レビュー
ソニー「wena wrist active」は、さりげなく使い続けられるスマートウォッチ
2018年5月29日 07:30
ソニーから登場したスマートウォッチ「wena wrist active」を使い始めて約3カ月が経った。スマートフォンとの連携や、心拍計、GPS、電子マネーなどが便利なだけでなく、ある意味“スマートウォッチらしくない”さりげなさを持っているのが、いつも着けていられる理由だと思っている。
これまでスマートウォッチや活動量計などはあまり使っておらず、腕時計は取材など外出時には着けていたものの、会社では外してカバンに入れることも多かった。運動に対してもあまりストイックではない筆者だが、「着けてみれば意識が変わるかも」くらいに思って使い始めたのがきっかけ。そんな、ゆるいユーザーとしての使用感をお伝えしたい。
バンド交換で腕時計をスマート化
腕に着けて生体情報の取得やスマホ連携などができるスマートウォッチは、PC/IT機器メーカー、フィットネス機器ブランド、時計メーカーなどから多くのモデルが登場している。製品によっては、睡眠や運動のデータを取れるのがメリットで、データからストレスを診断してくれたり、Apple Watchのように単体でLTE通信もできるモデルまで、用途に応じて様々な方向に進化を続けている。
ソニーのwena wristが特徴的なのは、時計のヘッド(文字盤の部分)ではなくバンド側にスマートウォッチの機能を持たせていること。バンド部が本体なので、ヘッドは付属ではない。バンドとデザインが合ったwenaの純正ヘッドも多数用意されているが、既に愛用の時計がある場合は、専用アダプタの「エンドピース」をヘッドに着けることで、バンドに装着できるのが他との大きな違いだ。
クラウドファンディングで資金を集めた最初のwena wrist('16年発売)を皮切りに、バンドがレザーのモデルなども登場。その後、新たにGPSや光学式心拍センサーも備えた機種が今回紹介するwena wrist active。名前の通り、ジョギングなどアクティブなシーンにも適したモデルとして3月に発売された。ソニーストア価格は29,880円。
筆者が使っている腕時計は、HAMILTONの「Khaki Field Titanium Auto」で、普段から、付属のバンドではなく、季節や服装などに合わせて時々着け替えていた。その延長のような感覚で、スマートウォッチの機能が使えたらと思い、wena wrist activeを使い始めた。
バンド部に有機ELディスプレイを備え、主な機能として、心拍(脈拍)センサーや、睡眠時間などの確認、Edyなどの電子マネー、GPSによるジョギングやサイクリングのルート記録/確認、スマホへのメール/カレンダー/SNS通知などに対応。こうして挙げると、実はスマートフォンだけあれば使える機能も多いが、手に持つのではなく身に着ける時計だからこそ、「あってよかった」と思えるシーンがいくつかあった。そうしたポイントを紹介したい。
手持ちのヘッドを取り付けて自分仕様のスマートウォッチに
wena wrist activeのパッケージを開けると、本体であるバンド部と22mmエンドピースが収められている。手持ちの時計ヘッドをwena wrist activeに着けたい場合、まずはヘッド側のベルト幅を確認。ヘッドに着けるエンドピースとは、バンドとヘッドを装着するアダプタで、wena wrist activeに付属しているのは22mm。
手持ちの時計のバンド幅も同じサイズならそのエンドピースが使えるが、18mmや20mmなどの場合は、別売エンドピースを購入する必要がある。筆者のKhaki Field Titanium Autoのバンド幅は20mmのため、20mmエンドピース(3,500円)を合わせて購入した。
まずは手首の周りに合わせてバンドの長さを調整。購入時は、エラストマー製のバンドはかなり長いため、ほとんどの場合は切る必要がある。バンドと本体部を繋げているバネ棒を、付属の器具を使って外し、手首の長さに合わせてバンドを切断。長さの目安は説明書に書かれているが、短くしすぎると戻せないので、一度にバッサリ切るよりは、一旦は長めにして装着し、まだ必要であれば外して再び切るというように、慎重に作業するほうがよさそうだ。なお、切りすぎた場合は、エラストマーのバンド部だけを再度購入(ソニーストア価格2,000円)することは可能。
長さがちょうど良くなったら、次は時計のヘッドを装着する。バンド部とは普通の時計のように直接バネ棒で繋げるのではなく、2つのエンドピースをヘッドの上下に装着しておき、それを介してバンドに取り付ける。一般的な時計のバンド交換と同じ要領で、ヘッドから既存のバンドを外し、そこにエンドピースを装着。wenaからヘッドの着脱は器具が不要なため、運動する際などにヘッド部をすぐ外せるのが良い。
ヘッドをwenaに装着するには、エンドピースの裏側にある「―」の形をした突起部分を手前に引っ張って縦「|」に回す。wenaのバンド部にある穴も縦なので、その穴に通した後で再び横(―)へ戻し、上下2点で固定する。
言葉で説明すると面倒に見えるかも知れないが、着け外しの度に金具を2つとも回転させる必要はなく、上下どちらかさえ縦にしておけば、ヘッド部ごと回すことで楽に着けられる。着ける手順は、下の写真のように「1.ヘッドを横向きにして片方のバンド穴にエンドピースを通す」→「2.ヘッドを縦に戻してもう片方の穴にも通す」→「3.縦向きになっているエンドピース金具を横向きにする」の3ステップ。慣れると腕からバンドを外さなくても着脱できるようになった。
今回は、純正以外のヘッドと合わせたので、バンドの方が2mm太いのがどう見えるか気になっていたが、装着後に上から見てもほとんどはみ出しておらず、黒いヘッドとバンドがデザイン的にも違和感なかったので安心した。シリコンラバー製のバンドは、金属やレザーのような高い質感ではないが、手持ちのヘッドがあまりスポーティーではないこともあって、ジャケットを着ている時に合わせてもミスマッチではないと思う。
腕に固定するバックル(留め金)は、両開きと呼ばれる形に近く、折りたたむ場所が2つある。外すときは4カ所ある突起を指で挟むように押す。多くの時計で採用されている片開きに比べると少し手間に感じるが、心拍センサーが手首の正しい位置になるように、この方式にしたとのことだ。
スマートウォッチとしての機能を利用するため、まずはスマホとBluetoothでペアリング。専用アプリ「wena」をApp Storeからダウンロードして、案内に従ってペアリング。表示を1行にするか2行にするか、LINEやTwitterなどの通知をするかどうかなどを選んで初期設定した。
電子マネーが使える「おサイフ機能」は、別アプリの「おサイフリンク」を利用。後からでも登録できるので、最初は設定しないことにした。電子マネーだけでなく、ヨドバシカメラのゴールドポイントカードや、NTTドコモのモバイルdポイントカード、ANAのスマートフォンSKiPサービスにも使えるので、電子マネー決済を使わない人も、ポイントカード代わりに利用できる。
なお、おサイフリンク設定にはiOS端末が必要となるが、東京・新橋にあるソニーショップ テックスタッフでは、同店経由での購入者に対し、無料で設定を行なうサービスを提供しているという。詳細は同店のサイトで掲載されている。
意外に長く使えるバッテリ
wena wrist activeには「通常モード」と「アクティブモード」があり、運動する時はボタンを押すと「アクティブモード」に移行する。ボタンはモード切替と、電源の2つだけとシンプル。
電源のボタンを押すと、ディスプレイが日時/時計→スマホ通知→バッテリ残量/歩数/心拍→Edy残高の順に変わる。長押しでBluetoothオフ、そのまま押し続けると電源オフになる。
心拍数は常に計測するか、アクティブモード時のみ計測するか選べる。当然、心拍測定している方が早くバッテリを消費するが、どちらにしろスマホほど頻繁に充電する必要はなさそうなので、心拍センサーは常にONにしておいた。
スペック上のバッテリ使用時間は、アクティブモードを合計1時間使用、心拍センサー設定をアクティブモード時のみとした場合で最大1週間。常時計測にすると約3日間。アクティブモードのみでの連続動作は最大8時間。GPSの電波状況などで動作時間が短くなる場合がある。運動する頻度も人それぞれだが、アクティブモードにするのが週1回程度の筆者の場合は数日に1回、運動前や入浴時などの短時間だけでも問題なく使えている。
なお、バッテリ残量が20%切るとバイブレーションで通知されるが、そこから心拍センサーをONにしたままでも一晩は使えた。もしバッテリ切れで電源OFFになった状態からでも、5分間の充電で12%、10分で22%まで充電できた。充電はmicroUSBケーブル経由で行なうが、本体との間に付属のアダプタを介して接続する。このアダプタが無いと充電できないので、家と会社など、2カ所以上で充電したい場合はケーブルを持ち歩くか、アダプタ「WA-CC01」(直販2,000円)のみ追加購入することになる。
家の中にいる時やスポーツなどはヘッドを外しておけば軽いので、毎日着けていても違和感はない。3気圧の防水仕様で、日本時計協会(JCWA)のサイトによれば、2~3気圧は「日常生活での汗や洗顔のときの水滴、雨などに耐えられるものですが、水仕事、水上スポーツ、素潜り(スキンダイビング)、潜水には使用しないで下さい」とのこと。普段の生活で気にする必要は無さそうだが、水泳などには使えないようだ。
運動は頑張りすぎなくても使える
正直なところ走るのはあまり好きではないが、運動不足解消のきっかけになるかもしれないと思い、アクティブモードを使ってランニングを始めてみた。
アクティブモードにすると、GPSを捕捉するため数分待機。捕捉した通知が出る前に走りだすと、正確に経路が計れない場合もあるので、準備運動でもしながら待つ。ソニーによれば、GPSがある手首側を上(太陽の方)に向けておくと捕捉が早いとのことだ。場所によって待ち時間は多少変わるが、駐車場など開けたところでは30秒~1分ほどで捕捉できた。この待ち時間は必要なものかもしれないが、住宅街で手首を上に向けてじっとしているのもちょっと変なので、なるべく短い方がありがたい。
一度GPSを捕捉すれば、後は特に意識せず走っていれば、通ったルートが記録され、後からスマホアプリと同期して地図上の走行ルートを確認できる。ただ、屋根のある場所などに長く居ると、その間は地点が取れなくなるので注意したい。
近所にある公園の外周や堤防などを走ってみると、後からどの道を走ったのか地図で確認できた。距離や消費カロリーが分かるのも便利だが、地図で見ると、どれだけ動いたかという実感も湧きやすい。後から地図を見て「次は少し遠回りして別のルートを走ってみよう」などと再検討もできる。
ランニングだけではなく、サイクリングや、ジムなどにあるトレッドミルにも利用できる。運動後にスマホアプリで同期した後、ランニング/自転車/ウォーキング/トレッドミルから選んで指定すると、その場合の消費カロリーなどが表示される。
あまり好きではないとはいえ、走ってみると風が気持ち良く、この調子で「1カ月で体脂肪率が落ちた」などと自慢したかったが、運動不足の40歳が急に頑張りすぎたせいか、3~4日走ると左膝に違和感を覚えたので、無理はしないことにした。その代わり、週1回、出かける近所のプールや、少し離れた映画館へ自転車で行くときにアクティブモードにして、時間や距離、消費カロリーなどはどうなるのかをチェックした。
自転車だと多少長い時間乗っていても、走るのに比べれば負担にならない。これまでよりも少しだけ遠くへ行ってみたくなり、いつもの道を遠回りしてみたりもした。帰ってから、スマホと同期して地図を確認すると、「いつもの川沿いの道をもう少し遠くへ進むと公園があって、この道にもつながるのか」といった発見もあった。
また、いつもは電車に乗っていた1駅分を歩いてみようと思った時も、アクティブモードにすると、その記録を後から確認できる。こうした何気ない生活の変化を残しておけるので、「頑張って運動しよう」と意気込まなくても、何となく体にいいことをしたという小さな満足感に浸れる。
睡眠の計測は、装着した状態での眠りの深さを測るもの。睡眠の開始時間と終了時間を登録しておくと、特に寝る前などに設定しなくても、その時間帯のみ睡眠状態を検出し、その間の体の動きに基づいて、眠りの深さをスマホアプリにグラフで表示できる。また、起きたい時間を指定しておくと、その時間の中で浅い眠りの時にバイブを鳴らすスマートアラームも利用できる。無理に起こされた感じがしないため、すっきりと目覚められる。
ちょっとした時に便利な電子マネー
電子マネー機能については、最初はそれほど頻繁に使わないと思っていたが、腕時計は常に身に着けているので、会社でついサイフを持たずに席を離れてしまった時などにも、対応する自販機や、ほとんどのコンビニ、ドラッグストアなどで買えるのは便利。雨で傘をさしている時や、大きめの荷物を持っている時なども楽に買える。また、履歴を残すように設定しておけば、1カ月でどのように使ったのか記録を後から確認できる。
ただ、店などにあるEdyなどの決済端末は、主にカードやスマホをかざすのを想定しているためか、手首の内側をかざそうとすると、やや不自然に手をひねる形になることも多かった。手の甲側ならある程度対応できるが、特に自販機は右側にEdyをかざすものが多く、左手の時計で手首の内側を向けるのは少し不自然な角度的になった。
最初に開封したときのwena wrist本体には、電子マネーのチップ内蔵部分(有機ELディスプレイの脇)に「この部分をかざす」ことを示すシールが貼ってある。そこを決済用端末に向けるようにかざすと確実に反応するが、使い続けていくうちに、あまり無理してその部分をかざそうとしなくても“何となくその辺り”を向けるとだいたい決済できるようになった。使う側の慣れによってもある程度はカバーできると思う。
なお、地下鉄などの駅では、SuicaやPASMOのような交通系の電子マネーのみ対応している自販機も多いが、wena wristの電子マネーはこれらに非対応。ただ、コンビニやドラッグストアなど、Edyで買える店は多いので、ちょっとした買い物では財布を出さずに買えるようになった。電子マネーとして以外にも、前述したヨドバシカメラのポイントや、ANAの搭乗時に空港でのチェックインをスキップして保安検査へ行ける「スキップサービス」などにも利用できる。
今では、スマートフォンのアプリがポイントカードになるサービスも増えてはいるものの、まだ物理カードが必要な会員サービスも少なくない。サイフの中のカードは少しでも減らしたいので、wena wristで、もっと対応ポイントカードが増えてほしい。例えば、モバイルTポイントや、映画館のマイレージカードなどが対応してくれれば、もっと積極的に色々なサービスを使うきっかけにもなると思う。
LINEやFacebookメッセンジャーは、仕事のちょっとしたやり取りでも使う機会が増えている。wena wristの画面で確認できるのは、相手の名前を含めて20文字程度で、「いいね」などの絵文字も表示されないので内容の全部はわからない。ただ、何か作業中などに通知が来ても、スマホを取り出さずに、今すぐ返信すべきかどうか判断できるのは便利。そのほか、スマホのカレンダーに入れた予定も通知できる。
有機ELディスプレイのほかにLEDも備え、どのアプリの通知なのかをLEDの色で区別することも可能。例えばLINEは緑、Twitterは水色、Facebookは青、カレンダーは白など、個別に設定できる。それぞれ、通知の際にバイブレーションのON/OFFや、振動パターンなども指定可能。
便利な通知機能は色々と持っているものの、一つ残念なのは、直射日光下の屋外ではディスプレイが見づらいこと。コントラスト比の高さが特徴の有機ELディスプレイだが、少し画面が奥まった位置にあるせいか、晴れた日の屋外では手などで影を作らないと表示が見えにくいのは少しもったいない。
その他の通知機能として、1日で目標とする歩数を設定しておくと、それに達したときに「祝! 目標歩数達成」と表示される。ちょっとした機能ではあるが、あまり意識して運動しなくても、不意に通知されると少しうれしいものだ。
アップデートで細かな不満解消も
既報の通り、5月に本体ソフトウェアやアプリのアップデートが行なわれ、従来アクティブモードで対応しているディスプレイの自動表示設定が、通常モードでも利用可能になった。自動表示をONにすると、本体ボタンを押さなくてもディスプレイを見る動作をすると表示される。
また、振動(バイブレーション)の強度設定(強・中・弱)メニューを追加。さらに、通知設定ごとの振動繰り返し回数(1~4回)が設定メニューに加わった。バイブレーションは手首の内側で振動するので、パソコンなどの作業をしていると机に当たって大きな振動になり、びっくりすることもこれまではあったが、振動を弱にするとうるさすぎずに通知には気付ける、ちょうどいいレベルになった。
Bluetooth切断時の通知機能にも対応。スマホから離れすぎた時など、Bluetooth非接続の状態が続くと、指定の時間(5秒~5分)が経った時にバイブレーションで知らせる。
これらのアップデートは、発売後にユーザーからTwitterから寄せられた意見も反映されているとのこと。ユーザーと近い距離感も、wenaブランドの良さの一つと言えそうだ。
頑張りすぎずに着けていられる気軽さで、長く使える
これまでスマートウォッチに興味はあったものの、購入していなかった理由の一つは、気に入ったデザインが出るのを待っていたから。いつもの時計より良いと思えるものがあれば買い替えたかったが、これは好みの問題なので、評判が良いものでも、なかなかコレだとは思えず、機能が豊富だとしても、ヘッド部が大きいものは欲しいと思えなかった。
そんな自分が、時計のヘッド部分を自由に選べるソニーwena wrist activeが気に入ったのは自然な流れだった。普段は「スマートウォッチ着けてます」とあまり主張したく思わないが、どうせ時計をするなら、“ついでに便利な機能も使える”くらいがちょうど良い。wenaを知っている人にだけちょっと見せびらかすこともあるが、その人がもし欲しくなったとしても、ヘッドとの組み合わせパターンが多いため、見た目が完全にかぶる可能性が低いのもうれしい。
スマートウォッチを着けたからといって生活が激変したわけではない。ただ、時計のバンドが変わったことで、運動した記録が残せて後から振り返られたり、コンビニや自販機でサイフやスマホを出す手間を省けるなど、小さな満足感や快適さの積み重ねが、長く使い続けられることにつながっていると思う。
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wena wrist active WA-01A/B |