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4K時代のパッケージメディア戦略と、iVDRの役割とは?

アイ・オーはSeeQVault対応録画USB HDDを秋に発売へ

 リムーバブルHDDの規格団体・iVDRコンソーシアムは30日、「iVDR EXPO 2014」を開催。加盟各社が最新の取り組みなどのプレゼンテーションを行なったほか、iVDR搭載ハードウェアや映像コンテンツなどが展示された。

 NHKエンタープライズなど加盟社によるプレゼンテーションや、会場に展示された今後発売予定の製品などについてレポートする。なお、参考展示されていた4K対応プレーヤー試作機については、別記事で紹介している

制作側からの4Kパッケージへの期待

NHKエンタープライズの長谷川隆 執行役員

 NHKエンタープライズの長谷川隆 執行役員は、同社の4K映像制作への取り組みを通じて、コンテンツ制作側から見た4Kメディアの重要性を説明。4Kセルパッケージへの期待などを語った。

 長谷川氏は、9月に福岡で収録した「薪能 4K 安達原」を紹介。夜間に薪の炎だけを照明として撮影したというユニークな試みで、4Kによる暗部の再現力を追求したというもの。

 4Kカメラ5台のマルチカメラシステムで、カメラマン5人に加え、フォーカスを担当するカメラ補助の人員も用意。編集には同社の「MASAMUNE」というシステムを採用した。これはRAW撮影した4K映像からダウンコンバートした2K映像を作成し、2K映像で編集した後、そのIn点/Out点などをもとの4K映像に反映するという方法で効率化を図ったもの。MASAMUNEというシステム名称は、担当者だった“伊達氏”から採ったという。

「薪能 4K 安達原」にはF55などの機材を使用
5台のマルチカメラ構成
「MASAMUNE」システムの概要

 iVDRを含むパッケージメディアの動向については、ひかりTVによる4月からのトライアル配信と10月に予定している商用配信への動き、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)による試験放送開始などに触れ「VODや放送の動きに遅れることの無いスピード感に期待している」とした。

 長谷川氏は、早い段階から4Kに先行投資して着手しているコンテンツ制作者からの意見として、次の作品制作につながる「制作費の回収」に言及。従来の2Kではまず放送して、BD/DVDやVODなどは「2次展開」と位置付けられているのに対し、4K時代からは「放送、VOD、パッケージ、海外展開、ビッグスクリーンなどのトータルで制作費を回収するビジネスモデル」としていくことを提案。「まずパッケージやVODが先で、放送が2次展開になることも考えていかなければ」とし、来場した関係者らに協力を呼び掛けた。

 また、2015年以降のNHKの4K番組制作について「“国民的番組”と言われる大型シリーズドラマ」や、「日本の大物アーティストによる記念碑的公演」を4K制作していくということを予告。「ダーウィンが来た!」などネイチャー番組も、「“ほぼ”4K化する」と述べ、「放送だけでは伝えきれない部分を、大容量メディアのiVDRに期待する」とした。

コンテンツ制作からみた技術革新
「制作費の回収」について問い直した
NHKは'15年以降も4K制作に本腰を入れていくという

ビデオコンテンツの新ロゴ/パッケージガイドラインも策定

ジェイ・ピーの中野七生氏

 '10年にiVDRコンソーシアムに加盟し、BSジャパンで放送された「欧州 美の浪漫紀行」や、「桃井はるこ 『しょうわ』歌謡ショー」などのiVDRパッケージコンテンツの制作を手掛けてきたジェイ・ピーのコンテンツ制作本部兼経営企画室次長 中野七生氏は、iVDRについて「Blu-rayでのリリースが難しかった、ニッチ層向けのコンテンツに向く」といったiVDRパッケージの特性について改めて説明。今後の4K/ハイレゾ化を見据えたコンテンツ戦略として、「ハード開発、規格策定、コンテンツを三位一体で推進していく」とした。

 流通/プロモーション戦略としては、iVDRビデオコンテンツを販売する際のロゴとケースの推奨規格をiVDRコンソーシアムで策定したことも説明。カセットの形状を反映した四角形の新しいロゴを発表した。ケースのガイドラインとしては、赤(Translucent red)を基調とし、トールケースサイズの181.5×136.0×20.0mm(縦×横×厚さ)とした。

コンテンツ戦略
新ロゴやパッケージのガイドラインを策定
iVDRセルパッケージの制作フロー
会場で、桃井はるこiVDRビデオ第2弾発売プレス発表&ミニトークショーも開催
ジェイ・ピーから、iVDRビデオの新作「モモーイ Live☆ぱいれーつ」が7月7日に発売されることを桃井さん自身が発表。約10時間(630分)収録で、価格は21,800円。新しいiVDRロゴが使われる最初の作品となる

 iVDRコンソーシアムの日置敏昭理事長は、「4K時代を牽引するiVDR」と題してプレゼンテーションを行ない、4Kや今後の8K映像、ハイレゾオーディオなどの広がりによって「コンテンツが、配布から質を追求する時代になる」とし、デジタルコンテンツの容量拡大に合わせて対応可能とするiVDRをアピール。「マスタークオリティのまま、長期保存と再利用ができる。パーソナルクラウドに最適」とした。

iVDRコンソーシアムの日置敏昭理事長
「コンテンツの質」が求められる時代にiVDRがマッチできるという
登壇者によるパネルディスカッションも行なわれた

アイ・オーはSeeQVault対応録画HDDを秋に発売へ。iVDRと相互ムーブ可能

USB 3.0接続のiVDRアダプタ「RHDM-UT/TE」

 アイ・オー・データ機器は、パソコン接続用のiVDR-Sアダプタ新製品として、USB 3.0対応でiVDR間の高速ムーブなどが可能な「RHDM-UT/TE」を展示。近日発売としており、価格は1万円台の見込み。

 添付ソフトのペガシス「TMPGEnc MPEG Smart Renderer 4」を使って、ハイビジョン映像の編集が可能。さらに、デジオンのDLNA対応ソフト「DiXiM Digital TV 2013 iVDR Edition」も付属する。

 同社は、著作権保護規格の「SeeQVault」対応のテレビ録画用USB HDD「AVHD-USQ series」を今秋に発売することも予告。従来のUSB HDDのように、録画に使ったテレビだけで再生できるのではなく、SeeQVault対応テレビであれば買い替えた後でも同じHDD内の録画番組を再生できるというもの。価格などの詳細は未定だが、2TB「AVHD-USQ2.0」と3TB「AVHD-USQ3.0」を発売する予定。

 iVDR EXPO会場において、パソコンにつないだiVDRメディアと、ソニー製のSeeQVault対応ポータブルサーバー「WG-C20」に収めたmicroSDカードとの間で、録画コンテンツをムーブするデモも実施。規格の違いを意識させず、自由にファイルを行き来できる利便性などをアピールしていた。

SeeQVault対応のテレビ録画用USB HDD「AVHD-USQ series」
iVDRメディアと、ソニー製のSeeQVault対応ポータブルサーバー「WG-C20」に収めたmicroSDカードとの間で、録画コンテンツをムーブするデモ
転送先としてSeeQVault対応メディアも表示
日立製テレビ「Wooo L55-G2」などのiVDR対応製品も多数展示
日立マクセルが6月下旬に発売するiVカセットのカラーモデル
既発売のiVDR/Blu-ray両対応レコーダ「アイヴィブルー」

(中林暁)