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ソニー、開放型で空間表現も得意なモニターヘッドフォン「MDR-MV1」

ソニーの新モニターヘッドフォン「MDR-MV1」

ソニーは、モニターヘッドフォンの新モデル「MDR-MV1」を5月12日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は59,000円前後。カラーはブラック。プロのエンジニアから一般リスナーの使用も想定しており、1年間の無償修理メーカー保証がついている。試聴したファーストインプレッションは別記事でレポートする。

MDR-CD900STやMDR-M1STとの違い

ソニーのモニターヘッドフォンとしては、プロの現場で使われる定番モデルであり、伝説的な「MDR-CD900ST」と、ハイレゾにも対応した“CD900STの新世代機”として2019年に登場した「MDR-M1ST」が知られている。

左から新モデル「MDR-MV1」、定番モデル「MDR-CD900ST」
左から新モデル「MDR-MV1」、ハイレゾ対新世代機「MDR-M1ST」

新モデル「MDR-MV1」の大きな特徴は、ハウジングがオープンバック型で、立体的な空間表現を得意としている事。なお、このヘッドフォン開発には、“テイラーメイド”カスタムイヤフォン「Just ear」でお馴染み、エンジニアの松尾伴大氏も参加している。

新モデル「MDR-MV1」

近年は、プロも含めて、スタジオではなく自宅で音楽を作る人が増加、さらに360 Reality Audio(360RA)などの空間オーディオに対応した楽曲作りへの関心も高まっている。一方で、例えば360RAを正確にチェックしながら音楽を作る際には、13個のスピーカーを適切に配置する必要があるなど、家でその環境を構築するのは難易度が高いという現状がある。

自宅で楽曲を作るアーティストも増えている
自宅に13個のスピーカーを適切に配置したスタジオを作るのは難易度が高い
立体的な空間に音像を配置していく、360RA楽曲制作のイメージ

そこでMDR-MV1は、2chのモニターヘッドフォンとしても高い実力を持ちながら、立体音響を再現するヘッドフォンとしても高い性能を持つモデルとして開発されている。

なお、MDR-CD900STとMDR-M1STは、プロ向けとしてソニーミュージックソリューションズから販売されており、無償修理期間も設けられていない。一方で、新機種のMDR-MV1はグローバルでの販売も想定している事から、通常のコンシューマー向けヘッドフォンと同じ、ソニーマーケティングからの販売となるため、1年間のメーカー保証がついている。

また、360RA確認用モニターヘッドフォンとしての能力をフルに発揮させるため、“MiL Studioでユーザーが体験したサウンド”を測定して、ヘッドフォンで再現する「360 Virtual Mixing Environment」(360VME)というサービスも提供される。詳細は後述する。

背面開放型で広大な音場

背面開放型
ハウジングの中央部分が少し盛り上がっている

立体音響制作で活用できるモニターヘッドフォンを実現するため、ハウジングは、背面開放型を採用。ヘッドフォン内部の反射音を低減する事で、信号処理で付与された反射音への影響を抑え、正確な音場を再現できるという。

さらに、ドライバーユニットの前面と背面をつなぐ開口部を広く設ける事で、音響レジスターによる通気のコントロールを最適化。不要な空間共鳴を排除し、色付けの少ない自然で充実した低音域が再生できるという。

ドライバーユニットは専用開発で、40mm口径。5Hz~80kHzまでの広帯域再生が可能なものを採用。背面開放型ハウジングに適した振動板形状とコルゲーションを導出。低音域での再現性が高く、超高音域再生と高感度再生を実現している。

振動板のコルゲーションエッジ部には、直線のヒダが入っているが、その形状を新たに見直している。開放型でも低歪になるよう、振動板が激しく動いた場合でも、物理的な歪みを抑える工夫を施した。なお、振動板の素材にはあえて希少な素材は使わず、「M1STのように、長期間安定的に作れる事を考慮した素材を使っている」とのこと。

ユニットの背面には音響負荷ダクトを直結し、振動板の動作を最適化。低域の過渡特性を改善し、充分な量感の低音域再生と中音域との分離感も両立。リズムを正確に再現できるとのこと。

ヘッドフォン全体は約223gと軽量(ケーブル含まず)。イヤーパッドはスエード調の人口皮革で、快適で安定した装着性を実現した。イヤーパッドは交換も可能。

約223gと軽量
ヒンジ部分
ヘッドパッド

ケーブルは着脱可能で、ネジ式のロックリングを採用。約2.5mで、入力が標準プラグのヘッドフォンケーブルが付属する。このケーブルはMDR-M1STと同仕様。これに加え、標準プラグからステレオミニプラグへの変換ケーブル(約20cm)も同梱する。

付属ケーブルは約2.5m
標準プラグからステレオミニプラグへの変換ケーブル(約20cm)も同梱

なお、ソニーからMDR-MV1用のバランス接続ケーブルは発売されない。しかし、ロック部分の機構が共通ではないので、ロックはできないものの、試しにMDR-M1STで使えるバランス接続ケーブルをMDR-MV1に接続すること自体は可能であり、バランス駆動で音を出す事もできた。

音圧感度は100dB/mW。インピーダンスは24Ω(1kHzにて)。最大入力は1,500mW。モニターヘッドフォンだが鳴らしやすく、ウォークマンでも充分に音楽が楽しめるという。

ケーブルは着脱可能

360 Virtual Mixing Environmentサービス

ソニーが技術的に協力し、都内にある「MiL Studio」が提供するのが360 Virtual Mixing Environmentサービス。

MiL Studioにある、サウンド制作用リファレンススタジオの音場環境をヘッドフォンで高精度に再現できるようにするもので、未定だが、費用は500ドル程度のイメージだという。

ユーザーがスタジオを予約し、ヘッドフォンを持参。スタジオのスピーカーで再生した音場の、ユーザーの骨格も踏まえた“聞こえ方”を測定。それをプロファイルデータとして持ち帰り、Pro Toolsなどに適用する事で、自宅でヘッドフォンで聴いた時にも“MiL Studioの音”を高精度に再現できるという。

なお、MDR-MV1を使った場合に最も効果を発揮できるとしているが、使用するヘッドフォンはMDR-MV1でなくても大丈夫だという。