日沼諭史の体当たりばったり!
第43回
集まれ”耳をふさがない”3機種よ! ambie、骨伝導、AQUOSサウンドパートナー
2021年10月29日 08:30
もはや世の中に広く根付いたと言えるWeb会議。今後、コロナ以前のような日常を取り戻すことがあったとしても、すべての会議がリアルに戻ることはきっとないだろう。
そして、Web会議を1年半以上も続けてきたことで、多くの人が自分なりの「ノウハウ」を獲得できていることと思う。それでも、今よりもっと快適なオーディオ・Web会議環境を求めて、新しいアイテムが出れば飛びつきたくなるもの。少なくとも筆者はそうだ。
新しいアイテムという意味でここ最近のトレンドとして気になるのは、「耳をふさがない」イヤフォンなどが登場してきていること。骨伝導型のイヤフォンやネックバンド型スピーカーもそうだが、他にも違った形で耳をふさがず、周囲の音も聞き取れるようにする製品が現れている。
屋外で使っているときの危険察知や、在宅勤務中の来客など、イヤフォンをしていても周囲の音を聞けるようにしておきたいシチュエーションは少なくない。今回はそれら「耳をふさがない」系のイヤフォンやスピーカー3種類を試してみて、Web会議や日常における使い勝手をチェックしてみた。
Web会議&日常用途における4つのチェックポイント
用意したイヤフォン・スピーカーは、ambieの完全ワイヤレスイヤフォン「AM-TW01」(15,000円)、シャープのネックスピーカー「AQUOSサウンドパートナー AN-SC1」(19,500円から)、そして筆者が以前から使用しているAfterShokzの骨伝導イヤフォン「OpenMove」(9,999円)の3種。これらを試すにあたりポイントとしたのは以下の4点だ。
- Web会議における目立たなさ
- 音漏れの少なさ
- 音声の聞こえやすさ
- 適切なホールド性
筆者としては、Web会議ではイヤフォンをしているのができるだけ目立たないようにしたい。気心の知れた相手とのミーティングならともかく、筆者の場合どちらかというとオンラインインタビューが多いので、大げさな装備に見えると、特に初対面の人には威圧感を与えてしまわないかが心配になる。ゴツいヘッドセットだと「本気感」がかいま見えてしまうのも、なんだか気恥ずかしい。映像上は見えにくいほうが自然でいいはずだ。
「音漏れの少なさ」は、自宅で使う限りはあまり意識しなくても良さそうではある。ただ、オフィスやコワーキングスペースでWeb会議するときや、屋外で音楽を聞くときは気になる部分。また、Bluetoothだとマイクの音質が劣化しやすいため、外部の有線マイクに頼っている人もいるだろう。相手の音声はイヤフォンでしっかり聞き取り、自分の声は外部マイクに吹き込む、という形をとる場合、イヤフォンから漏れた音がマイクに入り込む可能性があるので、注意しなければならない。
「音声の聞こえやすさ」は、今回は3種類とも装着方法が異なるので、耳穴に固定するインイヤー型・カナル型のイヤフォンなどと違って、差はそこそこあるものと思われる。人の声がはっきり聞こえるかどうかはもちろん、オーディオ機器として音楽を楽しめるかどうかも確かめたいところ。
「適切なホールド性」は、単にがっちり動かないように固定されればいい、というわけではない。軽く身体や頭を動かしただけで外れてしまうのは論外だが、反対に強くホールドされてしまうと痛みが出てしまうこともある。使い続けたときの快適さに直結する部分でもあるので、Web会議でも、屋内外で音楽を聞くときにも、重要なポイントだ。
新発想のイヤリング型イヤフォンambie「AM-TW01」
まず最初に紹介するのがambie「AM-TW01」だ。一見すると「ああ、骨伝導ね」と思ってしまいそうだが実は違う。なんとなく「豆」っぽい見た目の、ユニークなイヤリング型Bluetoothヘッドセットだ。対応コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Adaptiveで、バッテリー駆動は約6時間。IPX5の防水性能を備える。
「C」の形をした本体で耳たぶを挟んで固定するので、なんとなく骨伝導風なところもあるが、音は内蔵の超小型スピーカーによって耳穴間近から出力されるため、構造的には普通のイヤフォンに近い。もちろん耳穴をふさぐことはないので周囲の音に気付くこともできる。
ambieの「Web会議における目立たなさ」という点では、イヤリングレベルの小ささではあるものの、映像上だとひと目で「何か付けているな」というのがわかる。ただ、これまでにない形状なので、いい意味で相手からツッコんでもらえて話題になりやすいという“メリット”もあるだろう。
「音漏れの少なさ」は、ambieのやや苦手とするところ。スピーカー部が露出しているので音漏れを抑えにくい。といっても、すぐ隣に立っている人には確実に聞こえるけれど、1~2メートルも離れればほとんど聞こえなくなる。外部マイクを使ってWeb会議するときにも、よほど大音量にしない限りイヤフォンの音声がマイクに入り込むことはない。
「音声の聞こえやすさ」は、人の声を聞き取ることについては音質的に全く問題なし。aptX Adaptive対応で、対応環境であれば高音質・低遅延を実現できる。極低音は少し物足りないけれど、中高音域はクリアかつ伸びもあり、音楽鑑賞用としてもしっかり聴かせてくれる音質だ。やや耳の形状に左右されるところもある(スピーカー部が耳穴に近くなるほど低音を感じやすい)ので、音質については人によって印象が異なるかもしれない。
「適切なホールド性」という部分は、耳たぶ固定なので簡単に外れてしまうのではないかと不安に思える。が、ランニングしてもずれたり外れたりしないしっかりしたホールド性をもちながら、長時間の装着でも痛みが出ないちょうどいいバランスになっているようだ。
スペックシート上は片耳約4.2g(実測は4.4g)という軽量さもあって、むしろ装着しているのを忘れてしまうほど。また、amibie自体は耳の外側にぶら下がる形なので、筆者のようにメガネをかけていてもツルが干渉したりしない。イヤフォンでありながら、メガネユーザーでも違和感なく使えるのはうれしいところだ。
ネックになる部分があるとするなら、その独特の形状のせいで装着がやや手間取るところだろうか。片手で耳を引っ張りつつ、もう片手でスライドさせるように動かして耳を挟み込み固定する、という手順で、さっと素早く使い始めるのが難しい。
また、「小さい方の豆」が耳穴に向くように取り付けるのが正しいのだが、いざ耳たぶに取り付けようとするとどちら向きになっているかが直感的に把握できず、わりと高い確率で反対方向に取り付けそうになったりもする。
もしかしたら、もっと慣れればいずれ片手でできるのかもしれないし、意識することなく正しい向きで取り付けられるのかもしれないが、数十回は着脱を繰り返しているのに筆者はいまだに両手でしか装着できないし、向きを間違えがち。
「大きい方の豆」に内蔵しているボタンも、押し込むのに少し力が必要で、親指と中指で本体を押さえながら人差し指でボタンを押す、というやり方をせざるを得ず、操作に手間取る。本体が小型で軽量な分、余計にそう感じやすいところもありそうだ。
単独でAlexaが使えるネックバンド型スピーカー「AQUOSサウンドパートナー AN-SC1」
「AQUOSサウンドパートナー AN-SC1」は、シャープ製のネックバンド型マイク内蔵Bluetoothスピーカー。対応コーデックはSBC/AAC/aptX/aptX Low Latencyで、バッテリー駆動はBluetooth通信で約10時間、Wi-Fi通信で約6時間。防水・防じん性能は備えていない。締め切り間近になってしまったが、「GREEN FUNDING」で10月31日まで販売しており、価格は1万9,500円となっている。その後の一般販売はまだ未定のようだ。
しばらく前から流行しているネックバンド型だが、シャープとしてもAQUOSサウンドパートナーシリーズとしてリリースしている。AN-SC1はそれをベースに、宅内ネットワークにWi-Fi接続して、Amazon Alexaによる音声アシスタント機能をスタンドアローンで利用できるのが特徴の1つとなっている。
最初に専用スマートフォンアプリでWi-Fi設定し、Amazonアカウントの連携設定をすれば準備完了。本体右側のボタンを一度プッシュしてから音声命令することで、Amazon Echoシリーズと同じように楽曲再生や情報取得、スマートホーム機器の操作などが可能だ。
スタンドアローン型なので、いったん連携設定をしてしまえばスマートフォンとは無関係に音声命令を実行できる。室内のどこにいても、小声で好きな楽曲を呼び出したり、室内の照明をオンオフできたりと、あらゆる操作がいつでもできる「手ぶら感」は面白い。なお、少なくとも現時点ではAmazon Alexaのアナウンス機能には対応していないようだ。
一方、今回の本筋に話を戻すと、「Web会議における目立たなさ」はご覧の通り、ネックバンド型ということで当然のことながら目立つ。カラーリングがブラックとシルバーなので、白黒ストライプの上着なら多少紛れるところもありそうだが、それでもネックバンド型スピーカーを使っていることは明らかだ。
「音漏れの少なさ」についても、完全にオープンエアーなスピーカーで、はっきりとした指向性のあるスピーカーでもないため、ばっちり周囲に聞こえる。他のネックバンド型スピーカーと同様、屋外の人混みでの使用はさすがにためらわれるだろう。
外部マイクを使うときも、AN-SC1から漏れ出た音声が入り込んで、話している相手にとってはエコー風に聞こえてしまう可能性があるので、それを防ぐにはかなり音量を絞らなければならない。が、そうすると当然、相手の声を聞き取りにくくなる。
ただ、耳から多少離れた位置にあるスピーカーから聞く形になるので、「音声の聞こえやすさ」という意味では今回の3種類のなかでは一番自然だ。音を絞りすぎない限り人の声は聞き取りやすいし、音楽再生時は音に包まれている感じも強い。
サウンドとしては中高音域が目立つ。イヤフォンよりスピーカーユニットが大きいだろうと思われる分、低音域はもう少し頑張ってほしいところ。オーディオリスニング向けというより、会話中心のテレビ音声向けのような感じだろうか。
「適切なホールド性」という面では、肩に載せているだけとはいえ、身体を多少傾けたとしても大きくずれたりすることはない。ネックバンド型としては約92g(スペックシート)とかなり軽量で肩首にかかる負担が少なく、少ないストレスで長時間使用が可能だ。
それ以外の特徴として、専用のBluetooth送信機が付属することが挙げられる。Bluetooth非対応のテレビやオーディオ機器などと組み合わせて使用するもので、たとえばテレビの音声出力から送信機に接続(3.5mmアナログ、または光デジタル入力)すると、テレビ音声をAN-SC1で聞けるようになる。
送信機とAN-SC1はaptX Low Latencyに対応しているため遅延が少なく、映像と音声のずれを最小限にしながらテレビ番組を楽しめる。ただし、今回お借りした送信機を他の複数のBluetoothイヤフォンと接続しようとしてみたが、いずれもペアリングが成功しなかった。送信機はAN-SC1専用として考えたおいた方がいいだろう。
コロナ禍で定番となった骨伝導イヤフォンAfterShokz「OpenMove」
コロナ禍のWeb会議ニーズで人気が高まっているAfterShokzの骨伝導イヤフォン。そのエントリーモデルに位置付けられるのが「OpenMove」だ。コーデックはSBCのみ対応で、バッテリー駆動は約6時間。IP55の防水・防じん性能を備える。
首の後ろに回して両耳に掛け、振動子を内蔵した先端部分をこめかみに当てた状態にすることで、骨などを伝って音が聞こえる仕組み。骨伝導イヤフォンは他にもさまざまな製品が存在するが、耳まわりの形状に依存する場合があって、フィット感については個人差が大きかったりもする。そのなかでもAfterShokz製品は、比較的幅広いユーザーにマッチしやすい構造になっている印象だ。
エントリーモデルかつ発売が2020年ということもあり、対応コーデックがSBCのみ、バッテリー駆動時間が6時間といったスペック面では、今回紹介している他製品より劣ってしまうところもある。が、IP55準拠で防水だけでなく防じんにも対応しているという点で、スポーツ用途や屋外でより利用しやすいモデルとなっている。
「Web会議における目立たなさ」については、振動子がやや大きめではあるものの、首の後ろに回して装着することから、正面から見たときには意外と目立ちにくい。横を向いたりすると丸見えになるが、本体は細身なので相手にとってはそこまでインパクトのある見た目ではないはずだ。
「音漏れの少なさ」は、今回のなかでは最も少ない。骨伝導といえども多少の音漏れはあり、耳を近づければ聞こえてくる。ただ、音量を大きめにしたとしても、数十cmは離れることになる外部マイクにその音が入り込む可能性はほとんどないと言っていいだろう。
「音声の聞こえやすさ」については、通常のスピーカーとはやや異なる骨伝導ならではの聞こえ方になる。ごく微細なディティールは失われてしまっているような感じはするけれど、音楽は中低音がなかなか力強いし、音声も明瞭。ただし、音域によって骨伝導による伝わりやすさが違うのか、たとえば低めの声が不快な振動とともに聞こえてくることがまれにある。
「適切なホールド性」という点では、耳に掛けていることもあってしっかり固定される。ランニングで使用しても外れるようなことはない。けれども、こめかみが圧迫されるせいか、筆者の場合は長時間使用すると頭痛の原因になることもあった。注意しないとメガネのツルが挟まって、さらに痛みが出ることもある。頭の大きさによる個人差もあるかもしれないので、実店舗で試用できるようならあらかじめ確認しておきたいところだ。
Web会議ならambieかOpenMove、エンタメ重視ならAN-SC1
というわけで、Web会議用途に絞ってみると、目立たなさや音漏れの少なさという点から、ambie「AM-TW01」とAfterShokz「OpenMove」が有力な候補に挙がるだろう。ホールド性も考えれば、装着しているのを忘れるほど違和感のないambie「AM-TW01」が一歩リードする。高音質・低遅延なaptX Adaptiveなど対応コーデックが多く、スマートフォンとの相性がいいので、普段の音楽鑑賞やカジュアルなスポーツシーンなど、活躍の場は広そうだ。
「AQUOSサウンドパートナー AN-SC1」は、Web会議向けとはさすがに言えないが、Amazon Alexa搭載による機能面の実用性の高さがやはり魅力と言える。Amazon Prime Musicなどの音楽をすぐに聞けるうえ、付属のBluetooth送信機をテレビと組み合わせて、テレビから離れた場所でもボリュームを大きくすることなくはっきり音を聞けるという、日常のエンタメ用途でも使いどころが多い。
AfterShokz「OpenMove」は目立たず、音漏れも少ない、まさしくWeb会議向きな製品。防水・防じん性能が高く、スポーツ用途でも利用しやすいオールラウンドな製品だ。ただし、人によっては長時間のミーティングで使用するときに頭痛の原因になる可能性があるため注意したい。
コロナがやや落ち着いた今、これからは少しずつ外出する機会も増えてくると思われるため、こういったヘッドセットの使い方としてもWeb会議一辺倒ではなくなってきそうだ。「耳をふさがない」ことで周囲の音もしっかり聞き取れるメリットを活かした、屋内外での新しい楽しみ方もイメージしながら選んでみてほしい。