第133回 スマートに高画質化した「LED REGZA」
~超解像+ゲームモードなどマニアックに進化。東芝「47Z1」~
47Z1 |
REGZAの上位シリーズ「Z」が、2010年春夏モデルでは、エッジ型LEDバックライト方式を採用。スリムに生まれ変わった。
しかも、エッジ型LEDバックライト方式ながら、ローカルディミング(エリア駆動)を実現させた意欲的なモデルとなっている。今回の大画面☆マニアでは、テクノロジー的にも興味深い、東芝REGZA Z1シリーズの47V型モデル「47Z1」を取り上げることにした。
■ 設置性チェック~デザイン一新で薄型軽量化。サウンドも改善
一目見ただけで、前モデルの46ZX9500(ZX900も同じ)よりもスリム化されていることが分かる。画面サイズは47Z1の方が1インチ大きいにもかかわらず、ディスプレイ部の大きさは1,131×48×703mm(幅×奥行き×高さ)で、46ZX9500の1,158×113×23mm(同)よりもコンパクトでスリムだ。バックライトシステムがエッジ型LEDバックライト方式に変わったこともあり、奥行きが半分以下になったことが目をひくが、額縁部分のスリム化も目立つ。
狭額縁化により画面の大きさも際立つが、それ以上に評価したいのは、その額縁自体の処理の仕方だ。ZX9500では、額縁部分が鏡面光沢塗装だったために、周囲の照明や窓からの光の差し込みが映り込みやすかったのだが、Z1では光沢部分が狭くなり最外周部分が奥に引っ込む感じの斜面処理(角落とし)がなされているため、外光からの影響がシビアでなくなったのだ。
47Z1 | 額縁は1cm以上狭くなり、47Z1の方が画面が大きいのに46ZX9500よりも設置時の背の高さが2cmも低くなった |
従来モデルの約半分の厚みになった |
特記しておきたいのが軽量化。47Z1は46ZX9500と比較して、なんと8kg以上も軽くなっているのだ。47Z1の重量はスタンド込みでわずか24.5kgだ。
筆者は自宅で46ZX9000を使用しており、プロジェクタを使う際にいちいち46ZX9000をテレビ台から下ろすという間抜けな作業をしているのだが、そのたびに33kgというその重さを肌身を持って体感している。今回の47Z1のテレビ台への設置の際に持ち上げたときに、あまりの軽さにつんのめってしまったほどだ。液晶テレビの軽さ、薄さの進化には目を見張るモノがある。
RLS-250 |
設置スタンドは、先代までの楕円型から一新、デザインが"×"型となった。左右のスイーベル機構は今回のスタンドにも搭載されており、首振りも可能となっている。
設置関連の純正オプションとして、定番の壁掛け設置用の取り付け金具「FPT-TA11」の他に、今世代のREGZAには3.1chホームシアターラックが設定されたことがホットトピックだと言える。46V型以上の設置を想定した幅135cmの「RLS-450」と、47V型以下の設置を想定した幅110cmの「RLS-250」の2モデルが設定されており、47Z1は大きさ的には両方に対応できる。
47Z1ではスピーカーシステムも一新している。CELL REGZAのスピーカーシステムをトップダウン式に取り入れた格好となっており、47Z1では3.5×16cmの角形フルレンジ/ウーファユニットが2基、2cm径のソフトドームツイーター2基が、前向きにレイアウトされて設置されているのだ。
ウーファとツィータの2ウェイ構成 | ハウジングも新設計 | Z1に採用されているスピーカーユニットの概要 |
前モデルまでは、スピーカーの出口を下向きにしてテレビ台側に反射させてのバッフル効果を期待した音響設計がなされていたが、どうやら業界的には、「下向きスピーカーは不評」という風潮が支配的となったため、他社もスピーカーを前向きに設置しだしている。
筆者は自宅でREGZA 46ZH500→REGZA46ZX9000を使ってきたが、46ZH500の6スピーカーシステムの音に比べて46ZX9000は安っぽい音になっていたのが気になった。47Z1は、少なくともZX9000(ZX9500)よりはだいぶ音がよくなったと感じる。47Z1では、高音の伸びには不満がないが、欲を言えばもう少し低音のパワー感が欲しい気はする。これは「音声設定」-「音声調整」内の「低音強調」をいじることで改善する。「弱」あたりにすると、音楽再生などにはいい感じだ。
なお、スピーカーは下部に設置されているが、画面中央への定位感と、ステレオ感は十分にある。これは先代ZX9500でも問題なかった部分ではある。
消費電力は197W、年間消費電力量は185kWh/年。46ZX9500は消費電力290W、年間消費電力量258kWh/年だったのでだいぶ低くなっている。エッジ型LEDバックライト方式の採用により、LED個数が大幅に削減されたので、その効果が大きいのだろう。
■ 接続性チェック ~HDMIはARCとコンテントタイプ連動に対応
背面接続端子パネル。ついにSビデオ端子は一個になってしまった |
接続端子は、先代から比べるとさらにアナログビデオ入力の統廃合が進んだことが目立つ。これも時代性というものだろうか。
アナログビデオ入力はステレオ音声入力とペアになる形でビデオ入力1~4までが実装されている。うち、ビデオ入力4は側面側、それ以外は背面側にあしらわれている。
ビデオ入力1~4全てにコンポジットビデオ入力を備え、これと排他仕様でビデオ入力1~2にD5入力(D端子)を用意している。そしてS2ビデオ入力端子はビデオ入力3にのみ与えられている。Sビデオ入力は風前の灯火という感じだ。
HDMI入力は、HDMI1~3が背面、HDMI4が側面に装備。HDMI1のみ、オーディオリターンチャンネル(ARC)とコンテントタイプ連動に対応する。ARCとは、1本のHDMI端子(HDMIケーブル)で、伝送方向の上りと下りの双方にてデジタル音声の送受を行なう仕組みのこと。コンテントタイプ連動は、HDMI経由で伝送されてくるAVコンテンツの種類情報を認識して的確なモード選択に対応する機能だ。具体的にはゲーム、映画、写真、文字図版、といった種類情報がHDMIに乗って送られてくる。基本的にAVアンプとの接続にはHDMI1を利用することになるだろう。なお、ARC未対応のAVアンプとの接続に配慮し、従来通り光デジタル音声出力端子も備えている。
出力端子系としては、アナログダビング用のコンポジットビデオ/アナログステレオ音声端子を背面に備えている。前モデルまではSビデオ出力端子があったのだが、47Z1ではこれが省かれてしまった。
PC入力端子はなし。しかし、DVI-HDMI変換アダプタ等を利用することでHDMI端子をPC入力端子として流用が可能だ。その際、問題となるRGBの階調レンジの設定はちゃんと手動設定に対応している。具体的には「機能設定」-「外部入力設定」内の「RGBレンジ設定」でPCと接続したHDMI入力に対し「フルレンジ」を設定してやればよい。
HDMIのRGB階調レンジの手動設定に対応 | どういう接続状態になっているかは[画面表示]ボタンで随時確認ができる |
47Z1とPCとを接続した際に是非とも活用したいのはステレオミニジャックのHDMI3アナログステレオ音声入力端子だ。PC側の音声出力をここに接続すれば、HDMI3経由でPC画面を表示したときには、PCの音声を47Z1側のスピーカーで鳴らすことが出来る。
なお、今回の評価では、パソコン側にNVIDIAのGeForce GTX260搭載カードで接続したが、「機能設定」-「外部入力設定」内の「HDMI3音声入力設定」が「オート」だと再生音声がブツブツと途切れ途切れになってしまう現象に遭遇した。ここを「オート」ではなく「アナログ」とすれば改善された。
47Z1にはUSB端子が背面に1つ、側面に1つあるが、背面のものは録画HDD専用となっている。側面のUSB端子はデジカメやキーボードなどを接続するために用いる。
LAN端子は前モデルまでは、LAN HDD接続用、ブロードバンドコンテンツ用、インターネット機能用の3端子が存在してわかりにくかったが、47Z1では1つにまとめられ、全用途兼用となった。
リモコンの[ブロードバンド]ボタンを押すことでネット関係のホームメニューが開く | Yahoo! JAPAN | T's TV |
ところで、前述したように、47Z1ではREGZA伝統の外付けHDD録画機能があり、USB-HDDやLAN HDDが利用できる。USB HDDはUSBハブを利用することで4台まで、LAN HDDはEthernetハブを利用することで8台までの同時接続が可能となっている。なお、47Z1は地上デジタルは3チューナ、BS/CSデジタルは2チューナを搭載しており、最大2番組をそうした外付けHDDに同時録画できる。
SDカードスロットを利用すれば写真のスライドショー等も楽しめる |
地デジは2番組を同時録画しつつ、さらに別の地デジ番組をリアルタイム視聴することが可能だ。これはかなり強力な録画機能だと言えよう。
SDカードスロットは側面側に搭載。こちらはSDカードに記録された写真データのスライドショーが出来るだけでなく、外付けHDDに録画した番組のワンセグ部分をSDカードにダビングする際にも利用できる。
アナログ端子の統廃合は進んだ感はあるが、ディスプレイモニターライクに活用できる接続性の高さや、妥協なしの録画機能の搭載などは、さすがはREGZAといった感じだ。
■ 操作性チェック ~さらにマニアックに進化。ゲームモードは超解像+で低遅延表示約1.2フレームを維持!
新リモコンはデザインは同一だが表面素材をリファインしている。 |
リモコンは従来のものと基本的にはデザインは同じだ。ボタン配列も同一だが、表面の素材処理に手が加えられた。具体的には、肌理の細かい微細な筋が走ったアルミっぽい半光沢加工がなされている。これにより、指紋がつきにくくなった。
また、四角い十字キーの寸法こそ変わらないが、中央に向かっての凹加工がなされることで、親指をあてがったときに上下左右の四方向が直感的に分かりやすくなった。
画調モードの切り替えが、メニューを潜ってからしか行なえない点は先代から変わっていない。
電源オンから地デジ放送画面が出てくるまでの所要時間は約1.7秒とかなり高速。一方、チャンネル切り替え所要時間は約2.0秒で標準的な速度。入力切換はHDMI→HDMIで約2.5秒とそこそこの早さだが、HDMI→D5では約4.5秒とあまり早くない。
調整機能やメニュー項目の大半は先代からと同じであるため、重複している部分については本連載第「REGZA「46ZH500」、「46FH7000」、「55ZX8000」を参照して欲しい。本項では47Z1で変更になった部分にフォーカスして紹介していくことにする。
メニュー構造について、変更があったのは以下の部分。
まず、「アニメモード」のメニューが「映像設定」のトップ項目に並ぶこととなった。前モデルまでは「お好み調整」-「詳細調整」-「レゾリューションプラス設定」の中の超解像設定項目の1つとして存在したのだが、よりカジュアルに設定変更できるようにと、メニュー上層に格上げがなされた格好だ。アニメモードについては本連載「CELL REGZA55X1」編に詳しく解説しているが、アニメ特有の色境界や輪郭線周辺に目立つ二重写りのようなノイズを選択的に低減する機能だ。
技術的には超解像処理の中の特例という性格付けだったが、47Z1では、ノイズリダクションの効果もアニメ用に最適化したとのことで、独立して使える機能に昇格させられた。
「映像設定」メニュー | 映像設定のトップに並ぶようになった「アニメモード」の設定 |
さらに細かいことだが「映像設定」のトップ項目にある「1080処理モード設定」も微妙に変わっている。従来は「1080p処理モード設定」と記載されていたが"p"が取れた。これは表記だけの問題ではなく、47Z1からはこの機能が1080iにも対応したため。「1080(p)処理モード」についての詳細は本連載「55ZX8000編」の回を参照して欲しいが、機能がアップデートされたと言うことで、ここでも簡単に触れておこう。
「1080処理モード」メニュー |
「1080処理モード」では「オート」「DVDファイン」「ピュアダイレクト」が選べるが、これはREGZAが持つ超解像処理エンジンへの映像の受け渡し方を定義する設定になる。具体的には「オート」はその映像に対し超解像処理を自動で行なう設定となり、「ピュアダイレクト」は逆に超解像処理がキャンセルされる。項目名から直感的にわかりにくいのが「DVDファイン」だ。これは信号自体は1080i/1080pのハイビジョン映像だが、元々480iないしは480pのSD映像をアップスケールしたものであるとわかりきっている場合に設定する。こうすることで超解像が効果的に効くようになりディテール感が増す。
整理すると通常時は「オート」でいいが、PCやゲーム機などのベースバンド映像や原信号至上主義者には「ピュアダイレクト」を。そして「DVDファイン」はその名の通りDVDを視聴する際に働かせるといい。
「オート」設定。1080p映像として超解像処理がなされるため、効き方が淡い | 「DVDファイン」設定。もともとがSD映像であると宣言するため、より超解像の効きがアグレッシブになる | 「ピュアダイレクト」設定。超解像処理をキャンセル。このテストケースでは480p映像の素を見ることになる |
さらに細かい点だが、歴代REGZAユーザーであればあるほど「あれ? どこにいった?」と思わせる調整項目の移動が今期モデルにあるのでフォローしておく。それはアンダースキャンとオーバースキャンの切り替えを行なう設定項目だ。以前は「映像設定」階層下に「画面調整」という項目があり、ここで行なえたのだが、今期モデルはこの項目が姿を消してしまったのである。
実は、今期モデルではちょっとわかりにくいところにこの機能設定が隠されている。今期モデルでは、[クイック]ボタンで起動される「クイックメニュー」内の「画面サイズ切換」にて「フル」を選択し、さらに十字キーの右ボタンを押して開かれるサブメニューで「ジャストスキャン」(アンダースキャン)、「オーバースキャン」を選ぶスタイルになったのだ。設定を画面サイズ(アスペクト比)切換に統合したことに不満はないが、リモコンに用意されている[画面サイズ]ボタンでは「ジャストスキャン」と「オーバースキャン」を切り換えられないのがややこしい。統合したのであれば「フル(ジャストスキャン)」「フル(オーバースキャン)」として順送りで選べるようにした方がよかったのではないだろうか。工場出荷状態ではテレビ放送および全入力系統が「オーバースキャン」設定になっているので、かなりのユーザーが、この問題に直面することが予測される。
アンダースキャンとオーバースキャンの切換は[クイック]ボタンを押して開かれるクイックメニューの「画面サイズ切換」の下に隠されている | 「画面サイズ」の「フル」設定のバリエーションとして設定されたのだが、[画面サイズ]ボタンからは選べない点がややこしい |
画調パラメータの管理方式も改善されているので、これについても触れておこう。
これまでのREGZAでも「おまかせ」「あざやか」「標準」「テレビプロ」「映画プロ」「ゲーム」「PC」といったプリセット画調モードを、ユーザーがエディットすれば、その結果が保持される仕様となっていた。しかし、このうち、いくつかのプリセット画調モードでは、全入力系統で調整結果が共有されたり、そうでないものもあったり、と、仕様に統一感がなくて分かりにくかった。
47Z1を初めとする今期のREGZAでは、エディットしたプリセット画調モードは、各入力系統ごとに完全に個別で管理されるように仕様が改善されている。しかも、エディットを行なうと「標準:メモリー」というように、エディット元の画調モード名とエディット済みであることを明記したモード名表示になる。地味ではあるが、マニアにも嬉しい改善ポイントだ。
「映像調整」メニュー | 「詳細調整」メニュー | 「LEDエリアコントロール設定」メニュー | 「音声設定」メニュー | 「機能設定」メニュー |
「外部入力設定」メニュー | 「レグザリンク設定」メニュー | 「初期設定」メニュー | 「レグザリンク」メニュー | 「ヒストグラム表示モード」メニュー |
この他、外部HDD録画機能についても47Z1ではユニークな機能拡張が行なわれているので触れておこう。
ついに、REGZAで録画したコンテンツの再生をCMスキップ付きで行なうことができるようになった。この機能には「マジックチャプター」という名前が付けられているが、これは、同名の東芝のビデオレコーダー「VARDIA」シリーズで好評を博した機能をREGZAが継承したモノだ。
さらに、2画面機能が、REGZAで録画したコンテンツの再生画面表示と、リアルタイムの放送画面表示の組み合わせに対応した。例えば、録画したバラエティ番組/ドラマと、リアルタイム放送のニュースやスポーツ中継を同時に見ることが出来るようになったのだ。かなりマニアックな二画面機能だが、現状、REGZA以外にこの機能を有するものはない。
「マジックチャプター」機能 | インターネット画面と外部入力の組み合わせも可能になった二画面機能 |
そして、最近のREGZAを語る上で欠かすことが出来ない「ゲームモード」についても触れなければなるまい。最近はREGZAの支持層にゲームファンの割合が多く、ゲームユーザーが指名買いするケースも多いと聞く。
そのゲームモードだが、47Z1ではさらに進化を遂げている。
シューティングゲーム、アクションゲーム、格闘ゲーム、音楽ゲームなどリアルタイム性の極めて高いゲームでは、ゲーム機が出力した映像フレームがテレビ側に表示されるまでの遅延時間がゲームの遊びやすさに直結するという議論が、最近クローズアップされつつあり、最初期の液晶/プラズマテレビでは十数フレームの遅延があることがゲームファンの間で指摘され話題となった。この問題に早期から対策に取り組んでいたのが東芝のREGZAシリーズで、先代のZX9000/Z9000では、ついに表示遅延約1.2フレームを達成して話題を呼んだ。
この機能には「ゲームダイレクト」という名前が付けられたが、今期REGZAのZ1では、「ゲームダイレクト2」へと進化している。
結論から言えば表示遅延時間約1.2フレームという速度自体に変更はない。しかし、これまでゲームダイレクトがHDMI接続専用だったのが、D5入力、Sビデオ入力、コンポジットビデオ入力にまで対応したこと、そしてIP変換、ノイズ低減処理、超解像処理、解像度変換、倍速処理までを行なっても表示遅延時間約1.2フレームを維持したことが「ゲームダイレクト2」の"2"たるゆえんとなっている。
HDMI入力以外にもゲームダイレクト2が利用できるようになったことで、HDMIを持たずD端子接続が数少ない高品位接続手段となるWii、Xbox 360前期型などにおいても、その恩恵が享受できるようになったわけだ。
また、ゲームダイレクト1では解像度変換が省略されてしまったために、実質的には1080p画面でないと画面が小さく表示されてしまって実用度が低かったが、"2"では全ての高画質化処理を利用しても遅延が変わらないため、前出のWiiやXbox 360初期型はもちろん、プレイステーション2以前のレトロゲーム機などのSD映像(480i、480p)を接続しても超解像処理付きの低遅延・全画面表示が楽しめることになる。
低表示遅延のゲームダイレクトが"2"となり、HDMI以外のアナログビデオ端子にも対応。超解像、解像度変換を行なっても表示遅延は約1.2フレームを維持 |
なぜかゲーム画面が小さく表示されてしまうPSP-2000以降のテレビ出力機能の制限を撤廃してPSPの画面を全画面表示する「ポータブルズーム」モードも、Z1ではもちろんゲームダイレクト2で利用できる。超解像処理付き&低表示遅延でPSPが楽しめるのは嬉しい。ソニーのBRAVIAでもやらないことを、なぜ東芝がこんなにまで情熱を燃やしてソニーのゲーム機に対応するのか不思議に思うかも知れないが、それだけREGZAはゲーム機への対応に真剣だと言うことなのだろう。これは1ゲームファンとして高く評価したいと思う。
ゲーム画面ではなぜか小さく表示されてしまうPSP画面を全画面表示する「ポータブルズーム機能」 | 美羽品位解像度変換をあえてキャンセルしてドット画をドット画らしく見せる「レトロゲームファイン」 |
なぜ、高画質処理をしながら表示遅延約1.2フレームを維持出来たのか、ここが気になる人もいると思うので簡単に解説しておこう。
これは、従来では、入力されてきた映像データを各高画質処理エンジンで1フレーム分まるまる処理してから次の高画質処理エンジンに受け渡していたのを、今期REGZAては入力されてきた映像データをリアルタイムにバケツリレー式に次の高画質エンジンへ受け渡していく処理方式に改良したからだ。
高画質化処理を入れても低表示遅延が維持できたわけ | ゲームダイレクト2の解説 |
19型の「19RE1」で、ゲームモードを搭載する |
なお、このゲームダイレクト"2"機能は、REGZA Z1だけでなく、RE1、HE1、H1、R1、A1にも搭載されている。パーソナルユースを前提としたテレビ兼ゲームモニターを探しているならば26インチ以下のモデルがあるRE1、R1、HE1、A1を検討するといいかもしれない。ただし、26インチ以下のモデルはフルHD(1,920×1,080ドット)パネルではない点に留意したい。そろそろREGZAも32インチ、26インチあたりはフルHDパネル採用機を設定してもよいと思うのだがどうだろうか。
それにしても、REGZAは、だんだんとマニアック方面に機能拡張を続けているが、なにはともあれ、オンリーワンの機能が多く、「こんな機能があればいいのに」というものが着実に搭載されつつあるのは、評価したい。
■画質チェック ~エリア駆動対応のエッジ型白色LEDバックライトシステムの実力は?
映像エンジン周りに関しても進化を遂げているREGZA Z1だが、これまでのレグザと大きく違うのはやはりバックライトシステムということになる。まずはここから触れていきたい。
Z1シリーズでは、エッジライト方式のLEDバックライトを採用 | 独自開発の拡散フィルターを採用している |
Z系8000型番のREGZAで白色LEDをバックライトの本命とした東芝は、以降、ミドルアッパークラス以上のREGZAには一貫した白色LEDバックライトシステムを採用してきた。それも、液晶パネルの直下に白色LEDを配列させた直下型レイアウトによるバックライトシステムを採用してきた。
自発光の映像デバイスではない液晶パネルにおいて、明暗のダイナミックレンジを広く取るためには、液晶画素の直下のバックライトの明暗を直接的に制御することしか方法がない。これまでの主流バックライトであった冷陰極管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)では、棒状の光源であったために画面全体を数分割した領域単位での明暗制御しか行なえず、しかも、素性が蛍光灯であるがゆえに漆黒を表現したい時にも完全に消灯することが出来ないという問題もあった。
対して直下型LEDバックライトでは、LEDの個数に応じた局所的な明暗制御(エリア駆動)が出来るため、かなり自発光映像パネルに近い表現が可能となったのであった。これが2009年までに各社で採用が相次いだ直下型LEDバックライトシステムだ。
ただ、この方式はLEDの個数が多くなることから消費電力が高くなり、ひいては発熱量も多くなる。また、液晶パネルの直下にLEDを実装してその回路も配しなければならないことから、本体寸法の奥行きがかさむ。本来液晶は薄型をウリにしてきたはずなのに直下型バックライトの採用では厚くなってしまうという矛盾を抱えだしたのである。
一方、消費電力と薄型スリム化の面で有利なのは白色LEDを画面の縁に配置するエッジ型LEDバックライト方式だ。ソニーがBRAVIA ZX1で採用し話題を集めたが、縁にある光源を導光板で画面中央へ導く方式のため、エリア駆動の実現が不可能であるといわれてきた。
エッジ型LEDバックライトによるエリア駆動の概念図 |
しかし、上下に配置したエッジ型LEDバックライトのモジュールを個別に駆動するようにして、さらに相対するエッジ型LEDバックライトモジュールで光量を変えることで、上下方向に帯状の輝度(明暗)グラデーションを作ることが出来る。たとえば上側に配置したエッジ型LEDバックライトモジュールを100で光らせ、下側を50で光らせれば100→50の光量のグラデーションが作れる。上側を0、下側を100とすれば0→100の光量グラデーションが作れる。横方向のエッジ型LEDバックライトモジュールの制御分割数を増やせば、その数の縦帯状の光量グラデーションが作り出せるようになる。
もちろん直下型LEDバックライトのエリア駆動には精度では及ばないが、液晶パネルのネイティブコントラスト性能も上がってきた昨今では、これでも十分な局所コントラスト表現が出来るのではないか。
こうして開発されたのがエリア駆動対応型のエッジ型LEDバックライトシステムだ。今回のREGZA Z1シリーズはこのシステムを採用した製品なのである。
実際に暗室にて47Z1で、明暗コントラストの移り変わりが激しいBlu-rayビデオ「ダークナイト」のチャプター20の戦闘シーンを見たが、うまく調整されているからだろうか、直下型LEDによるエリア駆動の46ZX9000/9500に肉薄するコントラスト感が得られているのが確認できた。
ただ、46ZX9000の方が優位に見えるようなテスト映像もあるにはあった。それは、まとまった大きさで高輝度領域と黒領域が同居するような映像だ。こうした映像では最暗部が最明部の輝度に引っ張られてしまい、47Z1ではやや黒浮きが知覚される。ちなみに、47Z1の公称コントラスト値は、直下型LEDバックライトの46ZX9000/9500と同じ200万:1が謳われる。これは公称コントラスト値が全画面の全黒と全白の対比で計測されるためだ。
ただ、一般的な映像では見た目的にはほとんど直下型LED機と同等のコントラスト感が得られていると感じられる。いわゆるフレーム単位の全面バックライト輝度制御とは違う、1ピクセル1ピクセルが高い独立性を持って光り輝いており、それこそ自発光に近い画素描画が出来ていると思う。
さて、先代REGZAまでの直下型LEDバックライトシステムでは、エリア駆動にまつわる設定(「映像設定」-「映像調整」-「詳細調整」階層下にある「LEDエリアコントロール設定」)は「オン」「オフ」の二択だったが、今期のREGZAのエッジ型LEDバックライトモデルでは、エリア駆動にまつわる設定が「オフ-弱-中-強」の4段階設定に変更された。
実際にいじって効果を試してみると、“強”設定になればなるほど、生成される光量グラデーションの暗部が沈む方向にチューニングされる。つまり、"強"設定になればなるほど暗部が沈み込み黒浮きが少なくなる反面、明部の伸びが控えめになる。「弱」は明部優先、「強」は暗部優先、「中」はその中間というチューニングと思ってもらっていいだろう。
「オフ」はLEDバックライトが高輝度固定になるため、黒浮きがかなりひどく、「弱」にするだけで一気に暗部が沈み、素晴らしいコントラスト感が得られるようになる。よほどの理由がない限りは、エリア駆動は活用すべきだ。
LEDエリアコントロール=オフ | LEDエリアコントロール=弱 |
LEDエリアコントロール=中(デフォルト) | LEDエリアコントロール=強 |
LEDエリアコントロール=オフ | LEDエリアコントロール=弱 |
LEDエリアコントロール=中(デフォルト) | LEDエリアコントロール=強 |
明暗差の激しい映像では明部の伸びをなるべく維持しながら暗部を抑えていくようなチューニングとなる。一方、全体的に暗い映像では暗部のリニアリティを優先するチューニングとなる。バランスはデフォルトの「中」がいいが、暗室での視聴であれば「強」も悪くない
さて、画質の本質面において、今期REGZAではもう一つ触れなければならない点がある。それは液晶パネルの種類だ。
REGZA ZX9000/9500シリーズでは、白色LEDバックライトに液晶パネルはVA(垂直配向)型液晶パネルを、CCFLのZ9000/9500シリーズでは、IPS液晶パネルが採用されていた。今期REGZAのZ1では、初めてIPS(横電界)型液晶と白色LEDバックライトが組み合わされることになる。
写真撮影してここまでクリアなのは過去に記憶がないほど。画素の見え方のクリア感はREGZA史上最高か? |
実際に、画素の見え方に着目してみると、画素のフォーカス感、クリア感は、VA型液晶よりも優っていると感じる。筆者はVA液晶採用機の46ZX9000のオーナーだが、そう見える。素性的にはVA液晶の方が暗部特性に優れると言われているが、エリア駆動が前提となると、その優位性にこだわる必要がもはやなくなってきていると言うことなのだろうか。ちなみに、今期のREGZAのLEDモデルは全てIPS型液晶パネルと組み合わされている。
白色LEDの実装形態は変わったものの、光源としては変わりはないため、発色の傾向は直下型白色LED機と大きな差はない。ナチュラル系の発色だが、純色は美しい。特に青の発色が美しく深みがある。赤と緑も雑味がなくとてもクリアだ。
肌色はZ系8000型番の初代白色LED機の時から美しかったが、今回もそれに磨きがかかっている。47Z1の肌色はCCFLの水銀ランプっぽい黄味がなく、とても純度の高い肌色発色が行なえている。
色深度も深く、かなりの最暗部においても色味が残って見える。このため暗いシーンでも色情報量が多い。二色混合グラデーションも自然で擬似輪郭は皆無。このあたりは「次世代レグザエンジン」の階調クリエーションの効果がうまく働いているためなのだろう。
階調表現については、明部についてはなんの問題もなし。暗部は、前述したように映像の明暗のばらつき次第では明部に引っ張られるケースもあるが、多くの場合において表現に問題はなし。ちゃんと漆黒に近い黒からのリニアな立ち上がりを見せてくれる。
色、階調関係でもう1つ特記しておかなければならないのは、DEEP COLORとX.v.Colorへの対応状況で、Z1シリーズではDEEP COLORには対応するが、x.v.Colorには未対応となった。REGZAのx.v.Color対応は、先々代のZX8000では対応されず、先代のZX9000/9500で対応がなされ、今回のZ1では対応が見送られた。このあたりのブレはユーザーの立場からすれば、混乱を招きやすいので、今後はわかりやすい展開を望みたいところだ。
動画表示支援機能については、微妙に前モデルから変更がなされている。Z1シリーズにも補間フレーム挿入を駆使した倍速駆動が利用できるようになっているが、バックライトの高速明滅を応用したスキャニングを併用して4倍速駆動相当のキレのある動画を表示させる「Wスキャン倍速」については、Z1シリーズでは採用を見送られている。直下型LEDバックライトでは、液晶が素描画に正確に連動したスキャニングが実現できるが、上下にLEDモジュールを配置したエッジ型LEDバックライト型LEDバックライトではこれが難しい。
ある意味、これもエッジ型LEDバックライト型LEDバックライトの妥協点ということになる。左右にLEDモジュールを配置することでWスキャン倍速は可能なはずだが、それではエリア駆動を行なうためのエリア分割数が大まかになりすぎてしまう(縦辺の方が横辺に比べて短いため)。Wスキャンを上下方向ではなく左右方向で行なえば出来る気もするが、実はそうもいかない。現状の映像信号フォーマットが画面上部から下部に向かって送られてくる関係で、これをやろうとすると、映像1フレームまるごとのバッファリングが必要になり、さらに1フレーム分の遅延が必須となってしまうのでよろしくないのだ。
実際に動画を見てみると、補間フレーム挿入付きの倍速駆動(モーションクリア機能)を有効化した場合にはスムーズな動画表示になるので、ZX9000/9500などの直下型LED機と比較しても遜色はないと感じる。ただし、モーションクリア機能オフ状態(補間フレーム挿入キャンセル状態)での表示は、たしかに若干47Z1は分が悪くなるかもしれない。ここは製品選びのポイントとなる部分ことだろう。
REGZAがブームに火を付けたといっても過言ではない、超解像処理が、新Z1シリーズでは進化を遂げた。
Z1シリーズの超解像処理には「レゾリューションプラス4」という名前が付けられ、第四世代目であることがアピールされる。
この新超解像処理の特徴はMPEGデコーダーからの情報を元に適宜超解像処理とノイズ低減処理を行なうという画期的なモノだ。
レゾリューションプラス4の新機能。MPEGデコーダとリアルタイム連携した超解像処理とノイズ低減を行なう |
現在のデジタル放送はMPEG-2ベースであり、JPG静止画に近いI(Intra Picture)フレームと、これから予測したフレームであるP(Predictive Picture)フレームと、IフレームとPフレームの双方から予測して生成されるB(Bidirectionally Predictive Picture)フレームという3種のフレームがある。
デジタル放送やDVDなどのMPEG-2映像を見ていて、たとえ静止画でも、なんというか0.5~1.0秒くらいの周期で映像の描かれ方がリフレッシュされるような現象に気がついたことがないだろうか。Iフレーム周期で映像が高画質になり、0.5~1.0秒くらい時間経過の中で画質が劣化していく。このリズムはビットレートが低いMPEG映像であるほど顕著になって分かりやすくなる。
REGZAでは超解像処理を適用することで映像フレームに埋もれていた解像度情報を復元することを試みたわけだが、Iフレームが一番、解像度情報が潤沢で、PフレームとBフレームは必然的に解像度情報が劣化する。IBPの各フレームで解像度情報の消失具合が違うのに、同じレベルの超解像処理を行なってしまうと、時間進行方向に連続的に映像を見たときに、復元された解像度情報がIフレーム周期のリズムで変化する様が見えるようになる。もともと素で表示していたときは、そうした劣化した解像度情報は淡くなっていたのでIフレーム周期のリズムがばれなくて済んでいたのに、超解像処理によって目立つようになってしまった……というわけだ。
「これはまずい」ということで、Z1シリーズでは、REGZA自身が再生(デコード)するケース、具体的にはデジタル放送視聴時や録画した番組の再生時に限り、MPEGデコーダーが、今デコードしたフレームの情報を超解像処理エンジンにフィードバックする仕組みを実装したのだ。これは、なかなか画期的で、さすがは半導体の東芝といったところか。
このMPEGデコーダ連携システムは、超解像処理だけでなく、三次元ノイズリダクションの仕組みにも作用するように改良された。
これにより、各フレーム種別に適合した超解像処理とノイズ低減処理が行なわれるようになり、Z1シリーズでは安定した高画質が得られるようになったとされる。
実際にワールドカップ中継などをZ1シリーズで見てみたが、Iフレーム周期そのものがわかりにくくなっており、それでいて安定した解像度情報の復元が行なわれていることがわかる。
ノイズ低減の精度も高く、暗い映像で目立ちやすい、Iフレーム周期リズムのブロックノイズの出方もうまく押さえ込まれている。また、心なしか、MPEG映像特有の時間方向のチリチリしたざわめき感も低減されているようにも感じられた。
テレビ放送以外の、外部入力映像に対しての超解像処理の効果についてもインプレッションを述べておこう。
Z1で特に感動したのは、超解像を有効にしたときの微妙な肌色のディテール感の鮮明な描き出しだ。肌の肌理の質感がリアルに見えるのだ。映像になると、化粧などのメイクアップ効果によりタレントや女優の肌の質感はかなり均一化されて見えてしまうモノだが、Z1て超解像を有効にすると、女優の化粧の厚さによって肌の見え方が変わって見える。すっぴん近ければ近いほど、肌の肌理の質感が伝わってくるが、厚化粧だとプラスチックのように平坦のままに見えるのだ。これは、超解像を使った映像の別の楽しみ方の発見であった。
近隣の類似箇所の情報を応用して解像度情報を復元する自己合同性型超解像技術。CELL REGZA専用機能がレギュラーモデルに降りてきた |
レゾリューションプラス4の新世代超解像では、CELLレグザ専用の機能だった「自己合同性型超解像処理」が組み込まれるようになった。これは720p以下の映像に効くもので、近隣の近似箇所の情報を活用して解像度情報を復元するというもので、実写はもちろんだが、CG映像に効果的に効く。
今回の評価でもっとも、この自己合同性型超解像の効果がわかりやすかったのはゲーム機からの映像だ。PS3やXbox360は、720p出力のゲームが多いのだが、これが自己合同性型超解像によって、文字やゲージが自信ありげに描き出されるようになり、それだけでなく、輪郭やテクスチャがとてもクリアに見えるようになるのだ。Z1シリーズではゲームダイレクト2機能を利用すれば超解像処理を有効にしても低遅延は維持されるので、一度は活用してみることをお勧めする。
プリセット画調モードを「ゲーム」に設定。「ダイレクトモード」をオンにすることでゲームダイレクトモード2が有効化される | ゲームダイレクトモード2有効化中でもレゾリューションプラス(超解像処理)の設定が不活性にならないことに注目 |
720p映像・超解像オフ | 720p映像・超解像オン |
480p映像・超解像オフ | 480p映像・超解像オン |
自己合同性型超解像技術がゲームダイレクトで効くのは嬉しい。細い線分の表現や輪郭表現が美しくなる。
プリセット画調モードは本連載第99回「REGZA46ZH500編」の時と傾向が変わらないため、本稿では省略する。各プリセット画調モードのインプレッションと活用方針はそちらを参照して欲しい。なお、「映画プロ」は、従来は映画プロ1と映画プロ2が存在したが、映画プロ1が削除され、映画プロ2が単一の映画プロモードとして残されることとなった。
おまかせ | あざやか | 標準 |
テレビプロ | 映画プロ(従来の映画プロ2) |
ゲーム | PC |
■ まとめ
「RGB-LEDよりも白色LEDがくる!」としてRGB-LEDをスルーして直下型白色LEDの採用に注力した東芝は、今度はエッジ型白色LEDを本命視し始めたようだ。
せっかく直下型のエリア駆動で実現させた自発光に近い液晶画素画素表現を捨てるのは惜しい…ということで、今回のREGZA Z1でエッジ型なのにエリア駆動を実現させるアイディアを持ってきた。
直下型LEDバックライトの方が優位なのは間違いないし、直下型の方が不得意な映像が少ない点で優れているのは事実だが、製造コストの安さ、消費電力の少なさ、重量や体積の小ささのことを考えれば、「これで十分かも知れない」という結論にたどり着くことを納得させられるだけの完成度が、今回のREGZA Z1にある。なにより、IPS液晶とのマッチングがよいと感じる。
ところで、REGZA Z1のように、上下に配置したエッジ型LEDバックライトモジュールで上下方向の縦帯状の光量グラデーションを作り出せるならば、左右にもエッジ型LEDバックライトモジュールを配置して左右の横帯状の光量グラデーションも作り出すようにしてはどうか、と思った人もいることだろう。たしかに、こうすることで縦横のマトリックス状の光量グラデーションを生成できるようになるため、より直下型LEDバックライトのエリア駆動に近いものが実現できる。実際、この手法の研究が行なわれていると聞く。今後、エリア駆動対応型のエッジ型LEDバックライトシステムはさらに進化していくはずだ。
そして、今回、超解像処理やノイズ低減を、ついにMPEGデコーダと連携させるところまでやってきたことに驚かされた。デコーダから全ての高画質化処理ロジックまでを垂直統合で開発しているからなさせる東芝らしいアプローチだ。
地味な改善といわれそうだが、筆者的にはむしろ逆でテレビ放送の高画質化処理が次のステップに踏み出した、という実感を持つ。今後の進化にも期待がかかる。
是非とも今度は、紅白歌合戦でお馴染みの、全画面で紙吹雪が舞う際に発生する荒れ狂うブロックノイズなどもこの仕組みを進化させて解消して欲しいモノだ。
(2010年 6月 17日)