小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第737回:【年末特別企画】Electric Zooma! 2015年総集編

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

第737回:【年末特別企画】Electric Zooma! 2015年総集編

4Kカメラが“あたりまえ”に。配信サービスも多数開始

今年を振り返ってみると……

 さて今年もまたこの原稿を書く時期がやってきた。1年間の締めくくり、2015年総集編をお送りする。

 今年のAV機器業界を振り返ってみると、クリエイティブ方面では4Kカメラの好調、エンタテイメントとしてはストリーミングサービスの乱立に沸き立った1年だった。ハイエンドという位置付けだった4Kも、だいぶ地に足がついてきて、価格的にも機能的にも現実的なものとなった。今年何らかの4K対応製品を買った方も多いことだろう。

 さて今年取り上げた製品をジャンル別に分類すると、カメラ×19、オーディオ×5、レコーダ×4、サービス×3、ドローン×2、映像配信機器×2、ガジェット×2、ハウツー×2、PC×1となった。特集やショーレポートは除いている。

 カメラはほとんどが4Kだが、360度カメラやスマートフォンも含まれる。ドローンも空撮目的からすればカメラに入るかもしれないが、首相官邸墜落事件を受けて航空法も改正され、もはや簡単に飛ばすことはできなくなった。おそらく今後は、200g以下のおもちゃクラスは扱うことがあるかもしれないが、Phantomクラスの中型機をレポートするのは、どのメディアでも難しいだろう。

 そんな猛スピードで紆余曲折のあった今年だが、年に一度の総仕上げ、ジャンル別にトレンドを振り返ってみよう。

カメラ篇

 カメラと一口に言っても、カテゴリがいろいろある。内訳を見ていくと、デジタル一眼×6、コンパクトデジカメ×4、アクションカメラ×4、ビデオカメラ×3、スマートフォン×2という具合だ。また19製品のうち、4K対応は14。昨年からすれば、破格に4K対応製品が増えた。特に今年は、コンパクトデジカメやアクションカム系に至るまで4K撮影可能なモデルが出たことで、4K非対応のカメラは逆によほど何か事情があるのかと深読みしてしまうレベルとなった。

パナソニック「DMC-G7」

 デジタル一眼では、ミラーレスが元気だ。特に映像に強い2社のうち、パナソニックはマイクロフォーサーズ押し、ソニーはEマウント押しということで、4Kが撮れる一眼はミラーレスに偏る傾向がある。

 パナソニックは4K撮影機能を写真に落とし込むことで、いつの間にか“4K当たり前”の世界を築こうとしている。特にDMC-G7の価格破壊とも言える路線は印象的で、しかも後にファームウェアで追加された「フォーカスセレクト」機能は、今後の写真と4K、あるいは8Kを考える上で、十分キラーソリューションとなりうる。

パナソニック「DMC-GX8」

・第716回:い、いいのか!? この値段で。4K撮影可能なミラーレス、パナソニック「DMC-G7」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150701_709586.html
・第736回:レンズ+ボディの手振れ補正と“あとからフォーカス”の威力、パナソニック「DMC-GX8」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151216_735420.html

 一方ソニーは、同社のキーデバイスである裏面照射CMOSを潤沢に使った「α7R II」、裏面ではないが画素数を減らして感度を上げた「α7S II」といったカメラで暗部撮影に特徴を出し、映像の新しい世界を切り開いた。ソニーはどちらかというと、プロ~プロシューマー路線に振っていく方向のように見える。実際映像のプロでも、α7S IIを買った人は多い。

ソニー「α7S II」

・第725回:世界初フルサイズ裏面照射CMOSの威力、全画素読出にも注目! ソニー「α7R II」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150916_721352.html
・第731回:異次元の高感度カメラ、本体収録で4Kシーンに再度殴り込み!? ソニー「α7S II」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151111_729906.html

 コンパクトデジカメは、ソニーのRXシリーズがついに4K化したところがポイントだろう。高級コンデジ路線に4Kはプレミアム感が強いが、ストレートに動画カメラと言ってしまうと制約も多く、まだ過渡期という印象は否めない。一方静止画のカメラとしては、RXシリーズが打ち立てた1インチという大型撮像素子を搭載する方向性に他社も追従し、高級コンパクトの一つの条件として確立した。

ソニー「RX100M4」

・第721回:ついにRX100シリーズで4K撮影! 新CMOSのソニー高級コンデジ「RX100M4」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150819_716787.html
・第722回:Exmor RSの本命!? 4K対応の重量級ネオ一眼、ソニー「RX10M2」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150826_717899.html
・第718回:1インチセンサーで光学25倍、キヤノン気合いの「PowerShot G3 X」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150722_712666.html

 一方でビデオカメラはというと、4K対応はもちろん進んできてはいるものの、製品ラインナップとしては寂しくなってしまった。キヤノン、JVCにはコンシューマ向け4Kカメラがなく、今後も製品化するのかしないのか、手応えがない。おそらく今が一番、迷走している時期だろう。

 メーカーとしても、コンシューマー市場でこれ以上ビデオカメラというジャンルに未来があるのか、考え所かと思う。もちろん、必要な人には必要なのだが、それの意味するところはニッチ市場へシフトするという事である。

 すでに価格を下げれば売れるということもなくなってきている事から、ビデオカメラの技術をどのようにデジカメに融合し、動画と静止画のハイブリッド機をもう一度構築できるのか。その辺りに、市場の未来がかかっている。

パナソニック「HC-X1000」
パナソニック「HC-WX970M」
ソニー「FDR-AXP35」

・第696回:いろんな割り切りがすごい! 民生向け4K/60pカムコーダ、パナソニック「HC-X1000」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150121_684559.html
・第700回:驚愕の4K解像感、ウェアラブル連携も可能なパナソニック「HC-WX970M」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150225_689870.html
・第701回:4Kで空間光学手ぶれ補正! プロジェクタ&サブカメラも使えるソニー「FDR-AXP35」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150304_691054.html

 アクションカムは日本より米国で堅調な伸びを見せているが、以前よりも市場が成熟してきたこともあり、商品として新鮮味がなくなってきているところである。4K化は昨年から進んできたが、高解像度大画面では映像酔いも増加するということもあり、4Kアクションカムはスタビライズが課題になっている。

 そんな中、360度カメラは伸びしろが大きいとみられている。単にあちこち見回せるというだけでなく、スマートフォンを中心としたVR文化の中にうまく入り込むことで、将来的にも期待出来る分野だ。この辺りもやはり日本より米国の方が関心を持たれている部分なので、年明けのCESで何か新しい取り組みが見られるかもしれない。

ソニーのアクションカム、上が4K対応FDR-X1000V、下がHDR-AS200V
リコー、「THETA S」
Kodakのアクションカム「SP360 4K」

・第703回:遅れてきた4Kアクションカム、ソニー「FDR-X1000V」。HD機AS200Vの進化もチエック!
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150318_693174.html
・第729回:360度カメラとしての完成形!? 長時間録画も可能になった人気爆発「THETA S」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151028_727685.html
・第735回:全方位撮影のKodakアクションカムが4Kに?「SP360 4K」を試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151209_734290.html

 スマートフォンの4K化もすでに昨年から始まってはいたが、今年はiPhone 6sシリーズが4K化を果たしたことで、今後のハイエンドモデルは4K化が進むものと思われる。

 ただ、実際そんなに活用されているかというと、そこはちょっと微妙なところだろう。スマートフォンの動画はSNS上で消費されていくものであり、そのSNSもほとんどがスマホで見られていることを考えれば、4Kで撮ってアップしても、その恩恵を誰も受けてない。したがってトラフィックを増加させるだけ無駄、ということになっている。

 4Kを単純に動画として扱うだけでなく、要素としてどう消化していくか。そこまで含めて、サービス事業者も考え所に差し掛かっている。

iPhone 6s Plus
LUMIX DMC-CM1

・第704回:ハイエンドコンデジの理想形? 1型MOS/4K/SIMフリーの「LUMIX DMC-CM1」を試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150325_694295.html
・第727回:4Kに手ぶれ補正、“動く写真”まで!? iPhone 6s Plusの動画撮影機能を試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151007_724318.html

レコーダ篇

 レコーダもAV機器としては手堅い分野になるが、注目度としては年々下がっているように感じられる。特に全録モデルがラインナップの中核を占めるようになってからは、録画チャンネル数とHDD容量、そして価格バランスで人気が決まるようになっており、メーカーごとの個性もなかなか出しづらくなってきている。

 全録は東芝が特に力を入れてきた分野で、その集大成とも言えるDBR-M590はなかなか強烈だった。番組の見せ方、探し方としてスマートフォン連携を積極的に行なっており、マニアックにテレビを見るというニーズにはピッタリだ。一方でライトユーザーには、レコーダとスマホを紐づけするのでさえハードルが高いのも事実で、そこをどう乗り越えるのかが各メーカー頭を悩ませるところであろう。

東芝全録機「DBR-M590」

・第702回:「史上最強」は本当か、9ch/6TBの東芝全録機「DBR-M590」を試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150311_692129.html

 またご承知の通り東芝は今年夏に発覚した粉飾決済問題から、事業の構造改革を迫られる結果となった。テレビやパソコン、白物家電事業が大きな影響を受ける。テレビなどの映像事業は、国内は人員削減などを行なうものの、自社開発・販売を継続ということなので、レコーダもしばらくは安泰かと見られるが、今後M590クラスのハイエンドモデルの投入は簡単ではなくなるだろう。

 パナソニックはレコーダも好調で、今年は全録機を2台、ワイヤレステレビの「新プライベート・ビエラ」を取り上げた。ハイエンドモデルDMR-BRX6000で搭載したモーション操作は、Wii的な操作法をレコーダに持ち込んだことで、なかなか面白い仕上がりとなっている。番組表形式にこだわらない見せ方も面白く、テレビフォーマットの解体と再編を行った点で、評価できる。

パナソニック「DMR-BRX6000」

・第712回:“全自動”がキーワード? 全録史上最強、6TB/10chのパナソニック「DMR-BRX6000」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150603_705091.html

 プライベート・ビエラは一見すると地味な製品に見えるものの、かつてソニーがトライしたエアボードからロケフリに至るまでの技術を綺麗に昇華しており、価格的にも手を出しやすい。特に「お風呂でテレビ」というソリューションは、防水型スマホでもできなくはないが、やはり専用機として安全かつ安定して使える点が評価された。これを借りてる間、子供も毎日機嫌よくお風呂に入ってくれたこともあり、女性はもちろん、ファミリーユースとしても使い出のある製品として評価したい。

プライベート・ビエラ、UN-10T5(左)とUN-19F5(右)

・第715回:横綱相撲完結!? ワイヤレスTV「新プライベート・ビエラ」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150624_708458.html

オーディオ篇

 例年オーディオ関係の記事の少なさが課題であったが、近年はハイレゾが注目を集めていることもあり、製品も多かった。ただ、なかなか「ハイレゾ対応です」というだけで単品の製品が1本の記事にはなりづらいところもあり、どうしてもヘッドホンやスピーカー1つ1つを丁寧に取り上げることが難しい。

 ただ、その中でもソニー「SRS-X99」や「X88」は、単純にスピーカーと言ってしまうにはあまりにも機能が多く、説明が必要な商品である。それゆえにパッと売れるものでもないが、納得して買った人は満足感が高いだろう。個人的には後継ということではなく、大きく発展させた意欲的なモデルも見たかったところだ。

 高品位なBluetooth伝送を実現する新コーデック「LDAC」も注目を集め、一部のウォークマンやXperia、ヘッドホンが対応した。ただ現時点ではソニー製品しか採用がなく、一人旅ではなかなか広がりがない。ライセンスも積極的ではあるが、他社は本当にニーズがあるのか、様子を見ているといったところだろう。

左がSRS-X88、右がSRS-X99

・第714回:ソニーのハイレゾ無線スピーカーが進化!「SRS-X99」。侮れない弟分「X88」も
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150617_707318.html

 もう一つ記憶に残る製品としては、ソニーエンジニアリングがプロデュースするテイラーメイドイヤフォン、Just ear「XJE-MH1」は、製品を買ったというよりも、“自分のイベントを開いたもらった”という感覚に近い体験だった。ソニーのイヤフォンを設計するためのツールを使い、ある意味自由自在に音がチューニングできるという事実も驚きだった。

 耳型を取るという作業も、新素材の開発で来年あたりは自分でできる可能性もあるが、耳のプロの手でオーダーメイドしてもらうという体験は、多くの知見が得られた。もちろん現在も愛用中であり、電車内のリスニング環境が劇的に進化した。

耳型を取り、テイラーメイドイヤフォンJust ear「XJE-MH1」を作ってもらった

 残念なことに、耳型が一人一人違うため、カスタマイズした結果を他の人に試しに聴いてもらうことができない。ただ標準的なイヤピースであれば、視聴できる場所は幾つかあるようだ。地方の方はなかなか大変だろうが、イベントなどの機会を捉えて一度体験していただきたいものである。

・第734回:音までカスタマイズ! 世界に1台だけのイヤフォン、Just ear「XJE-MH1」を作ってみた
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20151202_733181.html

配信サービス

Google Play Music

 今年5月から11月までの間に、大変な数の配信サービスがスタートした。音楽では5月27日にAWA、6月11日にLINE MUSIC、6月30日にApple Music、9月3日にGoogle Play Music、11月18日にAmazonプライムミュージックと、都合5つ。映像では9月2日にNetflix、9月24日にAmazonプライム・ビデオ、多少毛色は違うものの、10月26日に在京民放によるTVerがスタートした。

 これだけの大型ストリーミングサービスが半年の間に8つもスタートするなどということは、生きている間にもうないかもしれない。残る大物はSpotifyとPandraぐらいじゃないかと思うが、それすら今さら日本に入ってきても、勝算は低いのではないかという気がする。

 国内音楽サービスはApple Music対抗という意識が強かったが、GoogleやAmazonの参入によって事態は混沌としている。特にAmazonは、プライム会員なら無料で利用できるということで、他のサービスと平行で使う人も多いだろう。

大型の音楽配信サービスが一気にスタートした

 一方黒船と言われたApple Musicも実際にサービスがスタートすると、手持ちのライブラリにある楽曲が同名の別の曲に置き換わるといった不具合や、曲が消える、アルバムアートがおかしくなったと言った報告も多かった。すでにiTunes MatchでライブラリをAppleに預けていたユーザーが多かったのも一つの要因かもしれないが、不具合を理由にApple Musicから離脱した人も少なくないとみられる。

・第717回:Apple Music、AWA、LINE……盛り上がる定額制音楽配信、どれにする? 旬の6つを試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150708_710628.html
・第726回:定額+購入+ロッカーで超強力! 音楽配信の伏兵「Google Play Music」を試す
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150930_723177.html

 映像サービスについては、米国で一人勝ちしているNetflixの参入をメーカーは歓迎し、テレビ局は戦々恐々といった状況でサービスインを迎えた。だが実際蓋を開けてみると、専用ハードウェア「Fire TV」で見るAmazon Prime Videoが意外に強力で、4K作品もそのままの解像度で楽しめる。逆に対応を謳うテレビやレコーダでしか4Kで見られないNetflixどうなの、さらに作品ラインナップの増え方もなんだかしょぼくね? というのが筆者の評価だ。

 個人的にはFire TVによるAmazonプライムビデオを中心に、たまにNetflixを見るときもFire TV経由で、という使い方になっている。さすがにNetflixのためだけに、テレビやレコーダを新調をするのは無理がある。

Netflixのスマートフォン版ホーム画面

・第724回:映像配信、最強の黒船襲来!? Netflixが変える視聴体験。多デバイスでチェック
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150909_720116.html

ハウツー篇

 今年新しいトライアルとして、製品紹介にとどまらずハウツーをご紹介するということをやってみた。一つはタイムラプス入門だったが、もう一つは4KテレビをPCモニターとして使うという実験だった。実はこの4Kテレビ+PCという記事が、本連載の中で今年最もアクセス数が多い記事であった。

Mac mini+VIERA AX700という筆者の執筆環境

・第709回:スマホやアクションカムでも撮れる! 今日からはじめよう“タイムラプス”入門
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150513_701459.html
・第698回:40型4K TVをPCディスプレイとして導入したら便利! Mac mini+VIERA AX700
http://av.watch.impress.co.jp/docs/series/zooma/20150204_686651.html

 PC用の4Kモニターでリーズナブルなものがなかった時期に、苦肉の策で考えた作戦だったが、現在もこの環境で快適に執筆している。変わったことといえば、当時はThunderbolt 2端子とHDMIの変換機で4K対応のものがなかったが、後日moshiというメーカーが対応製品をリリースしたため、現在はThunderbolt 2端子から映像出力を得ている。執筆当時はMac MiniのThunderbolt 2が4K出力に対応しているのかも情報がなかったが、実際にやってみたらできた。使い勝手としてはHDMIと全く同じなのだが、まあ気持ちの問題である。

 タイムラプスは、ある意味ほっとけば勝手にできるので、やってみると意外に楽しいはずだ。ただカメラのバッテリーは空になってしまうので、モバイルバッテリーを用意するか、タイムラプス専用のカメラが必要である。この記事をきっかけにもう少し盛り上がってくれるとよかったのだが、昨年タイムラプスに飛びついたアクティブユーザーの大半は、今年は360度カメラに巻き取られていってしまい、寂しい限りである。

 ただ、映像はまだまだ新しい体験に満ち溢れており、ただ見るだけでなく自分で作る楽しみを少しでも多くの人と共有していければと思っている。

タイムラプス撮影モードを備えた、EXILIM EX-ZR1600で撮影したサンプル。ホテルの窓から夕暮れの駅舎を撮影したものだ

総論

 細かく掘っていけばまだまだ語りたいことはあるのだが、すでに相当の文字数になってしまっており、この辺で切り上げることとしたい。今年を俯瞰すると、4Kという技術が、テレビだけにとらわれることなく広く利用されるようになったのは、面白い現象である。もともとは映像フォーマットであったものが、それを実現するためのテクノロジーが他の用途に活用されていくという現象は、HDの時にはなかった。

 とはいうものの、個人としては4Kが撮影できるカメラをまだ持っていない。今年はオーディオにお金をつぎ込みすぎたので、その辺はまた来年の課題としておきたい。

 今年はIoTが来る来ると言われていたが、これといったものがなかった印象だ。Apple Watchも発売当時は爆発的に売れたが、定着したとは言い難い。来年こそは何か手応えのある商品が出てくることを期待したい。

 さてその来年だが、消費税の引き上げが2017年4月に予定されていることもあり、消費者としても大物を買ってしまうなら来年度いっぱいが勝負になる。景気も徐々に持ち直している一方で、所得格差が拡大してきているという現状もある。来年は大型消費に火がつくのか、その辺りの動向も見ていくことになるだろう。

 というわけで今年のElectric Zooma!もこの辺でお開きである。年明けは例年同様、CESのレポートでお目にかかる。それではよいお年を。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。