鳥居一豊の「良作×良品」

第78回

小型サウンドバーで迫力のゲーム! パナソニック「SC-HTB01」で「FF XIV/バイオ RE:2」

サウンドバーの“プライベート向けの上級モデル”

Dolby AtmosやDTS:Xといった最新のサラウンド技術も本格的な普及段階に入ってきた。最新の洋画の多くはAtmosやDTS:X制作が一般的になってきたし、動画配信サービスでも採用が増えてきている。そして、ホームシアター機器でもAVアンプがエントリークラスを除いて対応しているほか、サウンドバーもミドルクラス以上のモデルでの採用が増えてきた。

パナソニックのサウンドバー「SC-HTB01」
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今回紹介するパナソニックのサウンドバー「SC-HTB01」(オープンプライス/実売45,000円前後)も、AtmosやDTS:Xに対応する。3Dサラウンド機能として「DTS Virtual:X」も採用しているので、一体型のサウンドバーながらも高さ方向の再現も可能な立体的なサラウンド再現が可能だ。

実売4万円ほどでAtmosとDTS:X対応というのもあまり例がないが、SC-HTB01にはもうひとつの大きな特徴がある。それは、オンラインゲームの「FINAL FANTASY XIV」(以下 FF XIV)推奨となっている点だ。「FF XIV」のプレーにおける検証基準をクリアーしたほか、スクウェア・エニックスと共同開発した3つのゲームモードを搭載している。

さらに、スピーカーのサイズは横幅43cmとコンパクトになっており、PC用モニターに多い20~30型ほどの画面とマッチしやすい。デスクトップに置いて使うこともできるし、ゲーム用として自分の部屋で使う場合でも邪魔にならずに設置できる。

サウンドバーというと、一般的には40V型以上の薄型テレビとの組み合わせを想定したものが主流で、比較的コンパクトなものでも60~70cmほどの横幅のものが多かった。高級機となると大画面テレビに合わせて1m前後のものも少なくない。そんな流れとは逆に、よりコンパクトでモデルがエントリークラスに増えてきている。これは上述したようにPCゲーム用のサラウンドスピーカー、プライベートルーム用と言えるモデルで、価格は1~2万円ほどのものが多い。

こうした世の中のトレンドと比べると、SC-HTB01はちょっと変わっている。実売4万円は十分にお手頃と言えるが、エントリークラスと言えるほど安価ではない。しかし、サイズ感はプライベートルームでも手軽に使える身近なもの。それでいて、サラウンド機能は最新のAtmos・DTS:X対応と本格的だ。言わば、“プライベート向けの上級モデル”とも言える独特な位置づけにある。

サウンドバーとしては非常に小さい

サイズは実にコンパクトで、55V型と比べると頼りなく感じるほど さっそくお借りした取材機を自宅の試聴室にセッティングしてみた。まずは、55V型の東芝「55X910」を置いているAVラックに設置。サウンドバーの一般的な設置だ。横幅43cmと言えば、HiFiオーディオコンポの標準的な大きさだが、サウンドバーとして見るとやけに小さい。55V型の薄型テレビと組み合わせると少々頼りない印象さえある。置き場所に困らないのは良いが、肝心の音の迫力やスケールの大きなサラウンド音場が得られるのか、少々心配になる。

いつも通り、薄型テレビを設置しているAVラックの上にサウンドバーを設置。AVラックの背が低いので、インシュレーターを使ってやや斜め上を向くようにしている

まずはじっくりと製品を見ていこう。コンパクトな本体の中には、前向きの配置で40mmのフルレンジスピーカーと14mmのドーム型ツイーターを左右に配置。内部には8cm口径のサブウーファーと、上下対向配置の8cm口径のパッシブラジエーターを備える。サブウーファーとパッシブラジエーターの低音は本体の中央部にある開口部から放出されるほか、パッシブラジエーターの低音は底面からも放出される。ユニットもよく出来ていて、ツイーターは50kHzまでの超高域再生が可能なハイレゾ対応のもの。フルレンジスピーカーはネオジウムマグネット採用でレスポンスがよくクリアな音を実現しているという。なかなか本格的な作りだ。

ボディも樹脂製ではあるが強度の高い作りで、インナーシャーシを底面のアンダーパネルと天板と側板が一体化した厚めのパネルで囲んだ構造となる。ひ弱な感じもなく、しっかりと剛性感のあるボディだ。

SC-HTB01の外観。横幅43cmだけでなく、高さも奥行きもスリムでコンパクトだ
スピーカー部分。保護ネットの奥に2ウェイ構成のスピーカーが配置されている

前面はサブウーファーの開口部と動作状態を示すインジケーターのほかは、保護ネットに覆われており、すっきりとした見た目だ。操作ボタンは左側面に配置されている。背面には入出力端子があり、ARC対応のHDMI出力、4K/60pやHDR信号パススルー対応のHDMI入力も備えている。このほかに光デジタル音声入力があり、Bluetoothによるワイヤレス接続にも対応している。

Dolby AtmosやDTS:X、DTS Virtual:X対応を示すロゴマークがボディ上面に印刷されている
側面にある操作ボタン。電源のほか、音量調整、入力切り替え(Bluetoothペアリングボタン兼用)の最小限のもので、そのほかの操作は付属のリモコンで行なう
SC-HTB01の背面。ACアダプターを接続する電源端子や入出力端子は右側に集中して配置されている
付属のACアダプターと電源コード
背面の接続端子部。4K/60p、HDR対応のHDMI入出力が1系統。光デジタル音声入力を備える。USB端子は将来のバージョンアップで使う専用端子
底面部。パッシブラジエーターの部分に開口部が設けられ、低音が下向きにも放出される。脚部は簡易的なゴムシートだが、四方と中央の5箇所に配置される
インジケーター部分の上部にあるサブウーファーの開口部。低音の共振を抑えるため、内部にはいくつかの補強のリブが備わっている
付属のリモコン。カードサイズのコンパクトなもので、重低音調整やサラウンドモードの調整ボタンなどを備えている。

SC-HTB01は本体に詳細なディスプレイを持たず、画面の上方を表示するGUIもない。そのため、動作状態は中央にあるインジケーターの発光で表示する。最初のうちは取扱説明書で表示を確認する必要があるが、慣れてしまえばそれほど困らずに使える。表示は右からBluetooth、オート、3Dサラウンド、入力表示となっていて、赤と緑の点灯と消灯で動作状態を示す。例えば、入力表示は緑はHDMI入力で、赤はテレビ音声(HDMIのARCまたは光デジタル音声入力)となる。3Dサラウンドは、ストレートデコードは緑、3Dサラウンドをオンにすると赤になる。

また、音声の場合は3つのLEDが流れるように点灯する。音量を上げていくと右から左へ流れていく。サブウーファ音量の場合は緑のLEDの点灯がひとつずつ増えていき、3つ点灯で最大音量だ。

HDMI入力で、3Dサラウンド:オンの状態の表示
音量調整で最大音量としたとき、3つの緑色LEDが数回点滅する
入力された音声をそのまま再生するストレートデコードの状態
自動的な最適なサラウンドモードへ切り替える、オートモードの状態
オートモードで接続したテレビの音声を再生している状態

だいたいの使い方を把握したところで、さっそく使ってみた。HDMIのCEC機能に対応しているので、HDMI出力と薄型テレビ側のARC対応HDMI入力と接続すれば、テレビの音声はこれだけでサウンドバーから再生できる。エントリークラスの製品だと、HDMI端子の装備はこれだけで、ゲーム機やBDレコーダなどはテレビ側のHDMI入力を使うことになるが、これだと組み合わせる薄型テレビがサラウンド音声の入力に対応していないと、せっかくのサラウンド音声がサウンドバーに届かない。そこで、SC-HTB01はきちんとHDMI入力も備えている。ゲーム機やBDレコーダなどはサウンドバーのHDMI入力に接続することが基本だ。

リビングでの配置を想定した2mほどの距離では横や後方の音の周り込みが不足

この状態で、まずは基本的な実力を知るために、AtmosやDTS:X音声のUHD BDソフトをいくつか再生してみた。オートモードのままストレートデコードで再生すると、サラウンド感がやや物足りない。ステレオ音声と比べてやや横方向の広がりが豊かになったと感じる程度だ。基本的にはサラウンド音声のソフトは「3Dサラウンド:オン」で聴くといいだろう。「ミッション:インポッシブル フォールアウト」(Atmos)は、ぐっと広がり感が増し、サラウンドの包囲感もまずまずだ。高さ感もほどほどに感じられる。「ジュラシックワールド 炎の王国」(DTS:X)は、広がりや高さ感もあるが前方主体の音場という感じ。定位はくっきりとするが、後方への音の周り込みはやや不足。そのための包囲感もなんとなく感じられる程度だ。

音質は思った以上に優秀で、コンパクトなサイズとは思えないほどに低音感もしっかりとしている。試しにフルボリュームで再生したが、サブウーファの低音も最大にしていると、さすがに低音が出すぎてバランスが悪いと感じたほどだ。しかし、低音がダブついて不明瞭になるわけではない。50%~70%くらいの一般的な再生音量ならばサブウーファーの音量は最大のままでも良さそう。中高域もクリアで音像もくっきりと再現するなど、基本的な音の実力はよくできている。コンパクトなサイズということを考えれば、サラウンド感もきちんと感じられるし、高さ方向の立体感もある。しかし、AtmosやDTS:X対応のサウンドバーとして考えると、サラウンド再生に関しては実力的に不満だ。

デスクトップでの再生をイメージして、1m以下の近い位置にサウンドバーを配置

というわけで、本題となるゲームプレイで試す予定だった至近距離の配置での再生も試してみた。ソファの前にPC操作時に使うキーボードを置くテーブルを用意し、そこにサウンドバーも設置してみた。イメージとしては、サウンドバーの手前にキーボードがあり、そのままキーボード操作もできるくらいの距離だ。実測値としてはキーボードに手を置くと60cmくらい、映画視聴時のリラックスした姿勢で1m弱だ。コンパクトなスピーカーとはいえ、スピーカーがやや近い感じはする。

ソファの前にテーブルを置き、そこにサウンドバーを配置。デスクトップにテレビとスピーカーを置いて視聴するイメージだ。振動対策のため、オーディオボードを使っている

しかし、この近接配置がなかなかよかった。「ミッション:インポッシブル フォールアウト」、「ジュラシックワールド 炎の王国」とも、物足りなかった後方の音の周り込みもしっかりと再現され、高さの再現も増すことで包囲感もしっかりと感じられる。AtmosとDTS:X音声でサラウンド感はやや違いはあるが、横方向や後方の音の定位感もしっかりとしている。真後ろから再現される音の距離感がやや近く感じるが、バーチャルサラウンド再生としては十分に優秀だ。

スピーカーにも近い位置に配置することを前提としたニアフィールドモニターがあるが、SC-HTB01も近接視聴に合わせた音になっていると思われる。軽く試してみたところ、1m~50cmくらいがもっともサラウンド感が良好に感じられた。これが2m近い距離になると、横方向の広がりはあまり変わらないが、後方への音の周り込みや高さ感が乏しくなってくる。リビングスペースに置いて使えないというわけではないが、本機の良さを存分に実感したいならば、サウンドバーとの距離は1m以下にした方が良い。デスクトップでPCゲームを楽しんだり、映画や音楽を楽しむような、プライベートルームに適したモデルというのはなかなか珍しい。それだけに、個室でゲームや映画鑑賞をしていた人にとっては、まさにうってつけの製品だと思える。

ただし、注意したい点もある。低音がかなりパワフルなこともあり、強度の低いテーブルなどでは、テーブルが共振してしまうこと。音質も濁って空間の広がりが乏しくなるし、なにより同じテーブルにキーボードを置いていると、キーボードもブルブルと震えて少々気持ち悪い。

そこで、テーブルの上にずっしりと重量のあるオーディオボードを置いてみた。これで、不快な振動も収まり、サラウンド感もよりフワっと広がるような抜けの良さが得られた。PC用テーブルなどの強度が十分でない場合は、こうしたオーディオボードの併用を考えたい。高価なオーディオ用アクセサリーでなくても、3~5cmくらいの厚めのシナ合板)ランバーコア材)をホームセンターなどで使いやすいサイズにカットしてもらえば、十分に実用になる。外観はニス仕上げなり、塗装仕上げなり、ご自由に。

FF XIVを久しぶりにプレイ! 広大な世界を彩る豊かな音場を見事に再現

基本的なインプレッションとセッティングが決まったところで、いよいよ本題のゲームプレイを試してみた。まずは推奨となっているオンラインゲームの「FF XIV」だ。本作は、家庭用ゲームとしても人気の高いファイナルファンタジーシリーズのオンライン版で、広大な世界を舞台とした冒険を楽しめる作品だ。筆者も数年前にPC版を楽しんでいたが、「FF XI」で半ば廃人となりかけた前科があるため、「FF XIV」では適度に距離をおいて楽しんでいたが、それゆえに当時のエンドコンテンツの攻略ができずに解約してしまった。

幸いアカウントとキャラデータは残っていたので、短期間だけアカウントを復活させ、久しぶりにプレイしてみることにした。

雨の降るグリダニアの黒衣森。キャラの装備が古いのは、数年前のプレイ当時のもののため
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夜のウルダハをササモの八十階段から眺めてみた。相変わらずグラフィックが美しい
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久しぶりに降り立ったウルダハの回廊。おりしもヴァレンタイン・イベントの真っ最中だった
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久しぶりのエオルゼアの大地は、見慣れた景色ではあるものの、今ではいくつかの拡張シナリオも登場しているし、インターフェースも少々違いがある。なにより、キャラクターの操作などを含めてすべて忘れきっていた。というわけで、蛮神戦やらダンジョン攻略をすることもできず、チョコボであちこちを散策した程度だ。 それにしてもグラフィックは相変わらず美しい。使用しているPCは当時のままだが、その後グラフィックボードをGeForceのGTX1080Tiに交換している。そのせいもあってか、4K出力ではさらに描画が美しくなっている。本格的なプレイは早々に断念したこともあり、グラフィック設定をすべて最高設定としたことも理由だろう。

さておき、肝心なのは音だ。PC版に限らず「FF XIV」は5.1ch音声を採用しており、前方にいる敵の足音や鳴き声は前方から聴こえるし、後方からは支援するパーティの魔法エフェクトが聴こえてくる。音楽の良さも含めて、サラウンド環境でプレイするとかなり楽しいゲームだ。チョコボを駆っていろいろな場所を巡り、さまざまな場所の環境音を聴いてみると、SC-HTB01の音はなかなか豊かなサラウンド音場を再現してくれることがわかる。

例えば、荒野にある川沿いに進んで滝などがあったら、そこに降りたってカメラ視点をゆっくりと回してみるといい。目の前にあった滝の音が視点の変化に合わせて横から後ろへて動いていき、再び前方に戻ってくる。これをしてみると、自分の家のシステムのサラウンド再生の定位の良し悪しをチェックできる。斜め後ろはいいけれども、真後ろが定位がぼやけるといった弱点がわかるのだ。

SC−HTB01で同じように試してみると、真後ろは定位感はいいのだが、距離的に近い感じになる。そのため、後ろ方向の空間の広がりが前方や横方向に比べると狭いことがわかる。これはバーチャルサラウンド再生では共通した傾向だ。良い点と言えるのは、真後ろの音も定位はしっかりとしていてぼやけないこと。このため、真後ろに居る敵の足音などが察知しやすくなる。FF XIVでは真後ろから敵に奇襲されるようなことはあまり起きない(はず)だが、FPS系のゲームなどでは画面に表示されない横や後ろの存在を音で表現することは重要だ。

なにより、空間の広がりや包まれるような音場の広がりが良い。視聴距離をぐっと近づけて、最適と思われるセッティングをしていることもあるが、試しに自宅の6.2.6chのスピーカーとヤマハのCX-A5200とMX-A5200によるサラウンド再生と比べてみても、音質はともかく、音場感は大きな差を感じない。空間の広がりがちょっと狭いかな、と感じる程度だ。

SC-HTB01の3つのゲームモードの違いを試してみた

ここで、SC-HTB01が備える3つのゲームモードを試してみた。SC-HTB01にはサウンドモードとして、スタンダード、ミュージック、シネマ、ゲームの4種類がある。スタンダードを長押しすると「オート」モードになり、薄型テレビがHDMI CEC機能のコンテンツフラグに対応していれば、自動で最適なモードに切り替わる。簡単に言えば同じパナソニック製の薄型テレビの「ビエラリンク」なら、映画番組ならシネマモードになるし、音楽番組ならばミュージックモードになるというわけだ。

ゲームモードについては、ゲームを選んだ状態で再度ゲームボタンを押すと、3つのモードが切り替わる。「RPGモード」、「FPSモード」、「ボイス強調」で、それぞれ切り替え時にインジケーターが緑+緑(RPG)、赤+緑(FPS)、赤+赤(ボイス)に点滅してモードが変わったことを知らせてくれる。

それぞれを試してみると、「RPGモード」が一番音場が広い。方向感や定位感もきちんと感じるが、音源の距離感が感じ取りやすい。「FF XIV」に関してはもっとも相性が良く、広大な世界を冒険している感じが出た。

東ラノシアのコスタ・デル・ソルの浜辺。砂浜の波音も広々と響いており、空間の広がりが豊かだ。音楽も豊かな広がりをもって響いている
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クルザス地方のモードゥナにて。クリスタルタワーにもう一度行ってみたかったが、断念
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「FPSモード」は音場感としてはもっとも狭い。しかし、音の定位はよりクリアーかつ正確になる。斜め後ろや真後ろといった音源位置の方向もよりわかりやすくなる。これは、FPSのような敵の足音や気配を音で知ることが重要なゲームでも有効だろう。ただし、音場が狭いので雄大なスケール感はやや感じにくくなるので、筆者のようにゲームで練度を高めてより難度の高いプレイをするというよりは、ゲームの世界観やストーリーをじっくり味わいたいという人には、少々雰囲気として物足りなさを感じがちだ。

最後の「ボイス強調」は、全体的な印象はRPGモードに近いスケール感の広いものだが、音場が前寄りになって、キャラクターの声がより実体感のある再現になる。そのぶん、後方の再現はやや曖昧になる。ムービーでストーリーを語ることの多い作品など、映画的な物語を重視したゲームに向いているだろう。

こうして一通り試してみると、ゲームのサラウンドモードとして一番バランスが良いのが「RPGモード」だと感じた。多くのゲームは、ストーリーを語るパートがありながら、アクションはそのものFPSやTPSになっているなど、さまざまな要素が組み合わされている。そのため、ストーリーを楽しむ場面でも、アクションを楽しむ場面でもバランスの良さは重要になるだろう。「FPSモード」はやり込み型のプレイヤー向きだし、「ボイス強調」はゲームそのものは苦手だがストーリーを楽しみたい人に向くだろう。それぞれにはっきりと違いがあるので、好みやプレイスタイルに合わせて使い分けやすいのも好感がもてる。

プレイに支障が出るレベルの恐さ!「バイオハザード RE:2」をプレイ

「FF XIV」が引退済みのため、良作をもう1本用意した。それが「バイオハザード RE:2」。本作はかつてプレイステーション用ソフトの「バイオハザード2」をリメイクした作品。PC版も発売されているが、プレイしたのはPS4のZバージョン。簡単に説明すると、「バイオハザード7」のグラフィックエンジンを使って「バイオハザード2」を再構築したもので、アイテムや地図の表示といったインターフェースは「バイオハザード7」に近くなっていて、プレイスタイルは三人称視点だ。

グラフィックの進化と、自由に視点を切り替えてじっくり探索できるゲームになっているが、さらに強化されているのが恐怖演出。高輝度表示技術のHDRに対応していることもあって、暗いシーンが雰囲気だけで怖さ倍増なのだが、そのうえ、敵となるゾンビ(ウイルス感染者)がしぶとくなり、一度倒れたように見えても再び起き上がってくるので油断できない。しかも、曲がり角の死角で待ち伏せ、何気なく通り過ぎた窓から急にゾンビが侵入してくるなど、プレーヤーを怖がらせよう、驚かせようという演出が相当に強化されている。筆者は決してゲームが得意なタイプのプレーヤーではないので、初見のプレイはもっとも簡単なモードだったにも関わらず、半ばパニックになって逃げ回っていた記憶しかない。びっくり演出など、ホラー映画好きならば慣れていて当然なのに、怖すぎてプレイに支障が出るレベルだった。

警察署内を探索している場面。この薄暗さだけで苦手な人はプレイするのを躊躇うかも。そしてたいがい見えないところにゾンビがいる
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今では、もう少しマシなプレイをできるようにはなってきたが、やり込みプレイをするというよりは、じっくりと恐さを味わう方向で周回プレイを続けている状況だ。そんな筆者がSC-HTB01で「バイオハザード RE:2」をプレイした印象を紹介しよう。

ゲームプレイ時も、基本的にセッティングは同じ。キーボード用の簡易テーブルにオーディオボードを重ね、スピーカーは上向きの配置にしている

「バイオハザード RE:2」は、HDR対応ゲームなので、プレイ前に設定でディスプレイやオーディオの設定が用意されている。ディスプレイ設定ではHDRのオンとオフの切り替えが可能で、見やすくなるように輝度設定の調整も可能。HDR方式はHDR10なので、HDR対応の薄型テレビやPCモニターならばHDR表示が可能だ。オーディオ設定では、サラウンド出力(7.1ch)、ダイナミックレンジコントロールなどの調整が可能。サラウンドシステムなどを組み合わせてプレイする人はこのあたりも確認しておこう。

ディスプレイの設定。HDRのオン/オフ、明るさ調整のほかに、フィルム粒子ノイズの付加などまで選べる
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最高輝度設定(HDR)の画面。画面の指示に従って、明るさを調整する
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明るさ調整(HDR)の画面。こちらも画面の指示に従って、調整を行なう
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オーディオの設定。ダイナミックレンジコントロール、スピーカータイプなどを選択できる。リアルタイムバイノーラルはヘッドフォンを選んだときの方向感強調の機能と思われる
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ゲームモードは、こちらでも「RPGモード」を選んだ。その方が怖かったから。本作は基本的に屋内のシチュエーションが多いが、警察署内と残響の多い地下の下水道では音の響きも違うし、広さ感も微妙に異なる。そういう空間の広さの違いも「RPGモード」ならよくわかる。高難易度モードでは弾数の制約が厳しくなり、いちいちゾンビを相手にせず、攻撃をかわしながら探索を進めることを強いられるようなので、そんなプレイでは雰囲気重視よりも敵の所在を把握しやすい「FPSモード」がマッチするだろう。

本作はきちんとサラウンド音声を採用しているだけに、音による演出が巧みだ。基本的にはゾンビのいる場所に近づくとその先からゾンビのうめき声が聴こえてくる。だから、あらかじめ心の準備もできるし、ゾンビの居る方向も予想できる。死んだふりをして急に飛びかかってくる奴もいるからタチが悪いのだが。

なかでも一番驚かされたのが、何度か昇り降りする必要のある階段付近にある窓。この窓からは外から集まったゾンビが侵入してくるので、拾った板材(アイテム)を使って窓を塞いでおくとソンビが侵入できなくなる。これが罠だ。もう安全だと思って階段を昇ろうとすると絶妙なタイミングで絶叫に近いうめき声とともに隙間から手を伸ばしてくる!

これが、きちんと真横から音が出るからなお怖い。基本的に進行方向(画面)に集中しているので、不意に見えない横方向から物音がすると、面白いくらいに驚かされてしまう。この恐さ感は、しっかりと視聴位置の真横から音が出るからいっそう驚くと思う。そして横を向きながら階段を昇っていると、階段の踊り場には他のゾンビがいて、なすすべもなく噛みつかれてしまう。この恐怖一体の仕掛けには感心した。そんな緻密に計算された演出をSC-HTB01はしっかりと再現してくれた。

また、探索が進んでくると、正体不明の大男が現れて執拗に追いかけられることになる。その存在は、まず足音が響いてきて、周囲を見回せば見える場所に現れると専用の音楽が流れて逃亡モードとなる。この足音がずっしりと重い低音たっぷりのもので、当然ながら壁越しに周囲を歩き回っていることまでよくわかる。

SC-HTB01はコンパクトなサイズとは思えないほど低音がたっぷり出るが、この足音の迫力もリアルに再現した。単に低音が出るというだけでなく、床をきしませるような重み、着地したときの鈍い響きまでかなりきめ細かく再現する。この低音が出るというだけでも、本機は「買い」である。ここまでの低音は、別体のサブウーファーが付いたモデルでようやく出てくるレベルの代物だ。繰り返すが、それだけ低音のエネルギーが大きいので、設置するテーブルなどはしっかりとした強度とある程度の重さがないとビリビリと響いてしまうので、対策は欠かせない。

リアルさを増したおかげで、グロテスクさ以上に、汚さや臭さまで感じる映像はゲームが進んでいくとさらに凄みを増していくが、序盤の警察署以外のいくつものシチュエーションで、それらにぴったりと合った音響がデザインされていることにも感心する。地下の通路の残響、水たまりの中を歩くときの水音などなど、音響についても映画に匹敵するレベルでしっかりとした音が使われている。こうした音をクリアでしっかりと聴かせてくれる音質的な実力も立派なものだ。低音がたっぷりといってもバランス的に過度になったり、量感だけの不明瞭なものではないし、基本的な音質がニュートラルなこともあり、さまざまな音をリアルに感じさせてくれる。

パナソニックというと、オーディオ機器ではブランド力がイマイチと感じる人は少なくないかもしれないが、今では大メーカーでは珍しいTechnicsというオーディオブランドもあり、実は優秀な製品が多い。というのも、一時Technicsブランドの商品の開発が終了していた時期に、今まで第一線でオーディオを手がけていた技術者がミニコンポやヘッドフォンといった部門に散っていった経緯もあり、その頃からTechnicsの名前で出した方が良いと思われる製品も少なくなかったのだ。ブランド力では他社よりも弱い印象のあるパナソニックのオーディオ製品だが、実はその実力はなかなか優れている。そのことがSC-HTB01を使っていると改めて実感できる。

プライベートルームでも、たっぷりと迫力を味わいたい人におすすめの逸品

「バイオハザード RE:2」については、ネタバレを避けるため紹介はここまで。SC-HTB01についてもゲーム主体の紹介ではあるが、ムービーシーンでのキャラクターの声のしっかりとした再生、雰囲気を見事に高める音楽の表現力などを聴いていても、映画はもちろん、音楽でも優れた実力を発揮してくれることがわかる。

それが、こんなコンパクトなサイズで実現できていることに改めて感心する。まさしくプライベートルームやデスクトップ環境で楽しむには最適な製品だと感じる。近接距離でのゲームプレイや映画鑑賞に向いているというのは、実はもうひとつメリットがある。音は距離によって減衰するので、距離が遠くなるほど音量を上げる必要がある。つまり、近距離ならばほどほどの音量でもより迫力を感じられるということだ。大音量は近隣への十分な配慮が必要になる現代だが、そのあたりが心配な人にとっても近接視聴のスタイルは有効だ。ただし、テレビ画面も近くなりがちになるので、部屋の明るさや目の健康にも十分に注意してほしい。

今まで、リビングなどの広いスペースで快適に楽しめるタイプのサウンドバーはたくさんあったが、パーソナル向きのコンパクトなものは、サラウンド音声の対応もドルビーデジタルやDTSのみとなるなど、機能的にもシンプルなエントリーモデルばかりだった。そこにDolby AtmosやDTS:Xにまで対応し、3Dサラウンドまで備えたSC-HTB01が登場した価値は計り知れないほど大きい。ゲーム好きな人はもちろんだが、映画やテレビ番組などもパソコンなどで視聴するスタイルの人ならば、ぜひとも検討してみてほしい。毎度毎度同じことを言って申し訳ないが、音が良くなると映画やゲームといったAVコンテンツはもっと面白くなることを実感してほしい。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。