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Apple Vision Pro日本で発売。AV目線で知ってるとうれしい5つのこと

Apple Vision Pro

6月28日、日本でも「Apple Vision Pro」が発売になる。

「60万円は出せない」とか「アメリカではもう人気ない」とか、マイナスイメージも先行しているところもありそうだ。何度かレビュー的な記事も書いたが、厳しい部分があるのも事実ではある。

でも、確実に言える点が1つある。

Vision Proがまず刺さるのは、本誌読者のような「オーディオビジュアル・ファン」だ。

というわけで、そんな視点で「Vision Pro発売日に、AV目線で知ってるとうれしい5つのこと」をまとめてみよう。

その1:まずは「無料体験」に

XR機器は「かぶってなんぼ」だ。文章で伝える人間としては甚だ情けない話だとは思うが、違いは文章だけではなかなか伝わらない。

Vision ProのAV体験は非常に印象的なのだが、60万円の機器を買わないとその本質がわからない。モノを見ないでいきなりお金を払える人は少数だろう。

というわけでアップルは、同社直営のApple StoreでVision Proのデモを体験できるようにしている。オンラインでの予約が必要だが、無料で30分程度の体験が可能になっている。

アップルのVision Pro公式サイトからデモ予約ができる

Vision Pro公式サイト

もちろんこの体験は購入前提のものではない。しかし、体験した後にその場で商品を注文することは可能だ。

買うかどうかは別として、無料での体験に申し込むことはお勧めする。

現状こうした体験は家電店などでは行なわれていないものの、体験可能な場所が広がっていくことは期待したい。

その2:Apple TVアプリから3D映画が買える。場合によってはタダ

Vision ProのAV的な価値といえば「映画」だ。信じられないかもしれないが、Vision Proを着けて映画やドラマを見た時のクオリティは、高品質なテレビやホームシアターの体験に匹敵する。

Vision Proの中での映画視聴イメージ(枠内は合成)

しかも、Vision Pro向けに配信された映画を見た場合、アスペクト比が「映画のスクリーンに近くなる」のがポイントだ。テレビのように16:9で上下に黒い枠、という形ではなく、シネスコ配信の場合であれば「空中にシネスコのスクリーンが浮かぶ」形で視聴できる。「映画館」モードで視聴すると、文字通り映画館に近い体験だ。

Vision Proで映画を見る方法はたくさんあるが、まずおすすめは「Apple TV」アプリを使うことだ。

Vision Pro版のApple TVアプリ

ご存知のように、アップルはApple TVアプリから多数の映画・ドラマを配信している。映画のオンラインレンタル視聴などで使っている人も多いだろう。

Vision Proでも同じ映画が楽しめるが、単に視聴できるだけでなく、前述した「アスペクト比の最適化」に加え「3D映画」がラインナップされていることがポイントだ。

3D映画のコーナーもちゃんと作られた

Vision Proでの3D映画視聴品質は素晴らしい。家庭で3D映画を見る方法としては、過去最高のクオリティであると断言していいくらいだ。

3D映画のコーナーもちゃんと設けられていて、すでにかなりの本数が並んでいる。まあ、世にある全ての3D映画がある、劇場で3D公開された作品が全てある、というわけではないのだけれど、現状、XR機器からアクセスできるストアの3D映画としては、最高の品揃えである。

さらにお得なのは、アップルのストア経由で過去に買った映画があると、その作品の3D版が自動的に視聴可能になっている可能性が高い、という点だ。筆者はそこそこな本数を購入しているが、「なるほどこの映画は3D版があるな」と思った製品はちゃんと3D版が、追加料金なしで楽しめるようになっていた。

以前買った「マッドマックス 怒りのデス・ロード」も3D対応版になっていた

まあちょっと意外だったのは、「絶対3D版が来るだろう」と思って買っておいた「アバター」シリーズの3D版がまだ来ていない……ということなのだが。

なお、アメリカ版のApple TV+の場合、オリジナルのドラマだけでなく3D映画なども毎月何本か視聴可能になるのだが、日本ではそうなっていないようだ。ちょっと残念。

その3:Apple TVで「Immersive Video」も見よう

もう一つApple TVがらみの話。

Vision Pro向けという意味でApple TVを捉えると、「Apple Immersive Video」作品もある、というのがポイントになる。

Apple Immersive Videoの作品もいくつかあるので必見

Apple Immersive Videoとは、2眼・前方180度で撮影した映像規格で、解像度も高くて非常に品質が良い。Vision Pro向けのオリジナルとして幾つかの作品が提供されているので、ぜひ楽しんでみてほしい。個人的には、MLS(メジャーリーグサッカー)のコンテンツがグッと来た。

MLSのハイライトをImmersive Videoにしたものが破壊力満点。ライブやスポーツコンテンツの未来を見るようだ

その4:「Disney+」には「プレミアムプラン」で加入せよ

Vision Pro向けに良いサービスとして「Disney+」がある。

Vision Pro版のDisney+

コンテンツの多い主要サブスクの1つではあるが、特にVision Pro向けにおすすめの点として、「3D映画が用意されている」こと、「独自の背景が使える」ことが挙げられる。

Disney+では多くのディズニー関連作品が視聴できるが、映画の中に「3D対応」のものが結構ある。日本の場合、月額1,320円の「プレミアムプラン」に加入している必要はあるのだが、3D版だからといって追加費用がかかるわけではない。

3D作品のコーナーがDisney+にも用意されている。こちらはサブスクの範囲内で見放題

今後も同社関連作品で3D上映されるものは、おそらく3D視聴可能になっていくのではないだろうか。

また、映画を見るための「背景」としても、Disney+専用のものが用意されている。正直映画に没入するにはいささか煩めのものだが、世界観にハマるなら楽しく、一度は試しておく価値がある。

タトゥイーンで映画を。そういうことができるのもDisney+の付加価値

その5:iPad版アプリとブラウザを活かせ

Vision Pro専用のアプリはまだ多くない。逆に言えば、Apple TVやDisney+を紹介したのは、プラットフォーマー側として異様なまでに力を入れている「特例」とも言える。

だが、日常的に使っているサービスをVision Proでも使いたいのが人情。そんな時の対処方法はちゃんとある。

例えば、Amazon Prime VideoやKindleはVision Pro版アプリがないが、「iPad版アプリ」をそのまま使える。操作感もかなりいい。Apple TVのようにアスペクト比を合わせてくれる要素はないが、「巨大なiPadを空中に浮かべた」ように使える。

Vision Proで動くiPad版のPrime VideoアプリとKindleアプリ

ブラウザはSafariなのでかなり高性能。PCのウェブがほぼそのまま使えるので、「ブラウザ版」があるサービスはそちらを使うこともできる。

例えばNetflixやYouTubeはVision Pro版もiPad版も、Vision Proの中からは公式アプリを使うことができない。だがSafariからは問題なく利用できる。

Vision Pro版SafariからNetflixが視聴可能

なお、NetflixやYouTubeは、ブラウザ版を組み込んだサードパーティ製アプリもある。それらを試してみてもいい。

どちらにしろ、ブラウザ版がベースだとオフライン視聴ができないという欠点はあるが、自宅内などで使うなら実用性は十分だ。

まあやはり、iPad版くらいはあったほうが有難くはあるので、各社はぜひ「iPad版をVision Proからも使える」設定での配信をお願いしたいところではあるのだが……。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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