ミニレビュー

耳を塞がない「ambie」、完全ワイヤレス化で“解き放たれる”

ambie「AM-TW01」

2017年に、耳を塞がずに“ながら聴き”できるイヤカフ型イヤフォンを発売し、ながら聴きイヤフォンの代名詞的な製品となっているambieが、ついに完全ワイヤレス化。「AM-TW01」(価格は15,000円)が、9月中旬以降にいよいよ発売となる。それに先駆け、テストサンプル機をお借りしたのでインプレッションをお届けする。

なお、AM-TW01には想定を上回る予約があり、初期ロットが予約完売。店舗などでの一般販売は、10月上旬以降を予定しているが、予約分最後の発送が終わってからとのことだ。

ambieのイヤフォンは、勾玉やひらがなの「つ」の字のような形状をしたイヤカフ型が特徴で、耳に挟んで利用する。これまで、有線モデルの「sound earcuffs」、Bluetooth対応となったネックバンド型の「wireless earcuffs」を展開しており、今回、完全ワイヤレス化を実現し、本当の意味でイヤカフを着ける感覚で使えるようになった。

テストサンプル機と製品版の違いは、ケースの仕様とマイク音質。製品版のケースは質感にシボ感が加わり、マットな仕上がりになるという。そのため、写真はあくまでサンプル機だとご理解いただきたい。マイク音質は最終調整前とのことで、今回はチェックしていない。

テストサンプル機のケース。形状はこのままだが、製品版では表面の質感がマットな仕上がりになる

通常のイヤフォンは、耳に挿入していると、耳栓のように周りの音を遮断して音楽に没頭できるように作られているが、ambieのイヤフォンは周囲の音が聞こえつつ、音楽も楽しめる。

構造も変化、大きめの筐体で装着しやすく

従来のambieイヤフォンは、耳の外側の筐体に収めたドライバーからの音を、音導管で耳穴の近くまで伝えることで聴こえる仕組みだったが、完全ワイヤレス化で、耳の内側に来る部分にドライバーを移動。耳穴の近くから音が出て、耳の中へ音を送り込むような構造は今までと同様で、周囲への音漏れを抑えながら、装着している人にだけ聴けるようになっている。詳しくは後述するが、音の聴こえ方は、“耳のすぐそばでスピーカーが鳴っている”ようなイメージだ。

左側が耳の内側に来る部分でドライバーが搭載されている。右側はBluetoothのアンテナやマイクなど

Bluetooth 5.2準拠で、コーデックはSBC、AAC、aptX、aptX Adaptiveをサポートしている。

筐体の外観も大きく変わった。初代の有線モデルやネックバンド型「wireless earcuff」と異なり、バッテリーやアンテナも筐体に収める必要があるためだろう、従来のモデルと比較して1周りほど大きくなっている。また、従来は先端部分が分離できるイヤーピースとなっていたが、「AM-TW01」では一体化している。

初代モデルとの比較。完全ワイヤレスの方が、耳の外側に来る部分と内側に来る部分の両方が有線モデルよりも大きくなっている
音が出る穴の形状も異なる
バンド状の部分にambieのロゴが入っている
「LR」は筐体の充電端子付近にプリントされている

筐体が大きくなると、装着感の低下が心配になるが、筆者は逆に、耳への装着がしやすくなったように感じられた。装着後の重量感もあまり感じず、カナル型イヤフォンのような圧迫感もない。ambie製品を初めて使うという人は、耳たぶを挟まれる感覚に少し違和感を感じるかもしれないが、使っているうちに気にならなくなるだろう。初代モデルを使用している筆者には、むしろ挟む力が緩和されて快適な装着感だと思った。

しっかり手でホールドできるサイズ感なので、両手でちゃんと装着すれば、完全ワイヤレスで気をつけたい、脱着時の落下・紛失を防げる。装着後のホールド力も高いため、一般的な完全ワイヤレスより、落下の心配は少ない。

丸くなっている部分がしっかりと耳をホールドする

一方で、装着する際に耳に挟まなければならないので、両手を使う必要がある。片手での装着もできないことはないのだが、失敗して落下する可能性が大きいので、両手を使って、耳たぶを引っ張りながらはめ込むように装着するのがやはり安定する。

そのため、屋外で立ったまま、充電ケースから片方ずつ取り出して付けようとすると、充電ケースを置く場所が無いので邪魔になり、装着しにくい。両方取り出して充電ケースを仕舞ってから片耳ずつ付けようとすると、付けてないもう片方が落ちそうになるので、片方ずつ取り出して装着してから、反対側を……と、やった方がいいだろう。

耳を塞がずに周囲の音が聞こえるイヤカフ型を活かして、自宅など、落ち着いて付けられる場所で付けてそのまま付けっぱなしにしておくのがよさそうだが、完全ワイヤレスなので、使っていない時はケースに入れて充電しておきたいところ。“装着の作法と充電ケースとの兼ね合い”は少し気になるところだ。

音質チェック、ambieの長時間聴けるサウンドはそのまま

音の特徴としては、密閉されていないので、低域は弱めだ。そのため、臨場感やボーカルの厚みといった部分はあまり感じられないが、中域の部分がはっきりと聴こえるため、ボーカル曲の歌詞は聞き取りやすい。高域もやや抜けていくので、キツさは無く、聴き疲れせずに長時間聴ける音だ。

従来のambieのイヤフォンと同じ傾向のサウンドとも言える。楽曲に没頭するというよりも、BGMとして流し聴きで楽しむのにちょうど良い音で、同時に周囲の音も自然に聞こえる。テレワークが主流になりつつある今は、家族に呼ばれたり、宅配便などが来てたりしても対応できるのは非常に便利だ。しかも完全ワイヤレスなので、装着したまま移動できるのも楽だ。

音の特徴はほとんど変わらないわけだが、よりダイレクトに音が耳に届くようになった印象がある。有線モデルよりもボーカルや人の声が聴きとりやすくなっていた。ドライバーの位置が耳穴に近づいたからだと思うが、「AM-TW01」の方が音源が耳元に近い印象だ。しかも、完全ワイヤレスでAACコーデックでの接続でも有線モデルと同等の解像感で聴こえる。

特に人の話す言葉がはっきりと聴こえるため、通話で活躍するイヤフォンだと感じる。低域と高域が弱く、中域がはっきりとしているので、“声の厚み”は味わえないが、話している言葉がしっかり聞き取れるため、メモが必要な会議などでも役に立ちそうだ。

筐体には物理ボタンが付いており、音楽の再生/停止、着信応答、曲送り/曲戻し、音量調整が操作できる。また、ケースから取り出した状態での電源ON/OFFもボタンで行なえる。筐体の大きい方にボタンがついているのだが、最初に見つけるまではなかなか押すのが難しく感じた。なお、耳の後ろに触れるイメージで筐体に触れると楽に押せると思う。

親指で触れている部分にボタンがある

気軽な装着感と音で、音楽も会議も快適

試しにiPhone12 miniと接続して、曲を流しながら外を散歩してみた。ケースはポケットに入れていたが、大きさもコンパクトなので、歩いても邪魔にならない。周囲が少し騒がしい状況でも、音量を少し上げれば音楽もしっかり聴こえてくる。

ポケットにいれておいても気にならない厚さ

車通りの多い道に出ても、音量をまた少し上げるだけで音楽がしっかり聴こえながら周囲の音も耳に入るので、散歩やランニングのお供としても十分に活躍しそうだ。線路沿いの道で電車が走っていくときはさすがに聴こえなくなってしまうが、散歩中はそこまで気にならない。軽く走ってみても耳からズレたり落ちたりすることがなく、イヤフォン本体はIPX5相当の防水対応なので、汗や軽い雨でも気にせず使える。

これまでも使い勝手の良さが気に入って有線の初代モデルを使ってきたが、完全ワイヤレスになって、さらに自由度が増した。コロナ禍で自宅に引きこもり、友人とも長時間の通話をする機会が増えたが、席を離れるときに装着したままにしておけるのは、やはり便利だ。

筆者は普段PCに有線モデルを繋いで通話することが多いのだが、話題に合わせてちょっと離れた位置にある本などを取ろうとして微妙に届かなくて無理な体勢になって身体を痛めたり、結局一度外して付け直したときにイヤーピースが外れて飛んでいったりと、ambieのメリット故に耐えられる欠点があったが、完全ワイヤレス化した「AM-TW01」ではこれらの悩みから解放される。スマホに繋いでいるときも、ケーブルの存在を気にしなくて良いのはやはり楽だ。

一方で、連続再生時間が約6時間なので、だらだらと通話していて、想像以上にバッテリーが減っていた……という場面も。もっとも、これはコロナ禍だからこそ感じる事だったりする。通勤・通学などの移動時に音楽を聴き、会社や学校でケースに仕舞って充電という使い方をすれば、イヤフォン単体でのバッテリー持続時間は十分だろう。

着け心地もかなり良い仕上がりで、耳が痛くならず、両手を使うものの装着が従来機より楽なのも今回使ってみて気に入ったポイントだ。耳を塞がずに音楽を流して気分をあげたり、そのまま仕事の会議で使ったり、着けたまま飲み物を取りに行ったりもできる。

ネックバンド型の「wireless earcuffs」であれば、ワイヤレスの利点と、充電しながらでも使えるのでバッテリー面の使い勝手も良いのだが、残念ながら販売終了してしまっている。ただ、もしネックバンド型のモデルが販売されていても、筆者は「AM-TW01」を購入したいと思った。

一番の理由は筐体の形状と着け心地だ。ネックバンド型のモデルは有線モデルと筐体の形が共通で、筆者の場合、この形状では長時間着けていると、挟んでいる箇所に痛みが出てしまうことがあるのだ。今回「AM-TW01」を普段の有線モデルと同じように利用してみたが、いつも起こる痛みがなく利用でき、筆者の耳にはこの筐体の形状が合っている。

外音取り込み機能を持った完全ワイヤレスイヤフォンでも似たようなことはできるが、“常に耳が塞がってないこと”や“自然な外音が聞こえる”快適さに、「AM-TW01」の魅力がある。今までのambieが完全ワイヤレス化しただけではない、手軽さ、気軽さがさらに強化されたイヤフォンだ。

野澤佳悟