プレイバック2018

有機EL REGZAで自宅初4K。「リズと青い鳥」で散財 by 編集部:庄司

この冬、ついに4Kテレビを買った。購入したのは東芝の有機ELテレビ「REGZA 55X920」。画質は最高で使い勝手も良く、高かったけれど非常に満足のいく買い物となった。

東芝REGZA「55X920」

これまではHD解像度の古い23型液晶テレビが1台あり、PCディスプレイとして使っている三菱電機の23型フルHD液晶ディスプレイにBDレコーダーをHDMI接続してテレビ代わりにすることも多かった。特に大きな不満もなかったが、観たいUltra HD Blu-rayソフトが増えてきて、この春にシャープのUHD BD対応レコーダー「BD-UT2200」を買ったことや、「新4K放送を観てみたい」という気持ちが高まり、4Kテレビを探していた。

当初は部屋の間取りから考えて50型まで置けると判断し、各社の4K液晶テレビを検討。だが、家電量販店に足繁く通ううち、有機ELテレビの圧倒的な画質に目を奪われた。

UHD BDや4Kの映像配信作品ばかりでなく地デジ放送も観るので、その画質も重要だ。見比べると東芝REGZA X920の映像はクリアで頭ひとつ抜けた印象だった。BS4Kチューナーをはじめから内蔵し、タイムシフトマシン搭載で“テレビを買ったらBS4K録画機能が付いてくる”点も、REGZAを選ぶ大きなメリットと感じた。極めてマニアックだが、今見ている映像の信号情報がチェックできる機能が付いているのも面白い。今のところ特に有効な使い方ができているわけではないが……。

55X920で、4K/HDR番組を受信しているところ

実はテレビを自分で買うのは初めてで、今の液晶テレビはひとり暮らしを始めた時にお下がりでもらったもの。いきなりフラッグシップモデルを買うのか? と迷う気持ちもあったけれど、良いものを長く使い続けるならばこの選択に間違いは無いハズ。思い切って部屋のレイアウトをガラッと変え、55型テレビが入るスペースを確保した。大きなテレビ台を買って部屋が圧迫されるのは避けたいので、ロータイプの壁寄せスタンド「WALL TV STAND V2」を用意し、55X920を買った。

購入時の55X920の価格は約33万円で、付与された特典ポイント等々を考えると実質295,000円となった。販売開始当初は実売45万円前後だが、新4K放送開始直前ということで量販店による値下げもあり、11月時点の値頃感は高かった。

テレビが来る前に、壁寄せスタンドを仮組み。片づけ中に壁コンセント(写真左奥)の差し込み口が経年劣化で割れているのを発見したが、修理業者を呼んで事なきを得た

新4K放送が始まった12月1日夕方に、設置が無事完了。専用のBS/CS 4K視聴チップは要申し込みで別送になる、と店員から聞かされていたが、開梱したら既に装着された状態だったので手間が省けた。

筆者宅は築20年以上の古いアパートだが、本体アップデートの後に壁のBSアンテナ端子にケーブルを繋いだところ、NHK BS4Kや民放キー局の右旋チャンネルは受信できた。左旋チャンネルはいずれ検討したい。

「BS/CS 4K視聴チップ」は、開梱時にあらかじめ装着された状態だった
BS4K本放送対応のアップデートも問題なく完了

新4K放送を実際に観ると、圧倒的な高画質に驚く。自然風景や建物の緻密さ、オーケストラ番組の奏者たちの肌が汗ばんでいる様子、楽器の金属や木材の質感の違いもしっかり見え、月並みの表現だが“まるでその場で本物を観ているかのよう”。テロップの文字の輪郭もくっきり見やすく、ノイズなどのざわつきが目について邪魔に感じることもない。

12月1日にNHK BS4Kで放送されたドキュメンタリー「デナリ大滑降 完全版」を観たが、雪が積もった場所の白さ、雪面が凍結したアイスバーンの青さや固そうな質感がHDRで非常に綺麗に描かれ、北米最高峰の雪山デナリの絶景を命がけで滑り降りる冒険者たちのFPV映像には、肝を潰しかけた。人生初の自宅で観る大画面。その迫力は凄まじい。

お店でも見てはいたけれど、普段暮らしている室内で見る4K画質は、やはり感動のひと言に尽きる。ひとつだけ、表示面はグレア(光沢)加工なので電源オフ時の周囲の映り込みが割と気になるが……。導入初日は一日中興奮していて、「うわぁデカいな」、「(映像が)スゴい」と語彙力の足りないひとり言を漏らしながらテレビの前をうろついていた。これまでTV番組をリアルタイムで観るのはニュース程度だったが、今では家に帰って4K番組を観るのが日課になりつつある。

京アニ映画「リズと青い鳥」を鑑賞。楽器の描写がリアル

高画質な有機ELテレビが手に届く価格帯になったこと、新4K放送が始まるタイミングであったことも、55X920を買う十分な理由になったが、実はもうひとつ理由がある。京都アニメーション(京アニ)による今年の映画「リズと青い鳥」のBlu-rayを、ぜひ大画面で観てみたかったのだ。まさに、テレビの買い時は見たいコンテンツがあるとき、である。

「リズと青い鳥」は高校の吹奏楽部を題材にした作品で、TVアニメ「響け! ユーフォニアム」のスピンオフにあたる。数十名のメンバーによる楽器演奏の動きをリアルに描き出し、音の表現も素晴らしい。個人的に今年のヒット作だ。視聴用/保管用/人に貸す用と、オタクならでは(?)のBlu-ray三枚買いをしてしまった。

UHD BDではなく通常のBlu-rayなのだが、55X920に繋いだBD-UT2200で再生すると、キャラクターや金管楽器、木管楽器などの輪郭がギザギザになることもなく非常に綺麗。作画の丁寧さに改めて驚かされた。映像の暗い部分も引き締まり、水彩画タッチの淡い色表現なども見事だ。

(C)武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

物語は、武田綾乃の原作小説「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章」から、オーボエを担当する鎧塚みぞれ(CV:種﨑敦美)と、フルートを担当する傘木希美(CV:東山奈央)の関係にフォーカス。

高三の彼女たちは、最後の出場となるコンクールで金賞獲得を目指して練習にいそしむ日々。とある理由で、高三までコンクールに出場できなかった希美は、その高い演奏能力からソロを任されて張り切っている。一方、みぞれにとってコンクールの到来は、友人の希美と楽器の練習を通して一緒にいられた日々の終わりを意味する。自由曲はフルートとオーボエ、2人のソロが噛み合わなければならないのに、「本番なんて一生こなくていい」とひとり言を漏らすみぞれ。すれ違いの不協和音に終止符は打てるのか。童話を下敷きにした長編楽曲「リズと青い鳥」を軸に、部活少女たちの繊細で儚い一瞬を描いている。

キャラの心理を台詞で語らず、仕草で描写するシーンが多かったのも、京アニ作品らしい特徴。そのすべてがト書きで載っている台本が付いた初回限定版Blu-rayが用意されており、現在もAmazonなどで購入できる。作品理解の一助になりそうだが、本作が好きな濃いファンの声をネットで見ていると、台本はなかなかに“しんどい”内容であったようだ。

以前、サウンドトラックのレビューでも書いたが、この映画は何といっても音楽、そして音響効果の良さが際立っており、これまで知らなかった吹奏楽の魅力に引き込まれた。最初は「響け! ユーフォニアム」の知識がまったく無いまま映画を観たが、近所のTOHOから川崎チネチッタ、立川極音上映と、上映期間中は足を伸ばせる限り各映画館で映像/音響の違いを楽しみ、合間に原作小説をほぼすべて読み、dアニメストアで本編であるTVアニメ版も鑑賞。この世界にすっかりハマってしまった。

来年4月には、「響け! ユーフォニアム」の劇場版3作目が公開される。こちらも今から楽しみだ。

庄司亮一