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レグザ初の“マイクロレンズ有機EL”。3層アルミ冷却で最高輝度&白黒モードも

4K有機ELレグザ「X9900N」シリーズ。左から55型、65型

TVS REGZAは、高輝度有機EL“マイクロレンズアレイ”パネルを搭載した「X9900N」シリーズ・2モデルを7月12日に発売する。価格はオープンプライス。店頭予想価格は、55型「55X9900N」が481,800円前後、65型「65X9900N」が646,800円前後。

2023年4月に発売した4K有機ELレグザ「X9900M」シリーズの後継機。

65型4K有機ELレグザ「65X9900N」

前モデルからの主な進化点は、レグザ初のマイクロレンズアレイ有機EL(MLA-OLED)パネルと独自の放熱技術により、ベース輝度を大幅に向上させたこと。全白で約1.3倍、ピーク輝度で約2倍を達成した。さらに「レグザエンジンZRα」による高度な信号処理技術を組み合わせることで、色鮮やかに輝く光と引き締まった暗部の高コントラスト描写を実現。

ほかにも、映画などの作品を白黒にして楽しめるAV愛好家向けのモノクローム機能、5.1.2chサラウンドをバーチャル再現するイマーシブサウンド機能、低遅延と滑らかなゲーミング映像を可能にする144Hzゲームモードなども新たに加えた。

なお、同時発表の4KミニLED液晶のフラッグシップ「Z970N」シリーズは、別記事を参照のこと。

4KミニLED液晶レグザ「Z970N」シリーズ

レグザ初のマイクロレンズアレイOLED。放熱アルミ3層は業界最多

前述の通り、X9900Nシリーズでは、MLA-OLEDパネル(4K/3,840×2,160ピクセル)を使っているのが特徴。

MLA-OLEDは、1画素あたり数千個におよぶ微細な凸レンズを発光層に一体成型することで、従来パネルでは内部反射でロスしていた光を効率的に取り出す構造を備えた最新パネル。従来と同じ消費電力のまま、輝度とコントラストを大幅に稼ぐことができるという利点が注目され、ハイエンドテレビやゲーミングモニター等で採用例が増えている。

レグザでは、MLA-OLEDパネルの2024年バージョンを使いつつ、背面に3層のアルミシート/プレートを仕込むことで放熱性能を高める独自の冷却構造を構築。ピーク輝度は前モデル比約2倍の2,000nits超、全白輝度も約1.3倍を達成し、パネル性能を最大化させている。

“アルミ3層”の役割は、1層目のシートで有機ELパネルから発生した局所的な熱を全体に分散、2層目の厚プレートでその熱を強力かつ効率的に放熱、3層目のプレートはパネル裏にある電源やエンジン回路などから発生する熱の分散とパネル側への熱ダメージ遮断、とのこと。

レグザブランド統括マネージャーの本村裕史氏によれば「放熱部分における3層アルミ仕様は、レグザの独自仕様となっており、(層の数は)業界最多ではないか」と話す。

レグザブランド統括マネージャーの本村裕史氏

信号処理を司るのは、フラッグシップモデルにのみ搭載する「レグザエンジンZRα」。前段のSoCと、後段のレグザ専用チップの2段構成とすることで、最上位機種だけの複雑な信号処理を可能にしている。

システム基板

2024年のフラッグシップモデルで新たに加わったのが「AIシーン高画質PRO」。

これまでもZRαは、ディープニューラルネットワークを活用して、高ビットな信号処理と超解像技術によるリアルな映像を目指してきたが、新しいAIシーン高画質PROは、コンテンツタイプ判別に加えて“AIでシーンを判別させてシーンに応じた映像処理を加える”というもの。

今回のモデルでは「夜景」「花火/星空」「リング競技」「ゴルフ/サッカー」のシーン判別ができるようになった。

機能を説明する、R&Dセンター 半導体開発ラボ 山内日美生氏

例えば、夜景の映像が放送されてAIが夜景と判断した場合、「自発光の光のあざやかさと小さな光のきらめき、引き締まった黒を再現」するように処理。花火や星空と判断した場合は、「夜景や星空の輝きを再現するとともに暗部のノイズを抑制し、クリアでリアルな高画質」映像に自動でチューニングするとのこと。

また、近年配信でも増えている格闘コンテンツについても、「会場に設置された照明でハレーションが起き、少しモヤがかかったように見える場合もクリアになり、さらに選手の筋肉の凹凸や躍動感が見えるように調整。リング上の輝きもその場にいるように再現する」という。

「AIシーン高画質」のメニュー
「夜景」でのON/OFF比較

このAIシーン高画質PROを支えているのが、新搭載の「有機EL高コントラストテクノロジー」。シーンに応じた信号処理による高コントラスト制御と共に、パネルのサブピクセル制御によって白ピーク・色ピークを伸長させ、色鮮やかな輝く光と引き締まった黒を実現している。

また新モデルでは、暗部の階調描写が向上。新しいディザリングアルゴリズムによって、シャドーなどの潰れがちだった細部の階調がなめらかに描写できるようになったという。

ゴジラ鑑賞に最適!? X9900Nだけの「モノクローム」モード

X9900Nシリーズだけのオリジナル機能として、カラー映像を白黒にして楽しむ「モノクローム」も実装された。

65型4K有機ELレグザ「65X9900N」

画質チームは近年、ハリウッド映画やゴジラなど一部作品において“モノクロ化”が話題になっていることに着目。高画質化に利用している信号処理とパネル制御を活用することで、高精度なモノクロ化を実現できるのでは? と、機能の復活を試みたという。

白黒にできるのは「映画プロ」「シアター(Netflix)」「Dolby Vision Dark」の3モードを選択している時。映像メニューから「色の濃さ -50」にすることで、カラー映像を白黒にできる。

使用例としては、UHD BD「ゴジラ-1.0」「シン・ゴジラ」をモノクロ化して、「ゴジラ-1.0/C」「シン・ゴジラ:オルソ」風にして鑑賞したり、緑や赤にややシフトしたモノクロ作品を色取りして鑑賞するなどの楽しみ方が考えられる、とのこと。レグザのTV映像マイスタを務める住吉肇氏は「同時発売のZ970Nには搭載していない、X9900Nだけのマニアックな機能。映画好きの、コアなユーザーに試してもらいたい」と話す。

前モデルからの高画質機能も継承。

(放送番組のような)ジャンル情報を持たないネット動画でもコンテンツ種類や特徴に応じて画質を最適化する「ネット動画ビューティPRO」や、AIがアニメキャラクターの顔を検出してアニメに適した高画質処理を行なう「アニメビューティPRO」を始め、地デジやBS番組のノイズを抑えて高精細化する「地デジAIビューティPRO」、番組毎に最適な映像調整パラメーターを人力で収集・データベース化してクラウド技術でレグザ購入後の高画質化をケアする「クラウドAI高画質テクノロジー」などを引き続き搭載する。

ほかにも、人肌の立体感や質感を向上させながら、黒ずみや白飛びの抑制、不自然なカラーシフト等を加味して自然な人肌にする「ナチュラルフェイストーンPRO」、室内の明るさや照明の色温度、外光、コンテンツの種類を検出して、視聴環境に適した映像に自動調整する「おまかせAIピクチャーPRO」も備えた。

また、“ミリ波レーダーによる画質・音質の最適化”機能に関しては、2024年モデルから動作精度が向上。視聴者を検知する性能がアップしたことで、視聴距離に応じた画質・音質調整がより高精度に動くようになっている。

なお、HDR10、HLG、HDR10+、Dolby VisionのHDR規格ほか、視聴環境にあわせて最適な映像を映すHDR10+ ADAPTIVE、Dolby Vision IQもサポートする。

18スピーカー・出力180Wの「重低音立体音響システムXIS」

サウンドシステムは、X9900Mの10スピーカー「レグザ重低音立体音響システムXHR」から、18スピーカー「重低音立体音響システムXIS」(65型)へ大きく進化。総合出力180Wのマルチアンプで独立駆動させると共に、トップスピーカーとサイドスピーカーによる音の拡がりと定位を強化した(55型は14スピーカーで総合出力170W)。

なお、X9900Mは画面全体を振動させて音を放出するスクリーンスピーカーを採用していたが、X9900Nでは非採用となっている。

「レグザイマーシブサウンド 360 PRO」と「マルチスピーカークオリティーマネージメント」も、レグザ初搭載の音声技術。

レグザイマーシブサウンド 360 PROは、テレビ内蔵のマルチスピーカーシステムとエンジンで立体音響を再現するもの。立体音響用のオーディオポストプロセッサを新開発することで、5.1.2chのバーチャル音響を実現。チャンネルごとに最適な補正を行なうことで、視聴者の周囲に配置される音を高精度に再現し、臨場感のあるイマーシブサウンドを実現する。

また、マルチスピーカークオリティーマネージメントでは、10個のアンプでスピーカーごとに周波数特性や音圧、タイミングを制御。各スピーカーを細かくイコライジングすることでリアルなサウンドを目指した。この最適化は、Dolby Atmosコンテンツの再生時にも適用させているという。

テレビの設置環境に応じて音響特性を補正する「オーディオキャリブレーションPRO」機能も搭載。テレビから発するテストトーンを、リモコンのマイクで測定。周波数特性に加え、到達時間まで細かく補正することで、部屋に最適なオーディオ設定に自動調整することができる。

音声メニューには、新たに「スポーツ」を追加。スタジアムの臨場感をリアルに再現しつつ、聞き取りやすい実況音声となるようにチューニングしている。

推し活に最適な「みるコレ 番組ガイド」。ゲームは4K/144Hzサポート

付属リモコンはBluetooth方式となっており、リモコンをテレビに向けることなく操作可能。さらに電源ボタン以外のネット動画ダイレクトボタン、数字ボタン、チャンネルアップ/ダウンボタンでも電源ONが行なえる。

リモコンには、12個(Prime Video、Netflix、Disney+、ABEMA、YouTube、TVer、FOD、U-NEXT、Hulu、DAZN、NHK+、Net-Vision)のダイレクトボタンを搭載。

好みのネット動画アプリや、HDMI接続した外部機器をユーザーが登録できる「My.Choice」ボタンも搭載。ダイレクトボタンのない「DMM.TV」「Apple TV+」などのアプリをMy.Choiceに割り当てれば、該当のサービスへ素早くアクセスできる。なお、2024年モデルからはネット動画「バンダイチャンネル」をサポートしている。

リモコン

地デジ番組を最大6チャンネルまるごと録画する「タイムシフトマシン」に対応。USB HDDを別途用意すれば、最大6チャンネルをDRモードで約80時間(4TB時)録り貯めることができる。リモコン搭載のレグザボイスボタンを使えば、番組名を話しかけるだけで過去番組の再生が行なえる。

地デジもネット動画もシームレスに楽しめる「新ざんまいスマートアクセス」を搭載。好きなジャンルやアーティストの番組をレグザがまとめてピックアップしてくれるため、放送番組とネット動画の垣根を超えて、見たい番組がシームレスに探すことができる。見たいシーンにアクセスできる「シーンリスト」、2K/4K放送番組を自動録画してくれる「おまかせ録画」も備える。

2024年モデルから新たに加わったのが「みるコレ 番組ガイド」と「番組こねくと」。

リモコンの“番組ガイド”から呼び出すことのできる「みるコレ 番組ガイド」は、気になるアイドルや俳優、アーティストを登録すると、そのタレントだけを集めた“出演番組スケジュール”を作ってくれるというもの。

GUIでは、「録画済み番組」「放送中の番組」「今後放送する番組」の中から、登録した“タレント”に関する番組だけを抜粋してリスト化。気になるタレントの番組だけを集中して観ることができるようになっており「“推し活”に最適」とする。

「番組こねくと」は、“気になる番組の配信先”を表示してくれる機能。例えば、『HIGHSPEED Etoile』を選んだ場合、録画済み、今後放送予定の情報に加え、Prime Video、Huluでの配信状況もタブの切り替えで確認できる。

iPhoneやiPadなど、Apple製デバイスで表示されている画面をテレビに表示できる「Apple AirPlay 2」、Android端末の画面を表示する「スクリーンミラーリング」に対応。スマホやPCの画面でしか見ることができない、大物アーティストのライブ配信なども、AirPlay 2やミラーリング機能を使えば、テレビの大画面で楽しめる。

ゲームプレイに特化した、ゲーミングメニューを新搭載。パラメーターの調整やゲームコンディションの確認が素早く行なえるほか、シューティングゲームで便利な照準表示機能も加えた。

4K/1080p 144Hzゲームモードもサポート。対戦型ゲームで要求される低遅延とスムーズな表示を実現した。ほかにも、4K/1080p 120Hz、2,560×1,440 60Hzのゲーム信号もサポートする。最小遅延速度は0.83ms(瞬速ゲームモード120p入力時)。

ゲーミングメニュー

搭載チューナーは、地上デジタル×9(タイムシフトマシン含む)、BS/110度CSデジタル×3、BS/CS 4K放送×2。別売のUSB HDDに地デジ/BS/CSの2番組同時、4K放送の裏番組録画ができる。

HDMI入力は4系統で、eARC/ARC、VRR、ALLM機能をサポート。4極ミニプラグのビデオ入力(映像・音声LR)、光デジタル音声出力、ヘッドフォン出力、LANを各1系統用意。USB端子は4系統。スタンドは、左右水平15度動かせる回転式。電源は着脱式。

消費電力と年間消費電力、外形寸法、重量は以下の通り。

【消費電力と年間消費電力】
・65X9900N:561W 271kWh/年
・55X9900N:445W 252kWh/年

【スタンドを含めた外形寸法と重量】
・65X9900N:144.2×30×89.2cm(幅×奥行き×高さ) 32kg
・55X9900N:122.3×26.5×77cm(同) 24.5kg