レビュー

約5万円で手持ちテレビが全録化、東芝タイムシフトマシンHDDがコスパ最強だった

タイムシフトマシンハードディスク「D-M210」

昨年11月、東芝映像ソリューションから最大6チャンネル・約1週間分の番組が録画できる、タイムシフトマシンハードディスク「D-M210」が発売された。タイムシフトマシンとはいわゆる“全録”で、放送チャンネルをまるごと録画してくれる機能だ。

D-M210は、そんな全録に特化した最新のハードディスクレコーダー。同社BDレコーダーなどに採用する時短機能を搭載しながら、BDドライブを取り除いたマシン構成にすることで、コンパクトな筐体と実売5万円前後という手の届きやすい価格を実現した。

これまで全録は、タイムシフトマシン搭載のレグザやレグザブルーレイを購入することでしか手に入らない機能だったのだが、タイムシフトマシン史上最安・最小のD-M210が登場したことで、誰もが比較的容易に全録環境を構築できるようになった。

使った感想を言えば、まさに本機は「コスパ最強レコーダー」。

地デジなどの2K番組を録る・見るだけなら必要十分。むしろこの価格で全録機能が手にできるなら、めっけ物。普段BDレコーダーや外付けハードディスクに番組録画している方はもちろん、全録が気になっていた方にも魅力的な製品と思う。

実は取材用機材を返却後、テレビ好きの家族から「あの便利な機械どこやった!?」とブーイングを受け、先月リビングに導入したばかりなのだが、すでに家族皆が過去番組表を使いこなすようになっていて、巣ごもりをよいことに、今まで以上にドラマやら、バラエティやらを大量に観まくっている。終始カリカリと音を出しているD-M210の姿を見ていると、「ハードディスク持つかな……?」と少し心配になるほどだ。

というわけで、タイムシフトマシンの機能を中心に、家族を虜にした「D-M210」を紹介していこう。

サイズは少し大きめの弁当。USBポートは全録のHDD増設に使用可能

まずは外観から。筐体カラーはシックなダークグレー。天面の右前には丸い電源ボタン、そしてフロントには状態を示す表示ランプを備える。

寸法は横幅285mmで、奥行きは218mm。少し大きめのお弁当といったサイズ感で、BDドライブがない分、一般的なレコーダーと比較すると横幅は半分近く短い。高さは59mmで、内部を覗くとシステム基板の上に2TBの3.5インチHDD 1台がマウントした構造になっていた。重量は約1.8kg。

外観はシックなダークグレー
天面の右手前に電源ボタン
横幅285mm、奥行きは218mm

背面には、地上、BS/110度CSアンテナ端子のほか、HDMI×1、LAN×1、USB2.0×2を装備。このUSB端子はどちらも外付けHDD専用となっていて、通常録画、およびタイムシフトマシン用HDDの増設に使うことができる。その上段には、2枚のミニB-CASスロットがある。

リモコンは、従来のレグザブルーレイ付属のものと基本は同じで、一部ボタンが異なるのみ。電源はACアダプタータイプだ。

背面
上段に、2枚のミニB-CASスロット
リモコン
主な付属品。写真右がACアダプター

搭載するチューナー数は、地上×6、BS/110度CS×5。このうち、タイムシフトマシン専用が地上×4、BS/110度CS×3となっていて、残りのチューナーは通常録画にもタイムシフトマシンにも使えるようになってる。

機能としては、タイムシフトマシンのほかにも、長時間録画、おまかせ録画、オートチャプター、時短再生、プレイリスト編集、スマホ・タブレット再生などを搭載。D-M210自体にBDドライブはないが、別途レグザブルーレイを用意すれば、LAN経由でダビング、BD保存することも可能だ。

全録は、チャンネル・曜日・時間帯・録画モードを設定

“タイムシフトマシンハードディスク”と言っても基本はレコーダーなので、電源投入前の準備は、他のモデルと変わらない。製品添付のB-CASカードを専用スロットに挿入して、アンテナケーブルとHDMIケーブルを接続するだけだ。電源投入後は、画面に表示される「はじめての設定」案内に従って、リモコン設定や地域設定、チャンネル受信設定などを済ませていけばいい。

スタート画面
地デジチャンネル設定の画面

タイムシフトマシンを利用する場合は、基本設定に加えて、全録するチャンネルや曜日、時間帯、録画モードを決める詳細設定を行なう。

本機が全録できるのは、最大6チャンネルまで。6チャンネル全てを地上波から選ぶと、NHK・日テレ・TBS・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京といった具合に、NHK+民放の5大キー局がまる録りできる。BS/110度CSの場合は最大5チャンネルで、もちろんWOWOWやスカパー! の有料チャンネルも選択可能。実は薄型テレビのレグザのタイムシフトマシンは、地上波しか全録できないので、BSもCSもカバーしてくれるのは専用レコーダーの有り難いところだ。

本機はタイムシフトマシンを利用しない使い方も一応できるが、その際は“2番組”同時録画までとなる。全録と通常録画はシステム構成が異なり、5番組・6番組同時録画できるわけではないのでご注意を。

タイムシフトマシン設定から曜日・時間帯を選択する

時間帯は1時間単位で選択でき、1日の最大録画時間は23時間(残りの1時間はメンテナンス時間)。録画モードはDR/高画質/中画質/長時間画質などから選べる。なお“スマホ”が付いている録画モードで録られた番組は、そのまま「スマホ持ち出し」が利用できるようになっている。

録画日数はこれらの設定に応じて変動するが、内蔵2TB HDDの場合、6チャンネルを毎日23時間・長時間モードで全録すると約7日分、ゴールデンタイムを含む夜間(19時~25時)に限定して、6チャンネル・長時間モードで全録すると約30日分の番組を一時保存できる。

チャンネル1~4の録画モードは、AVC高画質、AVC中画質、スマホ高画質、スマホ長時間画質
チャンネル5~6の録画モードは、DR、AVC最高画質、AVC高画質、AVC中画質、AVC長時間画質。チャンネル1~4とはモードが異なる

以前のタイムシフトマシンは、途中で設定を変えてしまうと、全録番組がすべてリセットされてしまっていたが、D-M210はチャンネル・録画先を変更しない限り、録画していた全録番組は維持される。時間帯や録画モードは後で変更しても支障はないので、モードの品質が気になる場合は、画を確認した後に変更するのもありだろう。なお今回筆者は、内蔵の2TB HDDのみを使い、NHK総合+民放5局を23時間、スマホ/AVC長時間モードで全録している。

NHK総合+民放5局を23時間、スマホ/AVC長時間モードで全録した
搭載チューナーをすべて全録に回すと、チューナー切り替えもできなくなるので注意

「録画品質を落としたくない」「録画日数をなるべく確保したい」という場合は、USB HDD(別売)を増設するのが早い。前述した背面のUSB2.0ポートはどちらも、タイムシフトマシン用として使えるので、最大14TB(内蔵2TB+外付け6TB×2)分のHDDをタイムシフトマシンに割り当てる事ができる。

外付けUSB HDDに関しては、1基につき全録は2チャンネルまで、バスパワータイプやUSBハブを介した接続は不可(ハブは通常録画限定)などの注意事項はあるが、容量を14TBまで増やせれば拡張性は十分だろう。

全録番組へのアクセスは「過去番組表」と「時短」から

タイムシフトマシンの設定を終えたら、あとはレコーダーが、エンドレスに録画し続けてくれる(メンテナンス時間を除く)。視聴済み・未視聴に関わらず、ハードディスクの空き容量が少なくなると古い番組は自動的に上書きされるので、番組消去という操作も必要ない。基本、レコーダーは放置でOKだ。あとは、ユーザーは録り溜まった膨大な番組の中から、見たい番組だけを選んで再生すればいい。

D-M210の場合、タイムシフトマシンで録画中、または録画済み番組へのアクセス方法は主に2つある。

1つはリモコンの[過去番組表]を押して、番組表から目的の番組を選択・再生する方法。もう1つは、リモコンの[時短]を押して、あらかじめ設定したカテゴリー(ジャンル)の中から目的の番組を選択し、時短再生する方法だ。

リモコンの過去番組表ボタン
過去番組表

「過去番組表」はその名の通り、録画済みの番組を電子番組表のカタチで表示してくれるもの。再生したい番組の放送日時が分かっている場合は、この番組表から選ぶのが早い。タイムシフトマシン設定時、またはサブメニューから「ビジュアル過去番組表を表示する」を選べば、番組表に番組内の1シーンをサムネイル表示し、なおかつ番組説明も表示してくれる。

サムネイルがあると非常に分かりやすいのだが、ビジュアル過去番組表時の表示切り替えやカーソル移動レスポンスは少し遅め。動作が少しもたつくのは、D-M210全体の操作に言えるところだが、もう少しサクサクと動いてくれればなとは思う。

ビジュアル過去番組表

もう1つの「時短」は、膨大な全録番組(通常録画番組も含む)の中から番組を効率よく見つけて再生するために用意されている機能。再生コースとカテゴリーを予め設定しておけば、[時短]ボタン1つでジャンル別に番組を一覧表示してくれる。

「あのバラエティの特番、何日に放送してたっけ?」というように、放送日時がハッキリしない場合には、ジャンル別一覧から番組を探した方がいい。また同じジャンルを自動でソートしてくれるので、ドラマやアニメなど、クール期の新作を集中して視聴する場合やシリーズを連続して視聴する場合も好適だ。

リモコンの時短ボタン
時短メニュー

時短機能の魅力は、ユーザーの空き時間に合わせて再生方法が選択できること。

“番組の本編部分だけ”を再生してくれる、いわゆるCMカット再生の「らく見」、それを1.3倍速再生してくれる「らく早見」がとにかく便利で、コレに慣れるとリモコンを使った早送り・チャプター飛ばしすら億劫になってしまう。

もちろん、過去番組表から再生した場合でも、時短再生は可能。番組再生中にリモコンの[緑]ボタンを押せば、再生コースの切替ができる。マジックチャプター(東芝のオートチャプター)の精度もよいので、常時らく見がオススメだ。

時短再生「らく見」では、番組の本編部分だけを再生する
リモコンの緑ボタンを押せば、再生中でも時短モードの選択が行なえる

タイムシフトマシン搭載レグザと連携。スマホとも相性よし

今回は手持ちのテレビを取材に使ったが、D-M210と組み合わせるテレビが“タイムシフトマシン搭載レグザ”の場合は、レグザにD-M210の全録情報が伝えられ、レグザの過去番組表に、D-M210の過去番組表が統合表示されるようになっている。

レグザ側で過去番組を一元管理できれば、リモコンをいちいち持ち替える必要もないし、音声検索対応レグザであれば、ボイスからも番組選択が行なえる。

またレグザのざんまいスマートアクセス機能とも全録番組が連携。つまりテレビとレコーダーの“レグザコンビ”の場合は、より快適な操作・連携となるよう設計されているわけだ。薄型テレビ・レグザの全録は地デジに限定されているので、タイムシフトマシン搭載レグザのユーザーも“全録買増し”する意味はありそうだ。

統合過去番組表

全録時の画質について少し書くと、55型サイズのテレビで視聴したところ、感覚的には中画質モードが6倍録画、長時間モードでは10倍~12倍録画に相当するクオリティだった。

動きの少ないドラマやニュース、情報番組やアニメなどは長時間モードでもイケるが、音楽やスポーツでは、アーティストや選手のディテールが見えず、ノイズもかなり目立つ。まぁタイムシフトマシンの命題は“丸録り”なので、ここは仕方の無いところ。気になる場合は、デフォルトの中画質モードにして、外付けHDDで録画日数を稼ぐしかないだろう。

長時間モードの印象は、10~12倍録画に相当する印象。動きの激しいシーンや文字回りはノイズが増える
番組再生中にサブメニューボタンを押すと、ノイズリダクションとXDEのON/OFFが可能。ONにすると、ノイズがいくぶん和らいだり、精細感を上げることができる

D-M210はテレビだけでなく、スマートフォンやタブレットとの相性もよい。

無料アプリ「スマホdeレグザ」(iOS/Android対応)を使えば、タイムシフトマシンで録画した番組・通常録画した番組の宅内視聴はもちろん、オンライン/オフラインの宅外視聴、放送番組のライブ視聴などがスマホで行なえる。テレビで再生していた番組の続きを、スマホで再生することも可能だ。特に録画番組や放送番組の同時視聴は最大2台までサポートするので、家族で利用する際にも重宝する。

スマホdeレグザのメニュー
番組表
スマホで録画済み番組や、放送中の番組を再生できる

アプリメニューには「時短で見る」もあって、早見(1.25倍/1.5倍)も選択できる。ただ、テレビ再生にある“らく見”が出来ないのが残念。スマホ再生時においてもCMスキップできると便利なのだけど。

スマホdeレグザは番組の再生以外にも、キーワードや人物名による横断検索、録画予約や人気ランキングからの録画予約、リモコン操作、音声検索・音声操作も行なえる。

スマホ再生の場合、時短メニューは「早見」だけ
音声操作も可能

有料にはなってしまうが、デジオンが提供しているDTCP-IPプレーヤー「DiXiM Play」を使えば、Amazon FireタブレットでもD-M210の番組を観ることは可能だ。

一度体感すると手放せない全録。巣ごもりにも最適

以上、タイムシフトマシン関連の機能を中心に、D-M210の概要と印象をレポートしたが、現行のBDドライブ搭載タイムシフトマシン「DMR-M4008/M3009」とほぼ同等の機能を備えており、実売を考えても、かなりコストパフォーマンスのよい全録マシンと感じた。

最近は動画配信サービスが急速に伸びていて、以前はビデオパッケージでしか見ることができなかったテレビ番組も、配信で流れるようになっている。またテレビ局の見逃し配信も活発になってきているので「(仮に録り逃しても)TVerとかでよくね?」という意見もあるかもしれない。

とはいえ、全ての番組が見逃し配信されるわけではないし、何より時間や場所に関係なく、縦横無尽にチャンネル・時間を飛んで、過去の番組が視聴できる全録の便利さは、やはり一度体感すると手放せない。テレビ好きはもちろん、在宅が多くなりがちな巣ごもり時期にも、最適なコンテンツボックスと思う。

最後に少し要望を。本機には、動画配信サービスを視聴する機能がないのだが、個人的にはレコーダーやテレビこそ、Paraviや各テレビ局運営の動画配信サービスともっと連携を深めるべきと考えている。例えばタイムシフトマシンの過去番組表から録画済み番組をただ再生するだけでなく、配信中の関連番組をシームレスに選択・再生できるようにしたり、番組・人物名検索からは、各動画配信サイトの関連コンテンツを横断的に検索・再生できるようになってほしいなと。というわけで、次のタイムシフトマシンも期待してます、レグザさん。

阿部邦弘