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量産型b.g.やQDレーザなどスマートグラスが一堂に。「ウェアラブルEXPO」
2018年1月17日 19:47
スマートグラスや高機能繊維など、最新のウェアラブルデバイスが集まる「第4回 ウェアラブルEXPO」が、1月17日に東京ビッグサイトで開幕した。会期は19日までだが、商談向けの展示会となっており、招待券が無い場合は入場料5,000円となる。
装着感が進化したメガネスーパーのスマートグラスは春~夏量産へ
メガネスーパーなどを展開するビジョナリーホールディングス子会社のエンハンラボのブースでは、“視覚拡張”をキーコンセプトとしたメガネ型端末「b.g.(ビージー)」の量産デザインを披露。医療や観光、製造、物流などの活用方法を紹介している。
左右に2つのカラー有機ELディスプレイを搭載するノンシースルーのメガネ型ウェアラブル端末。解像度は1,280×960ドット。屋外での使用も想定し、本体はIP65の防水設計。メガネフレームには、国内シェア1位である福井県鯖江市のメガネづくりの技術を活用し、メガネを掛けたままでも快適に装着できるよう配慮した。フレームの素材はβチタンを使用。重量は50g台を予定している。
画面サイズは、1m先に15型相当で見えるように設計。HDMIを備え、外部デバイスと接続可能。用途に応じて、接続する端末を変えられるようにした。1,280×960ドット/60pの映像入力に対応予定。専用のHDMIケーブルは著作権保護のHDCPには非対応。給電はUSBケーブルを介してモバイルバッテリから行なえる。
ブースで紹介された用途の例は、「ドローン」、「観光」、「医療」、「製造」の各領域。
ドローン連携は、危険が伴う調査や点検などで、ドローンに搭載されたカメラの映像を、b.g.の映像を見ながら操縦できるというもの。日立ハイテクソリューションズによるワイヤレス伝送装置「AMIMON CONNEX」を使って、一人称視点と、ドローンからの映像を同時に確認。大きく視線移動せず、安全に操縦できる。
観光/インバウンド領域では、外国人が日本の演劇や博物館などを楽しむときに、外国語での解説をb.g.の画面上に表示することで内容を理解しやすくするというもの。博物館の場合、スマホに接続したb.g.を装着して展示物の前に立つと、可聴域を超える音をスマホに送り、受信したスマホ側で展示物に合った情報を自動で表示するという。エヴィクサーが提供する「Another Track」という音響通信技術を採用している。
医療向けは、電子カルテや内視鏡などの画像を、オペ現場の医師が確認できるという例を紹介。オペ現場では、清潔を保つためにディスプレイなどは離れた場所に置かれることが多いため、b.g.の画面サイズの場合はより見やすくなるという。
製造現場では、作業しながら音声で点検するシステムと連携。作業中に手を放してモニターを見に行くといったムダを省いて生産性向上が見込めるという。また、別途高感度カメラをb.g.に接続することで、暗所での点検や作業などにも活用できるという。
なお、開幕初日の17日は機材の問題で実際の映像は確認できなかったが、量産時期は計画通りに'18年の春夏を予定しているという。
視線移動で操作するハンズフリーディスプレイ
サン電子は、ステレオカメラや9軸センサーなどを備えた両眼シースルー方式のスマートグラス「AceReal One」を展示。業務向けに3月に発売し、価格は50万円前後。
ディスプレイを備えた本体部と、コントローラ部で構成。ディスプレイの解像度は720×900ドットで、視野角は29度。4m先に80型相当を表示できる。トップボトム方式の3D表示に対応。ヘルメットを装着したまま掛けられるのも特徴。IP54の防滴防塵仕様。
無線LANも内蔵しており、実際の作業現場では、離れた場所にいるオペレーターなどとコミュニケーションしながら作業することも可能。マイクやスピーカーも内蔵。コントローラ部には、Snapdragon 820を搭載し、OSはAndroid 6.0.1。
AR機能を使って、実際の作業を想定したデモを体験した。操作方法は、VRゴーグルなどを使う場合に似ており、頭を動かして目的のメニューに中央のカーソル部分を合わせると決定(クリック)となる。工場で作業するようなシチュエーションで、エンジンについているスパークプラグをチェックするという指示が出たとき、どこにプラグがついているか知らなくても、画面上の矢印や音声に従って視線を動かすと、正しい場所まで導いてくれる。マニュアルなどを確認しなくても、実物を見ながら作業を進められた。
エプソンはMOVERIOで働き方を変える
エプソンは、発売中のシースルー型スマートグラス「MOVERIO」と「MOVERIO Pro」を紹介。様々な企業とコラボして用途を提案している。
富士通ソーシアルサイエンスラボラトリの「FUJITSU Software LiveTalk」は、リアルタイム音声認識により、発話をテキスト翻訳するもので、これをMOVERIOに表示することで、タイムラグのない会話を可能にする。
遠隔作業支援サービスを提供する「Optional Second Sight」は、既にMOVERIOを現場に採用。効率向上による作業人数の最適化や、作業時間の削減、品質向上を実現するという。
そのほかにもドローンの撮影映像をMOVERIOでリアルタイムに確認する用途を紹介。ドローンから視線を外さずに空撮映像が確認できるほか、シェードを使うと屋外でも映像が見やすくなるという。なお、バーチャルなドローンで操作のトレーニングができるアプリも現在開発中だという。
網膜に投影するQDレーザー「RETISSA Display」に注目
QDレーザは、網膜に直接映像を投影するヘッドマウントディスプレイ「RETISSA Display」を出展。1月3日に製品が発表され、米国時間の1月7日に「CES Unveiled」にも出展していたが、国内でも披露された。ブースには、順番を待つ列ができていた。
網膜に直接映像を投影することにより、装着者の視力(ピント調節能力)やピント位置に影響を受けにくいフリーフォーカスを実現している。HDMI入力を備えた外付けユニットからの映像を表示。従来の医療向けモデルからカメラを省いて映像表示に特化したコンシューマ用モデルとなっている。
メガネ型ディスプレイデバイスの超小型化へ
メガネ生産地・福井県の企業であるケイ・エス・ティ・ワールドなど5社と福井大学は、レーザー走査型ディスプレイの光学エンジンを大幅に小型化し、“通常のメガネと変わらない”スマートグラスを目指す研究を紹介。実現した場合、光学エンジンと駆動回路システムを、一般的なメガネフレームのツルの部分に埋め込めるサイズまで小さくできるという。文部科学省などからの助成金を得て、2年をメドに実用レベルとすることを目指す。
上記のQDレーザと同じく、網膜に投影するディスプレイなどへの採用を想定。RGBそれぞれのレーザーを、合波器で1本にまとめて網膜上に映像を形成するのが基本的な仕組みだが、現在研究されている技術では、光源にレーザー走査用ミラーを集積し、小型化した光学エンジンの実現を目指している。
骨伝導イヤフォンの「EarsOpen」に続く“どこでもスピーカー”
BoCoは、'17年に発売した骨伝導イヤフォン「EarsOpen」を紹介。さらに、机など置いた場所を震わせて音を出す振動スピーカー「docodemoSPEAKER」を参考展示。クラウドファンディングを経て量産が既に決まっており、2~3月に19,800円で発売予定。
EarsOpenは10mm径で4Hz~40kHzという骨伝導デバイスを搭載しているが、今回のスピーカーは52mm径に大型化。「ホームオーディオと遜色ない高出力かつフラットなサウンド」としている。強力なイコライザ補正をピンポイントで行ない、広い周波数帯域に対応。ホームオーディオの熟練技術者がアンプ回路設計を含むトータルな音響特性を最適化したという。生産は国内の自社工場で行なっている。
Bluetooth 4.1対応で、コーデックはSBC。プロファイルはA2DP/AVRCP/HFP。入力はステレオミニ。外形寸法は77×77×54mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約360g。