レビュー

スマートスピーカーで変わる音楽生活。声の操作でAmazon Echoは何を聴かせてくれる?

 人の声による指示で動作し、様々な機能が利用できる「スマートスピーカー」。ニュースや天気予報、自分の次の予定などの情報を教えてくれるほか、機器連携によって家の鍵をロックしたり、テレビやエアコンのスイッチオン/オフができるものもある。

スマートスピーカーのAmazon Echo

 そして、重要なのがスピーカー本来の機能である“音楽を聴く”こと。色々とできることがある中で、当面はどのユーザーにとっても、スマートスピーカーの主な用途の一つは音楽ではないだろうか。そこで、筆者が購入したAmazonの「Echo」(11,980円/税込)と「Echo Dot」(5,980円/税込)で楽しんでいる、音楽サービスとの連携について紹介したい。

我が家に導入した、Echo(左)とEcho Dot(右)

 改めて、スマートスピーカーを使った、基本的な音楽の聴き方について説明しよう。どの機種も最初に「起動ワード(ウェイクワード)」を告げ、続いて命令する形になっている。

 Echoのウェイクワードは「Alexa(アレクサ)」。例えばEchoに曲を流して欲しければ「アレクサ。ワーグナーを聞かせて」と話すと「リヒャルトワーグナー楽曲をシャッフル再生します」と答え、音楽配信サービス「Amazonミュージック(プライムミュージック)」のライブラリから、「ワルキューレの騎行」、「結婚行進曲」など、対象の曲を再生してくれるのが基本的な流れ。

 Alexaという“エージェント”のような存在がクラウドコンピュータ上にいて、ユーザーはEchoというスピーカー越しにクラウド上のAlexaに命令。そして、スピーカーを介してそれに応えてくれるようなイメージだ。

 Alexaを使ってみると、色々な答えを返したり、情報を持ってきたり(たまに聞き間違えたり)と本当に面白いのだが、音楽関連でいえば、“作業BGM”のように、ながら聴きしたいときに便利。スマホなどで操作しなくても、何となく音楽を聴きたいときなどに非常にラクだからだ。

命令後、実行を待つ間ライトの点灯がグルグルと回る

 Echoシリーズ以外にも、スマートスピーカーは10月にLINEから「Clova」、Googleから「Google Home」、「Google Home mini」が登場。盛り上がりを見せつつある。

 その中でもAmazonのEchoシリーズは、米国などでシェアNo.1のスマートスピーカーで、日本では(米国において2世代目にあたる)「Echo」、「Echo dot」、それにスマートホーム対応で家電を操作できる「Echo Plus」が11月に発表された。

 Amazon Echoシリーズの強みは、その幅広い用途。Echoには「スキル」という用途を広げる機能がある。米国では非常に多くサードパーティ製のスキルが登場したのが、シェアが広がった理由のひとつだとされている。

 Alexaが日本語に対応し、Amazonをはじめドコモ、NHK、JR東日本、Yahoo、全国タクシーなどの様々な会社がスキルを提供。Echoからこれらの会社のサービスを利用できる。例えば、Amazonがスキルとして「Amazonでの買い物」を提供しており、ユーザーがプライム会員であれば「Alexa、コーラを買って」といったらAmazonからコーラが届くような設定もできる。

 なお、クラウド上のAlexaの動作やスキルは日々学習/アップデートされるため、執筆時点とは状況が変わっている可能性もある。

Alexaに命令した記録はスマートフォンのAlexaアプリに残る。これは、Alexaに「コーラを買って」といったときのもの
Amazonの注文と入っている。この画面ではWebからの注文かEchoからの注文かといった内容は表示されない

 なお、Amazonのスキルと同様の仕組みとして、Google Homeには「アクション」があり、既存の事業者が自社サービスをGoogleアシスタント対応にするための開発プラットフォーム「Actions on Google」が用意されている。

「がんばれる曲を再生して」でもOK

 スマートスピーカーで音楽を聴く場合は、連携する音楽配信サービスの曲を再生するのが基本的な形。初期設定では、EchoはAmazonミュージック(プライムミュージック)、Google HomeはGoogle Play Music、そしてClovaではLINE MUSICなど、サービスに登録されている曲が演奏可能だ。

 また、スキルが登録されているサービスの曲、Amazon EchoであればtuneInやドコモのdヒッツ、Google HomeならSpotifyの曲も再生できる。これらを利用するにはスマートフォンのアプリから連携の登録が必要。Echoでdヒッツの曲もEchoのレパートリーに含めさせたいのであれば、dヒッツを契約しているdアカウントで「連携」を設定しておく。

 なお、dヒッツはNTTドコモのサービスだが、ドコモと回線の契約をしていなくても利用できるキャリアフリーの音楽配信となっている。

dヒッツとの連携を許可

 聴き方は簡単で、たとえばEchoなら「Alexa、○○(曲名)を再生して」と言えば、対象サービスに含まれている場合はその曲が再生される。「○○」はアーティスト名やプレイリスト名でもいい。

 具体的な曲名などではない“要望”であっても、それっぽい曲名やプレイリストがあればかけてくれることがある。例えば「Alexa、残業のサントラを再生して」と話すと、「ゴジラ」のメインタイトルや、「スターウォーズ」の帝国のマーチといった曲を延々と流してくれる。これは、Amazon Musicの公開プレイリスト「残業を乗り越えるサントラ」にその曲が含まれているからだ。

 筆者が試しに「がんばれる曲を再生して」と話したときは「がんばれがんばれ」(SION)という曲を再生。知らない曲だが、ちょっと元気をもらった。目的としていた曲ではなかったが、これはこれでいいかもしれない。

「がんばれる曲」をリクエストしたら、Alexaが「がんばれがんばれ」という曲を再生してくれた

 便利なのは、なにか作業をするときのBGMをかけたい時や、曲を変えたいときなど。スマートスピーカーであれば手を動かしたり何かを注視しなくても対応できる。「がんばれがんばれ」を聴いて気分が変わったら「Alexa、高橋洋子の曲をかけて」と言うと、高橋洋子の楽曲「魂のルフラン」、「残酷な天使のテーゼ」などの楽曲をシャッフルで連続再生してくれた。気に入らない曲だったら「Alexa。次の曲」で曲をスキップ。手を煩わせない、おまかせできる感じが「買って良かった」と思える。

高橋洋子の曲を再生した履歴

 音声でAlexaに探させるのではなく、スマートフォンのアプリから曲を指定して再生したい場合、一度再生済みの曲であれば、スマートフォンのAlexaアプリで「履歴」を見ると、既に再生したリストの一覧が表示。そのリストや曲やタップすればもう一度聴ける。ただ、まだ再生していない曲やアルバムを、Amazon Musicアプリから選んで再生させることはできない。

 Alexaが音声を誤認識することは、慣れれば減るとはいえ、やはりそれなりにはある。スマートフォンアプリからの操作は、確実に聴きたい曲を聴くためにはいい方法だ。ただ、個人的にはアプリからの操作よりは、声での操作の方がBGM発生器として使うのがラクに感じる。

 音声コントロールした時に、(筆者の滑舌があまりよろしくないという点を差し引いても)、Alexaが迷ったあげく筆者の意図とは違って邦楽全般をカバーする邦楽ステーションを再生するときもある。そんなときは「Alexa。次。」と一言告げれば、Alexaはそれを実行してくれる。

 なお、米国ではEchoでSpotify、Google HomeはYouTube Musicなどの曲も対応しているようだ。国内でも、もっと多くのサービスがスマートスピーカーに対応して、再生できる楽曲が増えることに期待したい。

Amazonの音楽サービスを聴くときに注意したい点

 Echoで再生できるAmazonの音楽サービスに関しては、少々複雑な点もあるので改めて説明しておきたい。もともとAmazonではMP3データを販売するAmazon Musicストアと、100万曲程度が聴き放題になるプライム会員向けのプライムミュージックがあった。そして、Echoシリーズの販売に合わせて、4,000万曲が聴き放題となるAmazon Music Unlimitedというサービスも始まった。通常は月額980円で、プライム会員だと月額780円だが、Echoのユーザーはさらに割引され月額380円で利用できる。

 Alexaは、これらのサービスのユーザー加入状況に応じて、Music Unlimitedの曲やdヒッツのリスト、それ以外にライブラリに登録されている曲(つまり、これまでMusicストアでMP3データを購入した曲)を適宜、使い分けて再生する。

 注意したいのは、AlexaはUnlimited(またはプライムミュージック)の曲と、ライブラリを串刺しで検索はしてくれないこと。

 たとえば「Alexa、fripSideの曲をかけて」とEchoに命令すると、Unlimitedに登録されているfripSideの登録曲2曲を再生する。筆者の場合はfripSideの曲は他にもう1曲(Sister's noise)をMP3で購入したことがあるので「Alexa、fripSideの曲を"ライブラリ"からかけて」と命令すると、購入した「Sister's noise」という曲が再生された。

Amazon Musicのプレイリスト。購入した曲とUnlimitedの曲を混ぜて作れる
fripSideの曲を再生した時の履歴

 もし、3曲とも通して聴きたいという場合は、全てを「マイプレイリスト」登録する。「fripSide」というマイプレイリストを作り3曲とも登録して「Alexa、プレイリストのfripSideを再生」とEchoに命令すれば、3曲全部を聴ける。

 この辺りの煩雑さはもう少しどうにかならなかったのだろうかと思う。音楽サービスのが分かれているために起きていることだとは思うが、プレイリスト化しなくても、購入した曲もUnlimited/Prime曲とまとめて連続で聴けるようにしてほしい。

Amazonだけでなくドコモdヒッツなどの曲も聴ける

 Amazon以外のサービスも利用することができるのは先に挙げた通りだ。無料のインターネットラジオ「tuneIn」(無料)と、月額500円でチャンネル型と楽曲指定で聴ける「dヒッツ」が利用可能になっている。

音楽再生で利用できるサービスの一例
Alexaアプリ上でdヒッツのアカウントを登録し、スキルを有効にした例

 Alexaはリクエストされた曲がAmazonなどにない歌手やテーマの曲だと判断した場合、あるいは明示的に「dヒッツの~を再生して」と指定した場合、Amazon Musicではなくdヒッツから曲を探して再生させることができる。

 たとえば声優の「田村ゆかりの曲を再生して」と命令した場合、AlexaはAmazonにはないと判断し、dヒッツから「田村ゆかり ミディアム/バラード編」を再生した。意図的にdヒッツを使って聴きたい場合は、「Alexa、dヒッツで田村ゆかりを再生して」のようにそのスキルを呼び出すことも可能。

 NTTドコモがレコチョクとの協力で提供しているdヒッツは、日本のオリコンチャートに入っているようなアーティストや曲はよく登録されている。「アニメ/声優」のカテゴリもあり、日本に向いたサービスといえる。

 dヒッツをEchoで使いたい場合は、dヒッツに加入してアカウント(dアカウント)をスマートフォン上のAlexaアプリで登録、スキルを有効化する。

 Amazonの音楽サービスに加入している場合は、料金をAmazonとdヒッツの両方に払う形にはなるが、AmazonでMP3を個別に買ってプレイリストを作っていくよりも、手間がかからなかったり安く上がる場合もあるだろう。なお、dヒッツは初回申し込みの場合は最初の31日間は無料で利用できる。

dヒッツと連携させる

しっかり声を聴きとってくれる仕組み

 Echoは、音声認識に7個のマイクを内蔵。リビングの真ん中に置いたような状態でも、部屋の端から「Alexa」と呼びかけてもちゃんと反応した。それでいて「Alexa」という呼びかけと命令以外のノイズ、たとえば環境音などは排除してくれる。それが分かるのは、スマートフォンのAlexaアプリには、Echoがユーザーの命令をどのように聴き取ったのか、その音声と、内容のテキストが残るためだ。再生してみるとしっかり周りのノイズを排除して、命令した筆者の声だけを拾い、正確にテキストを起こしているのが分かる。「音声ビームフォーミング」という技術だが、これは見事なものだ。

 いちいち音楽を聴く環境の近くまでスマートスピーカーを持ってこなくても、リビングでも作業場所でも、いつも通り決まった場所に置いておけば「Alexa」と呼べば応えてくれる。設置場所など細かいことを気にしなくても、人が作業をしている場所から話すだけで命令を聞き取ってくれるのは、長く使い続けるうえで重要なことだ。

 Alexaの場合、スマートフォンのAlexaアプリで「Alexaがどのような音から命令を拾ったか」を録音音声で後から聞くこともできるので、ちょっと聴いてみてほしい。「こんな状態でも命令を聞き取ったのか」と驚くことも多いはずだ。

EchoとEcho Dotならどっちを選ぶ?

 前述したように、現在は「Echo」と小型の「Echo Dot」を使っている。EchoとEcho dotはサイズも違うが、内部もEchoには2.5インチウーファと0.6インチツイータが搭載されているのに対し、Dotには0.6インチのフルレンジユニットが1つという構成。やはり音質は相応に異なる。

 ただし、どちらも機種も3.5mmステレオケーブルを使用して外部スピーカーをつなげることもできるし、Bluetoothで他のスピーカーに接続して聴くことも可能だ。

 個人的には、室内インテリアとしても格好良く、低音がズンと響いてくるEchoの方を推したい。ただ、Echoの方はサイズがある分、どうしても部屋の中で目立つ存在となる。あまり目立たないように置きたい、または他に音質の良いスピーカーを持っているという人であれば、Echo Dotでも十分だろう。

 筆者宅の場合、リビングにはEchoを置き、寝室兼パソコンルームにはEcho Dotを配置している。Echo Dotであれば、ものの多い室内でも、パソコンの横に邪魔にならずに置ける。音質については、もうちょっと低音がほしいと思う。

「スキル」次第で、できることはどんどん増える

 音楽サービスとの連携など、Echoの機能拡張は、「スキル」という仕組みを使って行なわれている。

 ユーザーが使いたいサービスで、スキルが既に提供されている場合は、スマートフォンにインストールしているAlexaアプリのメニューにある「スキル」一覧から使いたいものを「有効」にする。そして「Alexa、(スキル名)で××して」のように、Echoに話しかけることで呼び出せる。

使いたいスキルをスマートフォンのAlexaアプリで探し「有効にする」ボタンをタップすると新しいスキルを使える

 Echo向けには、各社が競ってスキルを現在も作っている。新しいスキルがあるかどうか調べるには、スキルリストから「新作」を見ると分かる。

 Alexaの日本向けの音楽関係のスキルとしては、筆者が調べた時点では下記のものがあった。

・「カラオケJOYSOUND」JOYSOUNDで配信中の楽曲100曲を再生
・「radiko.jp」全国のラジオ放送を受信
・「528 究極の癒やしミュージック」528Hzの音波が入ったヒーリングミュージックを演奏
・「J-WAVE CHECK THE TOKIO HOT 100」ラジオ局J-WAVEのポッドキャスト
・「Music Shower」住んでいる地域の天気や時間帯に合わせた音楽を、Alexaが選んで再生
・「MOTTAINAI SOUND」美瑛と江ノ島をイメージした2曲を再生

 これ以外にも、Exciteが「海岸の波打ち際」、「小川のせせらぎ」など様々な環境音をスキルとして登録している。

 なお、Spotifyも有料のPremiumユーザー(月額980円)向けに登録できるようになるとしているが、記事執筆時点ではまだ使えないようだ。Spotifyが対応すれば、有力なサービスとなるだろう。

 これらのスキルを使って聴きたい場合は、前述したdヒッツの場合と同じく「Alexa、JOYSOUNDを開いて ようこそジャパリパークへ」などと命令すると、Amazon MusicではなくJOYSOUNDのカラオケで「ようこそジャパリパークへ」が再生される。

 いちいちスキルを指定しないといけないのは面倒だが、この辺りは、今後のアップデートによって、いずれは不要になることを期待したい。例えば「命令からAlexaが、適切なスキルを自動的に選択して使ってくれる」または、Alexaが「その命令を実行するために〇〇のスキルを有効化しますか?」など初回に確認してくれたら、便利になりそうだ。

 各社から次々に出てくる新しいスキルを、人間が常にチェックしたり覚えておくのは大変だが、クラウド上のコンピュータをうまく活用して、あまり意識しなくても多くのスキルを使えるようになってほしいし、そういったことは不可能ではないと思う。

音楽を聴くのがラクで、空気のような当たり前の存在に

 結局のところ、スマートスピーカーが音楽鑑賞に便利なのは、プレイリスト化されていたり、ある雰囲気の曲、ある作曲家の曲などをかけ続けることなどが「ラク」にできるという点に尽きる。

 筆者の場合は、原稿作業などやりたいことがある場合、キーボードやタブレットから手を離すわけにいかないが、スマホの画面などを触る必要もなく、声で命令するだけで聴きたいジャンルの曲が聴けて便利。

 特定の曲を主体的に聴くよりも、“自分用のBGM”として使いたい、まだ聴いたことがないような曲も新たに知ったりできて、様々な曲を聴き流せる。音楽を空気のような当たり前の存在として身近にさせてくれるだろう。

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大和 哲

1968年生まれ東京都出身のライター。88年、パソコン誌「Oh!X」(日本ソフトバンク)にて執筆開始。PCやスマートフォン、モバイル関係のQ&A、用語解説、プログラミング解説などを書く。代表作は「ケータイ用語の基礎知識」(インプレス・ケータイWatch) Oh!X誌上では「オタッキー(で)」とも呼ばれた、その筋人。最終学歴は東海大学漫画研究会。ホームページはhttp://ochada.net(イラスト : 高橋哲史)