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手軽にイイ音&サラウンドを手に入れる!! 今どき「サウンドバー」の選び方

ステイホームが続き、動画配信サービスの充実も後押ししてか、自宅で映画やドラマを楽しむ機会が増えている。気が付けば、60、70型クラスの4Kテレビだって、価格面で手が届く時代。リビングをちょっと贅沢なホームシアターに変える、よい機会とも思う。

ホームシアターで、重要な役割を果たすのが“サウンド”だ。4K/HDRなどどちらかというと映像にばかり注意が向きがちだが、それと同じように「音をリッチにする」ことも怠ってはいけない。テレビの内蔵スピーカーから外部のスピーカーに切り替えるだけで、音圧やセリフの明瞭度はガラリと変わるし、サブウーファーを付け足すだけで音楽や映画の迫力は倍増する。

分かりやすいのは、音のサラウンド化だ。音に包み込まれると、まるで映像の世界に入り込んでいるような没入感が味わえる。何もサラウンドは映画だけの話ではなく、最近は音楽番組やスポーツ、配信のドラマ、さらにはゲームといった様々なコンテンツがサラウンドで楽しめるのだ。

昔であればサラウンドは、周囲にスピーカーを1つ1つ並べて、長いケーブルで配線して……というスタイルだったが、住環境や設置性の手軽さから、近年はサラウンドをスピーカー1本で体感できる「サウンドバー」スタイルが人気を獲得。機能や性能も大きく進化していて、今やサウンドバーはもっとテレビをいい音で楽しみたい、手軽にサラウンドを始めたい、と考えるユーザーに向けて格好のアイテムとなっている。

とはいえ、いざ購入しようとしても、製品数が多く、一体どれを買えばよいのか迷う方も多いはず。本稿では、スペックや価格だけでなく、購入前に知っておきたいことや少しマニアックな視点の情報も交えながら、“サウンドバー選びのポイント”を紹介していきたい。読者1人1人にピッタリの1台が見つかり、充実した映画&ドラマのある生活に繋がれば幸いだ。

クオリティにこだわるなら“2万円くらいから”

まず最初に、サウンドバー製品の全体を把握すべく、今のトレンドから解説していこう。

現在サウンドバーを展開する主なブランドには、ソニー、パナソニック、シャープ、LGなどのテレビメーカーを始め、ヤマハ、JBL、デノン、ボーズ、ゼンハイザーなどといった老舗オーディオメーカーがある。また最近では、モバイルバッテリーで有名なAnkerといった新興メーカーからも発売されるようになっている。

価格帯は、まさにピンキリ。5,000円以下で購入できる格安モデルもあれば、ゼンハイザーの「AMBEO Soundbar」('21年7月発売)のような30万オーバーの超弩級モデルまで、多種多様な製品が存在する。当然、ブランドや価格別で音質や機能、パワーが異なるわけだが、大まかに分類すれば、実売1万円以下のゾーンは新興・PC関連メーカー、2~5万円の価格帯になってくるとテレビメーカーや老舗オーディオメーカーのエントリー製品や売れ筋モデルが入ってくるイメージだ。5~10万クラスは本格モデル、10万以上になると、性能や機能モリモリのハイエンド機になってくる。

ゼンハイザーのサウンドバー「AMBEO Soundbar」。約32.5万円(税別)

ゼンハイザー、1台で5.1.4ch再生できる世界初サウンドバー「AMBEO Soundbar」

2~5万円の価格帯には、ヤマハ「SR-B20A」('21年5月発売・約2.7万円)、ソニー「HT-X8500」('19年4月発売・約4万円)、JBL「Bar 5.0 MultiBeam」('21年2月発売・約4万円)、「CINEMA SB190」('21年10月発売・3.3万円)、デノン「DHT-S216」('19年12月発売・2.3万円)、ボーズ「Bose TV Speaker」('20年7月発売・3.3万円)、Polk Audio「REACT」('21年3月発売・約2.97万円)、LG「SN7CY」('20年8月発売・約4.1万円)などがある。

ヤマハのサウンドバー「SR-B20A」。約2.7万円

ヤマハ、約2.7万円でDTS Virtual:X対応のサウンドバー

ソニーのサウンドバー「HT-X8500」。約4万円

ソニー、1本でAtmos対応のサウンドバー。2chも3次元サラウンド化、約4万円

JBLのサウンドバー「Bar 5.0 MultiBeam」。約4万円

JBL、音のビームとAtmosで音に包まれるサウンドバー「Bar 5.0 MultiBeam」

AV Watchの読者のような、「ある程度の音のクオリティは欲しい」という方なら、価格の目安としては「2万円くらいから」と考えると妥当だろう。前述した通り、テレビメーカーあるいは老舗オーディオメーカーのモデルであれば、音質に一定の信頼がおけるし、後述する機能面においてもHDMI入出力を備えるなど、テレビと組み合わせる場合に使い勝手がよい。

デノンのサウンドバー「DHT-S216」。約2.3万円

デノン、山内氏が手掛けた“ピュアでストレート”なサウンドバー。約2.3万円

ボーズのサウンドバー「Bose TV Speaker」。約3.3万円

ボーズ、3.3万円のコンパクトなサウンドバー「Bose TV Speaker」

もちろん1万円以下のサウンドバーでもHDMIを搭載するモデルもあるだろうが、ネット直販の格安品はHDMI非搭載モデルが多いので確認が必要。またクオリティ面でも、「追加したサウンドバーが、テレビ内蔵スピーカーよりも貧弱……」という最悪の事態は避けたいところ。実際、ミドル~ハイエンドテレビの内蔵スピーカーは、音質面でもサラウンド効果の面でも進化していて、一概に侮れないモデルも多い。“2万円くらいから”という目安を示したのは、こうした理由も加味してのことと思ってほしい。

Polk Audioのサウンドバー「REACT」。約2.97万円

Polk Audio、3万円を切るAmazon Alexa対応サウンドバー「REACT」

LGのサウンドバー「SN7CY」。約4.1万円

LG、メリディアン監修のAtmos/DTS:X対応サウンドバー

形態としては、テレビの前にポン置きする1本バータイプと、サブウーファーとのセットで構成される2筐体タイプがある。

これも詳細は後で説明するが、豊かな低音を求めるなら、後者の“サブウーファーセット型”が有利だ。もちろん1本バータイプでも、必要に応じてサブウーファーが追加できる製品もある。ただ最近のモデルは、サウンドバーとサブウーファーの音声伝送がワイヤレスになっていることもあり、サブウーファーの置き場所も比較的自由がきくなど、導入しやすくなっているのもポイントだ。

JBLのサウンドバー「CINEMA SB190」。3.3万円

JBL、Dolby Atmos対応2.1chサウンドバーシステム。3.3万円

ちなみに。ソニーが先日発売した「HT-A9」という製品は、4本のブックシェルフスピーカーとコントロールボックスがセットになった、新コンセプトのサラウンドシステム。4本の無線スピーカーを部屋の四方に置くと、壁や天井の反射も利用して12個のファントムスピーカーを生成するというもの。今はまだ、1本バー型、サブウーファーセット型が主流だが、今後はソニーのような新形態のサラウンドシステムが現れるかも、しれない。

ソニーの新コンセプトサウンドバー「HT-A9」(約22万円)

ソニー、4本で12個の仮想スピーカーを生み出す新感覚サラウンド

購入時に確認すべき機能は?

サウンドバーを購入する際に、しっかり確認したいのが「機能」だ。

特にチェックすべき機能としては、HDMI関連機能、サラウンド機能、Wi-Fi/音楽ストリーミングサービス、Bluetoothなどがある。これらはとても重要なので、1つ1つ見ていこう。

HDMI関連:連動操作できるCEC、音声を“戻す”ARC、パススルー

ご存じの通り、HDMIは映像と音声を1本のケーブルでデジタル伝送することができる規格だ。テレビなどのディスプレイ機器では、4Kや120pといった機能の対応有無が求められるが、サウンドバーでは、HDMI機能のうち、「CEC」と「ARC」が重要になってくる。

CECは“Consumer Electronics Control”の略で、HDMIケーブルで接続された機器の連携動作を司る機能。具体的には、テレビの電源ON/OFFとサウンドバーの電源ON/OFFを連動させたり、テレビリモコンの音量調整ボタンでサウンドバーの音量を調整するといった具合。メーカーが異なると、メーカー独自の特殊な機能は連動しないケースも多いが、電源や音量といった基本機能はほとんど連動してくれる。

ARCは“Audio Return Channel”の略で、「音声信号を戻す」という機能。

どういう事かと言うと、HDMI接続は原則一方通行で、例えば、レコーダー→サウンドバー→テレビ、のような流れで接続する。しかし近年はテレビで受信したテレビ放送や、テレビの動画配信アプリの音声をサウンドバーに“戻す”というニーズがあり、それを実現するのがARCなのだ。

ARCにはeARC(Enhanced Audio Return Channel)という上位規格がある。Enhancedの通り、ARCの拡張版で、Ethernet(データ通信)の信号線も使うことで、1Mbps以上の音声信号の伝送を可能にしている。テレビとサウンドバーの両方がeARCに対応している必要があるが、Dolby TrueHDやDTS-HD Master Audioといったロスレスのマルチチャンネル、5.1chや7.1chのリニアPCM(最大8ch)、Dolby AtmosやDTS:Xといったオブジェクト・オーディオ信号、最大32chの圧縮音声も伝送できる。

ちなみに、サウンドバーにHDMIがない場合は、テレビからサウンドバーへ、アナログまたは光デジタルケーブルで音声信号を伝送することになる。配線が煩雑になる。HDMI接続以外は連動操作はできないので、テレビとは別にサウンドバーの電源を入れたり、入力切替操作などが必要になる。また、テレビの音量をゼロにして、サウンドバーの音量を別リモコンで操作するなど、かなり面倒くさいことになる。

結論としては、HDMIサウンドバーもHDMIを前提に。テレビに応じてARCは当然、利用状況に応じてeARC対応も重要、と考えればよい。

最近は、約1万円のサウンドバー「2.1chサブウーファー内蔵サウンドバースピーカー」(ゲオ・写真)や、「サブウーファー付き3Dサラウンドバー」(ドン・キホーテ)でも、ARC対応のHDMI入力を備えている

なお、HDMI関連で「パススルー」という機能がある。これはサウンドバーに入力された信号を、出力先にそのまま伝送するもの。仕様欄をよく見ると「4K60p」「HDR」「Dolby Vision」「3D」などが記載されているはず。

例えば、Apple TV 4K→サウンドバー→4Kテレビという接続で、Netflixの4K/Dolby Visionコンテンツを見ようとすると、真ん中のサウンドバーは「4K」「Dolby Vision」のパススルー機能を備える必要がある。エントリークラスのサウンドバーは、パススルーできる機能に制限があるため、組み合わせる前後のシステムを考えながら、どのパススルーが必要か、購入時にチェックしておこう。

ソニーのサウンドバー「HT-A7000」は、4K120p、8K60p(40Gbps)、Dolby Visionのパススルーにも対応している

サラウンド機能:フォーマット、モード、再生方法

「サラウンド機能」と一括りにしてしまったが、①デコード可能な対応フォーマット、②サラウンドモード、そして③再生方法に分けることができる。

1つ目のフォーマットというのは、地デジ放送で使われるMPEG2 AAC、DVDなどで使われるDolby DigitalやDTS、BDなどで使われるDolby TrueHDやDTS-HD Master Audio、配信などで使われるDolby Digital PlusやDTS-HD High Resolution Audioなどの音声規格のこと。サウンドバーがこれらの規格に対応していないと(デコードできないと)、単純に“音が出ない”。その場合は、サウンドバーに信号を伝送しているプレーヤー側で、(サウンドバーが対応している信号に)変換する必要がある。

フォーマットのトレンドは、BDや配信で採用が目立ち始めたDolby Atmos、DTS:Xなどのオブジェクト・オーディオ(=イマーシブ・オーディオ)への対応だ。これらオブジェクト・オーディオをサポートしたモデルは少し高いのがネックだが、Anker「Soundcore Infini Pro」('20年6月発売・約2.3万円)や、クリエイティブメディア「Creative Stage 360」('21年8月発売・約2.8万円)などは、3万円を切る価格でDolby Atmos対応を実現している。

Ankerのサウンドバー「Soundcore Infini Pro」(約2.3万円)

Anker、約2.3万円で120W出力、Dolby Atmos対応2.1chサウンドバー

クリエイティブメディアのサウンドバー「Creative Stage 360」(約2.8万円)

クリエイティブ、約2.8万円のDolby Atmos対応サウンドバー

ほかに新しいフォーマットとして、4K/8K放送で使われているMPEG4 AAC(最大22.2ch)もあるが、対応機種としては、シャープの「8A-C22CX1」('20年8月発売・約8万円 ※対応テレビとの組み合わせが条件)などごく一部に限られている状況だ。

シャープのサウンドバー「8A-C22CX1」(約8万円)

シャープ、業界初の8K放送・22.2ch音声入力に対応したサウンドバー

2つ目のサラウンドモードは、製品に搭載されている拡張変換機能を指す。例えば、「Dolby Atmos Height Virtualizer」や「DTS Virtual:X」対応モデルでは、バーチャル技術で立体音響サウンドに変換することができる。

また多くのサウンドバーには、スポーツやシネマ、ライブといった“雰囲気”を再現するサラウンドモードも備える。例えば、サッカー中継の際にサウンドバーを「スポーツモード」に切り替えると、まるでスタジアムの客席で見ているかのような歓声の拡がり感を再現してくれる。こうしたモードの再現性や効果のさじ加減は、メーカーや製品ごとに異なり、音の差も分かりやすい。

パナソニックのサウンドバー「SC-HTB01」(約4.5万円)。DTSのバーチャル3Dサラウンド技術「DTS Virtual:X」ほか、3種類のゲームモードを備える

パナソニックが「FF XIV」推奨サウンドバー。Atmos/DTS:X、3つのゲームモード

3つ目の再生方法というのは、前方に置いたスピーカー1つでサラウンド感を生み出すために、どのような方法で効果を出しているか、ということ。

具体的に再生方法を大別すると、人間の聴覚特性(頭部伝達関数)を応用したバーチャルタイプと、壁面反射を利用するタイプがある。

バーチャルサラウンドは、主に、音が両耳に届く時間差や音色の違いを電気的に再現、言い換えると錯覚を応用したものだ。原則、サウンドバーは中心鉛直線上が最大効果を発揮するスイートスポットになる。1~2人でテレビの前に並んで座れるなら、シンプルかつ効果的で、合理的な方法だ。

これに対して音を壁面反射させるタイプは、構造が複雑で高価になりがちである一方、良好な立体感が得られ、かつサービスエリアが広いという利点がある。例えば、ヤマハ「YSP-2700」('16年9月発売・約12万円)が採用しているYSP技術は、音をビーム状にして壁面を反射させてリスナーに音を届ける仕組みで、サラウンド効果にも定評がある。

ヤマハのサウンドバー「YSP-2700」。ワイヤレスのサブウーファーとセットで約12万円

4KやMusicCastに対応したヤマハの新サウンドプロジェクタ「YSP-2700」

なお、ソニー「HT-A7000」('21年8月発売・約15.4万円)は、バーチャル技術と壁面反射の両方を利用した最新のサウンドバー。Dolby AtmosやDTS:Xのような天井方向に音の広がりを求める場合は、イネーブルドスピーカー内蔵タイプ(上向きのスピーカーで、天井の反射を利用)は効果が高く、このHT-A7000にもイネーブルドスピーカーが搭載されている。

基本的には、バーチャルタイプで十分な満足感が得られると思うが、ファミリーなど鑑賞者が多い場合ならヤマハのような壁面反射タイプや、ソニー「HT-A7000」、デノン「Denon Home Sound Bar 550」('21年5月発売・約8万円)のようなリアスピーカー追加可能タイプも検討してみるといいだろう。

ソニーのフラッグシップサウンドバー「HT-A7000」。約15.4万円

ソニー、音の反射でDolby Atmos再生、無線リアも追加できるサウンドバー

デノンのサウンドバー「Denon Home Sound Bar 550」。約8万円

デノン、無線リアスピーカーを追加できるAtmos & DTS:Xサウンドバー

音質面でも有利なWi-Fi/音楽ストリーミングサービス

メーカーがサウンドバーの購入者にアンケートを行なったところ、実は“オーディオ機器”としての利用時間が長いという。確かに四六時中映像を見ることはないだろうし、たいてい、テレビは部屋の中の良い場所に陣取っているので、サウンドバーで音楽再生しない手はない。

こうなると欲しくなる機能が、Wi-Fi/音楽ストリーミング再生機能だ。スマホからサウンドバーにキャストすれば、サウンドバーが直接データを受信して再生してくれるので、スマホが自由になる。これもBluetooth接続との大きな違い。音質面でもBluetooth経由よりも有利なので、積極的に活用したい機能だ。

サウンドバーに「Chromecast built-in」機能があれば、ネットラジオや音楽配信サービスをスマホ操作で、サウンドバーでストリーミング再生できる

スマホ音楽を手軽に再生できるBluetooth

サウンドバー購入者の中で利用率の高い機能の一つがBluetoothだ。

Bluetoothのメリットは、Wi-Fiやネットワーク設定をすることなく、手軽に手持ちのスマホとサウンドバーが接続でき、スピーカーとして利用できること。ネットワーク設定が苦手な方でも接続しやすい、簡便さが魅力だ。

Bluetooth接続では、伝送できるデータ量に限界があるため、音質の劣化は避けられない。音質重視の利用を前提とするなら、aptXやLDACといった音質面で有利なコーデックに対応したモデルを選びたい。

aptXコーデックに対応するDALIのサウンドバー「KATCH/ONE」('20年2月発売・約13万円)

DALI、13万円のサウンドバー「KATCH/ONE」。10基のドライバーを4台のアンプで駆動

LDACコーデックをサポートするサウンドバーは、ゼンハイザー「AMBEO Soundbar」(写真)やソニー「HT-A7000」など

少しマニアックなお話と製品選択時の注意事項

ここからは、AV Watch読者向けの少しマニアックなお話。サウンドバーでより良いサラウンド体験を求めるこだわり派なら、ぜひチェックしてほしい。

サブウーファー分離型のメリット

サウンドバーとは別に、独立した大型のサブウーファーがあると、低音に迫力やゆとりが生まれるのは理解いただけるだろう。しかし、マニアックな視点で見ると、もっと重要なポイントがある。それは置き場所の調整で全体的なサウンドパフォーマンスが向上できることだ。

映画館に比べて狭く小さい一般家庭の部屋では、波としての音の性格が強くあらわれる。特に低音の場合、波長の1/2の長さと部屋の一辺の長さが等しくなると、共振して「定在波」と呼ばれる現象が起こるのだ。

具体的な現象としては、特定の周波数の低音が全く聞こえなくなったり、逆に2倍に増幅されたりして、音質全体に悪影響を及ぼす。こうした音響障害は、サブウーファーの設置位置でいくらか軽減でき、調整が可能だ。1本バーの完結タイプは、テレビの真ん中以外に置き場所が実質ないため低音調整ができない。マニアであれば、サブウーファー分離型を検討してほしい。

ネット動画のDolby AtmosがARCで伝送できるわけ

HDMIフォーラムでは、HDMI2.1規格で新たに追加された「eARC」の特徴として、Dolby Atmosのようなオブジェクト・オーディオフォーマットの伝送を挙げている。だがその一方で、Netflixなどの動画配信サービスを利用する場合は、Dolby Atmos信号もARCで伝送できている。

この点をHDMIフォーラムの米国本部に問い合わせたところ、「ARCの規格上限1Mbps未満の音声信号であれば、Dolby Atmosでも通る」ということだった。つまりフォーマット云々はここでは関係なく、1Mbpsを超えるか否かが、通る・通らないのポイント。実際、Netflixでは音声の最大データレートを768kbpsと定めており、動画配信を楽しむだけならARCで十分というわけだ。

ただ、配信ではなく、BDやUHD BDに使われているDolby Atmosは、パッケージ向けの高レートな仕様になっているので、eARCでなければ伝送はできない。「絶対にディスクは見ない!」という方以外は、予算が許せば、eARC対応のサウンドバーを選ぶと安心と思う。

映像の映り込みに注意。天面はマット調がおすすめ

サウンドバーのほとんどの製品は、ボディカラーがブラックかダークグレーになっている。これは、テレビとのデザインマッチングという要素もあるが、映像を見る際に“邪魔になりにくい”というメリットもある。

こだわり派が注目したいのは、天面の仕上げ。

映像に集中するなら、画面に反射しないマット調がオススメ。全体あるいは一部に艶のある製品は、映像の映り込みを招くからだ。天面がガラスの製品もデザイン性の高さやホコリが目立ちにくく、拭き掃除もし易いというメリットもあるが……。

天板に光沢素材を使っていた、ボーズの「Bose Smart Soundbar 700」(販売終了品)。デザイン性は高いが、映像に集中するならブラック&マット調がいいだろう

低重心テレビは注意! 光センサー隠すと画に影響も

最近は、液晶テレビも有機ELテレビも画面のベゼル(縁)が細く、また低重心なスタンドが一般的になりつつある。こうしたテレビの前にサウンドバーを設置すると、画面が遮られるだけでなく、リモコン受光部や光(明るさ/色温度)センサーを隠してしまう恐れがある。

リモコン操作に限っては、リピーター機能(サウンドバーがリモコン信号を受信して後方に再発信)で回避できる場合があるが、近年の高画質テレビで重要な役割を果たす光センサーは代替が効かずセンサーが誤反応するなど、画質に影響が出る場合も考えられる。寸法を確認して、設置に問題がある場合は、テレビを底上げしたり、壁寄せスタンドの活用を検討するといいだろう。

ヤマダ電機の壁寄せテレビスタンド

多機能なサウンドバーを選ぶのは確かに無難だが、用途や利用する環境を把握した上で、機能や性能を絞ればコスト面で有利になる。この記事を参考に、自身が必要な機能を知り、賢い買い物に繋げてほしい。

鴻池賢三

オーディオ・ビジュアル評論家。 AV機器メーカーの商品企画職、シリコンバレ ーの半導体ベンチャー企業を経て独立。 THX認定ホームシアターデザイナー。ISF認定ビデオエンジニア。