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「世界中にアニメファンを作る」Netflixがアニメ注力宣言。湯浅監督らも参加

 Netflixは2日、今後配信するアニメや、現在配信中アニメの魅力、そこで活用されているテクノロジーなどを紹介するイベント「Netflixアニメスレート 2017」を開催。チーフ・プロダクト・オフィサーのグレッグ・ピーターズ氏が、日本のアニメスタジオと共に多くの作品を作り、世界配信していく姿勢を説明。「世界中にアニメファンを作っていく」と、今後の展望を語った。

Netflixアニメスレート 2017

 さらに、Netflixオリジナルアニメとして「聖闘士星矢」を制作する事や、格闘コミックを原作とした「バキ」、ボンズが手がける「A.I.C.O. -incarnation」などを今後配信する作品も発表。こちらのラインナップは、別記事で紹介している。

世界中にアニメファンを

 チーフ・プロダクト・オフィサーのグレッグ・ピーターズ氏は、2017年が、日本のアニメが誕生して100年にあたる事を紹介。「日本のアニメは世界を魅了した。Netflixでは、既存のアニメファンに昔のアニメを見やすく、そして新たな作品を最高のクオリティで提供したい。グローバルなネットワークを使い、まったく新しいオーディエンスに、日本のアニメを紹介していきたい。世界中にアニメファンを増やしたい」と、今後の狙いを説明。

チーフ・プロダクト・オフィサーのグレッグ・ピーターズ氏

 現在アニメスタジオなど50社と協力し、一緒にアニメ作品作りを進めており、既に「オリジナルアニメは20本を世界に配信している」という。日本アニメは、原作のコミックがあり、それをアニメ化するというパターンが多いが、ピーターズ氏は「Netflixの作品はそれだけにとどまらない」という。

 例えば、7月7日からNetflix独占配信されている「悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-」は、コミックではなく、コナミのゲーム「悪魔城ドラキュラ」を原案としたアニメだ。

 また、「日本のIPではないものを、日本のアニメスタジオに持ち込むという展開もある。逆に、日本で既に名作として知られている“DEATH NOTE”を、インターナショナル版として海外で実写化するという展開もある」と、従来のパターンにとらわれず、柔軟な作品作りと、それに向けた投資を行なっている事を説明。こうしたオリジナル作品を通じて、「“Netflixでなければ見れなかった”と、皆様に言っていただければ光栄だ」とした。

オリジナルアニメの制作に力を入れるNetflix

 システム面では、Netflixは現在1,500機種以上のデバイスで視聴でき、その数を継続的に増やしている。また、2012年は7言語のみの対応だったが、現在は20以上の言語に対応。吹き替え音声も豊富に用意しているほか、作品のページに書かれた情報なども、それに合わせた言語のものを用意。UIも含め、その言語で見やすいように配置をカスタマイズするなど、ユーザーが利用しやすいよう、コンテンツの情報を得やすいように工夫しているという。

 エンコード技術にも改良を加えており、従来300kbpsで実現していた画質を越えながら、帯域幅を150kbpsへと半減できるようになったという。さらに、アジアで多く使われているダウンロード配信機能にも触れ、ネットワークに繋がりにくい場所でもNetflixをできるだけ楽しめる施策を今後も展開していくという。

 現時点でNetflixのアカウント数は約1億存在し、1つのアカウントあたり、家族別など、およそ2.5人分のプロファイルが設定されている。つまり、2.5億人分のプロフィールが存在し、それぞれのユーザーがどの作品を、どのデバイスで、どれくらい再生したか、途中で見るのをやめたか、といった利用動向データを蓄積している事も説明。

 こうしたデータを用いて、1人1人のユーザーに対し、マッチしたコンテンツをレコメンドしているという。「例えるなら、2.5億バージョンのNetflixを作っているのと同じ。ユーザーの趣味趣向を理解し、確実に気にいるであろうアニメをレコメンドできる」と自信を見せる。

 それと同時にピーターズ氏は、アニメを見る習慣が無かったり、そもそもアニメを見たことがない人にも、“アニメの輪”を広げていく考えも語る。「例えば、アニメを見たことがない人に対しても、気に入りそうなアニメ作品をレコメンドできる。日本のユーザーの半数以上がアニメを楽しんでおり、南米やアメリカ、フランス、イタリア、台湾、フィリピンでも人気がある。しかし、全世界のアニメの消費量を見てみると、日本以外が90%以上を占めている」という。つまり、どれだけ日本のNetflixユーザーがアニメを沢山見ていると言っても、その消費量は全世界で見ると10%しかないという事だ。

アニメ消費のヒートマップ。日本は真っ赤だが、他国でもアニメの人気が高いことがうかがえる

 ピーターズ氏は、「これはアニメというジャンルにとって、非常にチャンスだと思う。今後、世界でアニメの消費はどんどん増えていくだろう。それに向けて、投資をしていきたい。ユーザーを満足させる事は、Netflixにとって有益な事に繋がる。それが新しいコンテンツへの投資に繋がり、クリエイターの皆さんに新たな作品を作っていただく事に繋がり、そしてそれが新たなオーディエンスを築く事につながっていく」と、アニメにとってポジティブな輪を、Netflixが実現していく未来像を語った。

アジアではダウンロード機能の利用率も高い

監督や声優にリラックマも!? ゲスト続々登場

 ステージでは、今後配信を予定している作品を紹介する他、作品の監督や声優を招いてのトークショーも開催された。

 7月7日からNetflix独占配信されている「悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-」からは、ヴェルモント役の声優・置鮎龍太郎氏と、プロデューサーのAdi Shankar氏が参加。

左からヴェルモント役の声優・置鮎龍太郎氏と、プロデューサーのAdi Shankar氏

 香港とシンガポールで育ち、日本のアニメにどっぷり浸かって大きくなったというAdi Shankar氏は、「ガンダム大好き。オルフェンズも見てる。ガッチャマンも大好きだった。最近は“進撃の巨人”を楽しんでいる」と、現在でも大の日本アニメ好き。ハリウッドで映画プロデューサーとして活躍しながら、ゲーム「悪魔城ドラキュラ」のアニメ化構想は10年前から胸に抱いていたという。

 「しかし、アメリカではアニメは子供のものと考えられがちで、実現は難しかった。2012年に実写版を作らないかというオファーもある会社からもらったのだが、彼らは悪魔城ドラキュラのキャラクターやファンに対してリスペクトが足りないと感じ、断った。そしてNetflixが登場した。彼らはリスペクトを持って協力してくれた。ハリウッドに出てから今まで、Netflixとの仕事が一番の体験だ」と賞賛。

 既にシーズン2にも取り掛かっており、「シーズン1を超えるものにしようと頑張っている。ムチを使ったアクションも沢山出てくる。置鮎さんが演じるヴェルモントはすぐに死んじゃいますが」と最後に冗談を飛ばし、置鮎さんがツッコミを入れるなど、場内を沸かせた。

Adi Shankar氏

 「カウボーイビバップ」、「スペースダンディ」、「ユーリ!!! on ICE」が大好きと語るのは、「キャノン・バスターズ」という作品で、エグゼクティブ・プロデューサー、監督、クリエイターを担当しているラション・トーマス氏。

ラション・トーマス氏

 アメリカでTVアニメに携わってきたトーマス氏だが、「アメリカではアニメは子供向けのもので、日本のアニメやマンガのような、様々な解釈ができる作品、いろいろな表現が可能な点が私からすると羨ましかった」という。

 そこで、自身が手がける新作のパイロット版制作にあたり、日本のスタジオであるサテライトに協力を打診。サテライトの金子文雄プロデューサーは、「最初はサテライトのスタッフであるロマン・トマさん(フランス出身のデザイナー・イラストレーターで、バスカッシュ! やマクロスΔなどのサテライト作品で活躍)に、トーマス氏からデザインの発注があったのがキッカケ。日本のスタッフに手がけて欲しいという要望もあり、今回の協力が実現した」という。

サテライトの金子文雄プロデューサー

 「キャノン・バスターズ」は、豊かな王国の継承者である人物の、親友として作られた、S.A.M(サム)という女性型のドロイドが主人公。彼女が親友を救うため、風変わりな旧式メンテナンス・ドロイド、大胆不敵なお尋ね者を仲間にしながら、不思議な旅を繰り広げるというもの。トーマス氏はキャラクターのイラストなどを交え、構想を熱く語った。

 永井豪の漫画「デビルマン」をオリジナルの新作アニメとして映像化するのが「DEVILMAN crybaby」。2018年初春に全世界同時配信予定で、「夜明け告げるルーのうた」でアヌシー国際アニメーション映画祭長編部門クリスタル(最高賞)、文化庁長官表彰を受賞した湯浅政明監督が手がける事でも注目を集めている。

 湯浅監督は、声優の内山昂輝氏、村瀬歩氏と共に登壇。同時に、不動明役を内山氏が、飛鳥了役を村瀬氏が演じる事も発表された。

湯浅政明監督

 村瀬氏は、「オーディションを受けた時から、“面白いものを作ってやるぞ”という感じがビシバシ伝わってきて、この作品に関わりたかったので、飛鳥了を演じる事になりとても嬉しい。伝説的な作品なのでプレッシャーもありましたが、アフレコをはじめてみると、監督の作る世界にのめりこんでいます」と語る。

 内山氏は、「普段TVアニメに関わる事が多いので、DEVILMAN crybabyのかなり“攻めた”内容で、本当にこれはいいのかなとビックリしています」、村瀬氏も、「超えちゃいけなさそうなラインを簡単に越えてしまっているような」と語るなど、ネット配信ならではのかなり“ハード”な描写もあるようだ。

 湯浅監督は、「テレビよりはっちゃけていいですよ、という事で、バイオレンスやセクシャルなシーンも頑張っています。(制作は)かなり順調に進んでいています。2人の演技も素晴らしくて、最初はデーモンの声は叫び声で、大きいので、SEでいいのかなと思っていましたが、演技がとても面白くて、その声に、ちょっと足せば、作品にちょうどピッタリかなと音響監督さんと決めたり、どんどんクオリティが上がっています」と、仕上がりつつある作品に自信を見せた。

左から湯浅政明監督、声優の内山昂輝氏、村瀬歩氏

 イベントの司会は、アニメ好きで知られるニッポン放送の吉田尚記アナウンサーが担当。さらにゲストMCとして、Netflixオリジナルドラマ「グッドモーニング・コール」で主演し、女優だけでなく声優としても活躍している福原遥さんが担当。仕事の移動の合間にも、頻繁にNetflixでアニメを楽しんでいるという福原さんは、「最近ではソードアート・オンラインが大好き。今日の服も、(劇中に登場する)ユイちゃんをイメージしました」と語るなど、大のアニメ好き。続々と発表される新作アニメに歓声を上げていた。

女優だけでなく声優としても活躍している福原遥さん
コマ撮りアニメーションシリーズとして映像化される「リラックマ」も登場