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レグザ、CESで次世代エンジン「ZR α」披露。初のミニLEDも

ZR αを搭載した、75型4KミニLEDレグザ

TVS REGZAは4日、米国・ラスベガスで開催されるテクノロジー見本市「CES 2022」(1月5日~8日)に出展し、新開発のレグザエンジン「ZR α」や新しい高画質化技術、レグザ初のミニLED機などを参考出品すると発表。CES 2022の開催に先駆け、展示内容を紹介する内覧会を実施した。

CES会場での出展イメージ。レグザの展示は「CES 2014」以来8年ぶり

ディープニューラルネットワークを搭載した「ZR α」

CES会場で参考出品されるのが、次期ハイエンドレグザへの搭載が見込まれる映像プロセッサ・レグザエンジン「ZR α」。

同プロセッサは、映像解析を高度化するために、独立したディープニューラルネットワーク(DNN)アクセラレーターを搭載したハードウェアAIエンジンで、最大29bit幅の高ビット精度の信号処理と最新の超解像技術を備えているのが特徴。また4K120p入力での高画質処理も強化されている。

レグザエンジン「ZR α」
中央のプロセッサがZR α

4K有機ELレグザ「X910」などから採用し、これまでアルゴリズムの最適化や他回路との連携により機能を高めてきた、現行の映像処理プロセッサの次世代版として開発されたもの。

R&Dセンター長の石橋氏は「その場にいるかのような臨場感、張り詰めた空気感、手を伸ばせば触れられるかのような質感までも(ディスプレイで)再現することを目標に、約3年の開発期間を経て完成した新エンジン」と話す。

なお、2021年発売のAndroid TVレグザ「X8900K」「Z670K」「Z570K」「M550K」シリーズに搭載されているエンジンZR Iとは別モノとのこと。「どちらも名称に“ZR”と付いているが、ZR αはZR Iのアップデート版などではなく、全く異なるプロセッサ。ZR αは、数世代先の高画質モデルへの搭載も見越して新規に開発した新しい映像エンジン」という。

ZR αを搭載した65型4K有機ELレグザ(左)と、ZR αを搭載した75型4KミニLEDレグザ

ZR αでは、ハイパワーな処理性能を活かした新しい高画質化技術を多数搭載。

「立体感復元超解像」は、高度な映像分析によってリアリティを高める新しい超解像処理。AIで画面部分毎にニューラルネットワーク分析することで、画面の中にある“被写体”と“背景”を識別。それぞれに最適な処理をかけることで、あたかも“人間が肉眼で見ているようなリアルな世界を実現”することを目指す。

「超解像処理を画面全体にかけてしまうと、背景が強調されてしまったり、遠近感が損なわれてしまう。ZR αはAIを活用することで、従来よりも高精度なシーン検出・オブジェクト検出を行ない、被写体や近景、遠景なのかを即座に判断。近景であれば超解像、遠景であればエンハンスやNR等の処理を適切に施すことで、精細な映像と奥行き感、立体感をリアルに再現する」(山内氏)という。

動作前
動作後
動作前(拡大)
動作後(拡大)。遠景部分の解像感が弱くなっているのがわかる

顔検出技術を用いた、高精度な高画質化処理も実現。

「AIフェイストーン再現技術」では、AIが映像の中の“顔”を検出して、その人物の肌色がカラーシフトしているか否かを判定。ドラマなど、照明の影響でカラーシフトした顔色と判断した場合は、自動で自然な色に補正してくれる。

レグザのカラーシフト補正は、従来技術「ナチュラル美肌トーン」でも実現しているが、色相や彩度など色情報を参照して人肌の検出を行なっていた。AIの顔検出技術を利用することで、補正の精度を従来よりも高めることができるという。

映像から顔を検出。カラーシフトがある場合は、適切な肌色へ補正する
左が従来。右がZR αエンジンによる顔検出でカラーシフト補正した状態

またAmazon Prime VideoやDisney+などのネット動画コンテンツを対象とした、画質アルゴリズムも新開発。

「AIネット動画高画質アルゴリズム」では、ネット動画の特性に合わせ、コントラストや精細感調整などの画質処理を実施。加えて、ネット動画で目立ち易い“バンディングノイズ”を大幅に低減する専用のスムーサーを新開発。絵柄なのか、ノイズなのかを高精度に判断しながら、バンディングノイズやブロックノイズ部分を効果的かつ安定して抑制。絵柄は高精細を維持したまま、滑らかなグラデーションを実現することで、高画質なネット動画を楽しめるように工夫したという。

動作前。右側に階調の段差が確認できる
動作後。バンディングがなくなっている

レグザが得意とする、放送コンテンツの画質処理も強化されている。

リアルタイムに“複数回”の超解像処理を実施し、放送波のさまざまなノイズを低減しながら、動きのある映像で発生しがちな残像を抑制、高精細でクリアな映像を実現した。さらに拡充した3Dカラーデータベースにより、鮮やかな色彩を表現するという。

「ドラマなどは、よりリアルで色鮮やかな映像で楽しめる。またバラエティ番組などで多く使われるワイプも、AIが顔を検出するので、テロップの文字だけでなく、ワイプ内の人物もクリアな画で楽しめる」(山内氏)と話す。

CES 2022では、ZR αを搭載したフラッグシップ4K有機ELレグザに加え、初の4KミニLEDレグザも参考出品されるが、新エンジンには、数千ものミニLEDを高精度に制御する新技術「ミニLEDエリアコントロールアルゴリズム」も搭載されている。

具体的には、一般的なLED制御で発生しがちな漏れ光(ハロ)の抑制に“仮想細分割点灯値生成”を利用。仮想細分割エリアで点灯値を算出した後、最終的なエリア点灯値を生成することで、絵柄に最適な点灯値を生み出す事でハロを抑える。さらに、階調つぶれを監視しながらLED点灯に応じた映像補正を加えることで、明部と暗部の階調性豊かな高コントラストな映像を作り出すという。

75型4KミニLEDレグザのプロトタイプ
従来LED(左)とミニLEDの比較

東芝レグザというブランドをグローバルで復活させていく

内覧会では、同社R&Dセンター長を務める石橋泰博氏が登壇。

CESへの出展に関して、「シェアの改善やラインナップの充実など、最近はお客さまから『レグザは最近元気になってきた』と感じてもらえるようになったと捉えている。内部には『今さらCES?』という意見もあったのだが、東芝レグザというブランドをグローバルで復活させていく、そして我々レグザが元気になってきた事を知っていただきたい、という想いを込め、今回再びCESに出展することを決めた」と経緯を説明。

ZR αについて、「我々の開発ポリシーは“本質の追究”であり、ZR αは、更なる臨場感やリアリティの再現を目指して開発した。このエンジンはDNNにより、今後も学習し、成長していくことができる。さらに高ビット精度の信号処理により、圧倒的なテクスチャ再現力をも実現している。ZR αが必ずや、皆さまに新しい映像体験を提供してくれると確信している」とコメントした。

R&Dセンター長 石橋泰博氏

また、映像エンジン開発を担う同社半導体ラボ長の山内日美生氏は、「映像エンジンを開発する上で重要視しているのが、ベースとなる高い基本性能。映像処理が高度になればなるほど、処理精度が要求される。その処理精度を実現するために、しっかりとコストをかけられるのが自社設計の強み。またZR αは開発当初から本格的なAI技術を導入することで、映像解析性能を更に進化させており、今後もさまざまな映像処理を実現できている」と、ZR αの強みをアピールした。

なお、ZR α搭載レグザの発売について、レグザブランド統括マネージャーの本村氏は「新エンジンを搭載したレグザ最高峰の高画質モデルを開発中だが、具体的な発売時期は未定」という。

半導体ラボ長 山内日美生氏