レビュー

32TBタイムシフト録画で快適レグザライフ。新「みるコレ」が超便利

好きな映画やアニメ、新4K放送をとにかくキレイな画質で観たい。東芝レグザの4K有機ELテレビ「55X920」は、筆者のそんな願いを叶えてくれた。さらに、全録機能「タイムシフトマシン」に思わず32TB HDDをぶち込んだので、今年の4月期ドラマ/アニメの話題作は、ほぼすべて手元に残せている。録画予約不要な上に、録れた番組をジャンルやテーマ毎に自動整理してくれて“録りっ放し”になりにくいことも、便利のひと言に尽きる。

REGZA 55X920

2月に掲載した記事ではHDDのセットアップから全録の設定までが中心だった。今回は録画番組を見るための便利な機能や実際の楽しみ方をお伝えしたい。

地デジを予約無しでまるごとDR録画。約2カ月半HDDにキープ

東芝は全録「タイムシフトマシン」機能をテレビとBDレコーダーで展開しており、筆者はテレビの方で利用中だ。レグザで受信した最大6chの地デジ番組を放送と同じDR画質で、USB HDD(別売)に容量目一杯使って自動録画し続ける。55X920は背面にタイムシフト録画専用のUSB 3.0×2を備えており、対応する純正USB HDDは現在、最大5TB(THD-500D2、実売54,380円)までラインナップされている。

タイムシフトマシンの概要

実は東芝によると、メーカー保証対象外となるが、HDDケースなどを活用することでUSB 1基あたり最大16TBのHDDが利用可能だという。また、16TBのUSB HDDを2台用意してUSB2基に接続しても「設計上はタイムシフトマシンが動作するはず」と説明している。「本当に32TB全録なんてできるのか?」と、録画マニアなら期待を寄せつつも首を傾げることだろう。筆者もそうだった。

そこで今年1月下旬、編集部の総力を挙げて32TB分のHDDをかき集め、自宅の55X920でタイムシフト録画を試すことにした。用意したのは、24時間365日常時稼働向けの高性能HDD「ウエスタンデジタル WD Red 8TB」(WD80EFAX)×4台と、RAID 0対応のHDDケース×2台。レグザで利用するまでの手順や設定方法については以前の記事を参照して欲しいが、結果的に、無事に32TB HDDの大容量ストレージを全録用として認識させ、タイムシフトマシンを正常に稼働させることができた。

計32TBのHDDを納めたHDDケースを自宅に設置

全録というと一日中ずっと録り続けるイメージがあったが、実際はかなり柔軟に録画時間を設定でき、後から変更も可能だ。筆者は、デフォルトの録画時間設定である「月~金:午後7時~翌午前1時/土・日:午前8時~翌午前1時」をカスタムし、気になる深夜アニメを見逃さないように午前2時まで録画するように変更した。

現在の筆者宅のタイムシフト録画する時間帯設定

約4カ月の間、我が家の55X920は問題なく全録し続けており、地デジ番組に関しては見たい番組を録画予約する必要はまったく無くなった。

6月上旬時点で、3月中旬頃からの録画時間帯の番組がすべてUSB HDDに録画されている。毎日古い番組が消去されて順次新しい番組に入れ替わるが、気になる番組はタイムシフトマシンとは別の、通常録画用USB HDDに保存できる。「4月期のあのアニメ、ネットで話題になってるけど録画予約してなかった……」と肩を落とすこともなく、配信番組だと予期せず起こり得る「配信終了」の四文字に怯えることもない。素晴らしい。

番組数が膨大なので、操作時のレスポンスは“キビキビサクサク”とまでは言わないが、通常のレコーダーと比べて遅すぎるということもなく、個人的には問題なく使えている。

6月3日時点で、3月19日頃の地デジ6ch分の録画番組がUSB HDDに残っている

最近、ネットで「面白い」と聞いてタイムシフトマシンで最初から見始めたのは、人類が火星に移り住んだ時代を舞台に、ミュージシャンを夢見る2人の少女を描く4月期TVアニメ「キャロル&チューズデイ」。ひょんなことでカッパにされてしまった中学生たちが人間の姿に戻るために奮闘する様を描く、幾原邦彦監督の新作アニメ「さらざんまい」や、原作コミックに忠実な描写と“飯テロ”度合いの高さが注目の深夜ドラマ「きのう何食べた?」も面白い。

キャロル&チューズデイ
(C)ボンズ・渡辺信一郎/キャロル&チューズデイ製作委員会
さらざんまい
(C)イクニラッパー/シリコマンダーズ

NHKも面白い番組が増えていて要注目だ。NHKといえばニュース以外では、どちらかといえばお堅い内容やファミリー向けが多いイメージだったが、最近は「あれ、こんな“柔らかい”内容の番組もやるんだ」という意外なものも多い。例えば、最近では今年40周年を迎える「機動戦士ガンダム」が生まれた経緯を数々の証言をもとに描いた番組「ガンダム誕生秘話」や、アムロ・レイ役の古谷徹らが出演した「#声優ぷらす」などが注目を集めた。全録の対象チャンネルにはNHKもぜひ加えておきたい。

なお、タイムシフトマシンの録画チャンネルは後から変更できるが、それまでの録画データはすべて消去されてしまう。タイムシフト録画を始める前には、どのチャンネルを全録するか入念に検討したい。

タイムシフトマシンの電気代に関しては、筆者宅では様々な電気機器を使っているので一概には言えないが、この数カ月で驚くほど電気代が跳ね上がることはなかった。ちなみに以前、消費電力を測って見積もったところ、1カ月(4週間)で約500円、1年(52週間)で約6,490円かかるという試算になった。

なお、今回使ったタイムシフト録画用HDD(WD Red 8TB×4、HDDケース×2)の価格は約13万5,000円('19年2月時点)。全録レコーダーが買えてしまう額ではあるが、この容量に肩を並べる全録機は東芝には今のところ存在しない。

今回はX920で試したが、東芝では「Z20X以降のREGZAのテレビは録画のプラットフォームは基本的に同じなので、(32TB HDDでのタイムシフト録画も)できるのでは」としており、例えば有機EL REGZAのX910シリーズや、液晶REGZAのZ720X、Z810Xなどのユーザーは、32TB HDDを用意できれば“特別なタイムシフトマシン”を実現できる可能性が高い。ただし繰り返すが、これはメーカー保証対象外となるので、試す場合は気をつけて欲しい。

新「みるコレ」がタイムシフト録画を見やすく整理&レコメンド

「HDD容量が32TBもあると、録画番組が多すぎて見たいものが探せなくなるのでは?」と思うかもしれない。だが、レグザにはタイムシフト録画した番組を見やすくする以下のような機能が用意されており、HDD目一杯に録りためた大量の番組も効率よく探して視聴できるようになっている。

  • 「過去番組表」
  • 「ざんまいスマートアクセス」
  • 大幅アップデートされた「みるコレ」

まずは「過去番組表」だ。リモコンの過去番組表ボタンを押すと、通常の電子番組表と同じ枠組みで、録画済み(放送終了後)の全ての番組が表示され、そこから見たい番組を選んで再生できる。見たい番組がどのチャンネルで何時頃に放送されたか、おおよその見当が付いていれば、お目当てを探すのはそれほど難しくない。筆者もタイムシフトマシンを使い始めの頃は、帰宅してテレビをつけたらまず過去番組表を表示させて、今日一日の録画番組を探すのを楽しんでいた。

リモコンの過去番組表ボタンでテレビに表示させたところ

「ざんまいスマートアクセス」も便利だ。例えば放送中の番組を見ている時に、リモコンのざんまいボタンを押すと、画面下に録画番組のサムネイルが横一列に並んで表示され、十字キーで選んで再生できる。「ドラマ」や「アニメ」など、ジャンルや自分の興味(レグザでよく見ている番組ジャンル)にあわせて整理されており、見たい番組を探しやすい。

ざんまい機能では音声検索も可能で、人名やキーワードをリモコンの内蔵マイクに向かって話しかけるだけで、タイトルや番組情報が一致するものをリストアップして表示する。番組の放送チャンネル/時間がはっきりしなくても、出演者やタイトルの一部が分かれば、ある程度絞り込める。

ざんまいスマートアクセス

そしてもうひとつ、筆者が最近よく使っているのが「みるコレ」だ。東芝が以前からレグザのテレビ向けに提供しているネットワークサービスで、話題の番組や特番、YouTube動画など、見逃せないコンテンツを自動でまとめて“パック”化してくれる「みるコレパック」や、番組の中のオープニング/本編/CM/エンディングを自動でリストアップし、選ぶだけでに簡単に番組の見たいシーンに飛べる「シーンリスト」など、様々な機能を備えている。

この「みるコレ」が、新しい4K液晶テレビ「REGZA Z730X」シリーズの6月上旬発売に合わせてアップデート。ユーザーインターフェイスが新しいデザインに刷新されるほか、新たな「AIレコメンドシステム」により、オススメ番組のレコメンド精度が向上するなど、大幅に機能強化された。4K放送を対象とした「おまかせ録画」にも対応する。

一新された「みるコレ」の画面

新しくなった「みるコレ」はX920でも利用できている。画面は、見た目が従来のWindows 8.1のようなタイルUIから、スマートテレビのYouTubeアプリっぽい雰囲気に変わり、個人的には親しみやすくなったと感じる。みるコレの“入口”、もしくはスマホなどで言うところの“ホーム画面”を見やすく整理したようなかたちだ。

左側のバーで目的のページに切り替え、中央のメイン画面を縦横スクロールで操作する
従来のみるコレ画面のイメージ(X920では、Amazon Prime Videoのアイコンは表示されない)

これまでも、みるコレは「録画番組を見る」というより「番組を選んでテレビを見る」という、映像配信サービスの使い勝手に似ていると感じていたが、その印象がより強まった。ちなみに、シーンリストやみるコレパックなどの画面に遷移すると、従来とほぼ同じデザインの画面が出てくるので迷わず使える。

みるコレの機能のひとつ、「シーンリスト」の画面

左側のバーには、上から「お気に入り」、「これからの注目番組」、「おすすめの番組」というボタンが並び、リモコンで画面を切り替えて使う。最上段には検索窓を用意。録画番組リストを呼び出すボタンなどはバーの下の方に配置されているが、基本的には上3つのボタンだけで事足りる。

「お気に入り」には、自分でお気に入り追加した「みるコレパック」などの番組がまとめて並んで表示され、リモコンで縦横スクロール操作するだけで簡単に選べる。タイムシフト録画した番組には、それを表わすオレンジの時計マークが付くので、通常録画番組と見分けが付きやすい。

タイムシフト録画した番組にはオレンジの時計マークが付く

「これからの注目番組」では今後放送される注目番組を、ユーザーの視聴傾向や番組の人気度合いを元に表示する。

「これからの注目番組」の画面

「おすすめの番組」では、これまでクラウドに蓄積されたレグザユーザーの膨大な視聴データに基づき、進化した“みるコレAI”がユーザーの関心や視聴パターンに合わせて番組をレコメンド。筆者の場合は、最近見たドラマやアニメを中心に、オススメ番組リストが構成され、おおむね私の好みに合っている。タイムシフト録画した番組を最初にチェックする“ホーム画面”として使いやすくなったことを実感した。

余談だが、みるコレパックには多種多様なパックが用意されており、話題作やドラマ、アニメ、音楽番組、サッカーなどに留まらず、ufotableやP.A.Worksといった「アニメ制作スタジオ」、新房昭之や水島精二など「アニメ監督」別のパックなど、マニアックな切り口が多数用意されているのが面白い。

アニメ制作スタジオのパック。4月期TVアニメ「さらざんまい」を制作しているMAPPA/ラパントラックはいずれ追加されるのだろうか

これらのパックで好きなものを選んでお気に入り登録すると、みるコレのトップ画面で録画番組やYouTube動画などがリストアップされるようになり、気になるコンテンツを探す手間が省ける。また、通常録画用のUSB HDDに、パックにまとめられた放送番組を「おまかせ録画」させることも可能だ。これなら、タイムシフト録画のようにいずれ消されることもなく、気に入った番組を手元に残しておける。とにかく至れり尽くせり感が凄い。

どうしてもBlu-rayに残したければ、レグザのレコーダー(別売)にネットワーク経由でBlu-rayに焼いて保存できる仕組みもある。

ufotableのパックでは4月期アニメ「鬼滅の刃」の録画番組に加えて、YouTubeの関連動画もまとまって表示される

みるコレパックの一部では、まれに録画番組がすべて網羅されなかったり、(おそらく放送延長など局側の都合によって)別の番組が混じってしまうことがあるようだ。ただ、サービスの裏側では常に情報が更新されているようで、例えば筆者宅ではTVアニメ「キャロル&チューズデイ」のみるコレパックのうち、以前は抜けていて表示されなかった1・2話が、いつの間にか表示されるようになった。執筆時点ではドラマ「きのう何食べた?」の4話が(録画自体はされているにも関わらず)、みるコレパックではまったく別の番組になっているので、これも改善されると嬉しいのだが……。

ドラマ「きのう何食べた?」のみるコレパック。4話(4月27日放送回)が表示されない代わりに、まったく違う番組が表示されている

みるコレの画面下に、これまで常に表示されていたU-NEXTやDAZN、ひかりTV 4K、スカパー! オンデマンドなどの動画配信サービスのアイコンは、現在は別ページ(「動画配信サービス/人気の動画」)にまとめられ、トップ画面から少し遠くなった。しかし、例えばniconicoアプリをみるコレから一度起動すると、次からは左バーのアイコンリスト(「オススメの動画配信サービス」)に追加され、ページを切り替えなくても左バー上で操作が完結するようになった。新しいみるコレの画面は、使い込むことでユーザーの利用状況に合わせてボタン配置を変える仕組みのようだ。

「動画配信サービス/人気の動画」の画面

そして実は、YouTubeはみるコレ画面でリモコンの赤ボタンを押すとダイレクトにアクセスできる。Netflixについても、X920のリモコンには専用ボタンがある。YouTube/Netflixに関しては、アクセスはしやすい。

全録の魅力+新「みるコレ」=快適録画ライフ

「常時録画しておいて後から気になる番組を探せる」全録の良さを体験すると、もう通常のレコーダーには戻れない。番組改編期が来るたびに、レコーダーのHDD残容量とにらめっこしながら番組を消したりBlu-rayに移したりしていた頃の面倒臭さからほぼ解放された。また、録画番組を見たいときにレコーダーを起動してテレビの入力を切り替える手間がかからないのも、テレビの全録機能を使うメリットといえる。

映像配信サービスが多くの人に使われるようになっても、テレビはまだまだ大きな影響力を持っている。筆者も「帰宅中に電車でスマホを見ていたら、その日にテレビで放送された番組(あるいはニュース)がネットで話題に。ちょっと見てみたいが、ノーマークだったので録画していなかった」なんてことが、タイムシフトマシンを使う前には時々あった。今では民放なら「TVer」、NHKなら「NHKオンデマンド」というように見逃し配信サービスが充実しているが、配信ページをチェックしているうちに「出先で視聴料金と貴重なデータ通信量を使ってまで……」と、見たい気持ちがスッと冷めてしまう。そんな時、自宅にタイムシフトマシンがあれば、見逃し配信に頼る必要は無い。気になった番組が(ほぼいつでも)見放題なのだ。

タイムシフトマシンは“とにかく全部録る”だけでなく、「大量の録画番組をいかに効率よくユーザーに見てもらうか」を考えた様々なアプローチを用意しつつ、ブラッシュアップしてきているところが好印象。アップデートされたみるコレの使い勝手が、個人的にかなり良くなっていたので、今後はみるコレで録画番組を存分に楽しみたいと思う。

庄司亮一