レビュー

声+丸型画面で使いやすくなった「Echo Spot」。スマートスピーカーの“次”

 2018年のスマートスピーカーのトレンドは「ディスプレイ」のようだ。7月に発売開始したAmazonのEcho Spotをはじめに、LINEのClova Deskは年内発売を予告、またGoogleアシスタントを搭載した「スマートディスプレイ」も海外ではLenovoやJBLらが手掛けており、日本での発売も期待される。

Amazon Echo Spot

 音声対話が特徴のスマートスピーカーだが、ディスプレイを追加したことで何が変わるのか? 丸型のディスプレイを搭載したAmazonのEcho Spotを使いながら検証した。価格は14,980円(税込)。

丸いディスプレイを備えたスマートスピーカー

 丸型のディスプレイを採用しており、昔の卓上時計を思わせる外観デザイン。ディスプレイは2.5型の480×480ドット、最大輝度は350nitsで、タッチパネル対応。外形寸法は104×91×97mm(幅×奥行き×高さ)で、設置面積はEchoとさほど変わらない。重量は419g。電源はACアダプタを利用し、バッテリ駆動には非対応。

 天面にはボリュームボタンとミュートボタン、背面には3.5mmのステレオミニジャックとBluetoothオーディオ出力を装備。Echo Spotで再生した楽曲を外部のスピーカーに出力し、自宅のホームエンターテインメントシステムで楽しめる。

 スピーカー出力は2Wのモノラル。無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n対応だ。

2.5型の円形ディスプレイを装備
側面。斜め上方向にディスプレイが向いている
天面にミュートボタンとボリュームボタン

 パッケージはACアダプタと本体のみのシンプルなもの。そして、セットアップもとてもシンプルだ。これまでのEchoシリーズは、Alexaアプリでセットアップを行なっていたが、Echo Spotでは本体画面の案内に従い、Wi-Fiのパスワードやデバイス名などを入力していくだけで、セットアップが完了する。詳細なセットアップにはAlexaアプリでも行えるが、基本的に家庭内に無線LANルータが本体だけで設置・設定が完了する。これもタッチディスプレイ搭載ならではの恩恵だ。

本体だけでセットアップ可能
デバイス名を設定
設定が終わったらアップデートを開始した
パッケージ

ディスプレイが予想以上に素晴らしい

 Alexaとの対話が特徴のスマートスピーカーだが、Echo Spotの場合は、話しかけなくても天気情報やカレンダーの予定、アレクサの使い方ガイド、話題などが表示される。 また、ディスプレイ部にモーションセンサーを備えており、普段は時計として動作しているが、人の動きを検出すると天気などの情報を表示してくれるなど、特にAlexaに呼びかけなくても、ちょっとした情報ウィンドウとして機能する。

天気予報を表示

 従来のEchoシリーズと同様に「アレクサ、〇〇して」の呼びかけに反応して動作。Echo Spotでは、4つのマイクとビームフォーミング技術、強化されたノイズキャンセレーションによる2世代目の遠隔音声認識技術を採用したとのことで、音楽再生中のAlexaへの音声指示の認識率を高めているという。音声の認識率は確かに良いのだが、「アレクサ」と呼びかけてからの反応は、通常のEchoのほうが早いようだ。

 なお、複数のEchoデバイスを利用している場合でも、同一アカウントであれば、Echo空間認識技術により一番近いEchoに反応する

 Alexaに天気を尋ねると、今日の予報だけでなく、週間予報もディスプレイ上に表示される。これまではスマホアプリで確認していたものが、音声だけで確認できるようになるので、かなり便利だ。「雷注意報」などの現在地の警報情報も表示してくれる。

雷注意報

 音楽再生時でも、これまでのEchoシリーズでは、「いい曲だな」と思った時に、「アレクサ、これはなんて曲」などと聞いたり、あるいはアプリでチェックする必要があった。しかし、Echo Spotではディスプレイに曲名にジャケット、そして楽曲によっては歌詞まで表示できるようになったので、従来より間違いなく使いやすくなっている。

 ちなみに、丸型のディスプレイはホーム画面の変更も可能。インテリアになじむような壁紙が用意されるほか、スマホ内の写真に変更することもできる。

ホーム画面を変更

歌詞表示にAlexa Castなど音楽機能が大幅強化。音質はそれなり

 まずは、スマートスピーカーとしての機能といえる音楽再生について。Echoシリーズでは、Amazon Musicで購入した楽曲のほか、Amazon Prime MusicやAmazon Music Unlimited、あるいはdヒッツ powered by レコチョクやうたパスなどの有料サービスと契約することで、聞き放題で音楽を楽しめる。

 Spotでもあまり変わらないのでは? と思うかもしれないが、前述のように画面にジャケットや曲名などが表示され、よりわかりやすくなった。加えて、Echo Spotの発売にあわせて、AlexaやEchoの音楽対応が強化された。ひとつは、ディスプレイへの「歌詞表示」対応、そしてもう一つが「Alexa Cast(キャスト)」だ。

曲名をディスプレイで確認できる

 いずれもAmazon Musicアプリとの連携強化により実現するものだが、まずわかりやすいのは「歌詞表示」だ。音楽再生中に一部楽曲の歌詞の表示が行なえる。

 歌詞対応楽曲の再生画面内の「歌詞」アイコンから確認でき、曲の進行に合わせて歌詞も同期して表示されるため、簡易カラオケ的にも活用できそうだ。Amazon Musicアプリでも確認できるが、視点内のディスプレイに表示されるのでかなりいい。Prime Musicの邦楽の多くが歌詞対応しており、かなり実用的だ。

歌詞表示に対応

 そして、重要な機能強化が「Alexa Cast」だ。

 Alexa Castは、Amazon Musicアプリ(iOS/Android)を使って、Amazon Alexa搭載デバイスへの音楽再生をコントロールできる機能。Amazon Music UnlimitedまたはPrime Music会員限定の機能となる。

Amazon Musicアプリで再生中の曲の出力先として、Echoスピーカーを選択

 これまでのEchoシリーズは、「アレクサ、人気の音楽を再生」などで、自動プレイリストを再生できたが、基本的にテーマやジャンルごとの[プレイリスト]や[ラジオ]を再生する形となっていた。

 Alexa Cast対応により、Amazon Musicで選曲し、好みの曲やアルバムの再生が可能になった。これまでは“Alexaまかせ”で選曲していたものが、自分の好みを直接反映した音楽再生が可能にになる。要するにオンデマンド再生機能が加わったのだ。スマホで音楽を聴く時とほぼ同様の操作がEchoスピーカーでも行なえるようになった。

Alexa Castでスマホからも選曲

 GoogleのChromecastやSpotifyのSpotify Connectが実現していた、アプリからのデバイスコントロールのAmazon版ともいえる機能がAlexa Cast。Google HomeとCast対応アプリとほぼ同じ機能ではあるが、Echoシリーズの弱点が埋められたというのは大きなポイントだろう。

 ただし、今のところ対応アプリはAmazon Musicのみ。海外ではSpotify等にも対応しているようなので、ほかの音楽配信サービスでのAlexa Cast対応も希望してくれると、より魅力は高まるのだが……。

 音楽用スピーカーとしては、ウーファを内蔵したAmazon Echoに比べると、低音が弱く、音の広がりも不足。やや物足りなさを感じる。ポップスやボーカルものをBGM的に聞く分にはバランスは悪くないが、音に拘るのであれば外部のスピーカーとの連携を検討したり、音楽用に別のスピーカーを用意してもいいだろう。

 ただし、Echo Spotの背面にはアナログ音声出力端子が用意されているので、外部サウンドシステムへのオーディオ出力も可能だ。今回は、Olasonicのスピーカー「IA-BT7」にEcho Spotから出力してみた。

Olasonic「IA-BT7」と有線ケーブル接続

 IA-B7は、110mm径の大口径サブウーファとパッシブラジエーター、57mm径のフルレンジ×2というユニット構成。総合出力は40WとハイパワーなBluetoothスピーカーだが、アナログ音声入力も備えている。

 早速つないでみたところ、まずAlexaの応答音が良くて笑ってしまう。「今日は雷雨でしょう」という言葉もすごく滑舌がよくなったように感じる(音声合成なのだが)。

 そして音質ももちろんよい。ポリスの「見つめていたい」の印象的なベースが、Echo Spotでは微かに聞こえる程度なのだが、Olasonic IA-BT7に切り替えると、がっしりと楽曲を支える太いベースラインが強烈な印象を残す。IA-BT7は高出力のスピーカーだが、ボリュームを絞っていてもその低域の豊かさは明らか。

 DAOKO×米津玄師の「打上花火」は、Echo Spotでもボーカルはそれなりにバランスよく聞けるが、IA-BT7に切り替えると冒頭のキックの重量感が出て、ボーカルもさらに立体的に感じられる。Echo SpotはBGMには悪くないが、きちんと音楽を聞きたいという場合は、他のスピーカーとの連携も検討したい。

 またEcho Spotではマルチルームミュージック機能も搭載。複数のEchoをグループ化して各部屋で同時に音楽ストリーミングできるのも面白い。リビングでも寝室でも家中同じ音が聞ける。レジューム再生的な感じだ。

ニュースも見られ、タイマーは便利。ショッピングは再購入が実用的

 ディスプレイがあるので動画再生を期待する人もいるかもしれないが、現時点ではPrime Videoなどの映像配信サービスには対応していない。Amazonでも「検討中」とのことだが、海外でもPrime Videoには対応しておらず、そもそもEcho Spotの丸型ディスプレイで映画やドラマを見るのがよいのか? というのは疑問ではある。

 ただし、機能追加される「スキル」では、動画も再生できる。例えばNHKニュースのスキルは、従来のEchoではラジオ音声だったのだが、Echo Spotでは動画ニュースになっている。テレビのNHKニュースのような感覚で再生できるので便利だし、わかりやすい。

NHKニュースをEcho Spotで見る

 丸い画面に四隅に大きく黒帯を入れる形なので、画面サイズとしては2型にも満たないはずだが、それでも十分。なお再生中に「拡大して」とAlexaに呼びかけて、ズーム表示も可能だ。他にもTOKYO MXの「エムキャス」などの動画対応スキルが用意されている。

 タイマーやアラーム、リマインダーの使い勝手は、ディスプレイの追加で明らかに向上した。「Alexa、ラーメンタイマー 1分」で、ラーメンという名称で1分のタイマーが動作するが、その残り時間が画面に表示され、最後の10秒はカウントダウンを行なってくれる。

タイマーの残り時間がわかるのが便利

 特に長時間のタイマーだと、そろそろ? という頃に呼びかけて残り時間を確認することも多かったので、「ディスプレイを見るだけ」というのは気楽だ。また、2つ以上のタイマーも設定可能となっている。

 タイマー、アラームは声で「アラーム止めて」など命令するほか、画面の下から上にフリックして停止できる。

 デザイン的にもちょうどいいので、寝室用の目覚まし時計にしたいところだが、現時点では「毎日7時」や「平日〇〇時」といった細かな設定やスヌーズ機能が用意されていないので難しそうだ。この点は今後のアップデートに期待したいところだ。

 ショッピングの音声検索にも対応。Amazonプライム会員であれば、Echo SpotだけでAmazonでのショッピングを完了できる。

「水が欲しい」などと声をかけると、Amazon.co.jpの検索で上位に入る「飲料水」の商品を表示し、商品名や価格を読み上げる。3製品を読み上げたあと10製品までの候補が表示され、ディスプレイをスワイプしながら確認、購入できる。

「水がほしい」で飲料水をおすすめ

 ちなみに、「テレビがほしい」とお願いすると、まずFire TVを表示。その後にハイセンスの32型テレビなどを順次表示する。基本的にAmazonプライム対象製品で、各ジャンルのおすすめをそのまま表示しており、上位はAmazonのWeb検索の結果と同じだという。

テレビがほしいでFire TVなどをおすすめ

 詳細は表示できないので、細かい仕様を確認したい製品の購入には向かないが、洗剤や日用品など、毎回同じものを買う場合や、あらかじめ買うものが決まっている場合は、Echo Spotだけで簡単に購入できる。なお、一度購入した製品は[再購入]として優先的に表示されるので、再注文は簡単だ。

再注文が上位に表示されたので、かんたんに注文できる

 これまでのEchoと比べると、画面で製品や価格が確認できるので、注文時に安心感がある。テレビや大型家電などを買うのはやや怖い気もするが、日用品の再購入などは実用的だ。将来的には「そろそろ洗剤が無くなりそうです」的なプッシュ通知も、Echo Spotで行なわれるようになるかもしれない。

画面対応のスキルも増加

 Philips Hueなどの対応機器と連携し、部屋の照明のオン・オフなどのスマートホーム活用も可能。また、Echoの機能を拡張する「スキル」も数多く用意されており、ラジコのような定番スキルからニュースなど、機能追加が行なえる。

 また、ディスプレイを使ったEcho Spot用のスキルも徐々に増えており、「ぐるなび」などの店舗検索、「JTBホテル」によるホテル予約、「全国タクシー」によるタクシー配車、「DELISH KITCHENの簡単レシピ検索」や「クックパッド」のレシピ動画などを追加できる。

次はカメラだ! ビデオ通話にも対応予定

 Echo Spotではフロントカメラを備えており、写真を撮影してプライムフォトへアップロードも可能になる。ただし、現時点ではカメラ機能はまだ利用できない。なお、プライム・フォトに保存した写真を、Echo Spotのホーム画面に指定したり、スライドショーで表示することは現時点でも可能となっている。

画面の上部にカメラを装備

 ネットギアのネットワークカメラ「Arlo」と連携し、Echo Spotを通じて宅内外のネットワークカメラとして利用可能。また、Amazon自身も「Amazonデバイスの次の製品はカメラです」(Amazonデバイス事業責任者のデイブ・リンプ氏)と認めているように、今後Amazonのカメラと連携した機能は多数追加されるだろう。

ネットギアの「Arlo」でネットワークカメラ対応

 Echo Spotでは、今後コミュニケーション機能も追加予定。2台のEcho Spot同士でのビデオ・音声通話や、メッセージ送受信、呼びかけ機能などを追加する。「アレクサ、連絡して」の後に「おばあちゃん」などと通話相手を指定し、2台のEcho間でビデオ通話が行なえるようになるとのこと。

Echo Spot間のビデオ通話にも対応予定

 ちなみに、8月12日時点で「アレクサ、連絡して」と呼びかけると「すみません、この機能はまだサポートしていません」と返答する。なお、コミュニケーションを行なうEcho端末の設定はAlexaアプリ上で行なうとのこと。

 また、EchoシリーズとEcho SpotやAlexaアプリでのメッセージ送信にも対応予定。テキストメッセージだけでなくボイスメールも送信可能となる。

 これらのコミュニケーション機能の対応時期は未定だが、「できるだけだけ早く提供したい」とのこと。パッケージ内の「使い方例」にも「アレクサ、お父さんにかけて」「アレクサ、その呼び出しととって」、「アレクサ、お母さんにメッセージ送って」などの文例があるので、そう遠くはなさそうだ。

 またEchoシリーズでは、今後AlexaからのFire TVコントロールにも対応予定。こうした機能強化にも期待したいところだ。

スマートスピーカーの次

 スマートスピーカーにディスプレイがついた“だけ”ではあるが、画面を確認しながら操作が行なえるようになったことで、操作の安心感は向上する。音声とディスプレイのどちらの操作が良い、というのではなく、それぞれが擦り合わせられて、より便利な体験が生まれてきていると感じる。

 音声操作では、手を使わなくても良いというメリットがあるが、すぐにレスポンスしなければ対話にならないし、応答をきちんと聞いていないといけない。ディスプレイ表示があることで、1分後でも内容確認できるし、伝達される情報量も多くなる。操作の方法も応答の時間軸も違うので、それぞれの良さがEcho Spot上でうまく融合されている。

 また音楽の歌詞表示のような付加機能も追加され、ディスプレイ付きという魅力が存分に出てきている。

 14,980円という価格は、Echoの11,980円やEcho Dotの5,980円より高価だ。ただし、使いやすさやEcho Spotでしかできない付加価値(ショッピングのわかりやすさ、歌詞表示、タイマー、今後のカメラや通話対応)などを考えると、十分に魅力的に思える。

 クラウドの音声アシスタントと連携するスピーカーとして、定着しつつある「スマートスピーカー」だが、Eco Spotを使っていると将来的にはほとんどのスマートスピーカーにディスプレイがついていくのでは? と感じる。ディスプレイがあることで便利になるというシーンがとても多いのだ。「スマートスピーカー」という名称も来年ぐらいには別の呼び方になっているかもしれない。

Amazonで購入
Amazon Echo Spot

臼田勤哉