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定在波にご注意! 0円でサウンドバーの音をアゲる室内音響講座

部屋にオーディオを設置しても、聴く場所で音は変わります!

サウンドバーやスピーカーなど、オーディオの音質は、それを鳴らす“部屋”と密接に関係している。何故なら、スピーカーは、音質のためにスピーカーボックスを丹念に設計している訳だが、そう考えると、音を受け止める部屋は“スピーカーボックスを裏返したモノ”とも言え、「部屋もケアすることが重要」ということに気付くはずだ。

室内音響には、吸音や拡散などいくつかのポイントがあるのだが、今回はその存在があまり知られていなく、かつ特に厄介な“定在波”に着目。定在波の原理や弊害といった基本的な解説と合わせながら、サウンドバーを使った、ゼロ円から始められる実験・改善方法を具体的に紹介してみたい。題して「定在波に注意! 0円でサウンドバーの音をアゲる室内音響講座」だ。

記事を参考に、手持ちサウンドバーの音質アップや、ハイエンドモデルのパフォーマンスを最大限に引き出して欲しい。

実験には、デノン製サウンドバー「DHT-S517」などを使用した

デノン、天井反射でAtmos対応の音質“全振り”サウンドバー

音質を大きく左右する定在波ってナニ?

高校の物理で出てくる定在波。学校の勉強だけでは忘れてしまいがちだが、オーディオに興味を持ち、実験でその影響を体感すると、誰もが頭を悩ませることだろう。今まで聞いていた音は何だったのか、と。

実は、ホームシアターの設計に関する技術やノウハウをプロのインストーラーに伝授する「THXホームシアターデザイナー」の育成講座も、挨拶代わりが定在波(Standing Wave)体験からスタートする。講座を受けて「THX認証」を得ようと、世界から集まった意識高い系(?)のホームシアターインストーラー達もその体験にはビックリ。出鼻を挫かれ、以降4日間の長い講座を粛々と受講するようになる。

なお、筆者がTHX講座を受講したのは2004年。帰国後も定在波への興味が尽きずに調べていると、Technicsの父とも言える石井伸一郎氏(記事参照)に行き当たり、幸運にも実際にお会いして教えを乞うことができた。THXの収録スタジオでは“石井式”(全帯域吸音と全帯域反射による残響の質)が採用されていたり、THXの音響講座にも同氏の研究成果が反映されていることも分かった。また、同氏は、その後もオーディオと定在波の関係について熱心に研究を続けられているのも興味深く、改めて奥深いテーマだと気づいた次第だ。

定在波について詳しく知りたい方は、石井伸一郎氏の著書「改訂増補 リスニングルームの音響学(Kindle版)」を是非読んでみて欲しい。

この記事は、THXひいては石井氏の研究を元にし、リビングのサウンドバーを前提に、具体例を交えて解説したものとご理解いただければ幸いだ。

THX Level II認証プログラムでは、受講者は定在波を体感する。デモはJohn B. Dahl氏(当時THX教育担当ディレクター)。2004年筆者撮影

まずは、定在波の基礎知識だ。定在波(ていざいは)とは、“定まった場所に常に在る波”という現象だ。定常波(ていじょうは)とも呼ばれる。

音は空気の粗密によって伝搬するが、イメージとしては、水面に発生する波を想像すると理解し易い。

例えば、お風呂場などで波を立てると、徐々に波紋が広がっていくのが想像できるはず。波は定まった場所に止まらず、動いている状態と言える。しかし、波を立て続けると、浴槽の壁に向かう波(入射波)と、壁にぶつかって戻ってくる波(反射波)とがぶつかり、波の形状は合成されて複雑になる。

この入射波と反射波の波形が一致した時、実際には動いているはずの波が、見た目には、その場に留まって、波頭だけが上下しているように見える。この共振現象が定在波だ。

定在波が厄介なのは、2つの波が合成することで波の腹の振幅が2倍になること。そして逆に節の部分では振幅がゼロになってしまうこと。

一般的な家庭サイズの浴槽なら、入浴時に、体を前後に動かして波を立てると定在波が分かり易い。ゆっくりと体を前後に動かし、ブランコを漕ぐ要領で、反射して帰って来た波を増幅するように前後運動を続ける。すると共振状態になり、やがて浴槽から溢れるほど巨大な波になるはずだ。

話しをホームシアターに戻すと、波の腹(山の頂上と言えるピーク、または谷の底と言えるディップ)にあたる部分で視聴すると、共振している周波数の音が元の2倍の音量で聴こえ、また、節の部分で視聴すると、逆にゼロになってしまう現象が起こる。

なお、この定在波が最も強く表れるのは、理論上、部屋の一辺の長さと、音の波長の半分が一致する時。定在波は動画だと理解し易く、特に以下の動画は、定在波の発生過程も理解できるので、非常にオススメだ。

波の基本② 波の反射と定常波を理解しよう!
※動画には自由端反射と固定端反射が登場するが、音は壁に固定されないので、自由端反射を参考に

ホームシアターにおいては、部屋の一辺の長さで、発生する定在波の周波数が決まる。

定在波が生じる最小(基本)周波数=音の速さ(約340m)÷波長÷2

例えば、一般的な6畳間の場合は……

・長辺 :3.6m 47Hz
・短辺 :2.7m 63Hz
・天井高:2.4m 71Hz

……といった具合で、部屋の中では、3つの周波数付近で定在波が確認できる。

実際には、壁面、天井、床の反射率(材質や強度)が影響し、厳密には音速も室温で変化(室温20度時の音速は343.5m/s)するため、計算通りには行かないが、ここでは、上下、左右、前後で定在波の“素”が発生すること。そして、その周波数がちょうどサブウーファーの美味しい帯域で発生することを理解できればOKだ。

なお、定在波は、基本となる最小周波数の2倍、3倍……も発生する。300Hzくらいまでは音質に顕著な影響が表れるため注意が必要だ。また、定在波の影響は、低音の周波数特性の乱れだけでなく、中高域の伝送特性にも大きく影響する。端的には音質が悪い方向に変質する。

では、劇場映画館の場合はどうなのか。御存知の通り映画館はホームシアターと違って空間が広いため、定在波が生じる周波数も数Hzと非常に低い。つまり、音の定在波は、ホームシアター特有の課題と言っていいわけだ。

実験! 定在波を体感しよう

やはり定在波を知るには、身をもって体験するのが一番だ。前述した風呂の波も一例だが、読者個々の部屋で、スピーカーから出した音で体験してみて欲しい。

実験は以下の3ステップで試すことができる。

1.各部屋の大きさに応じて、定在波が生じる周波数を計算

原理的には、「定在波が生じる最小(基本)周波数=音の速さ(約340m)÷波長÷2」で計算できる。

ただし、壁面の強度や開口によっても変化するので、実際のところは誤差が生じる。なので実際には、算出した周波数の±5Hzくらいでも確認するのが望ましいだろう。

計算も微調整も面倒という場合は、とりあえず「65Hz」で試してみよう。経験上、聴感特性も含めて、だいたいの部屋で定在波を体感し易い。

2.算出した周波数のサイン波をスピーカーから鳴らす

算出した、3つの周波数(長辺/短辺/天井高)を鳴らしてみよう。同時ではなく、順次でOK。とりあえず定在波を体験したいなら、先述の理由から決め打ちで「65Hz」で良い。

スマホやパソコンのアプリを利用すると、簡単に指定した周波数のサイン波を鳴らすことができのでオススメだ。「Frequency Generator」といったワードで検索すると多数ヒットするが、iPhoneユーザーの筆者の場合は「Sonic」というアプリが使い易く感じた。

また今なら、YouTubeの利用が手っ取り早い。「Sine 65Hz」といったワード検索すると、65Hzのサイン波が鳴る動画が多数ヒットするはずだ。なお、このくらい低い周波数になると、スマホやパソコンのスピーカーからは聞こえないのでご注意。

65 Hz Test Tone
筆者撮影。YouTubeで65Hz再生。

3.部屋の中をあちこち移動して、音量の聞こえ方にムラがあることを確認

機材の準備が整ったら、突然の大音量でビックリしないよう、音量は充分に絞った状態で、算出した周波数のサイン波を再生しよう。そして、音量を確認しながら、徐々に近所迷惑にならない程度まで充分に音量を上げる。

騒音計(A特性/ヒトの聴感を考慮)で60dBくらいを基準にすると、音量的には少し大き目だが、聴感的に分かり易い。騒音計も今ではスマホとアプリで代用できる。

サウンドバー直近で約60dBになるよう、音量を調整した

音が鳴っている間、部屋の中を歩き回ると、音量が大きく聞こえる場所と、ゼロに近く感じる場所が見つかるはずだ。見つからない場合は、低くしゃがむなど高さを変えたり、壁際に寄ったりしてみよう。

スピーカーから一定の音量で鳴っている音が、場所によってこれほど聞こえ方が変わる事が分かると、手品のようで面白く感じるはず。同時に定在波の怖さも理解できるだろう。
※65Hzで記載のような変化を感じない場合は、周波数を60Hz~70Hzくらいの間で変更して試してみよう

以下の写真は筆者のリビングで、数値は実際に65Hzの音を鳴らし、サウンドバーの中心線上で距離を変え、聴覚で、音が特に大きく感じるポイントと小さく感じるポイントを騒音計で測定した例。

部屋のいくつかの特徴的な場所で音圧を測定。

測定値は以下のようになった。

(1)60dB:サウンドバー直前
(2)48dB:高さ70cm /床に座った状態を想定
(3)58dB:高さ70cm /床に座った状態を想定
(4)43dB:高さ100cm/ソファーに掛けた状態を想定
(5)58dB:高さ100cm/ソファーに掛けた状態を想定
(6)62dB:高さ150cm/音が最も大きく感じたポイント
(7)37dB:高さ30cm /音が最も小さく感じたポイント

まず上記dB値の見方だが、聴感的には、6dBの差で2倍、12dBの差で4倍の違いを感じるといわれる。

測定値を見ると本来、音は音源から遠ざかるほど小さく聞こえるはずだが、(2)~(5)は、dB値でその通りになっていない。この時点でどのポイントが理想的かは分からないが、定在波による乱れが存在することを数値でも分かるだろう。

また、音が最も大きく聞こえるポイントを探したところ、視聴位置にはならないが窓側の少し高い位置(6)が見つかり、測定では62dBだった。スピーカーから離れているにも関わらず、音が1.2倍程度に大きく聞こえた。

音が小さく聞こえるポイントは(7)で、測定値は何と37dB。聴感的には1/10以下で、実際に聴くと、ブラックホールに迷い込んで、音が全くなくなったかのように感じるレベルだ。

興味を持ったら、もっと沢山のポイントを測定して、より解像度の高い詳細場「音圧ムラマップ」を作ってみるのも面白いだろう。

場所による周波数特性の違い

ここからは、測定機材が必要なので、参考までだが、ホワイトノイズを用いて、各ポイントの周波数特性も測定した。結果は以下の通り。

場所(1)の場合

サウンドバーの間近で測定した結果。直接音を多く拾うので、定在波の影響を受けにくく、概ねリファレンスと考えていいだろう。500Hz以下に極端なピークやディップが見られない。

場所(6)の場合

視聴ポイントにはならないが、低音の一部が盛り上がってしまった例。大きなディップはないので最悪というわけではないけれど、これだけ低音が盛り上がると、ブーミーに感じるのは想像いただけるはず。知らず知らずに、このような特性で聴いている可能性もある、という事だ。

場所(4)の場合

やはり低域が少し痩せ気味だが、全体的に極端なピークやディップが見られない。低域から高域に向かってなだらかに音圧が下がるパターンは好ましい。リスニングポイント候補として悪くない。

場所(5)の場合

実はここがいつもの視聴ポイント。音質よりも、ソファーの位置と姿勢を優先してのことだ。65Hzのサイン波を測定した時58dBで、低域の盛り上がりは聴感とも一致する。全体的に低域から高域に向かって音圧が下がるシェイプは良い。300Hz周辺に幅のあるディップがあり、400Hzにも深いディップが確認できる。リスニングポイントとしては好ましくない。

定在波と視聴位置による音の聞こえ方の違い
※65Hzのサイン波を鳴らしています。スマホやノートPCのスピーカーでは聞こえません。65Hzの低音が充分に聞こえるオーディオシステム、ヘッドフォンなどを使用してください

定在波はシミュレーションできる

HOTEI'S WebSiteでは、Windows向けの定在波シミュレーションソフト「Stndwave2」(石井伸一郎氏の発案によって開発されたソフト)が無償公開されている。

定在波シミュレーションソフト「Stndwave2

このソフトは、部屋の3辺の長さを設定した後、スピーカーとリスニングポイントを任意に動かすと、その際の周波数特性がグラフで分かるという優れモノ。

実際の部屋は、壁面の強度がマチマチだったり、開口部があったりするので、計算通りには行かないが、定在波による悪影響を知るには非常に良いソフトだ。サブウーファー一体型のサウンドバーの場合は、ステレオスピーカーとして扱い、スピーカー間の距離は変更できないので、“Total”のグラフだけを見ればよいだろう。

シミュレーション結果。今回の実験環境をシミュレーションしたもの。このソフトでは、リビングなど部屋の形状が複雑で開口部がある場合は正確なシミュレーションが難しいが、シアター専用室なら非常に有用

また、このソフトでシミュレーションしてみると、部屋の中心線上がリスニングポイントとして適さないことが分かる。

部屋の中央線上にサウンドバーと視聴ポイントを設定した場合のシミュレーション結果。50Hz弱を中心に大きなディップができることが分かる。これは、部屋の縦と横で生じるそれぞれの定在波が合成されたもので、最悪とも言える状態

なお、LDKのような間取りでリビングシアターを行なう場合、空間全体から見れば、比較的端を利用することになるので、サウンドバーやリスニングポイントは中心線を外れるケースが多い。リビングは独立したシアター専用室よりも、定在波の面では有利と言えるかもしれない。

定在波を制して良い音を手に入れろ!

ここまでで、定在波の怖さを十分理解してもらったと思う。では実際、良い音を手にするにはどのような方法があるのか。順番に見ていこう。

1.リスニングポイントをズラす

実際のところ、物理的に低音を吸収するのは難しい。一般的なグラスウールなどの吸音材を使用する場合、吸音層として1m程度必要になり、それはあまりに非現実的だろう。

ゼロ円でできる有効な対策は、定在波の影響が大きい場所を避けるようにリスニングポイントを設定すること。実験では、音量が非常に大きく聞こえる場所と、逆にゼロに近くなってしまう場所があった。こうした極端な波の“腹”や“節”を避けるのが現実解という訳だ。

前述したシミュレーション結果からも分かる通り、原理的には、部屋の中央線上はNG。加えて縦・横・高さ方向の中央線が交差する部屋の中心は最悪のケースが多い。ただし、壁面や開口部で、NGポイントは変わるので、やはり、実験で探し出さなければならない。

また、部屋を縦長ではなく、横長に使うのも妙案だ。

室内音響を長年研究してきた石井伸一郎氏によると、部屋を横長方向に使うことで、寸法比率として、天井が高くなったのと同じ効果が得られるという。また、これは定在波と異なる要素だが、鏡像効果(部屋を鏡張りにした場合、見えるスピーカーが全て音源になる状態)の悪影響も小さくできるメリットがあるという。

定在波による音分布イメージ。青色の帯は音圧を示し、濃い部分は密になって高く、白い部分が粗になって低く感じるゾーン。上図で部屋に近い帯が最も周波数の低い基本の定在波で、続いて2倍、3倍、4倍、5倍を示している。部屋の中心線上は、基本と3倍と5倍の疎(ディップ)が重なり、条件が非常に悪いことが分かる。赤色の線は、ピークやディップを避けたゾーンで、リスニングポイントとして適することを意味する
筆者作成(初出2005年)

2.サブウーファーの位置を調整する

部屋で発生する定在波は、いわばその部屋固有の指紋とも言えるものだが、サブウーファー別体型のサウンドバーなら、サブウーファーの位置でもいくらか調整ができる。

実はスピーカーも、空気が疎になる部分に設置すると“空振り”のような状態になり、密の部分に設置すると力を発揮し易い。

実験をするなら、サブウーファーを台車などに乗せ、自身はリスニングポイントに静止し、誰かにサブウーファーを動かして貰うと、音質の変化が分かり易いはず。

調整はカット・アンド・トライが必要だが、定石としては、低音の迫力を増したい場合、サブウーファーを部屋の角(常に空気が密の状態)に置くと良い。音質やサラウンド効果を追い込むなら、さらにサブウーファー30cm単位くらいで壁に沿って移動させ、試聴を繰り返してベストなポイントを探ろう。

デノンのサウンドバー「DHT-S517」を使って、サブウーファーの位置を、左と右(部屋の隅)で変えた場合の周波数特性比較(視聴ポイントで測定)。まずは左置きの場合。60Hzあたりのディップが気になる
右置きにした場合。60Hzあたりのディップが解消。200Hz弱あたりのディップは急峻なので、聴感上は問題を感じ難い。絶対ではないが、サブウーファーは隅に置くと無難だ

3.自動音場補正機能を利用する(マイクで測定して補正)

付属マイクで測定するタイプの自動音場補正には、スピーカーの距離(時間)や音圧を均一に補正するだけでなく、周波数特性も整える機能がある。ヤマハのAVアンプに搭載されている「YPAO」や、デノン・マランツの「Audyssey MultEQ」は、まさに定在波による周波数特性の乱れを補正しようとするものだ。

しかし定在波は、こうした電気的補正で対策するのは難しい。

その理由は、飛び出したピークは叩いてマイナス方向に補正できるものの、ゼロのディップを持ち上げる事はできないため。また、こうしたEQ機能はバンド数が6つ程度と少なく、ピークを叩くことで、周辺のディップをさらに引き下げる方向に働き、結果としての音質が悪くなることもある。

自動音場補正を利用する場合は、まずリスニングポイントが大きなディップになっていないことを確認し、また、EQによる副作用も覚悟した上で行なうのが望ましい。微調整用として上手く使いこなせば、自動音場補正に含まれる自動EQも音質改善に役立つだろう。

4.定在波を意識したチューニング材

定在波対策をターゲットにしたチューニング材も存在する。

筆者が実際に測定で効果を確認できたのは、日本音響エンジニアリングの「ANKH」シリーズだ。

「ANKH-I(フラットタイプ)」

先程、定在波は吸音で対策が難しいと書いたが、海で見かける消波ブロックのように、波同士をぶつけて打ち消すという方法は理解できる。ANKHシリーズは安価ではないので導入できる読者は限られるだろうが、このアイデアを参考に、DIYで作ってみるのはどうだろうか?

定在波を制するとどうなる?

定在波の悪影響は、特定の周波数の低音が大きく聞こえる、あるいは聞こえないといった、周波数特性の乱れだけではない。定在波によって低音域の周波数特性が乱れると、中高域の伝送特性、言い換えると聞こえ方にも大きく影響する。

具体的には、定在波の影響が少なくなると、以下のような音質的メリットが得られる。

  • 音が活き活きと躍動的になる
  • セリフが明瞭に聞こえる
  • 空間がよりワイドになる

まとめ

理屈の説明が長くなってしまったが、実験を行なえば、定在波の影響を体感でき、面白いと感じる読者は多いはず。

聴く位置で音の聞こえ方が変わるーー

オーディオを評価する上でもこれは重要なポイントで、筆者が試聴する際は、決められた座席でも、頭を前後左右に動かしたりと、数センチレベルでベストなポジションを探している。

サウンドバーは比較的手軽なシステムと考えられがちだが、定在波を意識してベストな視聴位置を見つければ、より良い音質とサラウンド効果が得られるので、お得な製品といえる。

定在波の悪影響を避け、理想的な特性が得られるリスニングポイントを正確に探し出すには、丹念に測定を繰り返すしかないが、今回の記事で、定在波の影響と、リスニングポイントの調整でよい音が得られること。また、極端なピークやディップのある場所を避ければ、ベターな結果が得られるということをご理解いただければ幸いだ。

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家。 AV機器メーカーの商品企画職、シリコンバレ ーの半導体ベンチャー企業を経て独立。 THX認定ホームシアターデザイナー。ISF認定ビデオエンジニア。