入。輝度ヒストグラム分布に連動したコントラスト制御を行ない、立体感ある映像再現を実現する。明るいシーンでの色飽和を検出して階調を再現、肌の質感表現を高める「美肌リアライザー」も搭載する。
「映画プロ」、「ディレクター」などの映像モードに加え、新たに「スポーツ」モードも追加。従来は「ゴルフ・サッカー」モードだったが、シンプルな名称に変更。芝生の表現に適したガンマカーブを再現し、ゴルフやサッカーなどのスポーツ競技の立体感や臨場感を高めているという。
スピーカーは「有機ELレグザオーディオシステム」。3.0×9.6cmフルレンジユニットと、3cm径のツイータを搭載し、総合出力46W(15W×2ch+8W×2ch)。バスレフボックスの設計を一新、マルチアンプと新開発のレグザ・サウンドイコライザー・ハイブリッドにより音質を強化した。イコライザは896バンド。
HDMIは4系統が18Gbps。BS 4K放送録画も
HDMI入力は4系統で、全てHDR接続対応の18Gbps。4K/60pや著作権保護のHDCP 2.2をサポートする。低遅延のゲームモードや2,560×1,440ドット/60pのHDMI入力にも対応する。
チューナは、地上/BS/110度CSデジタルが3系統と、BS/CS 4K放送が1系統、スカパー! プレミアムチューナが1系統で、別売のUSB HDDへの録画に対応。地デジ/BS/CSは2番組の同時録画に対応。4K放送の録画は1番組のみとなる。なお、4K衛星放送は基本的にはダビング10など、現行BS放送相当のコピー制御での運用が見込まれるが、現時点では著作権保護規格などが決まっておらず、BD等へのダビングはできない。
最大6チャンネルの地上デジタル放送番組を常時録画する「タイムシフトマシン」も搭載。別途USB HDDを用意すれば、放送番組を蓄積して、自由に視聴できる。
好きなジャンルや人物、番組などの関連番組/コンテンツの[パック]から、録画やコンテンツ検索が行なえる「みるコレ」にも対応。パックを選択すると、録画番組や未来番組(今後放送予定)、YouTubeなどから見たい番組を選べ、最新アニメのパックを選べば、関連番組を一気に録画予約(通常録画)できる。
復活のダブルウィンドウ。Google音声連携も可能に
新機能としては、2画面同時表示の「ダブルウィンドウ」に対応。2015年のZ20X世代で映像エンジンを一新して以降のREGZAで削除されていた機能だが、今回復活し、放送+放送、放送+外部入力、4K放送+放送の組み合わせで2画面表示が可能となった。なお、外部入力2系統の表示はできない。
ダブルウィンドウでは、画面の拡大や縮小に対応。3段階でサイズ変更可能となっている。
映像配信サービスは、Netflix、ひかりTV 4K、YouTube、dTV、アクトビラ4K、DMM.com、TSUTAYA TV、U-NEXT、niconico、クランクインビデオなどに対応する。
また、新たにGoogleアシスタント搭載のスマートスピーカーとの連携に対応。REGZA自体はAndroid TVではないが、スマートスピーカーからの命令をREGZAで受信して、「チャンネルを変えて」、「音量をアップして」、「スキップして」などの操作に対応する。同機能の利用には「みるコレ」とGoogleアシスタントの連携が必要となる。
また、レグザリモコンの音声機能を使った番組検索やシーン検索にも対応する。
消費電力や年間消費電力量は未定。外形寸法は65型が144.6×26.7×84.6cm(幅×奥行×高さ)、55型が122.6×25.1×72.2cm(同)。重量は未定。