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4K8K放送機器が600万台突破、「五輪までに1,000万台目指す」

放送サービス高度化推進協会(A-PAB)は20日、12月1日の“BSデジタル放送開始20周年”、および“新4K8K衛星放送開始2周年”を記念したイベントを開催した。各局合同で実施するキャンペーンの案内やBSデジタルに新たに参入する放送局の代表などが挨拶したほか、新4K8K衛星放送対応機器の累計が10月末で約627万台を突破したことも発表された。

なお、同イベントで発表された「WOWOW 4K」の放送ラインナップに関しては、別記事で紹介している。

対応機器出荷累計が約627万台に。五輪までに目標1,000万台

A-PABが毎月公表する新4K8K衛星放送受信機器の集計値は、新チューナー内蔵テレビ(13ブランド)、外付け新チューナー(8ブランド)、新チューナー内蔵録画機(4ブランド)、そして新チューナー内蔵STBを合算したもの。

10月分の出荷内訳は、新チューナー内蔵テレビが25.3万台、外付け新チューナーが1,000台、新チューナー内蔵録画機が5.8万台、CATVの新チューナー内蔵STBが5.3万台となり、計36.5万台を記録。

10月末までの累計では、新チューナー内蔵テレビが420.1万台、外付け新チューナーが25.1万台、新チューナー内蔵録画機が66万台、CATVの新チューナー内蔵STBが115.5万台となり、計626.7万台にのぼった。

A-PABの木村政孝理事は「好調な数字を下支えしているのが、数字の約7割を占めるテレビであり、10月は前年同月比で約1.5倍の出荷を記録した。4月に400万台、7月に500万台、そして10月に600万台を超え、順調に推移している」とコメント。

好調が継続している大きな要因としては、“地デジ特需”から約10年近くが経過し「2008年~2011年の4年間で販売された、約6,900万台のテレビが買い替え需要にさしかかっている」と説明。さらに「ステイホームでテレビに接する時間が増え、放送もネット動画も大画面で見たい。五輪も控えており、どうせ買い換えるなら4K/8Kテレビを、といったユーザーマインドが買い替え需要の後押しとなっているのではないか」と分析した。

A-PABでは今後、'21年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックまでに1,000万台の出荷を目指すと宣言。1,000万台にこだわる理由としては「1,000万台になれば、スポンサーとCMの話ができる」という民放BS事業者の懐事情に加え、「マーケティング理論的にも、1,000万台突破が本格普及段階へのステップの証になる」と説明した。

「1,000万台を実現するには、残り9カ月で、月平均の出荷台数を約2割アップしなければならず、決して楽ではない。非常に大きなチャレンジだが、なんとしても1,000万台を超えたい。ネットや店頭でオススメ番組を記載したチラシの配布や、コールセンタやホームページで視聴方法等の紹介を充実させるなど、できる限りの普及策を講じていく」と抱負を話した。

A-PAB 木村政孝理事

放送2周年を記念し、ピュア4K番組を12月集中放送

12月1日の新4K8K放送2周年を記念し、NHKと民放5社は共同キャンペーンとして、4K・8K放送の魅力と各局のオススメ番組を紹介するPR番組を11月中旬から各局で放送する。さらに12月を「新4K8K衛星放送で見ようよ! 月間」と題し、ピュア4K番組を集中的に展開する。

PR番組は、NHKと民放5社で放送

BS日テレ4Kでは、昭和を代表する人気俳優・石原裕次郎出演5作品を放送。「太陽の季節」「狂った果実」など12月下旬から放送。BS朝日4Kでは、水谷豊主演の時代劇「無用庵隠居修行4」や、新日本プロレス恒例の東京ドーム大会「ワールドプロレスリング4KSP」を用意する。

BS-TBS 4Kは、池波正太郎原作の時代劇「上意討ち」や「世界遺産4K8Kディレクターズカット版」、BSフジ4Kでは「エリジウム」「アフター・アース」「マネーモンスター」などの4K映画を放送予定。

BSテレ東4Kは、「男はつらいよ」シリーズや伊原六花主演のドラマ「どんぶり委員長」など、計130時間超の4K番組を揃える。

NHKでは、「第71回NHK紅白歌合戦」を8K・4Kで同時放送するほか、ベートベン生誕250年を記念したN響「第9」演奏会の8K生放送や「8K版ウエスト・サイド物語」などをラインナップするという。

よしもとBSなど、新規参入BSデジタル3社が挨拶

イベントでは、BSデジタル放送事業に新たに参入する、3社の代表が挨拶。’21年度の開局を目指す放送局の方向性を語った。

よしもとBSの稲垣豊代表取締役社長は「チャンネルテーマは“地方創生”。吉本興業では2011年から47都道府県に“住みます芸人プロジェクト”を展開し、活動している。このチャンネルでは、住みます芸人を中心とした各地からの情報番組を核とすることを構想している。住みます芸人は現在145名おり、彼らが特派員となり、地域の方々と交流し情報発信を担う。情報発信だけでなく、各地の課題解決にも取り組む。スタジオについては、墨田区の情報経営イノベーション専門職大学に設置し、地域の方々と連携を図れるコミュニケーションスタジオを目指す」とした。

よしもとBSの稲垣豊代表取締役社長

ジャパネットホールディングスの髙田旭人代表取締役社長兼CEOは「ジャパネットというと通信販売のイメージが強いと思うが、この数年間は通信販売事業とともにスポーツ地域創生事業に取り組んできた。4年後には、地元長崎にスタジアムアリーナも建設予定だ。通信販売とスポーツ地域創生に共通するのは、いいものを見つけること、磨くこと、伝えること。これを踏まえ我々は、商品やサービスだけでなく、地域創世やスポーツ、考え方、文化などを伝えていく放送局を目指す。これまでのBS局の想い・取り組みを参考にさせていただきながら、BSデジタルを盛り上げていきたい」と話した。

ジャパネットホールディングスの髙田旭人代表取締役社長兼CEO

BS松竹東急の橋本元代表取締役社長は「映画のパイオニアであり、歌舞伎を始めとした劇場文化・伝統の継承と新しいものへ挑戦する松竹と、エンターテイメントシティ・渋谷を世界、未来へ繋げる街づくりを手掛ける東急が一緒になって、新しいコミュニケーションやコミュニティの場を作るメディア、放送局を目指していきたい」と抱負を述べた。

BS松竹東急の橋本元代表取締役社長

A-PABの相子宏之理事長は、「BSデジタル放送は地上デジタル放送に先駆け、高画質のデジタルハイビジョン放送を開始した。今や視聴可能世帯は7割を超え、地上波に次ぐ、重要な基幹放送メディアへと成長した。そして2年前には4K8K放送がスタートし、より高画質な放送が楽しめるようになった。様々なメディアサービスが登場してはいるが、放送サービスはその信頼性、安定性等において、まだまだ重要な役割を果たしており、一層の高度化等により、そのメディア価値はさらに向上していくと考えている」とBSデジタル放送の重要性を強調。

「新型コロナに影響により、4K8Kの普及の伸びが鈍化するとも思われたが、巣籠もり需要や特別給付金の影響等に加え、メーカーや家電販売店、ケーブルテレビ会社の力添えもあり、いまのところ順調に普及している。五輪までにはなんとか1,000万台出荷できるよう、関係各社と共に引き続き努力していく」と述べた。

A-PABの相子宏之理事長
4K8K衛星放送の受信設備から電波が漏洩する場合に限り、改修経費の一部に国の助成金が利用できる。申請締め切りは'21年1月末を予定
新しいBSチャンネルの開始にあたり、BS帯域再編(帯域削減とチャンネル移動)が順次行なわれる。1回目の帯域削減は11月30日早朝の実施を予定している